「さんまのまんま」(カンテレ・フジテレビ系)の40周年特番「さんまのまんま40周年夏SP」が7月25日(金)に放送される。これを記念して、40年前にこの番組を立ち上げた初代プロデューサー・小田切正明氏、おなじみのキャラクター「まんまちゃん」を操演している岡崎薫氏、構成作家・黒木一由氏が一同に集結。先日都内スタジオで行われた特番収録を前に、お笑いナタリーのインタビュー取材に応じた。
番組立ち上げから知る3人がこのインタビューで語ったのは、さんまのすごさ、さんまとスタッフとの関係性、「まんまちゃん」としての奮闘ぶり、40年で一番の思い出など。語り尽くせない番組の歴史を和気あいあいと振り返ってもらう貴重な機会となった。なお「さんまのまんま40周年夏SP」には、
小田切正明(初代プロデューサー)、岡崎薫(まんまちゃん)、黒木一由(構成作家)コメント
──「さんまのまんま」の40年を振り返っての感想を、語り尽くせないとは思いますが、お聞かせください。
小田切:40年前に僕がこの番組を立ち上げました。さんまはそのとき「ゴールデンタイムにトーク番組を毎週やるのはありえない。だからやりましょう」と喜んでくれたんです。初回収録の日、僕はさんまに「君が嫌になったらすぐやめる」と言ったんですけど、40年続いてしまった(笑)。正直ビックリしています。
──ここまで長く続いた要因は?
小田切:さんまが一番さんまらしくいられる番組なんです。さんまのことをみんな「お笑い怪獣」と言うけど、僕に言わせると「おしゃべり怪獣」。おしゃべりで構成からオチまで見事に何もかも作っていく。どうしたらそういう空気を作っていけるか、さんまが乗ってくれるか、ということを考えるのが僕ら演出サイドの仕事かなと。
──なるほど。
小田切:あと、うちの番組は「テロップは入れるな」ということで極力減らしています。YouTubeではテロップが流行っているかも知れないけど、説明過多なわけですし。「ホンマのしゃべりはこういうことだ」と僕はいちファンとして思っています。
──岡崎さんは「まんまちゃん」を続けてらっしゃいますね。
岡崎:番組開始当時、バラエティ番組にキャラクターが出てくるような文化はあまりなくて、「これはオモロいな」と思ってやらせてもらったのが最初です。相手がさんまさんですし。「番組の終わりに、2人でコソッと思い出話を語るようなキャラクターを考えて」と言われました。決めごとは本当になく、その中で今のまんまが生まれてきたんです。このキャラクターが40年続いたのは驚異的やし、ありがたかったなとホンマに思います。
──黒木さんは構成作家として携わっていらっしゃいます。
黒木:僕が最初に小田切さんから言われたのは「ドラマみたいなトーク番組がやりたい」と。当時いろんな番組でコントを書いていて、さんまさんとはラジオで親しくさせてもらっていました。「さんまのまんま」では、いろんなことを教えてもらいました。いつも新鮮でしたよ。毎回ハラハラドキドキ。さんまさんは、お笑いに対して厳しい人ですから。今でも思い出すのは「最近面白い嘘つかないじゃん」と楽屋で言われたこと。ああいう言葉も何かのシグナルだったのかなと。非常に刺激的な40年間でした。
小田切:台本がなく自由に遊べるから、さんちゃんは楽しかったんやろなと思うね。ただ、今は収録中にタバコを吸ってもアカンというご時世で。あの怪獣がもうちょっと暴れてくれるといいんだけど。
──小田切さんからは先ほど「おしゃべり怪獣」という言葉も出ましたが、岡崎さんと黒木さんの思うさんまさんのすごさは?
黒木:さんまさんは一瞬にして出る言葉、選ぶ言葉がやっぱり天才ですよ。
岡崎:未だにすごい!
黒木:笑わせる例えの言葉が、あれほどすごい人はいない。
小田切:スポーツから芸能からなんでも知ってる。ヨーロッパのサッカーを全部観てるし、映画の名ゼリフも覚えてる。記憶力と好奇心はすごいな。
岡崎:どっから何が飛んでくるかわからへんからこっち緊張しますよ。
黒木:最初の頃は、収録の1週間前にタレントさんのプロフィールとかいろんなことをさんまさんの事務所にFAXしてた。それから「いらない」と言ってきたんです。
小田切:自分の興味のあることだけは調べてきてるんだろうね。
黒木:40年やってきて、さんまさんの頭の中は常に新しい面白いことがありますね。
岡崎:あと、さんまさんは想像力がすごいですね。隣同士でやらせてもらっていて、まんまの“外”に対して話しかけずに、“中”に話しかけてくる(笑)。「ここで踊れ!」とか「行けー!」とか。こっちの表情を理解しているかのようで、「こいつ困るだろうな」とか「こんなこと考えとんな」みたいなことがバレてしまう。それが面白いから続いたというのもあるでしょうね。
──「まんまちゃん」というキャラクター自体が長年愛され続けている理由については、どう思われますか?
岡崎:従来のキャラクターより、ちょっと“はみ出してる”イメージでやりたかったんですよ。キャラクターがボケれるし、ツッコめる、みたいな。笑いが獲れる1つのジャンルみたいなものを目指していた部分もあったので。
黒木:番組のキャラクターグッズも今は当たり前にあるけど、そういうのにこだわったのは、これが最初のような気がします。
──「まんまちゃん」は、しゃべらないのも特徴の1つだと思います。その難しさや演じる上でのポイントは?
岡崎:「しゃべったらアカン」というのは一応あるんですけど、さんまさんは「わかる」んですよ。そこが、さっき言うた「想像力」で、意図を汲んでくれる。僕が何かに迷っていたらツッコんでくれるし、何かにハマったら一緒に笑ろてくれる。
小田切:“相方”やねんな。
岡崎:そのあたりの持っていき方には「操られているな」と感じます。「お前アホか」と言われるのは褒め言葉。アホなことばっかりやって、よう怒られてました(笑)。
──「アホなこと」で思い出に残っていることはありますか?
岡崎:オチも用意してないのにネタを振ってしもたりしたときに「お前、どないすねん、それ」と言われたり、「今のなんやったんや。はい、終わり」ってバンって収録が終わったりとか(笑)。でも、そのプレッシャーが意外と快感なんですよね。
小田切:最近は「岡崎」って呼ばれとるやないか(笑)。
岡崎:普段まんまちゃんはしゃべらないんですけど、最近は1つのネタとして、あまりにも「お前しゃべれ」って言うから、そういうときはボソッとしゃべったりするんです(笑)。声出せへんのも逆に怒られるなと思って。
──では、40年の中で皆さんの思い出に一番残っていることはなんでしょうか?
黒木:「これがプロだな」と思ったのは長渕剛さんがゲストで出たとき。最後に「とんぼ」をさんまさんと長渕さんが2人で肩を組んで歌うんです。あのときのさんまさんは、さすがにすごいなと思いました。もう1人が、初めて出てくれたときの樹木希林さん。トークの中身がすごかった。その2人の回が僕は印象に残っています。
岡崎:僕は無我夢中でやったんでホンマに覚えてないんです。さっき言ったようなやりとりは毎回していますが、必死なので(笑)。番組以外でほのぼのとした話を言うと、さんまさんが結婚して、お祝いをしたときのことですね。そのあと郵送で大竹しのぶさんから直筆の御礼状が来たのが衝撃的でした。
──かなり番外編的なお話ですが、それは驚きですね。
小田切:レギュラーで2本撮りをしているときに、1本目でさんまが酒を飲んだんですよ。当時はまだ収録中に飲んでいたので。そしたら酔ってしまって「もう無理ですわ。できません」と言われて。2本目のゲストが武田鉄矢さんで、「仕切ってもらえませんか?」とお願いしました。武田さんはうまいこと回してくれましたね。あと、さんまは年上の人を扱うのがうまいです。ツッコめるし。
岡崎:手玉に取りはりますよね。
小田切:さんまをビビらすような年上の人が少なくなってきたので、そこが今後のテーマかな。
──では最後に、今後も続く「さんまのまんま」への願いやご自身の思いを最後に教えてください。
岡崎:「続けばいいな」というのが本音です。
小田切:さんまが続けたいと言ってくれることは期待したいけども、僕から「続けてくれ」とはよう言わんね。
岡崎:さんまさんは「俺がやめたらみんな困るやろ。仕事減るから」みたいなところがありますよね。
小田切:スタッフの仕事のことをすごく思いやる。まあ優しいヤツです。
黒木:続けるためにはなんの準備が一番大事かと言ったら、やっぱり健康しかないですね。この歳になるとね。
小田切:「75歳からがキツいぞ」と。僕もそうだったし。「さんまさんの健康だけを祈ります」ということで、きれいに話を締めますか。
岡崎:そしたら一言返ってくるよ。「ウソつけ!」って(笑)。
さんまのまんま40周年夏SP
カンテレ・フジテレビ系 2025年7月25日(金)21:00~22:52
<出演者>
ゲスト:笑福亭鶴瓶 / サンドウィッチマン /
お笑いナタリー @owarai_natalie
「さんまのまんま」40周年記念インタビュー 「まんまちゃん」はさんまからのプレッシャーが快感(コメントあり)
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