2024年夏、アニメファンをざわつかせた「しかのこ」とは、いったいなんだったのか?潘めぐみ&藤田咲が語る (2/2)

心配して1週間過ごした人たちに謝ってほしい

──そんなふうに本編外でも話題を振りまきつつ、本編は終盤に突入し、とんでもない最終話が待っていました。

藤田 第11話の最後にのこたんがいなくなり、みんなの記憶からも消えて……みたいな展開が急に来たので、最終話はシリアスだと思っていました。それが蓋を開けてみてたらシリアスな話はなんもなかった(笑)。心配して1週間過ごした人たちに謝ってほしい!

 完全オリジナルで、しかも内容的にも大暴れ。私も、第12話の台本を受け取ったときに「すごいなあ……」って驚きました。

藤田 行くところまで行ったよね。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第12話より。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第12話より。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第12話より。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第12話より。

 全国のゆるキャラが出てきて、たぶん、いろんな自治体に許可を取ったりする、そんな普段とは違う、変わったご苦労もあったんでしょうけど、ここまでできちゃうんですね。しかもシカキャラの先輩である奈良県のせんとくんは、あそこまで深く関わってくれてありがたすぎる(笑)。

藤田 もう、ゆるキャラグランプリに出たらいいんじゃない? のこたん。

 どこかのご当地キャラにいかがでしょうか?

藤田 そこは日野じゃないの?

 ははは、このインタビューで初めて日野に触れました。

──放送中は、作品の舞台である日野より奈良のほうばかり盛り上がっている印象がありました。

 そうそう、奈良市さんと奈良公園さんと奈良信用金庫さん(笑)。奈良のほうが私たちに少し寄ってきてくださって。

藤田 次は私たちが寄っていきたいですね。イベントとかで行きたい。

 ですね。でも熊取(宗一郎)役の斉藤次郎さんが上京してきて初めて住んだのが日野だったり、「しかのこ」にはゆかりがある方々も関わってくれているみたいなので、日野も盛り上がったらうれしいですけど、どうなんでしょうね?

※編注:インタビュー後、日野市でも「しかのこのこのここしたんたん」が大きく扱われ、潘も聖地巡礼をしていた。

──最終回の収録現場はどんな雰囲気でしたか? しんみりしたり?

藤田 みんなしんみりはしてなかったと思います。むしろ、キャストも多かったのでわちゃわちゃしてたかと。私は、最終回の収録のとき、色紙を太田監督とおしおしお先生にサプライズで渡そうとしていて、その準備で忙しくしてました(笑)。

 咲さんがほとんど手配してくださって。

藤田 でも、潘ちゃんにも手伝ってもらったし。

 休み時間になるたびにメインキャスト2人がどこかに消えるという(笑)。女子トイレでせっせと色紙にデザインシールを貼ったりしていたんですけど。そんな感じだったので最終話の収録中の記憶はあまりないですね。でも、色紙を渡したときの太田監督の笑顔はプライスレスじゃありませんでした?

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第7話より。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第7話より。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第7話より。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第7話より。

藤田 プライスレスだったね。

 太田監督とはずっと挨拶とディレクションくらいしかやり取りがなくて、ディスカッションとかをすごくしたわけではなかったので、最後にあの笑顔を見られてよかったです。

 「しかのこ」は毎回朝にみんなで収録してお昼を食べに行ったりとかもできて、すごくいい雰囲気の現場でした。

藤田 (燕谷義治役の)江口拓也くんも「第1話の収録から長く放送していたような雰囲気を感じた」って言ってたもんね。最終話のときも「寂しいね」「悲しいね」というよりはまだ収録が続きそうな感じで「ウェーイ!」って別れたし(笑)。

 ハッピーな雰囲気だった。

藤田 いつまでも続けられる題材や設定の作品だろうから、また◯周年記念とかで集まらせていただきたいです。

声優を始めて20年、まだ初めて知ることってあるんだなあ

──その後も皆さんはABEMAの番組でオープニングテーマを披露するなど活躍されました。そしていよいよBlu-ray BOXが発売されますが、その特典となる第1話のオーディオコメンタリーを先ほど撮られたんですよね?

 はい。もう奇跡的な笑いの連続でした、ミスも含めて(笑)。オープニングの途中で私が歌い出しちゃったんですが、実は版権的に歌っちゃいけないとわかって。結局そこだけキレイに録り直したんですけど。

藤田 オーディオコメンタリーでオープニングを本人なのに歌ってはいけないっていうのは今回初めて知ったので、また1個賢くなりました(笑)。

──どこを直したか探り当てる楽しさもありそうですね。では最後の質問です。おふたりにとって「しかのこのこのここしたんたん」はどんな作品だったと感じますか?

藤田 「しかのこ」は温かい人ばかりで作っていて、人の縁というか温かさが心に染み入ることが何度もありました。だからこしたんに選んでいただけてありがたいし、結果的に作品がバズって多くの人の目に触れましたけど、そこで新たに作品や私たちのことを知ってくれた人たちも温かい人だったらうれしいです。そんなふうに、人の縁というのは回ってくのかなといったことをしみじみ感じています。

──本編が感動の余地ゼロの最終回だった代わりに、いい話を伺えた感じがします。

藤田 やっぱりヤンキーは人の縁を大切にするから(笑)。

 さすが。

藤田 義理と人情の世界に生きてるからな!

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第12話より。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第12話より。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第12話より。

TVアニメ「しかのこのこのここしたんたん」第12話より。

 確かに、咲さんをはじめ「しかのこ」に関わっている人は本当に愛情深い人たちばかりなんですよ。以下同文になってしまうんですけど、本当に人……とシカに恵まれた作品だと思います。「いいものを作ろう」というのはきっと多くの人が思っているけど、その思いがたくさん集まったうえで、さらに「これを楽しもう」という気持ちも共通してあったから、世に出たときにいいエネルギーになったんでしょうね。こんなに見える世界を変えてくれて、「しかのこ」を通じて出会えたみなさんに感謝しております。……結局、「しかのこ」がなんだったかの答えは出ませんでした!(笑)

プロフィール

潘めぐみ(ハンメグミ)

6月3日生まれ、東京都出身。2011年に「HUNTER×HUNTER」の主人公・ゴン=フリークス役で本格的に声優として活動を始める。主な出演作品に「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」セイラ・マス役、「ハピネスチャージプリキュア!」白雪ひめ / キュアプリンセス役、「リトルウィッチアカデミア」アツコ・カガリ役、「ULTRAMAN」北斗星司 / ACE役など多数。

藤田咲(フジタサキ)

10月19日生まれ、東京都出身。2007年8月に発売されたVocaloid、初音ミクのキャラクターボイスを担当する。主な出演作品に「WORKING!!」の伊波まひる役、「進撃の巨人」のユミル役、「ゆるゆり」の杉浦綾乃役、「艦隊これくしょん -艦これ-」の赤城役、「キラキラ☆プリキュアアラモード」琴爪ゆかり / キュアマカロン役など多数。