誌面には「なぜ出発点に漫才ではなく落語を選んだのか」「『ひょうきん族』を振り返って」「タモリさんのすごさ」「自身の演技について」「2008年の『27時間テレビ』」など興味深い話題が40ページ以上にわたって掲載。お笑いナタリーでは今回「本人」とのコラボ企画として、インタビューの一部を抜粋して紹介する。永久保存版ともいえる貴重なインタビューを通して、お笑い界の未来を考えてみよう。
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自分の発言が活字となって残ることに、これまでずっと慎重だった明石家さんまさん。そんなさんまさんと本誌編集長は、もちろんこれがまったくの初対面。それなのに今回は、これまでのキャリアを振り返りつつ「笑い」そして「テレビ」について、たっぷり時間をさいて話を聞かせてくださるという。これは本当に貴重な機会、永久保存版の記録です。可能なかぎり無修正・無編集のドキュメントでお届けします――。
取材・構成=北尾修一(「本人」編集長) 写真=鈴木心
師匠という存在
―――もともとさんまさんって、小さい頃からテレビをよく観てました?
さんま:もちろんもちろん。今の五十歳前後の人がテレビ全盛期の、一番いいテレビを観てきてると思うんですけど。
―――たとえばどんな番組ですか?
さんま:いや、というより、テレビというものそのものに驚きを感じて、テレビの中で誰かが歌う、誰かが喋るということに感動しながら、テレビのバラエティ番組が進化していく歴史を見てこられたっていう。だから、もともとテレビっ子だから、今でもテレビを大切に思いすぎるというか、若手がテレビで手を抜いてるとすごく腹が立つんです。「テレビっていうのはおまえらが思ってるよりも全然すごいものなんやから」「そんなテレビに出てるんやから、もっと頑張らなあかん」っていう。時代が違うから仕方がないのでしょうけど、産まれた時からカラーテレビがある子供たちと、テレビがない時代の記憶があって、それが白黒からカラーに変わっていく過程を知っている子供たちは、やっぱり全然違うと思いますね。
―――僕が最初にテレビでさんまさんを観たのは「ヤングおー!おー!」(毎日放送)で、後に一世を風靡する“小林繁投手の形態模写”だったんです。落語家としてでなく、形態模写の人としてテレビに出演することになった理由は?
さんま:あれはね、たしかなんば花月で前説をやらせていただいていたときに、(笑福亭)仁鶴師匠がいつまで経っても到着しないことがあったんです。雪で新幹線が止まってるとかで。仕方ないから高校時代のネタをやって、漫談をやって、それでも仁鶴師匠が入ってこない、そうなるとネタがないんです。それで「困ったな」と思って、仕方なく高校のサッカー部部室でやってた形態模写をやったんです。サッカー部の同僚は笑ってくれてましたけど、でも、こんな場で形態模写がウケるなんて夢にも思わなかった。それまで誰もやったことがないことだったんで。絶対ウケないと思ったけど、仁鶴師匠が来るまでつながなくちゃいけないという責任感だけでやったら、とんでもなくウケたんですよ。
―――へえーっ。
さんま:いや、もう驚きました。みんな形態模写という芸を見るのが初めてやから、すごかったですよ。それで巨人の選手をやったり相撲取りをやったりしたんですけど、どれも思いのほかウケて、次から僕を観にくるお客さんが現れて、それがテレビ出演につながっていくんです。それで十九歳の時に「小川宏ショー」みたいなバラエティ番組に形態模写のネタで出るようになって、「ヤングおー!おー!」はその中のひとつですよ。
「ヤングおー!おー!」ではやっぱり小林投手と掛布選手がウケて、そのウケてるところをモニターで見ていた(桂)三枝さんが「もうひとり(レギュラー出演者を)増やすならさんまだ」と言ってくださって、レギュラーになった。それが二十一歳。
―――最初に形態模写をやったとき、師匠に怒られたりしませんでした? 「落語家の弟子なのに~」っていうような。
さんま:あ、ウチの師匠は全然OKなんですよ。でも、ウチの師匠が他の師匠たちからイヤミを言われたりはしたみたいですね。
―――「おまえのところの弟子はどうなってるんだ」というような……?
さんま:ええ。僕も若かったですし、「テレビに出て勘違いしてる」とかいうのはありましたですね。
―――あのー、さんまさんの師匠の笑福亭松之助さんって、八十歳を越えてらっしゃいますけど、今ブログやってますよね?
さんま:はいはい(笑)。
―――そのブログの内容がまた軽いというか飄々としているというか、さんまさんとどこか似てる気がしたんですけど。
さんま:いや、それはすごく嬉しい。それで育ってきたんでね。「価値観が合う」っていう言い方は師匠にたいへん失礼なんですけど、師匠がやることでものすごく感動することもいまだにありますし。
―――ちなみに昨日のブログの出だしは、「今日新しい水着を買いました」でした。
さんま:クワー(爆笑)。
―――グラビア・アイドルのブログかと思いました。
さんま:そういう話を聞くと、俺の選ぶ目は間違いなかったと思いますね。ウチの師匠、僕が売れ出した頃に、袴に「さんまの師匠」って書いて高座に出てたんですよ。
―――ホント、シャレっぽい方ですね(笑)。
さんま:「なんちゅう師匠や」ってみんなが笑ってらっしゃったり。一度、フジテレビの「バースデイ」という番組があって、番組の最後にゲストを泣かすコーナーがあるんですよ。で、スタッフが僕を泣かそうとして、師匠からの手紙を読む企画を考えたんです。で、最後に「笑福亭松之助師匠の登場です!」って言われて、隠しゲストやったから僕も「えっ!?」って驚いたんですけど、そしたら師匠、踊りながら出てきはったんですよ。
―――(笑)。
さんま:泣かせるはずのコーナーが、それで一瞬にして台無しになって。手紙の内容もホント淡泊で「俺もテレビに出せ」とかいうような(笑)。そのときも僕、感動しましたね。
タモリさんの凄さ
―――ちょうど今「笑っていいとも!」の話が出たんで、松尾さんからの二つ目の質問です。「先日『笑っていいとも!』でタモリさんとのかけあいを久々に見てやっぱり面白かったのですが、さんまさんにとってタモリさんとはどういう存在ですか?」。
さんま:あ、だから、タモリさんって後輩なんですよ。さっきの形態模写の話と繋がりますけど……。
―――あ、そっか。
さんま:はい。タモリさんが博多のボウリング場の支配人をやっているとき、僕が「11PM」で形態模写をやっているのを見て、「あ、こういう芸があるんだ」ってことでイグアナとかの形態模写をやり始めたという。それはタモリさんから昔聞いたことがあります。「おまえのこと観てたよバカヤロー」って。僕がテレビに出始めた頃、タモリさんはまだサラリーマンでしたから。
だからね、タモリさんがどういう存在かというと、我々のようなお笑い芸人からすると信じられない切り替えの早さ。タモリさんは演芸場にも出てらっしゃらないし、そういう意味では畑違いのところがありますから。普通、前のコーナーがウケないと我々お笑い芸人は引きずるんですよ。次のコーナーに入った時も汗かいて、「あかんかったなー」って取り返そうとするんですけど、タモリさんは取り返そうとしない(笑)。
―――はあ。
さんま:あのドライさは凄い。あの人しか「いいとも!」はできないと思います。あの切り替えの早さと引きずらない凄さ。でも……俺は引きずりたい。
―――なるほど(笑)。
さんま:僕たちは引きずりたいし、背中にイヤな汗をかきたい。それで「なんとかしよう」と思って挽回したときの嬉しさもあるし。ただ、タモリさんには「さんまだから仕方ねえな」とか、そういうポジションにいつも置いていただいていて。それは感謝してます。
―――昔「笑っていいとも!」で、さんまさんとタモリさんが延々雑談をするだけのコーナーがありましたけど、ああいう企画がテレビで成立する、ということを証明したのは、さんまさんとタモリさんが最初ですよね?
さんま:はい、ウチの師匠がよく口癖で、「雑談を芸にできたら一流や」とおっしゃってたんです。でも、雑談コーナーをやるって言ったときに、フジテレビならびに「いいとも!」スタッフは大反対でしたからね。
―――まあ、前例がないので想像がつかないですもんね。
さんま:「テレビの歴史上ないことだからこそやらしてくれ」って言って。それ以前から「いいとも!」の後説でタモリさんと雑談してたんです。で、それがウケてたから「絶対いける」って分かってたんですけど、当時のテレビの常識では「成立はしても視聴率は取れないだろう」ってことだったんだと思います。今振り返ると恐ろしいですよ。毎週十五分もようやってたなって。僕もあそこでひとつステップアップできたし、やらしていただいたディレクターに感謝ですね。
―――ここで、さんまさんのテレビでの話し言葉についてうかがいたいんですけど。僕も関西出身だから分かるんですが、さんまさんのテレビでの話し言葉って、いわゆる関西弁とも違いますよね。関西弁っぽいんだけど、東北地方の年配の人が聞いてもちゃんと伝わるようになっている。
さんま:そうですね。どうしても伝わらない言葉があるんで、それは排除していかなきゃ仕方がなかったんです。それで出来上がったのが、この東京風味の大阪弁で。
―――さんまさんって、そうやって「テレビにのせる言葉」に関して、ずいぶん研究をされている方だと僕は思っていて。これは以前テレビでおっしゃっていましたけど「エッチ」「ひとりエッチ」という言葉も、もともとはさんまさんが発明されたという……。
さんま:発明というか偶然ですけれども、はい。「天然」もそうで、今では普通の言葉になってますけど、あれは……(詳細は本日発売の「本人」vol.11をご覧ください)。
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- 本人
- 笑福亭松之助のブログ 楽悟家 松ちゃん「年令なし記」: 7月20日
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nightcap @f2020L2020
さんま「おれたちは(失敗)(反省)を引き摺りたい。背中にイヤな汗かきたい。なのに、、タモリさんときたら、、」
さんまさんは「あのドライさは、真似できない!」といったが、
「ドライさ」ではなくて、ただただ
「泰然自若」なだけだとおもう
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