「ぼっち・ざ・ろっく!」ファンは優しい
──2024年のトピックスとしては、テレビアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」に登場するバンド・結束バンドに楽曲提供したことも挙げられると思います(参照:04 Limited Sazabys「ぼっち・ざ・ろっく!」結束バンドの新作EPに参加!伊地知虹夏へ曲提供)。楽曲提供の話が来たときはどう思いましたか?
GEN アニメを観ていたのでうれしかったですね。二つ返事でOKしました。
──詞曲ともに手がけた楽曲提供はこれが初めてだったと思いますが、制作はいかがでしたか?
GEN 女性シンガーへの提供だったからこそ、自分たちの曲を作るのとそんなに変わらない感覚で作れたなと。僕も歌のキーが高いので。
KOUHEI 作り方はいつも通りでしたね。テンポを少し下げてアレンジされるかなと思ったけど、提出したそのままだったし。
HIROKAZ ギターのフレーズも、あまり楽曲提供ということは意識せずに自分たちの曲を作るテンション感で考えました。
RYU-TA シンプルに「いい曲ができたな」と思いました。
──この楽曲提供の経験はバンドに何かいい影響をもたらしましたか?
GEN 自分たちに何か還元されたということはないですけど、「ぼっち・ざ・ろっく!」はたくさんのファンがいる作品で、それぞれ作品やキャラクターに対しての理想があるだろうから、僕らの音楽を簡単には認めてくれないんじゃないかと思っていたんです。でもSNSとかで反応を見ると、みんな曲を褒めてくれていたので、そこで手応えは感じましたね。
HIROKAZ 「ぼっち・ざ・ろっく!」のファンの皆さんが、本当に優しくて。うれしい感想をいっぱい書いてくれたりして。ありがたいなと思いました。
──好きな作品や好きなアーティストであることなど、いろいろと条件はあると思いますが、今後も楽曲提供はやっていきたい?
GEN そうですね。前より抵抗はないかもしれない。これまでにもいろいろな提供のお話をいただいてきましたけど、ほぼお断りしていたんですよ。でも今後はもうちょっと柔軟に考えてもいいのかなと、個人的には思っています。とりあえずハロルド作石先生の新作「THE BAND」がアニメ化されるときには絶対に主題歌をやりたい!
直球メロコアサウンドの「magnet」
──そんな2024年の活動を経て、新作EP「MOON」がリリースされました。2022年10月リリースのフルアルバム「Harvest」以来およそ2年半ぶりの新譜となりますが、その間、新作をリリースしてこなかったのには何か理由があるのでしょうか?
GEN いや。トリビュート作品にやたら参加していたし、それこそ「ぼっち・ざ・ろっく!」の楽曲提供もあったし、自分たちとしてはずっとレコーディングをしている感覚でした。
KOUHEI そもそもうちは制作が苦手なんですよ。
GEN ずっと制作をしているバンドはいっぱいいますけど、そういうバンドを見ていて「そんなに言いたいことが毎回毎回あるのかなあ」と思うんですよ。意味があるならいいと思うんです。「今、これが歌いたい」「今、こういうアプローチをやりたいんだ」とか。だけど、そうじゃなくて曲を作ることがルーチンになっている人が周りに多い気がして。メジャーレーベルに所属するというのはそういうことだと思うんですけど、僕はそれがすごく嫌で。無理やり意味を捻り出すことはしたくないので、これくらいのペースでやっていきたいですね。
──つまり、作りたいものができたタイミングが今だったと。
GEN はい。
──1曲目の「magnet」は去年の「YON FES 2024」で初披露されました(参照:仲間とファンに恵まれたフォーリミ、コラボあり未完成の新曲披露ありの「YON FES」大団円)。04 Limited Sazabysがリリースの決まっていない状態で新曲を演奏することは珍しいので驚きました。
GEN この曲、実は「ぼっち・ざ・ろっく!」のタイミングで一緒に作っていたんですよ。
──そうだったんですね。「YON FES」での披露時にもGENさんが話していましたが、改めてこの曲に込めた思いを聞かせてください。
GEN 僕は友達や知り合いが多いほうで、そうすると毎年誰かしらの訃報を聞くことになるんです。そういうときに感じるやりきれない気持ちを、自分の中でどう消化していくかということを歌いました。オケは自分たちの一番得意なメロコアサウンドなので、昔から聴いてくれているファンの人たちには「これこれ!」と思ってもらえるんじゃないかなと。
──得意なサウンドにしようと思って作り始めたんですか?
KOUHEI はい、そうですね。でも全体的に直球すぎてもなと思って、冒頭はおしゃれな感じにしたいと考えていました。
──HIROKAZさん、RYU-TAさんはこの曲を初めて聴いたときにどう思いましたか?
RYU-TA イントロがおしゃれでいいなと思いました。サビへの入りもカッコいいし。直球ではありますけど、逆に新鮮に感じてもらえるのかなと。
HIROKAZ メロディに哀愁があって、いわゆるメロコアのいいところが詰まっているなと思いました。でも新たに挑戦した部分もあって。サビのキメは、以前の僕たちだったら「ちょっと狙いすぎかな」と思って入れてなかったと思うんですよ。
GEN メロコアバンドがやりそうすぎるから。
HIROKAZ そうそう、だからこそ避けてきた。それをやれるようになったのは、大人になったからかなと思います。
GEN それこそキメもそうですし、全体的によりメロディックパンクの純度を上げました。けっこう前からみんなで「次は硬派なメロディックハードコア作品にしたいね」という話をしていたんです。とはいえ硬派になりすぎないように、カバー曲を入れたり、ジャケをポップにしたりして、手に取りやすいような要素も入れておこうと思っていたら……結局どの曲もきらめきのあるポップなサウンドになっちゃいました。
──メロディックパンク、メロディックハードコアの作品を作りたいと思ったのはどうしてですか?
GEN 「Re-Birth」で自分たちの曲をアコースティックにアレンジしたり、「Harvest」で歌モノっぽいことをやったり、最近はいろいろと挑戦をしてきていたので、次は一番得意なサウンドで勝負してみたくなったんです。
KOUHEI その方向性が決まっていなかったら「Kick it」は作っていなかったと思います。
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わかりやすいサウンドの曲に抵抗がなくなった