「マーメイド・イン・パリ」マリリン・リマ インタビュー|恋を知らない人魚と恋心を捨てた男が惹かれ合う──ビターな大人のおとぎ話

恋を知らない人魚と恋心を捨てた男が惹かれ合う──。幻想的なラブストーリー「マーメイド・イン・パリ」が2月11日に公開される。

マチアス・マルジウが監督を務めた本作の舞台は、記録的な大雨により浸水してしまったフランスのパリ。老舗のバーでパフォーマーとして働くガスパールをニコラ・デュヴォシェル、美しい歌声で男性を虜にし命を奪ってきた人魚ルラをマリリン・リマが演じた。

映画ナタリーでは本作の公開を記念し、リマにインタビューを実施。撮影時の苦労や、人魚が恋に落ちた理由を語ってもらった。また3つのポイントから作品の魅力を紐解くコラムも掲載している。

取材・文 / 金子恭未子

マリリン・リマ インタビュー

人魚の役をオファーされるなんて本当にレア

──マリリンさんは、たった1人生き残った人魚を演じています。オファーが来たときの心境を教えていただけますか?

「マーメイド・イン・パリ」
「マーメイド・イン・パリ」

とってもうれしかったです! だって、人魚の役をオファーされるなんて本当にレアなことでしょ? 褒められたような、なんかくすぐったい感じ。マチアス・マルジウ監督が書いた小説も読んでいましたし、彼が生み出す世界観に魅了されていたんです。だから一緒にお仕事ができることになってとっても楽しみでした。

──役作りでまず一番最初にしたことはなんですか?

尾びれに慣れることですね。ジャストフィットのものをオーダーメイドで作ってもらったんですが、それを身に付けて2カ月間演技をしなきゃならなかった。だんだん慣れましたが、尾びれを付けたまま浴槽に座っていると腰が痛くなってくるんです。お医者さんに見せたら「どんな負担を掛けたらこんな状態になるんだ!?」って(笑)。

──あのキュートなバスルームでそんな苦労が……。

大変だったけど、周りのみんながフォローしてくれたので撮影はうまくいきました。ちなみに尾びれは今、私の家にあるんです。

──マリリンさんのInstagramを拝見したのですが、海の写真を数多く投稿されていますね。

バスク地方に住んでいるのですが、家から5分の場所に海があります。スキューバダイビングも普段から楽しんでいるんです。この作品に参加する前から海が大好きで、海と関係が深い暮らしをしているので、人魚役には偶然ではないものを感じていますね。

人間は恋に落ちるのがとっても好き

──次第に惹かれ合う2人ですが、ルラは海に帰らなければいけない。やきもきしながら恋の行く末を見守りました。

この映画はファンタジーの詰まった作品ですが、現実そのものを反映していると思うんです。障害のない恋や愛なんてない。相手と喧嘩してぶつかることもあれば、失恋することもあるし、ときには手の届かない人に恋することだってある。誰もが壁にぶつかりながら恋愛をしています。映画で描かれるのも障害のある恋ばかり。そして、私たちはそういうものを観るのが大好きですよね。ラストはどうなるのかな? ハッピーエンドになるのかな?って。

──まさに「マーメイド・イン・パリ」を観ている観客はそのように思うと思います。

人間は恋に落ちるのがとっても好きだし、恋愛は人生そのもの。誰もが運命の人を探している。失恋して苦しい思いをしても、また「恋をしよう!」と思ってしまう。そういう生身の人間の心情が物語の中で描かれているんです。

──ガスパールとルラはお互いのどこに惹かれたと思いますか?

「マーメイド・イン・パリ」

ガスパールはルラと出会う前に、数多くの失恋をして、悲しいものを背負っている男性です。だから次に恋に落ちるときには、唯一無二で、今までにない新しいものを求めていた。例外的で意外性のある相手じゃないと、傷付いた彼の恋の炎は点火できなかったと思うんです。まさにルラは彼が求めていた相手で、だからこそ恋の炎は燃え上がりました。ルラにとってもガスパールは今までに出会った男性とはまったく違う、例外的な相手ですよね。彼女の世話を焼いてくれるし、彼女を傷付けようとしない最初の男性だった。しかも彼は歌手です。だから彼女は恋に落ちたんだと思います。

──ガスパールを演じたニコラ・デュヴォシェルさんとは共演シーンも多く、たくさんの時間を一緒に過ごされたと思います。

私はデビューしたばかりの新人女優ですから、キャリアのあるベテラン俳優さんと演技をすることに最初は不安があったんです。ドキドキしたし、圧倒もされました。でもニコラがリラックスできるようにケアしてくれたので、すごくスムーズに演技ができたんです。2人のシーンは常にディスカッションして作り上げていきました。ニコラだけじゃなく、スタッフもキャストもみんな明るい人たちで雰囲気はとてもよかった。疲れて朝起きたくないなんて日もあったけど、いったん現場に入ると楽しい時間を過ごせました。

──現場の楽しい雰囲気も作品に投影されていると思います。最後にこの作品に期待している映画ファンにメッセージをお願いします。

この作品を観たらきっと幸せな気持ちになります! フランスでは観終わった人が自然と笑顔になったと聞いているんです。今は新型コロナウイルスの影響で大変な時期ですが、この映画の中で描かれる人の優しさや温かみ、そして夢のような世界にみんなが癒やされたんだと思います。愛とファンタジーがたっぷり詰まっていて、現実世界を忘れて、子供に戻ったような気持ちになれる物語です。お母さんに優しくなでてもらうようなそんな作品なんです。ぜひ観てくださいね。

マリリン・リマ
1995年9月28日生まれ、フランス出身。演技未経験ながら2015年に「青い欲動」のヒロインに抜擢されスクリーンデビュー。フランスの人気ドラマシリーズ「スカム・フランス」や、短編映画、ミュージックビデオなどに出演している。