コミックナタリー PowerPush - ツール・ド・本屋さん
全国の書店に自転車でお邪魔 今日は地元・調布でPOP描き あだち充も迷惑
Tシャツに刷られたゲッサンという文字にだいぶ助けられた
──お疲れ様でした。さすがのトークでしたね! 1軒目から好感触で。
うまくいってホッとしました(笑)。いつも旅の1軒目はめちゃくちゃ緊張するんですよ。
──たくさんの書店を回られると、スッと書店員さんの懐に入り込むノウハウみたいなものが身に付いてきたりするんでしょうか?
いやいや、そんなもの一切ないですよ。ただ「断られて当たり前」というのをいつも念頭に置いています。あとはいつもゲッサンのTシャツを着て行くんですけど、雑誌名の部分をさりげなくチラリと見えるようにしておく。オフィシャル感が出ますから(笑)。旅の最中なんて汗だくで髪もグチャグチャだし、かなり不審人物なので、このTシャツにはだいぶ助けられたんだと思います。
──それだけ経験を詰まれると、企画じゃなくても書店さんを見かけたら飛び込まずにはいられない、みたいな気持ちになったりしませんか。
まるでないです! さっきもすごく緊張してたんですよ。普段は常に「俺なんて……」って感じで、社交的なほうでもないですし。都心に出るといろんな先生のサインが置いてある本屋さんがあるじゃないですか。ああいうの見ては「このお店には僕のPOPなんて必要ないよな」って(笑)。
──普段の横山さんはそういうモードなんですね。
ただ旅に出ると、ある瞬間に(飛び込み営業の)スイッチが入ることがあって、そこからが旅のスタートなのかもしれません。企画の1軒目なんてまさに最初の最初だったので、どういう反応が返って来るかまったくわからない。本屋さん側だってこんなこと初めてだろうし。そういう場面で、相手が笑顔だったというのがものすごく嬉しかったんですよね。
──そこでスイッチが入ったと単行本では描かれています。
「あ、(POP)描いてもいいんだ!」って。以前東南アジアを旅したときに、その日の宿も決まってなくて、今そこにいる人に話しかけなきゃ死んでしまうかもしれないっていう状況があったんですよ。すごく拙い英語だけど恥ずかしがってる場合じゃない。そうしたらやっぱりスイッチが入ったんですけど、自分ではその状態がけっこう好きなのかも。
「お前の幸せそうなシーンなんて誰も読みたくねーよ!」
──その「スイッチが入った」最たるエピソードと言えば、対応してくれた書店員さんが愛らしい女性で、閉店時間まで待って思い切ってお茶に誘おうとするシーン。あれは事実どおり?
はい。実際は声をかける前に、友達に電話で相談してるんですけど(笑)。「こういう女の子がいたんだけど」って。そしたら「そりゃ行くしかないだろ!」って。
──その顛末がどうなったかは、ぜひ単行本で確認してもらいたところですが……、まさかすぎるオチになりましたね。
散々でしたよ! というわけで、女性の書店員さんと食事に行ったとか、いわゆるナンパ的なエピソードはまだ成功していないので、いつか実現させたいです。まあ、もし上手くいっても、編集部に「お前の幸せそうなシーンなんて誰も読みたくねーよ!」って言われて没になりそうですけど。
──というところで2軒目に到着しました。可愛い書店員さんがいるといいですね。
全国の書店さんを自転車で巡り、宣伝用POP描きの旅に挑戦する横山裕二(35)。ゲッサンが誇る“看板”描き作家は、編集部から課される無理難題ミッションをこなしながら今日もどこか書店さんの店頭に!!
さらにどこにでも闖入する横山裕二は、書店さんだけでは飽き足らず……あだち充先生をはじめとする大物マンガ家さんにも突撃……!!!
記念すべき第1巻は「四国編」「東海道編」「沖縄編」を収録!
横山裕二(よこやまゆうじ)
1977年2月8日生まれ。山口県出身。2006年にビッグコミックスピリッツ増刊カジュアル(小学館)にてデビュー。ゲッサン創刊号(小学館)より、読者ページ「ゲッサンしてみる。」内企画としてマンガ家の仕事場を訪問レポートする「仕事場見たいし!」を連載。2011年8月より、自転車で全国書店を回る「ツール・ド・本屋さん」を開始した。