04 Limited Sazabysの真骨頂、直球サウンドを詰め込んだ「MOON」 (3/3)

わかりやすいサウンドの曲に抵抗がなくなった

──今お話に上がったEPの3曲目「Kick it」はまさにストレートなポップパンクで、「04 Limited Sazabysってこういうポップパンクも作ってくれるんだ」と驚きました。

GEN そうですよね。昔のデモを聴いていたら、このビートの曲があって。その曲は別として、とりあえずこのリズムで曲を作りたいという話をしてできたのが「Kick it」です。珍しく、リズムに対してメロディを乗せて、そこからコードを付けたんですよ。

KOUHEI そう。GENから「このビートで曲を作りたい」とデモが送られてきたから、そこにドラムを打ち込んで返して。GENの中にイメージがあると言うので、ワンコーラス作ってもらって、それをもとに俺がフルコーラス作りました。

GEN 返ってきたデモを聴いたらドロップが入っているところがあったので、そのときはハードコアっぽくしようと思っていたんです。

KOUHEI そうなの!?

GEN うん。なんならサビでシャウトするくらい男くさい感じにしたかったんですけど……作っていくうちにどんどん西海岸っぽくなってきて(笑)。

KOUHEI そうだったんだ! 今初めて知った(笑)。俺は最初から西海岸っぽいイメージだった。

KOUHEI(Dr, Cho)

KOUHEI(Dr, Cho)

──その違いも怪我の功名というか。

GEN そうですね。もっと熱くて渋いやつにするつもりだったんですけど、すごくキャッチーな曲になっちゃいました(笑)。

HIROKAZ 俺はデモを聴いた時点で「これは西海岸だな」とイメージができたので、ギターは考えやすかったですね。「ギターソロはそんなに入れなくていいかもね」となって。

GEN 力の抜けた感じにしたくて。音を一生懸命埋めるというよりは、音符を少なめにしたいという話をしました。あと、アコギが入っているのもHIROKAZのアイデアで。

HIROKAZ 「西海岸ならアコギでしょ」という発想で。

GEN 最初は俺も「ベタだな」と思ったんですけど、入れたらやっぱりよくて。

HIROKAZ 「入れるよね?」という感じでした(笑)。

RYU-TA 俺は最初にデモを聴いたとき、GENはTurnstile(アメリカのハードコアパンクバンド)っぽいのをやりたいのかなと思って。

GEN そうそう!

RYU-TA だからブリッジミュートを入れたり、ちょっとそのイメージにも寄せました。

RYU-TA(G, Cho)

RYU-TA(G, Cho)

──各々の解釈が混ざった楽曲になったと。

GEN はい。もともとのハードコアなイメージの曲になっていたら、たぶんRYU-TAのシャウトパートを作っていたと思います。でもさわやかな曲になったんで、これは俺が歌い切ろうと思いました。

──シンガロングパートも、西海岸系ド直球で。今までの楽曲にはなかったですよね。

GEN なんかいいですよね、青くて。昔は「それは別のバンドがやればいいことだ」と考えていたんですけど、今だったら同じことをしても俺らの持ち味を出せると思ったので入れました。例えば今、10年前と同じことをやったとしても、当時とは04 Limited Sazabysとしての純度が全然違うと思うんですよ。出す音もそうだし、説得力も。自信があるから、今は直球でわかりやすいサウンドの曲をやることに対して抵抗がなくなったんだと思います。

男版YUKIちゃんになれるかな(笑)

──そしてEPの4曲目はJUDY AND MARY「mottö」のカバーです。フォーリミはトリビュート作品には多数参加してきたものの、バンド名義の作品としては初めてのカバー曲となります。今回カバー曲を入れようと思ったのはどうしてですか?

GEN 前から「mottö」をカバーしたかったんです。「この曲を2ビートにしたい」とずっと妄想していて。でも僕らはこれまでカバー曲をずっと出してこなかった。特にKOUHEIがカバーすることをすごく嫌がっていたんです。「自分たちの曲で勝負したいから」って。その気持ちはわかるんですけど、僕の好きなアーティストのアルバムにはカバー曲が入っていることが多くて、それがきっかけで知った曲もたくさんあったから、いつかは自分もやりたいなと思っていました。最近トリビュート作品に参加するようになって、僕らは人の曲を自分たちなりに料理するのがうまいと思った。だけど、すごく手応えのあるトリビュートの曲も、うちのお客さんには意外と浸透していなくて「なんでかなあ」という気持ちがあって。そういう思いから今回カバー曲を録ってみたところもあります。

GEN(B, Vo)

GEN(B, Vo)

──「だったら自分たちの作品に入れちゃえ」と。

GEN はい。そう思ってKOUHEIに提案したらOKだったので入れました。あとは、この曲でYUKIちゃんが歌っていることが、今僕が歌いたいことでもあったんですよ。自分では少し照れ臭さがあってこんなふうな歌詞を書けないけど、YUKIちゃんのおてんばな感じが出たこの曲を通してだったら言えるなと思って。

KOUHEI 俺はさっきGENが言っていたように、昔はカバーすることが嫌だったんですけど、今回提案されたときに、反対する理由がないなと思って。「自分たちの曲だけで勝負したい」という気持ちはもちろん今でもありますけど、トリビュート作品にも参加しているし、「mottö」も好きだったし、アリかなって。それにGENとYUKIちゃんの声が似ていて違和感もなかったし。

──GENさんの声、YUKIさんの声にすごく似ていますよね。再生してびっくりしました。

GEN 本当ですか!? 男版YUKIちゃんになれるかな(笑)。

──カバーしてみていかがでしたか?

GEN いやー、ほかにない歌だなと思いましたよ(笑)。譜割も展開も。面白かったですね。

KOUHEI 原曲だと曲の入りがすごく複雑で。サビから始まったほうが「この曲知ってる!」と思う人も多いのかなと考えて、サビから始まるアレンジにしました。ドラムに関してはけっこういつも通りで特に難しくはないんですけど……ギターはムズいの?

HIROKAZ できるけど、癖はすごいあるから難しいね。でもこの曲をカバーすることになって最初にオリジナル版を聴いたときは……一旦パソコンを閉じました(笑)。これはどうしたものかと1日放置しました(笑)。

GEN ギターだけ聴いても変だし面白いよね。HIROKAZがこんなギター入れてきたら「邪魔だな」って感じると思うけど(笑)。

HIROKAZ あはは。だから1回寝かせたあと、シンプルな感じにアレンジしたほうがうちらっぽくなるかなと思ってギターのフレーズを考えていきました。僕はあまりジュディマリを通っていなかったので、今回しっかり掘ってみたんですけど、聴けば聴くだけいろんなギターフレーズが出てきて驚きました。

HIROKAZ(G)

HIROKAZ(G)

RYU-TA 俺は「mottö」もジュディマリも好きだったから、カバーしたいと言われたときは「OK!」という感じだったけど、よく考えたらムズいよなと。でも自分たちらしさのあるカッコいい曲になったし、弾いていても楽しい曲になりました。

──ちなみに……EPの2曲目「GATE」の「物語の奥地に急ごうよ」の部分がジュディマリを彷彿させるメロディだなと思ったのですが、これは意図的ですか?

GEN そうです。ちょっと寄せています。あと「悪魔の城」というフレーズも、ジュディマリの「くじら12号」の歌詞から借りました。ジュディマリファンが、「mottö」のカバーを聴く流れでEPのほかの曲も聴いてくれたら、引っかかるかなと思って。

──「GATE」は、バンドのことを歌っている曲ですか?

GEN それ、取材でけっこう言われるんですけど……自分の中では一番意味があるようでないのがこの曲なんですよね。自分の中から自然に湧き出たイメージと語呂のよさを意識して書いたんですが、結局そういうことなのかもしれない。自分の人生を歌うっていうことはバンドを歌うということなので。

今年は自分たち発信で盛り上げたい

──今回ひさしぶりに新譜を作ったわけですが、それによってバンドのモチベーションに何か変化はありましたか?

GEN 変化ではないですが、今回はライブの合間で普通に制作ができたなという感覚があって。今まではライブと並行して制作するのに苦労してたんです。今回も、もちろん大変は大変でしたけど、活動のペースを変えずに、その中でメンバーやスタッフと建設的なやりとりをしながら制作ができたなと。

──では今後もマイペースに、作りたいものができたら作るという感じで。

GEN はい。

──「MOON」のリリースから2025年が始まりましたが、今年はどんな1年になりそうですか?

GEN 冒頭でも話したように、去年はお呼ばれが多かったので、今年はちゃんと自分たち発信で盛り上げて、周りを巻き込んでいきたいなと思っています。今回こういう直球な作品ができたので、音源で若手をビビらせつつ、後輩にナメられない活動をし続けたいなと思います。

KOUHEI 僕はおみくじで凶を引いたんで、今年は大人しくすると決めています(笑)。

GEN いいじゃん凶。人生で引いたこと1回もないし、実物を見たこともないからいつか引いてみたい(笑)。

04 Limited Sazabys

04 Limited Sazabys

公演情報

04 Limited Sazabys「MOON」

  • 2025年3月24日(月)神奈川県 KT Zepp Yokohama
  • 2025年3月27日(木)新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2025年3月30日(日)北海道 Zepp Sapporo
  • 2025年4月3日(木)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2025年4月4日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2025年4月6日(日)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2025年4月9日(水)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2025年4月10日(木)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
  • 2025年4月13日(日)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2025年4月16日(水)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2025年4月17日(木)愛知県 Zepp Nagoya

プロフィール

04 Limited Sazabys(フォーリミテッドサザビーズ)

2008年に愛知県名古屋市にて結成された、GEN(B, Vo)、HIROKAZ(G)、RYU-TA(G, Cho)、KOUHEI(Dr, Cho)によるロックバンド。2013年5月に発表した2ndミニアルバム「sonor」より日本語詞を多く取り入れ、楽曲の幅を広げる。メロディックパンクやギターロック、ラウドロックなど、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、2014年9月に1stシングル「YON」をリリース。2015年4月に1stフルアルバム「CAVU」を日本コロムビアから発売し、メジャーデビューを果たした。2016年から主催フェス「YON FES 2016」を開催している。2019年9月には埼玉・さいたまスーパーアリーナで単独公演「YON EXPO」を成功に収めた。2022年10月にアルバム「Harvest」、2023年10月にセルフカバーアルバム「Re-Birth」をリリースした。2025年1⽉29⽇にEP「MOON」を発売。3⽉から4月にかけてワンマンツアー「MOON tour 2025」を行い、6⽉21、22⽇には主催フェス「YON FES 2025」を開催する。