「アンデッドアンラック」ってどんな作品？

2023年10月からTVアニメが放送されている「アンデッドアンラック」は、週刊少年ジャンプ（集英社）で連載されている戸塚慶文の同名マンガが原作だ。主人公は不死の体を持つ“不死（アンデッド）”の否定者・アンディと、肌で触れた者に不運を呼ぶ“不運（アンラック）”の否定者・出雲風子。風子が自殺しようとしたところ、不運の能力によって本当の死を得るためにアンディが彼女を連れ去ったところから2人の旅はスタートする。「アンデッドアンラック」は、彼らのような異能力者たちのバトルを軸に、緻密かつ壮大な物語が怒涛のごとく展開する作風で人気を博している作品だ。

2020年の連載開始後すぐに「次にくるマンガ大賞 2020」コミックス部門で1位を受賞し、多くのファンが待望していたアニメが放送中。こちらでは原作の持ち味はそのままに、迫力の映像や声優陣による迫真の演技といった要素も加わってますますテンションの高い作品になっている。クライマックスを前に、週刊少年ジャンプ連載作のアニメでも屈指のジェットコースターストーリーを体感しよう！

魅力その1
否定の力を使った能力バトル

「アンデッドアンラック」は異能を使った戦闘をメインに展開する、いわゆる能力バトルもの。登場人物の多くが何かを否定する「UN◯◯（アン◯◯）」という能力を持つ“否定者”であり、主人公たちの不死や不運を始め、不真実（アントゥルース）や不変（アンチェンジ）、不可触（アンタッチャブル）、不正義（アンジャスティス）などさまざまな否定能力の持ち主が自身の正義のために戦っている。

不死（アンデッド）の能力を持つアンディ。噴出する血で空を飛ぶ、指を弾丸のように飛ばすなど、体の部位の高速再生という特性を最大限に活かした戦闘を得意とする。

不運（アンラック）の能力を持つ出雲風子。肌で触れた者に不運が訪れる。接触面積、好感度など、不運の大きさを決めるいくつかのルールが存在する。

彼ら否定者はその能力発現時に悲劇を迎えている。風子の場合は10年前に自身が呼び寄せた不運によって飛行機事故が発生。両親を含めた大勢の犠牲者を生む惨劇を起こしていた。そんな背景を持つキャラクターたちが能力をどう利用し相手を倒すかという頭脳戦の楽しさと、悲劇を生んだ能力で過去や困難を乗り越えるという物語とが噛み合った際の爽快感は「アンデッドアンラック」ならでは。アニメはキャッチコピーで「これが少年ジャンプの“否”王道!!」と謳うが、王道少年マンガにも決して負けない熱量を持つバトル作品だ。

魅力その2
息つく間もなく“超展開”する物語

アニメ版のもう1つのキャッチコピー「全編クライマックス！」も偽りなし。世界設定の根幹をなすような新たな謎が明かされたり、一般的なアニメで「超展開」と言われるような急展開が起きたりするのは「アンデッドアンラック」では茶飯事。利害が一致した主人公2人の急転直下な恋愛劇も、主人公の意外な正体が明かされ、それと味方全員で戦う……といったクライマックス感溢れるバトルも第1クールの前半からテンポよく進行していく。しかしそうした騒動の解決にきちんとした理屈やドラマがあり、密度の高い物語が紡がれ続けているのが「アンデッドアンラック」の最大の魅力になっている。

TVアニメ「アンデッドアンラック」より。

TVアニメ「アンデッドアンラック」より。

かつて「Fate」シリーズのシナリオライター・奈須きのこは、原作について「一つの違和感がやがて世界構造の答えになる。その積み重ねがとても丁寧で、巧妙で、読むたびに新しい発見があり、考察に繋がる。『アンデッドアンラック』は少年漫画として面白いだけでなく、ミステリー的なロジック解明の楽しさもある、とても欲張りな作品だと思います」とコメントを寄せていた。そんな緻密な物語が大胆に展開するスピード感は、アニメでも健在だ。

魅力その3
迫力の戦闘シーンをはじめとする映像も注目

アニメ版の大きな見どころが圧巻の戦闘シーン。躍動感あるキャラクターの動きやダイナミックなカメラワーク、ド派手なエフェクトなどで構成されたバトルに毎回魅せられている人も多いだろう。

本作の制作を手がけるスタジオはdavid production。「アンデッドアンラック」では原作の余白を最大限に解釈し、さらに迫力あるものに仕上げている印象だ。もちろんバトルやアクションだけでなく、ドラマパートやコメディパートも、大胆な間の取り方やレイアウトなど見応え十分。八瀬祐樹監督の手腕を要所で感じられるだろう。

アンディの常識外れな行動に驚く、コミカルな風子の表情にも注目だ。

第1話冒頭では気合の入った作画で、劇中劇が展開される。

第4話「変わる私は好きですか？」

否定者を追う対未確認現象統制組織“ユニオン”に追跡されるが、逆にそのメンバーを殺して否定者10人で構成されたユニオン内の特殊チームに入ろうとするアンディたち。そんな中、風子がバイカル湖で仲良くなったJKファッションの女性・ジーナは“UNCHANGE（不変）”の能力を持つユニオンの一員であり、50年前にアンディを捕獲した過去を持っていた。

“UNCHANGE（不変）”の否定者で、ユニオンの一員であるジーナ。

JKファッションで若い印象を受けるが、50年前にアンディを捕獲した過去を持つ。

触れた物の形の変化を否定する彼女との戦いが始まる第4話は、鮮烈な赤を基調とした画面上でハイスピードな否定能力の応酬が繰り広げられる。どこを切り取ってもエキサイティングな絵作りがなされており、序盤のクライマックスを飾るのにふさわしい1話だ。アンディと風子の連携で“UNCHANGE（不変）”の能力を打ち破られ、年相応の老いた姿に変わっていくジーナの演技も感涙もの。名優・悠木碧による若作りのジーナ、若い頃のジーナ、そしてかねてからの想い人であるアンディに抱きしめられながら果てていくジーナの演じ分けにも注目だ。

“UNCHANGE（不変）”の能力でアンディたちを追い詰める。

アンディたちに敗れ最期を迎えるジーナ。

第5話「我々は否定する」

ジーナを打倒したことで、ユニオンに加入することになったアンディと風子。ジーナにゆっくり献杯を捧げる間もなく、彼らはユニオンによって否定者たちが集う円卓へ招かれる。

そんな始まりの第5話では、ユニオンのリーダーであるジェイスたちから世界の真実が次々に語られていく。「古代遺物（アーティファクト）の存在」「世界の理（ルール）に関わるUMAや報酬をめぐるクエストの仕組み」「期限内にクエストをこなせなかった場合のペナルティ」「今はペナルティにより性別、言語、人種、死、病気などの理が98回追加された世界であること」「力を蓄え、いつか理を強いる存在・創造主である神を殺すというユニオンの目的」……。

ユニオンのリーダーであるジェイス。

ユニオンにクエストを課すアポカリプス。

こうした怒涛の設定（これがあくまで前フリに過ぎないのが「アンデッドアンラック」のすごいところ）や多くの初登場キャラクターといった新情報がありながら、それぞれわかりやすく、魅力的に描いていくのがAパート。Bパートはユニオン施設内で服のUMA・クロを倒して、これまで裸でいることが多かったアンディが服を着るという閑話となる。「アンデッドアンラック」のハイテンポ具合とフットワークの軽さに驚かされるのでは。

服のUMA・クロ（上）。

ユニオンの一員であるシェンとともにさっそくクエストに挑むことになる。

第9話「Return」

初めて参加したクエストでUMA・スポイルを捕獲したものの、その戦いでアンディが呼び起こしたもう1つの人格であるヴィクトルは目覚めたまま。数多の戦場に勝利をもたらした彼の力は強大で、アンディを呼び戻すために集まったユニオンメンバー全員と渡り合う。

アンディのもう1つの人格であるヴィクトル。アンディの額のカードを抜き取るとその人格が現れる。

ヴィクトル。“戦勝の神”の異名の通り、圧倒的な戦闘力を持つ。

第4話に負けず劣らずの、激しく美しい戦いを展開したこの難敵を鎮めたのは風子の否定能力、そしてアンディとの絆だった。一瞬だけ目覚めたアンディとキスをした風子はかつてない不運を呼び、戦場には次々と隕石が落下。そしてヴィクトルは封印され、目覚めたアンディは風子をこれまでの「ガキ」ではなく初めて「風子」と名前で呼びかける。バトルだけではない、アンディと風子の絆（＝恋愛）という「アンデッドアンラック」のバディものとしての側面を強く感じられるエピソードだ。

風子の“不運”の能力で最後は再び封印された。

第9話終盤ではアンディに戻り、風子を看病している。

本エピソードの締めくくりに登場する、風子の大好きな作中の人気マンガ「君に伝われ」は意外にも今後の物語、そして世界の仕組みに大きく関わってくる。続きはBlu-ray BOXや各種配信サイトで確かめよう。