原田知世、田中圭らが出演した「あなたの番です 劇場版」のBlu-ray / DVDが5月25日に発売された。
マンションでの“交換殺人ゲーム”を描いたドラマとは異なる世界線を舞台にした本作。手塚菜奈と翔太の幸せいっぱいのウェディングパーティが一変、逃げ場のないクルーズ船内で連続殺人事件が発生する。菜奈役の原田、翔太役の田中に加え、黒島沙和役の西野七瀬や二階堂忍役の横浜流星らドラマ版キャストが再集結。新たに門脇麦が謎の女・浦辺優に扮した。企画・原案は秋元康、監督は佐久間紀佳が担当した。
映画ナタリーではソフト発売を記念し、ドラマに引き続き劇場版のプロデューサーを務めた鈴間広枝にインタビューを実施。制作の舞台裏、“あな番”ブームの要因を語ってもらった。また本特集では、劇場版の印象的なシーンをモチーフにした、イラストレーター・松井晴美による描き下ろしイラストコラムも掲載している。
取材・文 / 小宮駿貴イラスト / 松井晴美
復習の番です
~ドラマ2クールをおさらい~
2019年に日本テレビ系で2クールにわたり放送されたドラマ「あなたの番です」。東京都内のマンション“キウンクエ蔵前”に引っ越してきた新婚の菜奈と翔太。荷解きもそのままに住民会に参加した菜奈は、管理人の「あんた……私のこと殺したい?」という言葉から話が膨らんでしまった“交換殺人ゲーム”に巻き込まれてしまう。マンションではその日から何者かによる連続殺人が発生し、住人たちの殺意や恐怖が交錯する中、菜奈を守ろうと翔太が謎解きに立ち上がる。
回を追うごとに明らかになっていく住人たちの関係性、過去、そして愛する者を失った人物による復讐心が複雑に絡み合う本作。放送当時、SNSやYouTubeではストーリーにちりばめられた伏線から誰が黒幕かを探る“考察”が盛り上がり、Twitterの世界トレンド1位を5度獲得するなど“あな番ブーム”が日本中を席巻した。もしもあの日“交換殺人ゲーム”が始まらなかったら……? 住民会に菜奈ではなく翔太が参加していたら……? 「あなたの番です 劇場版」ではドラマとは違う新たな結末があなたを待っている。
イラストコラムの番です
~松井晴美が劇場版の印象的なシーンを描き下ろし!~
プロフィール
松井晴美(マツイハルミ)
書籍、雑誌、広告、キャラクターなどを手がけるイラストレーター。水彩画や鉛筆タッチのテイストを得意としている。
プロデューサーの番です
~鈴間広枝が明かす制作の裏側とは~
──今回の劇場版について、“あな番”ファンからどのような反響がありましたか?
映画化発表の際にすごく盛り上がっていただいて、本当にホッとした記憶があります。連ドラが終わってから1年以内の映画化が多いと思うのですが、今回は発表の時点で1年半くらい経っているんです。「あなたの番です」が忘れられているんじゃないかとドキドキしていました(笑)。情報解禁日になったタイミングの午前0時に公式Twitterで匂わせ投稿をしたんです。「明日解禁だね」「ざわざわしてるね」「緊張して寝れない!」と田中圭さんとやりとりをしていて、ファンの皆さんにすごく喜んでいただいているのを見て、「愛されててよかったあ!」と一緒に喜びました。
──ドラマの放送当時から映画化は見据えていたのでしょうか?
全然そんなことはなかったです。オンエアが終わって抜け殻のようになっていたので(笑)。ありがたいことに映画化の話はいただいていたのですが、物語をどうしようかと秋元さんと話して……「菜奈ちゃんが生きている世界線だったら?」というところから始まって、今回の映画化に行き着いたんです。
──そこからパラレルワールドでの展開が膨らんでいったんですね。
そうなんです。ですから連ドラが終わってけっこうな時間が経ってしまったんですよね。
──ドラマの放送当時はSNSを中心に考察が大いに盛り上がっていました。“あな番”ブームの要因はどこにあると思いますか?
やっぱり一番の要因は、演じてくださったキャストの皆さんが素晴らしくて、登場人物がとても魅力的だったことだと思います。だから「あの人が怪しいんじゃないか」というように考察が始まったと感じています。秋元さんのアイデアと(脚本を手がけた)福原充則さんのセリフを、皆さんすごいお芝居で体現してくださって、台本以上にエッジの効いた登場人物になっていましたから。
──確かに皆さん素晴らしい演技をされていました! 中でも主要キャラクターを演じられた原田知世さん、田中圭さん、西野七瀬さん、横浜流星さんの劇場版での演技はいかがでしたか?
まず、映画のクライマックスシーンは撮影にめちゃくちゃ時間がかかったんです。かなりハードなスケジュールの中、深夜になってもしっかりとお芝居をされる知世さんの姿勢が、共演者の皆さんとスタッフの原動力でした。「菜奈ちゃんががんばってる!」と。本当に心の支えで、たまにかわいらしいNGもあってみんなが和むんですよね。きめ細やかなお芝居ももちろん素晴らしいですし、みんなの精神的支柱で現場の“女神”でした!
圭さんは現場をずっと明るく盛り上げてくださいました。翔太はちょっと的外れで暴走しがちなキャラクターなのですが、まっすぐだからこそ一番本質的なところである「どんな人にも愛する人がいて、だから殺しちゃいけないんだ」というメッセージを、魂込めて伝えられるんですよね。ムードメーカーでありつつ、お芝居は熱い。圭さんには感謝しかないです。
なーちゃん(西野)は連ドラより一層、“悲しい殺人鬼・黒島”を生きてくださったと思います。どーやん(二階堂)を愛する中で、殺人衝動を抑えきれない悲しさや葛藤を丁寧に深く表現してくれました。劇場版では体力的にも体勢的にも、大変なシーンが多々ありましたが、本当に一生懸命に表現してくれたので、すごく心強かったです。
流星くんはすごく気持ち的に負荷のかかるお芝居のシーンが多かったですね。ポールに縛られた黒島を見つけるシーンは3回に分けて撮影しているんです。船のデッキを走るカットはセットで、ポールを登るところは実際に船上で、そしてポールを登った先の展開はまたセットで撮っています。そんな中で流星くんは、毎回同じテンションに気持ちを高めて演じてくださった。役に対して真摯に向き合う姿勢、それをちゃんと表現できる演技力の高さ、本当に素晴らしかったです!
──今回新たに参加された門脇麦さんについてもお聞かせください。
麦ちゃんには浦辺優という女性を演じていただきました。物語に絡んでいないように見えてちゃんと絡んでいる。推理を難しくする、注目していただきたいキャラクターですね。怪しさも、彼女が抱える怒りや悲しみも限られたシーンの中で、見事に表現してくださいました。ドラマ2クールを一緒にやったチームに入るのは大変かなと思っていましたが、麦ちゃんは現場でのびのびされていてスッとチームに溶け込んでいました(笑)。
──特典映像にはメイキングやスペシャルドラマが収録されますね。それも5時間超えのボリュームで!
そうなんです! 映画が公開されるタイミングで放送したスペシャルドラマから観ることをオススメします。船に乗る前の関係性が描かれているので、時系列に沿って映画を楽しめるかと。また、映画のプロモーションでどうしてもネタバレができなかったので、メイキングがこれまであまり出せなかったんです。ようやく皆さんに裏側がどうなっていたのかをお届けすることができます。ほかにもイベント映像やなーちゃんカメラが収録されていますね。
──最後に劇場版の見どころをお聞かせください。
映画で殺されるのは誰なのか……犯人は誰なのか……。なんかキャッチコピーみたいですね(笑)。連ドラで殺されてしまったキャラクターも帰ってきますし、Blu-ray / DVDということで何回も観ると新たな発見があるはずです。「あの人この部屋に入ったんだ!」「あの表情にはこんな意味があったのか」とか、一度観ただけでは気が付かないネタがある。本編の隅々までネタが隠されているので、一度映画を観た方でも楽しめると思います。
プロフィール
鈴間広枝(スズマヒロエ)
ドラマ、映画のプロデューサー。これまでにテレビドラマ「東京タラレバ娘」「愛してたって、秘密はある。」「あなたの番です」「真犯人フラグ」や、「劇場版ドルメンX」「あなたの番です 劇場版」などを手がけた。