10-FEET×綾小路 翔(氣志團)|25周年組の両者がトリビュートで送り合う愛とリスペクト (2/2)

氣志團なのに10-FEETを感じるカバー

──そして今回、コラボレーションアルバム「10-feat」に氣志團は「goes on」のカバーを提供しています。

綾小路 まず25周年を記念したアルバムに参加させてもらえたのが本当にうれしくて。「goes on」は「京都大作戦」でカバーさせてもらったことがあるんですが、今回改めてレコーディングしてみて、「なるほど、こうなってるのか」という発見がたくさんありました。3人のエネルギーが同じ方向に突き進むことで、ものすごいことが起きているというのかな。「迷わず直進することで、こんなにヌケのいいメロディになるのか」ということに気付けたんですが、それって俺らが一番できないことなんですよね。俺らはヒネくれてるから、まっすぐに行けばいいところで別の道に行ったり、余計なものをどんどん身に着けちゃったりして。「お前ら結局、何がしたいんだ?」みたいに思われちゃうこともあるし。

TAKUMA ハハハ。

左から綾小路 翔(氣志團)、TAKUMA(Vo, G / 10-FEET)。

左から綾小路 翔(氣志團)、TAKUMA(Vo, G / 10-FEET)。

綾小路 「goes on」に向き合うことでわかったんですけど、10-FEETは音楽を信じているし、仲間を信じてるんですよね。だからこそ、「京都大作戦」のようなフェスが生まれるんだなと改めて実感しました。

──「goes on feat. 氣志團」、素晴らしいと思います。原曲のよさを生かした、すごくストレートなアレンジですよね。

NAOKI 初めて聴いたときからテンション上がりました。氣志團節全開だし、驚きポイントがいくつもあって。

TAKUMA めちゃくちゃカッコいいよね。僕らもほかのアーティストの曲をカバーさせてもらうことがあるけど、やり方としては「原曲に忠実にやる」もしくは「まったく違うアレンジにする」というパターンがある。だけど、どちらにせよ共通して大事になるのは、「原曲のよさを残したうえで、自分たちのものにする」ということだと思っていて。「goes on feat. 氣志團」はめっちゃ氣志團なのに、同時にめっちゃ10-FEETを感じられるのがすごくいい。原曲の音も使ってもらってるし。

綾小路 ボーカルとギターを使わせてもらってるの。冒頭はテンポを落としてみたんだけど、あとはストレートにカバーしようと思って。今回は原曲のデータも使わせてもらえたから、デュエットを捏造してみたくて(笑)。

TAKUMA ちゃんとデュエットになってた! 翔やんのハスキーなところと自分のハスキーなところが混ざってるのもめっちゃいい。ライブで一緒にやってる絵が浮かびましたね。

KOUICHI うん、このアレンジで一緒にやれますね。

綾小路 それもテーマにしてたんですよ、実は。

左から綾小路 翔(氣志團)、KOUICHI(Dr, Cho / 10-FEET)。

左から綾小路 翔(氣志團)、KOUICHI(Dr, Cho / 10-FEET)。

関東風の味付けをした「goes on」

KOUICHI 僕が勝手に予想してたアレンジとは全然違ったので驚きました。どこかにブレイクを入れて、翔やんがMCするのかと思ってたんだけど……。

綾小路 ハハハハハ! 斬新(笑)。

KOUICHI 予想に反してストレートにカバーしてくれて。すげえカッコいいです。

綾小路 うれしいです。「goes on」は10-FEETのファンにとっても大事な曲だし、今や日本のロックフェスのアンセムでもある。ウチのメンバーとも話して、とにかく小賢しいことはやめようと。ただ1つだけ、ここで謝りたいことがあって……。

TAKUMA どうしたの?

綾小路 「いくら泣いても時は流れて」のメロディを間違えたまま歌ってるんです。聴き返したときに「あれ、メロディ違う?」って気付いて。「時」んとこね(笑)。メンバーに聞いたら「翔やんが自信満々で歌ってるから、あえてかなと思って。コーラスもそっちに寄せた」と言われて(笑)。気付いてたなら言ってよ!と思いつつ、もうできちゃったのでこのまま収録されています。イントネーションが東。今回の「goes on」は関東風の味付けということで楽しんでもらえたら……。

10-FEET一同 (笑)。

10-FEET

10-FEET

愛と閃きとこだわりが詰まったトリビュート

綾小路 発売に先駆けてアルバムの音源を聴かせてもらったけど、どのアーティストも最高だったんですよね。原曲と聴き比べると「なるほど、この部分をこう解釈したのか」みたいな発見がいっぱいあって、めちゃくちゃ面白い。dustboxの「ヒトリセカイ」はとことんストレートだし、クリープハイプの「Fin」なんて「これ、クリープハイプの曲じゃん」みたいな。

TAKUMA ホンマに。Hakubiが歌ってくれた「蜃気楼 feat. Hakubi」とか、「この曲、あげよか?」と思った(笑)。

NAOKI バッチリハマってたよね。

綾小路 WANIMAの「VIBES BY VIBES」もすごかった。WANIMAには俺らのトリビュートアルバム(3月30日発売のトリビュートアルバム「All Night Carnival」)にも参加してもらったんだけど、とにかく演奏力に加えてアレンジ力が圧倒的。こうやってカバーをしてもらうことで、彼らの開けてない引き出しがまだまだあるような気がして、これからがすごく楽しみですね。

TAKUMA うん。

綾小路 あとG-FREAK FACTORYの「アンテナラスト」もよかった! 車で聴きながら「いい曲だし、いい声だなあ」と感涙でした。どの曲もそうなんだけど、原曲の素材のよさを生かして、それぞれの発想を爆発させてるんだよね。みんなすごく張り切ってるじゃないですか。ヤバT、何回聴いても超気持ちいいし。このアルバムに参加できてよかったという喜びが伝わってくるようで。

TAKUMA 愛と閃きとこだわりが詰まってるのがすごくうれしい。

NAOKI ホンマにそう。それぞれバンドやアーティストが違うベクトルでカバーしてくれて、「こういう感じでくるんや!?」という驚きがあって。どの曲にも衝撃があるし、聴きながらずっと鳥肌が立ってました。

左から綾小路 翔(氣志團)、NAOKI(B, Vo / 10-FEET)。

左から綾小路 翔(氣志團)、NAOKI(B, Vo / 10-FEET)。

KOUICHI 改めて「10-FEET、いい曲が多いな」と思いました(笑)。自分たちの曲って、こういう機会でもないと客観的に捉えられないんですよね。だからトリビュートとかカバーをしてもらうたびに「いい曲多いな」と思う。

綾小路 いい曲ばっかりだし、本当にいろんなアーティストのいろんな愛が詰まってる。俺らのトリビュートアルバムもそうですけど、25年がんばってるといいことがあるんだよね。宝物をいただいたような気持ちになる。

タメには負けたくない25周年組

──10-FEET、氣志團はともに25周年を迎えました。25年という数字に対しては、どんな思いがありますか?

綾小路 長いですよね。90年代までは、「長く続いているロックバンドはカッコ悪い」みたいな風潮があったような気がして。俺が好きだったバンドも、長くやらずに解散してしまったからこそ、伝説になった。でも我々1997年組くらいからは、解散せず前に進むことを決めたバンドが増えて。

TAKUMA うん。

綾小路 解散という発想自体がないんですよね。仲間と一緒に一歩一歩進んでいたら、四半世紀経っちゃった。10-FEETもそうだけど、同期のバンドも現役バリバリだし、全然おっさんになってなくて……いや、周りからはおっさんだと思われてるかもしれないけど。

TAKUMA ハハハ。

綾小路 気分としては小僧のまま変わらず、25年やっちゃった感じ。おかげで若い世代のバンドとも仲よくできてるし、長くやることで先輩のレジェンドバンドもこっちを見てくれるようになった。やり続けることでアンダーグラウンドでもなく、芸能でもなく、それまでとは違ったバンドシーンを作れたのは、自分たちの世代ががんばったからという自負があって。世界的にも珍しいことだと思いますよ。ここまでロックバンドががんばってる国は、ほかにないんじゃないかな。それは同世代のバンドが誠意を持って続けてきた結果だし、氣志團もその端っこにいさせてもらえてるのかなと。

TAKUMA Kj(Dragon Ash)に「10-FEETって全然辞めないし、どかないよね。俺らもだけど」って言われたことあるよ(笑)。

NAOKI  Dragon Ashのほうが活動歴は長いじゃん!

──Dragon Ashは今年でデビュー25周年ですね。

綾小路 ずっと最前線にいるよね。マジで尊敬してる。ちなみに我々は結成25周年で、実はけっこう同期のバンド多いんですよ。POLYSICS、ACIDMAN、DIR EN GREYもそうかな。

──TAKUMAさんは25周年という節目をどう捉えていますか?

TAKUMA 俺らの場合は、バンド単体でそこまで活躍できてないし、動員もそこまでじゃないという状況のときに10周年だったんですよね。その前からフェスをやってみたいと思っていたけど、「自分らが一番動員が少なかったらどうしよう」みたいな話をしてて。でも「そんなこと気にせず、やりたいことを素直にやろう」と思って2007年に「京都大作戦」を初開催することにしたんです。残念ながら初回は台風で中止になってしまったんですけど、みんなが1年後のスケジュールを空けてくれて、翌年無事に開催できた。そのとき「感謝の気持ちって、こういうことなんやな」ということがようやくわかって、今でもそのときの気持ちが自分の血中に濃くある感覚がある。25年やれたのも、みんなのおかげでしかないですから。

NAOKI 気付けば25年という感じもありますね。人に言われないと気付かなかったし、そんなに経った感覚もなくて。ただ、周りの仲間のおかげで続けられたのは間違いなくて。今は「バンドを辞めるという選択を持ったらあかん」くらいの感じだし、それが普通になってます。

KOUICHI うん。周りのバンドがみんながんばってるから、自然に「自分らもやらな」という気持ちになるので。対バン相手に刺激をもらうこともめちゃくちゃあるし。悔しくなったり、「次は負けへんぞ」と思ったり。

綾小路 それは俺らも同じですね。人を妬んで、嫉んできた人生ですけど、それがエネルギーになってるから。あと「タメには負けたくない」というヤンキーイズムも残っていて。

TAKUMA わかる気がする(笑)。

綾小路 先輩のバンドに負けるのはしょうがないんだけど、同世代のバンドがいい曲を出して、カッコいいライブをやってるとすげえ悔しい。でも同時にスカッとするんですよね。

TAKUMA そうやな。わかり合えるというか、感覚が近いんですよね、同世代のバンドは。

綾小路 見てきたもの、体験してきたことも近いですからね。今はこういうご時世だけど、できることなら25周年組で同窓会をやりたいですね(笑)。

10-FEET、綾小路 翔(氣志團)。

10-FEET、綾小路 翔(氣志團)。

プロフィール

10-FEET(テンフィート)

TAKUMA(Vo, G)、NAOKI(B, Vo)、KOUICHI(Dr, Cho)によるスリーピースバンド。メロディックパンク、ヘヴィメタル、レゲエ、ヒップホップ、ギターポップ、ボサノバなどのさまざまなジャンルを取り入れたサウンドで人気を集める。結成以来精力的にライブ活動を続け、その迫力満点のライブパフォーマンスや人間味あふれる深いメッセージが込められた楽曲、笑顔を誘い出すキャラクターでもファンを魅了。日本はもとよりアメリカや韓国、台湾でもライブを行うなど、活動の幅を世界に広げている。また2007年よりバンド主催の野外フェス「京都大作戦」を開催し、地元・京都から音楽シーンを熱く盛り上げている。2021年3月にシングル「アオ」をリリース。同年9月からは初の全国ホールツアー「10-FEET “アオ” TOUR 2021-2022」を開催した。2022年3月にバンド結成25周年を記念したトリビュートアルバム「10-feat」をリリース。

氣志團(キシダン)

1997年に千葉県木更津で結成。メンバーは綾小路 翔(Vo)、早乙女 光(Dance & Scream)、西園寺 瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Dr / 2014年3月より活動休止中)の6名。“ヤンクロック”をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでのパフォーマンスが話題を集め、2001年12月にVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発し、2004年には東京・東京ドームでのワンマンライブも開催。2012年からは地元千葉県にて大規模な野外イベント「氣志團万博」を主催し、ほかのフェスとは一線を画するラインナップで多くの音楽ファンの支持を集めている。2022年3月30日に、「One Night Carnival」のカバーのみで構成された氣志團のトリビュートアルバム「All Night Carnival」がリリースされる。

綾小路 翔 衣装協力
All in one:DIET BUTCHER
Shoes:MILK BOY
Accessories:PUERTA DEL SOL