コミックナタリー Power Push - サブロウタ「citrus」×コダマナオコ「捏造トラップ-NTR-」

祝・コミック百合姫月刊化!アニメ化決定の2作家が対談

女の子同士の恋愛を描いた百合マンガの専門誌・コミック百合姫(一迅社)が、11月18日発売の2017年1月号より月刊化を果たす。新連載も一気に10本、すべて巻頭カラーで始動。攻めの姿勢を見せ続けている。

またサブロウタが義理姉妹の恋愛を描く「citrus」と、コダマナオコが彼氏持ち女子高生同士の秘密の関係を描く「捏造トラップ-NTR-」のアニメ化が決定。コミックナタリーではサブロウタとコダマの対談を実施し、2人の百合に対する思いやアニメ化に対する期待を語ってもらった。

取材・文 / 川俣綾加

「リアルな想像を百合に」「美化した憧れを百合に」

──まずは、サブロウタさん、コダマさんが百合にハマったきっかけを教えてください。

コダマナオコ 今野緒雪さんの「マリア様がみてる」からです。ポップなトーンや女の子の華やかさの中にどこかドロッとした空気もあって、緻密な心理描写が楽しかったです。あまりクローズアップされていなかった黄薔薇姉妹をメインにして、ドロドロしたストーリーの同人誌も作りましたね。島津由乃の、見た目はすごくかわいいけど性格がちょっと悪い感じも大好きです。

サブロウタ 私は「ふたりはプリキュア」。性格が真逆の2人が一緒に戦う物語は「citrus」にも通じています。同人誌も描いてどっぷりハマってました。

──初代プリキュア! なるほど、言われてみれば……!

「citrus」では、純情ギャルの柚子とクールな生徒会長・芽衣、真逆な2人がさまざまな困難に立ち向かう。

サブロウタ 特に第8話「プリキュア解散!ぶっちゃけ早すぎ!?」がサイッコーです! 友達でもなんでもなかったなぎさ、ほのかの2人がプリキュアとして世界を救わないといけなくなって、でも正反対の性格なのでケンカしちゃうんですよ。それでプリキュア解散の危機に陥るんですけど。だけど乗り越えて仲良くなって、お互いを呼び捨てで呼び合う瞬間を迎える……その描き方が最高で。何回も観ました。

コダマ 自分の萌え回って死ぬほど繰り返し観ちゃいますよね。

サブロウタ ですよね。百合を意識し始めたのはそこかな。言っちゃって大丈夫かなこれ。

──言われてみると、そうとしか見えなくなってくるので不思議です(笑)。コダマさんもサブロウタさんも、少女マンガやTLなどほかのジャンルも描かれていましたよね。

サブロウタ そうですね。でもやっぱり女の子をいっぱい描きたいなと思っていて、気付いたら女の子同士のジャンルにたどり着いていました。

「捏造トラップ-NTR-」より、彼氏のできた由真に対し蛍は思わせぶりな発言をする。

コダマ 女の子同士だと両方の気持ちがリアルに想像できるというか。自分の内にあるウザい部分とか、いろいろな要素を少しずつ足してキャラクターにしていけるんです。男の人はどうしても想像で描かないといけない。BLだと両方とも想像になってしまうし。

サブロウタ 私の場合は、女の子に対する劣等感やコンプレックスで描いているかもしれません。美しいものだと捉えすぎているところがありますね。たぶん、かなり美化しています。可愛くてキラキラ、こうだったらいいなという憧れがマンガになっている感じ。

クズな行動をさせながら「いい子だな」と思わせるのが難しい

──コダマさんは「マリみて」で女の子のドロッとした部分に惹かれたとおっしゃっていましたが、「捏造トラップ-NTR-」もドロドロ成分がものすごく濃いです。まさに昼ドラといいますか。

コダマ 最初は既婚者同士の恋愛にしようと思たんです。でも年齢が高すぎると若い読者がついてこれなくなるかなと。

──キャラクターの年齢が高いとどんな違いが出てきますか?

コダマ アラサーくらいになると、人生かかってる感が出てきますね。「一生この人と生きていくか否か」みたいな。一方で学生は、思春期ならではの瞬きとキラメキ感があるというか。

サブロウタ あ、それわかります。本当にそう。

「捏造トラップ-NTR-」より。この発言により藤原は多くの読者を敵に回すことになる。

──男性キャラクターが大きく絡む構成になっているのは、百合マンガにしては珍しいです。これは冒険だったのでは?

コダマ そうですね。百合姫の中では「百合男子」の次にがっつり男性キャラクターが絡むマンガです。蛍、由真に、蛍の彼氏である藤原が「俺も混ぜてよ」と言ってるコマは、Twitterで画像付きで「死ね!」って書かれていました(笑)。

──(笑)。

コダマ 由真の彼氏である武田は逆に、「あんなにいい奴なのに」と人気が出て(笑)。

──でもこのキャラクター構成にすることで、少女マンガの延長として手に取りやすくなっているかもしれませんね。

コダマ そうだとうれしいです。

──一方の「citrus」は見た目はギャルだけどピュアな柚子、一見すると真面目な生徒会長だけど影のある芽衣といった、いろいろな女の子が登場していて華やかです。

サブロウタ 「こういう子が出てきたら楽しいな」っていう子たちを描いています。

──動かしやすいキャラクターは?

「citrus」より、柚子を姉のように慕うまつり。

サブロウタ まつりです。尖っていて奔放で、ストーリーを広げて引っ掻き回してくれる子。逆に芽衣は難しいんですよね。

コダマ 芽衣は制約が多そう。少し外れたことをしてしまうと芽衣じゃなくなってしまいそうで。

サブロウタ そうなんですよ。こういうクールで無表情なキャラクターはあまり描いたことがなくて、柚子みたいに表情がくるくる変わる子のほうが動かしやすいしイメージがわいてくる。芽衣は編集さんの意見も取り入れつつ動かしているので、そういう意味では私の考え方を広げてくれている子かもしれません。

──コダマさんは動かしづらいキャラクターっていますか?

コダマ 由真です。小悪魔で腹黒な蛍はもともと好きなタイプなこともあって動かしやすいんですけど、由真は普通のいい子なんです。でも彼氏がいるのに親友の蛍ともイチャイチャして、やってることはわりとクズ(笑)。

──クズ(笑)。でも行動だけ見ると確かにそうなんですよね。

コダマ 読者に「いい子だな」と思ってもらいつつクズなことをさせないといけないので、気をつけて描かないと本当に嫌な子になるんですよ。読者に嫌われないようにしないと。

サブロウタ いい子なんですけど、周りに流されて自分を見失っちゃうんですよね。

コダマ その結果、みんな「武田かわいそう」になっちゃって(笑)。藤原は何を言わせてもOKだしポーカーフェイスなので楽。表情を描くのが苦手なので、そこで繊細な表現ができるサブロウタさんがうらやましいです。

「コミック百合姫」2017年1月号 / 2016年11月18日発売 / 842円 / 一迅社
「コミック百合姫」2017年1月号

ラインナップ

新連載
  • あおと響「明日、君に会えたら」
  • 梅原うめ「ロク+イチ暮らし」
  • 竹嶋えく「晴れの国のあっぱれ団!」
  • tMnR「たとえとどかぬ糸だとしても」
  • 西あすか「いつかみのれば」
  • Hitoto*「週末なにしにいこう?」
  • 広瀬まどか「みみみっくす!」
  • みかん氏「Now Loading…!」
  • 未幡「私の百合はお仕事です!」
  • 椋木ななつ「私に天使が舞い降りた!」
連載
  • なもり「ゆるゆり」
  • 伊藤ハチ「月が綺麗ですね」
  • サブロウタ「citrus」
  • 大沢やよい「2DK、Gペン、目覚まし時計」
  • 黄井ぴかち「デミライフ!」
  • くずしろ「犬神さんと猫山さん」
  • コダマナオコ「捏造トラップ-NTR-」
  • こるり「桃色トランス」
  • 源久也「かなえて!ゆりようせい」
  • めの「あとで姉妹ます。」
  • merryhachi「立花館 To Lie あんぐる」
  • 山田あこ「ちょこメイト」

ほか

サブロウタ「citrus(5)」 / 発売中 / 734円 / 一迅社
サブロウタ「citrus(5)」
734円
Kindle版 / 648円
あらすじ

ついに恋人同士になった柚子と芽衣。そんな中、柚子ファンの寧音が柚子を真似て茶髪にする事件が。寧音を庇う柚子に、はるみの姉で元生徒会長のみつ子は、ある提案を……!?

コダマナオコ「捏造トラップ-NTR-(3)」2016年11月18日発売 / 734円 / 一迅社
コダマナオコ「捏造トラップ-NTR-(3)」
あらすじ

武田と別れて傷心の由真は、寂しさを蛍にぶつけてしまう。そんな中、ふたりの情事をスマホで撮り、「マジで混ぜてくれんの?」と藤原は脅しをしかける。

疑惑を躱すために、藤原と部屋に籠った蛍に、何故か黒い感情が渦巻く由真。もやもやする気持ちの正体を確かめようとしても、蛍から返って来たのは「誰よりも親友」という言葉だけ。

蛍との間に距離を感じたまま、新学期を迎えた由真。ある夜、繁華街で蛍の姿を見かけて……!?

サブロウタ
サブロウタ

マガジンSPECIAL(講談社)にマンガが初掲載された後、別冊フレンド、good!アフタヌーン(ともに講談社)などでも活躍。2013年よりコミック百合姫(一迅社)にて「citrus」を連載中。

コダマナオコ
コダマナオコ

2006年に恋愛天国(竹書房)でデビュー。その後、コミックエール(芳文社)、ARIA(講談社)、芳文社の百合アンソロジー「つぼみ」などで活躍する。2012年よりコミック百合姫(一迅社)にて執筆を開始し、2014年より「捏造トラップ-NTR-」を連載中。