TVアニメ「素材採取家の異世界旅行記」が10月6日より放送されている。ひょんなことから異世界へ転生したサラリーマン・神城タケルが、与えられたチート級の“探査能力”を駆使し、戦いではなく、素材採取でのんびり暮らすことを選ぶ物語だ。
コミックナタリーでは、アニメの放送を記念し、主人公タケル役の島﨑信長、タケルと旅をする古代竜・ビー役の伊藤彩沙、タケルが道中で出会うエルフ・ブロライト役の小市眞琴にインタビューを行った。タケルたちの旅のようにのびのびと自由だったというアフレコ現場の様子から、三者三様の役作りや作品ならではの魅力まで、和やかな雰囲気の中でたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 阿部裕華撮影 / 武田真和
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タケル(CV:島﨑信長)
食べることとお風呂が大好きな元サラリーマン。転生にあたり、チートな身体能力にとんでもない魔力、価値のあるものを見つけ出せる“探査能力”を与えられる。異世界ではそれらを駆使してヘンテコな素材を次々と採取し、素材採取家として活躍する。
インタビュー
タケルの「まあ、いっか」精神に共感
──数ある異世界転生作品の中でも、どのような点にこの作品ならではの面白さを感じましたか?
島﨑信長 主人公のタケルくんは、この手の作品の例に漏れず、異世界へ転生する前にスキルをたくさんもらいます。ですが、タケルくんはその力を使って名を上げていくというより、あくまで「この世界を楽しむぞ!」というスタンスなんです。英雄譚ではなく、もうちょっと日常的な営みの中で、日々を一歩一歩実感して楽しく生きていくところが、この作品のよさだと思います。
──ハラハラするというよりは、のびのびした雰囲気ですよね。
島﨑 そうです、そうです。リラックスして、のんびり見られる作品です。
伊藤彩沙 信長さんがおっしゃった通り、安心して見られる作品だなと思います。どの世代の方にも楽しんでいただける世界観です。あとは、没入感がすごくて……! 本当にこの世界で生活している様子が魅力的。「私もこの世界に入りたいな」「素材採取してみたいな」と、真似したくなるようなところが魅力の1つです。
小市眞琴 「異世界旅行記」というテーマもあって、タケルのマインドだったり、日常的に「こういう心持ちって大事だよな」と思えたりすることが、各所に出てくるんです。異世界ものですけど、自分たちの生活に置き換えて考えられる部分が多くて。食べ物も「こっち(現実)の世界で作ったらこういう感じかな」と考えることができたり……そういう、自分に置き換えてみるのも楽しい作品だと思います。
──1話でタケルが異世界に転生した際、その順応性の高さに驚きました。それは、皆さんがおっしゃるように「異世界なのに現実世界に近い」側面があるからかもしれませんね。
島﨑 それもありますし、彼は切り替えが早い人なんでしょうね。サラリーマンとして大変なことも経験してきたと思いますが、「考えても仕方ない」と開き直れるのがタケルのよいところです。転生してしまったという現実を受け入れて、「まあ、いっか」と素直に思える。物事をわかったうえで前向きに進んでいけるのが、彼の個性であり、素敵な部分だなと思います。
小市 第1話のタケルが異世界に飛んできたときの第一声が大好きで。「ここはどこだ!?」じゃなくて、「これからどうしよう」みたいな(笑)。
島﨑 そうだね(笑)、Aパート始まってすぐのセリフいいよね。
伊藤 いろいろと考えすぎて、まだ起きてもいない未来に不安を抱きがちな今の時代に、タケルの「まあ、いっか」というマインドはすごく刺さります。考えたうえで、「とりあえずやってみるか」と思える気持ちは、きっと多くの人に響くはずです。
島﨑 何も考えずに出てくる「まあ、いっか」じゃないもんね。
小市 うんうん。考えたうえでの、「まあ、いっか」ですからね!
最高の相棒・ビーと、規格外のエルフ・ブロライト
──そんなタケルの旅を彩るのが、伊藤さん演じるビーと小市さん演じるブロライトです。それぞれのキャラクターの魅力や、タケルとの関係性についてお聞かせください。
伊藤 ビーは古代竜ですが、まだ生まれたばかりの赤ちゃん。なので、見るものすべてが新鮮で、好奇心旺盛です。タケルとの関係は、相棒であり、親子であり、ときには兄弟のようでもあり……。悪ガキ仲間みたいな、いたずらっぽい一面も見せます(笑)。この2人からしか得られない栄養素があるような、見ていてすごく愛おしい関係性ですね。
小市 私、猫を飼っているんですけど、この作品でタケルとビーのやり取りを見ていると、自分の家の猫を撫でたくなります(笑)。それくらいビーは愛らしい存在です。一方でブロライトは、ちょっと飛び道具的な面白さを持ったキャラクターだと思います。
──ブロライトは、いわゆる一般的なエルフのイメージとは少し違いますよね。
小市 そうなんです。美しくて神聖なエルフ、というよりは、初登場シーンからお腹を鳴らし、ちょっと臭いにおいをまとっている(笑)。でも、その姿がすごく印象的で。ブロライトは天真爛漫な部分もあれば、物語の後半では、実はいろいろと考えている一面も見えてきます。その振れ幅の大きい部分を、ぜひ楽しんでほしいです。
──タケルを演じる島﨑さんは、ビーとブロライトの魅力をどのように感じていますか?
島﨑 ビーはもう、タケルにとって最高の相棒ですよね。一人旅も楽しいものですが、この作品では旅の感動を共有できる相手がいることがすごく大事。いつも肩に乗って一緒にいてくれて、感情豊かに笑ったり怒ったりして、ご飯も美味しそうに食べてくれる。タケルの旅が豊かになったのは、間違いなくビーのおかげです。ベストパートナーですね。ブロライトは、タケルが持っていた「金髪のエルフは、こう」というテンプレートなイメージを、いい意味で裏切ってくれました(笑)。ブロライトの存在によって、この世界が作り物ではなく、本当に人々が生活している場所なんだと実感させてくれます。それと、これは後半の話になりますが、普段は前向きなタケルが「まあ、いっか」では済ませなくなるような、より深い問題に直面するきっかけを与えてくれる重要な人物でもあります。そこも楽しみにしていただきたいですね。
序盤と終盤で驚くほど芝居が変わった
──それぞれ役を演じるうえで、特に意識した点や、アフレコ現場での印象的なエピソードがあれば教えてください。
島﨑 タケルを特徴づける要素としては、「動じない」「順応性が高い」「特定の好きなことに対して暴走しがち」といった部分が目立つと思います。でも、そうしたわかりやすい個性を押し出すのではなく、この世界で生きていく中で、人々と出会い、少しずつ変化していく部分を一番大事にしたいと考えて、役を作り込みました。その意識があったからなのか、物語の後半にかけて、自分でも驚くほど芝居が変わっていったんです。
小市 第2話でブロライトが一度去って、再登場するシーンがあるのですが、最初に会ったときと再会したときのタケルのテンション感が違うと思いました。それこそが、彼がこの世界になじみ、生きている証なんだなと感じられて、すごく素敵でした。
島﨑 気づいてもらえてうれしい……! アニメを観てくださる皆さんに気づいてもらえるほど大きな変化ではないかもしれません。ただ、日常の中での些細な変化や、そこからにじみ出てくる人間性を表現できたことは、僕自身にとって大きな学びになりました。
──観ている側はお芝居の些細な変化も楽しめそうですね。続いて、ビーは人間の言葉ではないセリフが中心でしたね。
伊藤 私自身、言葉を話さないキャラクターを演じるのが初めてで! 「ピュイ」という鳴き声だけで、どうやって感情を伝えられるか、序盤は試行錯誤の連続でした。でも、音響監督さんから「熱いシーンでは『アピュイッ!』みたいに声を出してもいいですよ」とディレクションをいただいて。「そこまでやっていいんだ!」と、自由に表現の幅を広げていけるようになりました。タケルはビーの言葉がわかりますが、視聴者の皆さんにはわかりません。だからこそ、声のトーンやニュアンスで「今、こういうことを言っているんだろうな」と伝わるように意識しました。
島﨑 ビーは赤ちゃんですからね。彩沙ちゃんがアフレコを通して、より自由に感情表現豊かになっていくのと、ビー自身が物語の中で自我に目覚めて成長していくのが、見事にシンクロしていました。
──伊藤さんもビーの成長とともにお芝居が変化していったということですね。では、ブロライトについてはいかがでしょうか?
小市 ブロライトのディレクションで言うと、第2話の食事シーンで「もっと汚い音で食べていいよ」と言われたのが印象的でした(笑)。そのおかげで「ブロライトって、ここまで遊んでいいんだ!」というキャラクターの幅を掴むことができました。また、美しいエルフのイメージから少し離れた、ある意図を持った声色を意識している部分があります。なぜそうしているのかは、物語の後半で明かされるので、そこに注目していただけるとうれしいです。
──お話を伺っていると、とても自由度の高いアフレコ現場だったことがわかります。
島﨑 本当にいろいろな意味で豊かな現場だったと思います。キャラクターをわかりやすい枠組みにガチガチにはめるというよりは、はみ出しちゃって、壊しちゃってもいい、みたいなところがあって。だからこそ、ブロライトが「もっと汚い音で」とディレクションされたときに、小市くんが肩を回す勢いで、「いいんですか!?」と楽しそうに挑戦しているのが面白かったです(笑)。
小市 (笑)。
島﨑 僕たちだけではなく、豊かにお芝居をされている役者さんがこの後も続々と登場しますので、ご期待ください。
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もしも「探査能力」が使えたら?