コミックナタリー Power Push - 「先輩と彼女」
南波あつこ(原作者)×志尊淳(美野原圭吾役)×芳根京子(都築りか役)座談会 少女マンガの“人間くさい”実写化
僕だったらもっとうまくやります
──そこが人間らしいというか。ずるいところ、醜い感情も描かれていますよね。
南波 そうですね。当時、そこはすごく意識しました。美野原もただのいい子じゃないっていうのが人間らしいかなと。
──2人の女性の間で揺れるのは、志尊さんは演じていて罪悪感が沸いてこなかったですか。
志尊 みんな綺麗なものを求めるから、目を背けているところだと思いますけど、この状況ならそうなるよなって僕は思ったんです。自分の周りでも普通にあるようなことだったので、それを忠実に再現したいと思いました。
──みの先輩の気持ちがりかに傾いたのは、どのあたりだと考えましたか?
志尊 シーンを重ねるごとに葵さん何割、りか何割っていう具体的なものを想定してたわけじゃないんですけど、気持ちが揺れてるだろうなっていうのを、りかへの「バカ」の言い方を毎回変えてみて表したりはしてました。完全に気持ちが分かれたのは、葵さんにさよならを告げて、りかから「大好きでした」って言われて吹っ切れるところだと思うので、そこで白黒がハッキリすればいいなって。
──でも葵さんが彼氏と別れたことを知ったときに、あからさまに「えっ」っていう顔をりかの前でしてしまいますよね。これはどんな心境で……。
志尊 なんか……正直、僕だったらもっとうまくやりますね(笑)。
一同 あははは(笑)。
志尊 彼女の前ではこんな顔はしない。飲み込むかな。
芳根 でもきっとそれ、女の子はわかると思いますよ。
志尊 バレたなって思ったら、普段よりもちょっと彼女に優しくする(笑)。でもこの場面で好きだった人が彼氏と別れたって聞いたら、「お?」ってなるのはしょうがないと思うんですよ。
芳根 私はあのシーン撮ってて切なくなりました。「自分と付き合ってくれてるけど、まだ葵さんを忘れてないのでは」っていう疑いが、それまでもあったわけじゃないですか。
南波 ちょっと信用してないところがね(笑)。
芳根 なのでやっぱりか!っていう確信の瞬間というか。
志尊 でもそれがバレて振られて、「やっぱり、りかが好きだ!」って言って戻るあたり、かわいいでしょ?(笑)
芳根 うん。かわいい(笑)。
志尊 やっぱり本当にすごくわかりますね、美野原の気持ちは。例えば誰かとお付き合いしてるときにほかの誰かから言い寄られちゃって、「いや俺、付き合ってる人いるから」って言う人もいると思うんですけど、やっぱり少しは誘惑に感じてしまう人がいると思うんですよ。どうしても。
──先生的には、みの先輩の心がりかのほうに傾いていったのはどこからと意識して描いてたんですか?
南波 りかが酔っ払って、おんぶしてもらって帰るところですかね。ここでようやくちょっと、女の子と意識する。でもはっきり好きだと思ったのは、本当に終盤だと思います。
志尊 りかのことをちゃんと好きになってからの美野原が気になりますね。大学に進学して、ほかの人に言い寄られたら果たして拒絶できるのか。
南波 単行本2巻のおまけ4コマでは、りかが美野原を大学まで迎えにいく姿を描きましたね。実は「続編描かない?」っていうお話も何回かいただいてたんですけど、あんまり想像できないし、これでもう終わってるから蛇足になっちゃうんじゃないかなっていう気がして。逆に怖くて描けなかったんです。
芳根 「先輩と彼女2」やるしかない? みの先輩が卒業して、大学で出会ったかわいい女の子に言い寄られて!
志尊 いやー……危ういと思うよ。
芳根 危ういんだ(笑)。
志尊 この年頃の子たち、そんな感じだと思うよ?(笑)
南波 あははは(笑)。
芳根 嫌だなあー。
志尊 揺れますよ。人はそう簡単に変わんないんです(笑)。
どの世代にもリンクする作品
──では最後にDVD発売に寄せて、読者の方にメッセージをお願いします。
芳根 この作品って、いろんな目線で観れると思うんです。映画館で観てくださった方もDVDだったら何回も観れるし、いろんな角度で楽しんでいただけたらと思いますね。バレンタインも近いので、この作品を観て勇気を出していただけたらうれしいな。
志尊 僕、ストーリーがすごく好きで、周りの役者仲間からも「すごくよかったよ!」って言ってくれたんですよ。「少女マンガ原作って若い子向けの映画なんだろうな」って思う方が多いと思うんですけど、本当に大人の方にも通じる恋愛で、どの年代の人もリンクするような部分がたくさんある、キラキラ甘酸っぱい青春ラブストーリーだと思います。大人の方で恥ずかしくて映画館に行けなかった方にももちろん観てほしいですし、(DVDになったことで)グッと観やすい環境になると思うので、たくさんの人にまだまだこれからも届けていけたらいいなって思います。
南波 2人とも、すごく立派なコメントありがとうございます。本当に原作に忠実に作っていただいたので、原作知ってる方は3次元になるとこうだよっていう感じと、逆にちょっと違うところとかも比較して観ていただけたら面白いと思います。もちろん原作を知らない人も、高校生のピュアな世界を味わっていただけたらうれしいです。
- DVD「先輩と彼女」 / 2016年2月2日発売 / ポニーキャニオン
- DVD「先輩と彼女」
- 特別版 [DVD2枚組] / 6480円 / PCBG-52567
- 通常版 [DVD] / 4104円 / PCBG-52568
DISC 1
本編103分
DISC 2(特別版付属)
特典映像 約70分
- キャスト座談会
- メイキング映像完全版
- 初日舞台挨拶・完成披露上映会ハイライトほか収録予定
特別版仕様
- パッケージ:三方背ケース 南波あつこ描き下ろしイラスト使用の豪華デジパック仕様
- 36Pブックレット(未公開取り下ろし写真掲載・解説・秘蔵写真集・メイキング写真集)
キャスト / スタッフ
出演:志尊淳、芳根京子、小島梨里杏、戸塚純貴、水谷果穂、渡辺真起子 ほか
原作:南波あつこ『先輩と彼女』(講談社「別冊フレンド」刊)
脚本:和田清人
監督:池田千尋
音楽:茂野雅道
主題歌:「合図」/aiko (ポニーキャニオン)
製作:「先輩と彼女」製作委員会
制作プロダクション:フラミンゴ
制作協力:ブースタープロジェクト
©2015「先輩と彼女」製作委員会 ©南波あつこ / 講談社
- 南波あつこ「先輩と彼女」 / 発売中 / 講談社
- 「先輩と彼女」 1巻 / 463円
- 「先輩と彼女」 2巻 / 463円
あらすじ
都築りか。高校1年生。野望は「甘い恋」。
だけど好きになったのは他の女の人に恋をしている、みの先輩……。先輩が好き──。
たとえ、あたしではない別の人を見つめていても。初めておぼえた嫉妬と絶望。
そして先輩の選択は?
どんなにどんなに想っても届かない、甘くて苦い青春の恋物語。
あらすじ
吟蔵から誘ってくれた、2人だけで行く花火大会。差し出された手も、間近な花火も、うれしくてずっと一緒にいたくって、理緒の想いは、どうしようもなく言葉となってあふれてしまう。そしてそのとき、吟蔵は──!? 青春よりも熱く高まる、「運命の夏恋」ストーリー第5巻!!
南波あつこ(ナンバアツコ)
9月28日生まれ。O型。「バランス」で第16回別冊フレンド新人まんが大賞佳作を受賞してデビュー。2012年に「スプラウト」がドラマ化、2015年に「先輩と彼女」が実写映画化された。そのほか代表作に「隣のあたし」、別冊フレンド(講談社)にて連載中の「青Ao-Natsu夏」など。
志尊淳(シソンジュン)
1995年3月5日生まれ。東京都出身。2014年、「烈車戦隊トッキュウジャー」にて主演のライト/トッキュウ1号役を務める。2015年にはドラマ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「表参道高校合唱部!」「5→9~私に恋したお坊さん~」に出演したほか、映画「先輩と彼女」に主演。
芳根京子(ヨシネキョウコ)
1997年2月28日生まれ、東京都出身。2013年、ドラマ「ラスト♡シンデレラ」にて女優デビュー。その後NHK連続テレビ小説「花子とアン」、映画「幕が上がる」などに出演し、ドラマ初主演作「表参道高校合唱部!」の香川真琴役で注目を集める。