映画「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~」のBlu-ray / DVDが3月6日に発売される。劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ初の3DCG映画として2023年8月に公開された同作は、「モテキ」「バクマン。」で知られる大根仁が監督・脚本を手がけ、シンエイ動画と白組がタッグを組んで制作。世界の破滅を望む暗黒のエスパーとなった青年・非理谷充と、同じく超能力を得てエスパーになった野原しんのすけの戦いが描かれる。
Blu-ray / DVDの発売に併せ、コミックナタリーは「クレヨンしんちゃん」の大ファンである女優・渡邉美穂にインタビューを実施。シリーズ初の3DCGとなった映画の感想はもちろん、特装版Blu-ray限定特典の見どころについて熱く語ってもらった。大人になってから「しんちゃん」にハマったという渡邉が考える、「しんちゃん」シリーズの魅力とは? また3Dになったしんちゃんと渡邉の“夢のコラボ”も。
取材・文 / 岡本大介撮影 / 曽我美芽
しんちゃんらしいかわいさがそのまんま3Dに
──劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ初の3DCG作品ということで、期待と不安が入り混じった中での鑑賞だったと思いますが、どんなお気持ちで鑑賞されましたか?
まさにドキドキワクワクですよね。最初にしんちゃんが3Dになると知ったのは映画館で、「もののけニンジャ珍風伝」を観た後の予告でした。そのときはどうなるのか、なかなか想像がつきませんでした。素人目に考えても、しんちゃんのあのなんとも言えない独特な造形を3Dで表現できるのか疑問で、見た目はかなり変わっちゃうのかなって。でもいざ見てみると、しんちゃんらしいかわいさがそのまんま3Dになっていて、1ミリも違和感を感じなかったんです。横を向いてもちゃんとしんちゃんで、思わず「なんで?」って驚きましたし、これってスゴいことですよね? とってもぬるぬる動くし、髪の毛が風でなびく感じとか、モノを投げたときのフワっとした軌跡とか、細かい描写もとにかくキレイで、2Dとはまた違ったよさがあるなって実感しました。
──特に好きなシーンはありますか?
たくさんあります。まず最初のしんちゃんとみさえの追いかけっこからしてもう最高です。冒頭にこのシーンがあるおかげで、3Dの感覚に脳が素早く慣れていくじゃないですか。そういうことも計算されて作られたのかなと思うと、余計にすごいシーンに感じます。それと、ボーちゃんの出番にずっと注目してました。
──渡邉さんはボーちゃん推しなんですよね?
そうなんです。「鼻水まで3Dになってる!」とか、いちいち喜んでましたね(笑)。ほかにも空気階段のおふたりのお芝居が素敵すぎるなとか、とにかく盛りだくさんでした。一番好きなシーンは、倉庫でしんちゃんがカンタム・ロボを操るところ。周りにいる大人たちは、しんちゃんが超能力で世界の危機を救うことを期待しているのに、当のしんちゃんはめちゃめちゃ無邪気にカンタム・ロボと一緒に踊っているじゃないですか。このときの能天気そうに踊って楽しんでいるしんちゃんがかわいくて大好きですし、大人たちとの温度差に思わず笑ってしまいました。
渡邉美穂が使いたい超能力……。
──超能力をテーマにした作品ですが、渡邉さんが個人的に欲しい劇中の超能力はなんですか?
「瞬間移動」一択です。どこでも行けて、かつ交通費もかからないなんて最高です(笑)。しかも自分だけじゃなくて車ごと移動できちゃうなんて、すごくないですか? がんばればうちごとお引っ越しとかもできそうで、どんどん夢が広がりますよね。
──では劇中の超能力以外で何か欲しい能力はありますか?
「読心」ですかね。人の心が読めたらいいなって。
──わりと禁断な能力ですね。
ですよね。「あれ? 私嫌われてる?」ってなったらかなりショックだし(笑)。でもどちらかというと日常で使いたいわけじゃなくて、仕事で使えたらいいなと思ったんです。「こういう立ち振る舞いをしてほしいのね」とか「こんな一言を求められているのね」とかがわかれば最強だなって(笑)。これでもう、どんな現場でもアレコレ悩まずに済むのは大きいですね。
──なるほど。プロ意識が高いんですね。
どうなんですかね? でもちょっとずるをしたい気持ちもあります(笑)。
非理谷くんに対しては、元アイドルとして「申し訳ない!」
──ストーリーとしては、非理谷充くんを中心にネガティブな日本の未来像も示されていて、割とメッセージ性の強い作品でもあります。若者世代としてどうご覧になりましたか?
まず非理谷くんに対しては、元アイドルの立場から他人事ではないというか、「すみません!」って謝りたくなりました(笑)。彼って、推しのアイドルの結婚・引退報道がきっかけでやさぐれちゃうじゃないですか。そこはやっぱり順序が逆で「引退してから結婚してよ」って思うので、とっさに「申し訳ない!」って思っちゃったんですよね。私のアイドル時代を振り返ってみても、たまに「もうダメだよ。助けてよ美穂ちゃん!」みたいなテンションのファンの方がいたので、そういう方にとっては、推しの結婚&引退というのはさぞかしダメージが大きいだろうなって想像しちゃいますね。
──渡邉さん自身はポジティブで明るいキャラで知られていますけど、非理谷くんに共感できるところはありますか?
ありますよ。今はお仕事で忙しくさせていただいていますけど、将来どうなるかはわからないですし、やることなすことうまくいかなくて、ついつい「人生ダメダメだ」って凹んじゃう瞬間もゼロじゃないですから。「少子高齢化」や「老後2000万円問題」とかの悲観的なニュースも多いですし、非理谷くんが100%悪な存在だとは思えませんでした。だからこそ、最後に前を向いた非理谷くんがしんちゃんとグータッチをするシーンは、心からよかったなって思いましたし、そこからのエンディングも原作コミックの世界観を表現したタッチと演出でめちゃめちゃ大好きです。エピローグ的なストーリーが続いて、ちゃんと丸く収まっていて、観ていてほっこりしちゃいました。
──なるほど。非理谷くんのようにしんちゃんから勇気をもらった人も多いかもしれません。
確かに。思いっきり笑いたいっていう人でも楽しめる映画だと思いますけど、今ちょっと悩んでいる人にこそ観てもらいたい要素がいっぱいありましたよね。私は今年24歳になる年なんですけど、周りの同年代の友達でも、社会の壁につまずいて仕事を辞めてしまったりとか、よく聞くんです。だから、そういう人たちにもきっと刺さるんじゃないかなと思ったりしています。
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しんちゃんは「人生の道しるべ」