「ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから」|30歳を迎えた前田公輝が考える恋のこと、愛のこと

「あしたは最高のはじまり」の監督ユーゴ・ジェランが、「エール!」の製作陣と再タッグを組んだ「ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから」が、5月7日に公開される。本作は、もう1つの世界に迷い込んだ主人公ラファエルが、“本当の愛”に向き合うこととなるファンタジックラブストーリー。フランスの映画サイト「AlloCine」では、2010年代公開のロマンティックコメディ映画ランキングにおいて「アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜」などを抑えて1位に輝いた。

映画ナタリーの特集では、「ひぐらしのなく頃に」や「HiGH&LOW」シリーズで知られる俳優・前田公輝に本作を鑑賞してもらった。劇中の主人公と同様に、映画を通して“恋と愛”の違いを考えさせられたという前田。取材当日に30歳の誕生日を迎えた彼が、生き方や人間関係の変化についても打ち明けてくれた。「女性をキュンとさせる演技も磨いていきたい」と話す前田が、恋愛映画で演じてみたい理想のシチュエーションについて語る場面も。

取材・文 / 浅見みなほ 撮影 / 曽我美芽 ヘアメイク / 松田蓉子

まさにキュンキュンしました!

──前田さんは以前インタビューで「今後は女性をキュンキュンさせられるような演技も磨いていきたい」とおっしゃっていましたよね。この「ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから」は大人の女性がキュンとできるようなラブストーリーなので、そんな前田さんにぜひ観ていただけたらと思い、この企画をオファーさせていただきました。

前田公輝

ありがとうございます。「PRINCE OF LEGEND」の恋愛ゲームアプリのセリフを収録したとき、自分にとって未知の領域だと思ったんですよね。

──「ラブ・セカンド・サイト」のような恋愛映画やフランス映画は、普段からご覧になりますか?

ディズニーのラブストーリーは最近ハマっています。フランス映画で言えば「最強のふたり」が好きですが、ほかはあまり観たことがなくて。今回「ラブ・セカンド・サイト」を観て、まさにキュンキュンしました!

男って「1人で生きている」と思っちゃうんですかね

──本作は作家である主人公ラファエルの、小説の中の世界から始まります。冒頭シーンはSFアクションのようなので意外ですよね。

「ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから」より、ラファエル(左)とオリヴィア(右)。

最初はアクション映画なのかなとまんまとだまされました。それから学生時代のラファエルとオリヴィアが出会って、ベンチで息を切らして恋に落ちて……という流れはもう最高です。女性側からの突然のキスっていいですよね! あのシーン、お芝居としても難しいと思うんです(参照:バレンタイン記念「ラブ・セカンド・サイト」交際に発展した俳優2人のキスシーン公開)。オリヴィアは積極的ではないタイプの女性だから色気が出すぎてもいけないし、勢いがありすぎるとお客さんが引いちゃうかもしれない。すごく自然に、頬でのキスの延長で唇に……というあのシーンは、「うはー!」とすごく胸キュンしました(笑)。2人の幸せな物語が続くのかと思ったら、そのあとラファエルがもう1つの世界に行ってしまってからのほうがメインなんですよね。早くもとの世界に戻ってくれ、と祈りながら観ていました。

──オリヴィアと喧嘩したことをきっかけに、ラファエルはもう1つの世界に迷い込んでしまいます。喧嘩のシーンは、オリヴィア目線で観ると相当やきもきするのではと思いますが……。

「ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから」より、ラファエル。

喧嘩のシーンでラファエルが物に当たるじゃないですか。あれは最低!(笑) 観ていて「それはよくない!」って言いましたもん。オリヴィアはただ寂しくて、自分を認めてほしいだけなのに! 小説を仕上げられたのもオリヴィアのおかげなのに、ラファエルはなぜそれを忘れる!? 亭主関白というか「俺が支えてやってるんだ」と思っているようでしたし。なんなんですかね、ああなると男って「自分1人で生きている」と思っちゃうんですかね。

──おっしゃる通り、ラファエルの子供っぽさが表れているシーンでした。そしてもう1つの世界に行ったラファエルは、売れっ子作家だったはずの自分がしがない中学教師になっていることに気付きます。オリヴィアとの結婚もなかったことになっているばかりか、彼女が自分を知らないという状況に立たされますね。

ラファエルはたくさんのちょっとしたズレから状況を理解していきますよね。そのリアルな表現に見入ってしまって、一層この映画に引き込まれました。驚きと戸惑いを積み重ねる中、取り繕おうとしているお芝居がリアルですごかったです。たまにラブコメ作品で、人と会話している最中に急に後ろを向いて、心の声を叫ぶ演出があるじゃないですか。この映画ではそれをやっていないのに、表情を観ているだけで心の声が聞こえてくるようで、素晴らしかったです。

愛は1人では生まれないもの、恋は1人でもできるもの

──自分本位だったラファエルは、もう1つの世界で少しずつ大人になっていきます。

前田公輝

ある決断をしたラファエルが、オリヴィアに向けてメッセージを書くんですが……僕、最初はその言葉を選んだ理由が理解できなかったんです。自分だったらかっこつけたことを書いちゃいそうな場面ですが、相手のことを思えば、感謝の気持ちを伝えるだけでいいんだなって。今後恋愛するときの参考にしようと思いました(笑)。今まで自分がやってきたことって、結局相手のためではなくて自分のためだったのかもしれないと振り返りましたね。

──この映画のテーマはまさに、自分の幸せのために動いていたラファエルが、相手の幸せを願う“本当の愛”に気付くという部分にありました。前田さんは、恋と愛の違いをどのように捉えていますか?

難しいですよね。「愛は永遠」とよく言いますけど、自分の思う「永遠」が相手に伝わっていなかったら一方的なもので終わってしまいますし。やっぱり愛は1人では生まれないものだし、求めずに思い合う無償の気持ちだと思います。片思いのように、恋は1人でもできるものですけど。

──前田さんは本日30歳を迎えられましたが(※このインタビューは誕生日である4月3日に実施)、大人になるにつれて恋愛観は変化しましたか?

前田公輝

僕、よく友達に「恋愛観が高校生みたいだね」って言われるんですよ(笑)。告白は絶対に自分からしたいし、それまでは手もつなげない。相手を大事にしたいから、これだけは曲げられないんです。それにデートのプランは絶対に自分で立てたいし、夜景やイルミネーションも大好きだし、サプライズも好きです(照笑)。

──ロマンティストなんですね。この映画でラファエルたちは、同じ瞬間に気絶するという奇跡を経て恋に落ちます。前田さんの理想の出会い方を挙げるとしたら?

理想は奇跡の連続ですね。これは一昨日くらいにあった話で、恋愛に発展したわけでもなく、後半はただの妄想なんですけど……ミュージカルの公演を控えているので、最近体力作りのために毎日ジョギングをしているんです。走っている最中、印象的な格好をした女性と、6km圏内で2回すれ違ったんですよ。人がいないコースを狙って走っているので、そういう偶然は面白いなと思って。その後その人に会うことはなかったんですが、もし直後にコンビニで同じレジに並んだり、1週間後に同じエレベーターに乗ったりしたら、気になっちゃうかもしれない(笑)。誰とでも、いつでも連絡を取れる時代だから、スマホなしで偶然会っちゃうような奇跡の連続が起きたら素敵だなと思います。まあ好きになった相手なら「これ運命かも!」って勝手に思い込んじゃうこともありそうですが(笑)。