コミックナタリー PowerPush - 映画「ミュータント・タートルズ」

キモすぎる亀がイケメンに見える魔法 4コマ付きで谷口菜津子が魅力を熱弁

谷口菜津子インタビュー

「亀キモ過ぎ」の第一印象を覆すカッコよさ

──まず映画をご覧になって、第一印象はいかがでしたか。

谷口菜津子

タートルズは見た目がこんなに気持ち悪いのに、カッコよく思えるのはどうしてだろうっていうのが気になって。ヒーローって普通は容姿からイケてるものじゃないですか。なのに全員キモいですよね、パッと見。自分に問いかけてみて思いついた理由が、戦隊ものみたいなポーズにあるんじゃないかなと。

──武道の構えですね、センセイに習った。

単なる力の強さだけじゃなく、動きから生まれるカッコよさもあるんですよね。見た目がキモいというギャップがむしろアクセントになっていて、タートルズにとっては気持ち悪さが魅力のひとつになってるんだ、ということに気がついて、目からウロコでした。

──お話には納得なのですが……そこまでキモかったですか?

昔のアニメ版はデフォルメが利いていて造形に愛嬌があったけれど、今回の映画は質感とかリアルさを追求していますよね。単純な緑じゃなく茶色がかっていて、爬虫類っぽい肌の感じとかも正直「亀キモ過ぎだろ」と思ってしまうくらい。そういった異形の存在が悪者じゃなくヒーローとして描かれているのがいいんだなと。私はマンガやイラストの中によく怪物を登場させるんですけど、あれは人間の心の比喩みたいなもので。

──そういえば谷口さんの自画像もモンスターですよね。

人間って種族としてはみんな似たような見かけだけど、それぞれが違った存在じゃないですか。違うのは当たり前のことなのに、みんな、自分だけが阻害されている、自分だけ仲間になれない、みたいな気持ちを持ってると思うんです。そうじゃなくて心の中はみんなバラバラなんだよ、ってことを、1人ひとりを違った形の怪物に描くことで伝えられるかもしれないと思って。それで自分の姿もモンスター化してるんです。

タートルズの4匹とエイプリル・オニール。

──一方のタートルズは比喩でなく、実際にミュータントというフリークスなわけですが……。

陰がなく、やたらと楽しそうですよね(笑)。本人たちはフリークスだってこともそこまで気にしていなさそう。センセイから外に出るなって注意されていて、怒られるのは嫌だから隠れているって感じで。ヒロインのエイプリル・オニールとも、ティーンエイジャーのノリですぐに打ち解けてしまう。見た目も種族も全然違う者同士が仲良くなれるというのは、理想的ですよね。

うるさいくらい賑やかなチーム感がタートルズ

──タートルズの各員をテーマに4コマを描いてもらいましたが、それぞれの印象は?

谷口菜津子

全員キャラが立っていて、マンガにしやすかったです。最初ラファエロは嫌いだったんですよ。なんか頑固だし、ずっと怒っているし。そもそも私はドナテロみたいな知性派が好きなので、マッチョなキャラが受け付けないと思って。でも物語が進むにつれがんばっている姿が見えてきて、どんどん好きになってきました。

──1番好きなキャラはドナテロ?

自分がバカだし運動神経も悪いので頭脳で戦うという行為に憧れがあって……。最初は、タートルズの中だったら自分はギークなドナテロの立ち位置だなあと共感の気持ちで見ていたんです。でもドナテロは頭脳だけのモヤシっ子メガネじゃなかった。棒は振り回すし、雪山のシーンでは甲羅で滑るし「私のドナテロ、アクションもできるんだ!」って、興奮と裏切られた気持ちで震えが起きました。それまではずっとパソコンで確率の計算とかしていたのに、文武両道だったなんて……。

──リーダーのレオナルドはいかがですか?

タートルズの戦闘シーン。チームワークで敵のシュレッダーを圧倒する。

ドナテロには裏切られましたが、レオナルドには本当の意味で共感しました。みんなが自分勝手に動く中で真面目に戦っててエラい。私も常識人なので、普段から自由に動く人達に振り回されることが多いので……。だからお調子者のミケランジェロには、もっと他人の気持ちを考えてほしいと思いました!

──ムードメーカーのミケランジェロは、どちらかというと人気キャラという印象ですが。

人の車を壊しちゃったりとか、ひどくないですか? 天然ノリのアラレちゃんみたいなタイプが私嫌いなんです。末っ子キャラとかも好きじゃない。でも多分、ミケランジェロがいないタートルズはつまらないですよね。4人それぞれに役割があるので、みんないたほうがいい。ごちゃごちゃとうるさいくらいにお喋りや掛け合いが止まらない、チーム感があってこそのタートルズですから。

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「ミュータント・タートルズ」

悪の犯罪組織フット軍団が暗躍するニューヨーク。ある日、チャンネル6のレポーターとして野心的に特ダネを狙っているエイプリル(ミーガン・フォックス)は、何者かがフット軍団の犯罪を阻止している姿を目撃する。彼女の目に映ったのは、身長180センチでニンジャの技を炸裂させる4人のカメ=タートルズだった……! 彼らは地下の隠れ家で師匠のスプリンターから技を学び、ハイテンションでハイスペックなパワーを身につけていた。エイプリルは早速彼らの存在を報道しようとするが、上司のトンプソン(ウーピー・ゴールドバーグ)はまったく取り合わず、クビを言い渡されてしまう。

やがてタートルズの存在がフット軍団のリーダー、シュレッダーの耳に入り、フット軍団はタートルズの隠れ家を急襲。壮絶なバトルの末、レオナルド、ミケランジェロ、ドナテロの3人が敵に拉致されてしまう。フット軍団の目的は、タートルズのパワーの源を手に入れ、ニューヨークを壊滅させることだったのだ。そして明かされる、タートルズ誕生の真実。彼らはなぜ最強のパワーを身につけたのか? 幼い頃のエイプリルとの間に一体何があったのか? そして、世界も彼らも気づいてないその宿命とは……?

谷口菜津子(タニグチナツコ)

谷口菜津子1988年7月7日生まれ。神奈川県出身。「わたしは全然不幸じゃありませんからね!」がKADOKAWA、「さよなら、レバ刺し~禁止までの438日間~」が竹書房から発売中。フリークスをモチーフにしたイラストを得意とする。アイドルグループ・でんぱ組.incによる3rdアルバム「WWDD」ではアートワークを担当しており、メンバーを大胆にモンスター化したイラストが話題になった。