小西克幸、梅田修一朗、内海賢二の声がAI音声に!名作文学を朗読する「YOMIBITO Plus」の新たな可能性

AI音声による朗読付き電子書籍「YOMIBITO Plus」が、3月29日より1年間限定で、ソニーの電子書籍ストア・Reader Storeにて無料配信されている。「YOMIBITO Plus」は2022年3月に誕生した声優による朗読音声付き電子書籍レーベル「YOMIBITO」を発展させた音声コンテンツで、名作文学をAI音声による朗読とテキストの両方で楽しむことができる新たな形の電子書籍だ。AI音声の作成には声優の小西克幸、梅田修一朗、そして2013年に亡くなった内海賢二の声が使用されている。

コミックナタリーでは「YOMIBITO plus」の魅力を掘り下げるコラムを展開。自らの声を生業とする声優にとって、AI音声はどのような影響を与えるのか。また故人の声を“よみがえらせる”ことへの課題とは。

「YOMIBITO Plus」のラインナップはこちら!

羅生門【小西克幸(AI 音声):朗読音声付き】 芥川龍之介

羅生門【小西克幸(AI 音声):朗読音声付き】 芥川龍之介

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Reader Store

走れメロス【梅田修一朗(AI 音声):朗読音声付き】 太宰治

走れメロス【梅田修一朗(AI 音声):朗読音声付き】 太宰治

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Reader Store

内海賢二が読む名作文学(夏目漱石、宮沢賢治)【内海賢二(AI 音声):朗読音声付き】

内海賢二が読む名作文学(夏目漱石、宮沢賢治)【内海賢二(AI 音声):朗読音声付き】

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Reader Store


配信期間

2023年3月29日(水)より1年間。

価格

無料 ※Reader Storeへの無料会員登録が必要。

配信サイト

ソニーの電子書籍ストア「Reader Store」にて独占配信。

音声コンテンツとAIの新たな可能性──
「YOMIBITO Plus」が見せる新たな景色とは

文 / 太田祥暉(TARKUS)

ボイスドラマやASMR……昨今流行りの「音声コンテンツ」

ふと、動画サイトを開いてみると、トップページには音声合成ソフトを使ったゲーム実況や解説動画が表示される。普段何気なく観ている動画も、実際に人間が発した言葉ではなく、音声合成ソフトを使った機械音声であることは、もはや少なくない。それらの音声を聞くと文章の意味は通じているし、なんなら音声合成ソフトを知らない人が聞けば人間がしゃべったと誤解するのではないかとも感じるほどだ。とはいえ、それらもゼロから機械が作った音声ではない。声優や歌手の声を収録してエンジンを構築しており、人間のように聞こえるというのがウリになっている。

一方、昨今朗読音声にはじまり、ボイスドラマやASMR音声など、「音声コンテンツ」が人気であることをご存じだろうか。これらのウリは、活字で読むよりも、内容が脳に定着しやすいことにある。活字の場合、文字を解釈し、そこからイメージに落とし込む作業が必要になるのだが、音声の場合脳がダイレクトに処理を行うためだ。直近では人気作家が書籍よりも先に朗読コンテンツとして作品を書き下ろすというケースもあり、認知度も徐々に高まっている。しかし、1冊の長編小説ともなれば、その朗読コンテンツの本編尺は映画数本分を要する。つまり、声優の収録時間はそれ以上であり、長編を読み上げる朗読コンテンツを作成することは厳しいことが予想できる。

現在の技術でどこまで自然に朗読できる?声優の声を使ったAI音声の実験的試み

そんな状況下で進行していたプロジェクトが、「YOMIBITO Plus」である。2022年3月にスタートした朗読付き電子書籍レーベル「YOMIBITO」からスピンアウトする形で、AIリーディング電子書籍「YOMIBITO Plus」が誕生した。これは現役で活躍する声優から収録した音声をもとにエンジンを制作して文豪の名作を朗読させるもの、そして故人が遺した音源をもとにAI音声によって再現させたもの。むろん、前述のように機械音声だと知って聞くと、少しぎこちなさを感じてしまうかもしれない。だが、本作では現在の技術を用いたらどこまでAI音声で朗読が可能なのか、その極致を知ることができるわけである。

「YOMIBITO Plus」

「YOMIBITO Plus」

今回、「YOMIBITO Plus」でAI音声として再現されたのは、小西克幸、梅田修一朗、そして2013年に亡くなった内海賢二の3名の声だ。小西、梅田はTVアニメやゲームで活躍している人気声優。そして内海は数々の人気作に出演していたレジェンドとも言える存在だ。そんな3名が名作を朗読したとしたら、素晴らしい芝居によってその作品が抱く世界観を表現するに違いない。「YOMIBITO Plus」はそこにどこまで近付けるのかという観点の面白さも付随している。

左から小西克幸、梅田修一朗、内海賢二。

左から小西克幸、梅田修一朗、内海賢二。

声優によるAI合成音声の成果と課題、そして未来への可能性

そのうえ危惧されることも2つ思い浮かぶ。まず、現役声優と同じフィールドまでAI音声の精度が高まった場合、小西や梅田のような声提供者の仕事が少なくなってしまうことがあるのではないか。そして、内海のように故人の音源を使用した場合、倫理的な観点からセンシティブな反応が生まれてしまいかねないといった問題だ。

まず前者に関しては、現時点だと両者が朗読を直に行ったときほど、精度の高い朗読音声が生成できるようにはなっていない。しかし、今後技術が発展していったとしたらもっと生身の人間と聞き間違うほどのものが生まれるかもしれない。また、このAI技術が何かに転用され、多方面で活用できるようになる可能性もあるだろう。その技術が日進月歩していく瞬間を感じ取れる音源として「YOMIBITO Plus」が成立しているのだ。

「YOMIBITO Plus」ラインナップ

後者に関しては、数年前に「AI美空ひばり」が発表された際にも賛否両論が巻き起こった。美空ひばりの音源をもとにAI音声を構築し、新たな楽曲を歌わせるという試みであったのだが、故人の声や姿を“よみがえらせる”ことにはさまざまな思いがあるのは当然だろう。なお、今回のプロジェクトに関しては内海賢二の子息であり、最終所属先でもある賢プロダクションの現社長・内海賢太郎氏が快諾したうえ進行している。氏は内海賢二の妻であり声優の野村道子と話し合ったうえで、AI音声の技術が進歩する道筋になればと思いOKを出したと語っている。また、目線を変えるのであれば、10年前に亡くなった声優であっても音源が残っていれば、その声色(もちろん音源に残された演技の幅にもよるが)を再現してAI音声のエンジンを構築することができる。そういった可能性が生まれるための試みともいえるだろう。

そんな状況下で生まれた「YOMIBITO Plus」であるが、実際に聞いてみると……そのすさまじさが瞬時に判断できる。作品内容がダイレクトに脳内へと入ってくることはもちろん、音源のサンプリング元となった声優の顔も浮かぶ、ファンには楽しいコンテンツになっている。もちろん声優に詳しくない人でも、現在AIが朗読を行ったとしたらどこまでできるのか、その試みの結果としてお聞きいただきたい。「YOMIBITO Plus」は、未来に広がる新たな景色を感じさせてくれる試みに違いない。

プロフィール

太田祥暉(オオタサキ)

編集者・ライター。編集プロダクション・TARKUSに所属。学生時代より同人活動としてエンタメ系ZINE・PRANK!を編集し、2018年より商業媒体でライター活動を始める。アニメやライトノベル、特撮、VTuberを中心に書籍や記事の編集・執筆を行い、ASMR作品のシナリオなども手がけている。

ソニーの本屋・Reader Storeで独占配信中

「YOMIBITO plus」の電子書籍を楽しむには「Readerアプリ」が必須。パソコンやスマホからWebサイト・Reader Storeにアクセスして商品をダウンロード後、「Readerアプリ」で電子書籍と朗読音声の両方を楽しもう。なおダウンロードにはReader Storeへの会員登録が必要。登録は無料のため、気になる人は試してみてはいかがだろうか。


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