10-FEETはいつも通りのまま一歩先へ、今のモード詰め込んだ「helm'N bass」を語る

10-FEETが7月3日にニューシングル「helm'N bass」をCDリリースした。

10-FEETがフィジカル作品をリリースするのは、2022年発表のアルバム「コリンズ」以来およそ1年半ぶりとなる。シングルにはアサヒスーパードライと3人制バスケットボールのグローバルプロリーグ「3x3.EXE PREMIER」の応援ソング「helm'N bass」や、「2024 ABCプロ野球」のテーマソング「gg燦然」、ドラマ「フェルマーの料理」の主題歌「Re方程式」とタイアップソング3曲を収録。それぞれのタイアップの雰囲気にマッチしながらも、10-FEETの今のモードが詰まったシングルになっている。

音楽ナタリーでは10-FEETにインタビューし、「helm'N bass」の制作エピソードや今週末に控えた主催フェス「京都大作戦2024」への思いを聞いた。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 後藤倫人

最高点に到達したとは思っていない

──ニューシングル「helm'N bass」は収録されている3曲すべてにタイアップが付いています。楽曲制作する際、そういったタイアップ先のテーマはどのタイミングで意識するのでしょう?

TAKUMA(Vo, G) 「タイアップやし、こういうのどう?」というイメージが最初から湧くときもたまにあるんですけど、基本的にはまず「いい曲」の土台を作ってから、そこに肉付けしていくやり方ですね。普段と同じように曲作りを始めて、途中からタイアップ要素となるテーマやイメージを混ぜていってます。

10-FEET

10-FEET

KOUICHI(Dr, Cho) とりあえずいつもと変わらず、いい曲を作ることが大前提なので、タイアップが付いていようがなかろうがそこを目がけてやっています。

NAOKI(B, Vo) 僕も同じですね。普段タイアップがついてない曲を作っているときと同じ感覚で、そのときそのときに自分たちが作れる「よりいいものを」という意識で、今回の3曲もやらせてもらいました。

──時系列的には、昨年放送されたTBS系ドラマ「フェルマーの料理」の主題歌「Re方程式」から着手されたのかなと思います。2022年12月発売のアルバム「コリンズ」以来の新曲となるわけですが、TAKUMAさんはこの曲を制作するときにどんなことを意識しましたか?

TAKUMA 「Re方程式」はまず先にデモがあり、サビまで平歌ができていて。そこからドラマ主題歌のお話をいただき、ドラマの原作や絵コンテなどにできる限り目を通して、物語の背景でどんな音楽が鳴ったら一番惹きつけられるかというイメージを持って作っていきました。

──ドラマのクライマックスで「Re方程式」が流れた瞬間、翌週に向けての期待感や気持ちがアガりました。

TAKUMA 狙い通りですね(笑)。ありがとうございます。

──KOUICHIさん、NAOKIさんは「Re方程式」のデモを最初に受け取ったとき、どのような印象を受けましたか?

KOUICHI 「ドラマに合うやろうな」と。そこから歌詞もできて、物語にピッタリだなと思いました。先ほどおっしゃっていただいたように、ドラマのいいところで流してもらって、ドラマサイドの方々の期待に応えられたんじゃないかと思っています。

KOUICHI(Dr, Cho)

KOUICHI(Dr, Cho)

──ちなみに、皆さん「フェルマーの料理」はご覧になっていたんですか?

KOUICHI 観れるときには必ず観てました。

NAOKI あ、僕は全話観ましたよ(笑)。

TAKUMA 僕もです(笑)。

NAOKI 曲がどういう使われ方をするのかを僕らは知らなかったので、実際にドラマを観たときにキモになるシーンでイントロが流れ出したときは鳥肌が立ちましたし、ちゃんと楽曲のよさを生かした使い方をしてもらえていて感動しました。

NAOKI(B, Vo)

NAOKI(B, Vo)

──歌詞も、サビに登場する「もう一回」というフレーズが非常にキャッチーで、ドラマにも合っていますね。

TAKUMA サビの譜割りが決まっていたから、そこの音数とリズムに合わせていろいろ言葉遊びをしたり、ドラマの要素を反映したりしていく中で生まれた歌詞です。

──歌詞やサウンド含め、全体を通して非常に10-FEETらしいのに、どこか新しさも感じられました。そういった新鮮さに関して、皆さんは意識しているのでしょうか?

TAKUMA 意識はしていないですけど、鍵盤などのシーケンス、サビのメロディとか、90年代の邦楽ロックやポップスをテーマにしていて。そういうアイデアと、今の僕らの演奏、表現方法を組み合わせた結果が、おっしゃっていただいた新鮮さにつながっているのかもしれませんね。

──25年以上バンドを続けていると、曲作りにおいて以前作ったことがあるものと似てしまうこともゼロではないと思うんです。そこを更新し続けるうえで、TAKUMAさんはどういったことを一番心がけていますか?

TAKUMA そうやなあ……僕はキックとスネアと歌の譜割りにこだわっていて。メロディや音階は一旦置いておいて、歌のリズムとバスドラとスネア。そこにハイハットやライドが重なって、4分で刻むのか8分で刻むのか。そこがものすごく大事だという思いが、バンドを始めたときから自分の中にめちゃめちゃ強くあるんですよ。そこからさらに音階という要素が加わると、ほんまに曲制作の可能性は無限大やなと思っていて。「まだこの組み合わせ方法があったのか!」と気付くことも多いし、全クリアできてないからこそ、最高点に到達したとは思っていない。だから、歌のリズムとかをずっと追求し続けていますし、そうしている間はまったく同じことをしないと思うんで、音を更新できているんじゃないかな。自分が好きなギターやベースのフレーズを考えるのも楽しいですし。だからずっと曲作りを続けていられるんだろうなと思います。

10-FEET

10-FEET

──今バスドラムとスネアの話がありましたけど、KOUICHIさんは曲作りにおいてそういうTAKUMAさんのこだわりを常に感じていました?

KOUICHI そうですね。TAKUMAの中に「このメロディに対してはこのリズム」という考えが昔からあるんやろうなと思ってましたし、実際今回の制作でもそういう意識は強かったと思います。

お互いが求めているものを結び付けるために

──シングルの表題曲「helm'N bass」についても話を聞かせてください。この曲は「アサヒスーパードライ×3x3.EXE PREMIER」応援ソングという、「第ゼロ感」から引き続きバスケットボールに関連するタイアップが付いています。

TAKUMA 映画「THE FIRST SLAM DUNK」の主題歌をやらせてもらったことでの縁を感じましたし、光栄ですね。「helm'N bass」に関してはまず、「今の僕らのモードで新曲をガッと作ったら、こんな感じかな?」というところから始まっていて。そこにタイアップのテーマを合流させていきました。今僕らが求めているものと先方さんが求めているもの、それぞれを最もいい形で結び付けるためにも、まず自分たちの作りたい音を大切にしました。

──歌詞やメッセージにおいては、どういったことを意識しましたか?

TAKUMA まず今思うことや感じていること、スッと出てくる言葉をそのまま歌詞にしていきました。そこからポイントポイントで「乾き」「燦燦(さんさん)」という、タイアップに絡めたフレーズをちりばめていって。「燦燦」は「3x3.EXE PREMIER」の3人制バスケットボールにちなんだフレーズですけど、あえて数字を使わないで歌詞の流れに沿って「燦燦」という言葉に思いを重ねた。そういったところで、タイアップのテーマと手をつなげたらいいなと。歌詞はべったりとタイアップのテーマに寄り添っているわけじゃないんですけど、そもそも僕らはべったりすることが求められているとは捉えていない。でも、「任せてといてください!」という思いでやっているんで、自分たちがやるべきこと、やったほうがいいこと、できること、そこに対してベストを尽くせたと思っています。きっと「いいタイアップ」ってそういう感じなんじゃないかなと思います。

TAKUMA(Vo, G)

TAKUMA(Vo, G)

──そもそも10-FEETにオファーするってことは、10-FEETらしさを求めているってことですものね。リズムトラックを制作するうえでは、どういったことにこだわりましたか?

NAOKI 僕たちはこの曲のような妖艶な世界観に意外とトライしてこなかったので、そういう空気感をしっかり表現できたらいいなと思いながら制作しました。

KOUICHI ドラムは基本8ビートで疾走感が強いんですけど、軽やかさと同時にズッシリした重さも大切になってくると思っていて。特にライブではその両方の要素が重要になってくるので、そういったビート感を大切にしながら叩きました。