コミックナタリー Power Push - 「先輩と彼女」
南波あつこ(原作者)×志尊淳(美野原圭吾役)×芳根京子(都築りか役)座談会 少女マンガの“人間くさい”実写化
全2巻ながら100万部を突破した、南波あつこの恋愛マンガ「先輩と彼女」。別の女性を好きだと知っても先輩を好きな気持ちを止められない女子高生の、切ない片想いを描いた恋愛ストーリーだ。美野原圭吾役に志尊淳、都築りか役に芳根京子という気鋭の若手俳優を起用した実写映画版が、DVDとなって2月2日にリリースされる。
映画公開時には「壁ドン」「顎クイ」などの少女マンガ原作らしいキーワードで話題になったが、それにとどまらず実際の作品は登場人物たちの心の動きを繊細に描き、非常に人間らしさに満ちた仕上がりになっている。コミックナタリーでは原作者の南波とメインキャストの2人に、作品の魅力や、マンガを忠実に再現しているという映画の秘話を語り合ってもらった。
取材・文 / 岸野恵加 撮影 / 上山陽介
少女マンガ的な王子様ではなく人間くさい男子を
芳根京子 先生、ご無沙汰してます。ご出産おめでとうございます!
南波あつこ ありがとうございます! 久々におふたりにお会いできてうれしいです。(昨年)10月の初日舞台挨拶のとき以来……ですね。
──お会いになるのは何度目くらいですか?
志尊淳 5回目くらいかな? 撮影現場にもいらしていただいて。
──なるほど。3人での座談会は初めてということで、作品が生まれたときのお話もお伺いできればと思います。そもそも南波先生は、どんな作品を描こうと思って「先輩と彼女」を始めたんでしょうか。
南波 あざとい言い方になってしまうんですけど、みんなが好むだろうと思ったところを狙ったというか……。この前の連載がスポーツものだったんですけど、スポーツに興味がないと読んでもらえないな、とちょっと感じたんですね。それで担当さんと「次は超王道の恋愛ストーリーを描こう」って話して。
──おふたりは初めて「先輩と彼女」を読んだとき、どう感じましたか。
芳根 自分がりかちゃんを演じるっていうことが常に頭にあったこともあって、もうりかちゃん目線でしか読めなくなっちゃって。切なくて切なくて泣きました。私がマンガを読んで感じた気持ちを、映画を観てくださった方にも感じていただかないといけないと思って、プレッシャーを感じましたね。
志尊 僕はそれまで少女マンガを読んだことがなかったんです。やっぱり僕も美野原目線で読んでしまうんですけど、すごくキラキラした世界で。女性が憧れる世界だとは感じたんですけど、なんだろう、現実味があるというか。ちょっと人間っぽさがあるように感じて、普通にストーリーとして楽しませていただきました。
──南波先生も、別冊フレンド(講談社)での志尊さんとの対談で「普通の男の子を描こうと思った」とお話しされてましたよね。
南波 そうですね。主人公の女の子の恋っていうのは少女マンガのテーマですけど、かつ男子の片想いも描きたくて。それだと少女マンガ的な王子様ではなくちょっと人間くさいキャラがいいかなと、生まれたのが美野原というキャラクターでした。
人生初の茶髪でした
──映画ではマンガのストーリーやシーンが原作に忠実に再現されていますが、先生からリクエストを出された部分もあったんでしょうか?
南波 はい。結構……口を出させていただきました(笑)。最初にパッと見て「このキャラっぽい」っていうところは重視してほしくて。一番は髪の色とか長さですかね。芳根さんには髪を染めてもらって。
芳根 人生初の茶髪だったんです! だからうれしかったですよ。
南波 すごくありがたかったです。今の黒髪とは印象が違いますよね。
芳根 そうですね、また最近染め直したので今は真っ黒なんですけど。茶髪のときはかなり印象違うって言われましたね。うふふ(笑)。
南波 あとは制服とか私服も一応要望を聞いていただいたんですけど、スタッフさんにやっていただいたものでもうばっちりで。てっちゃんが中にパーカー着てるのは原作にはなかったんですが、彼っぽくていいなと思いましたね。あと志尊さんは、なんでしたっけ、インナーを……。
志尊 ああ。2月の撮影で四季すべてを撮ったんですけど、夏のシーンでYシャツを、中にヒートテックとか着ないで直に着たんです。僕、役を生きることに精一杯で、ビジュアル面をあんまり意識することができなくて。作品の世界観を崩さずに何かできることはないかなと考えたときに、シルエットを重視することだと思ったんです。
──2月に夏のシーンの撮影は過酷ですね……。
芳根 私もノースリーブで走ったり(笑)。
志尊 でも映像で映し出されてるのを見ると、本当に春夏秋冬に見えて素敵でしたね。窓の外にカメラがパンしていったら、春から夏に移り変わったり。
南波 ここまで忠実に再現してくれることってあるんだ、と。なので逆に原作とちょっと見せ方が違うところも楽しかったりして。LINE風のメッセージがホワンと浮かんで出てくるような演出とか。
志尊 僕たちも原作に忠実にやろうっていう意識はしてました。でもマンガと映画の台本ではシーンごとのつながり方もまた変わってくるので、調整しつつ。
芳根 どこまでマンガに近づけられるか、でもちゃんと生きてる人間にしたい。その加減は監督とすごく相談したよね。
志尊 やっぱりマンガの世界観を崩したくないので、アドリブも好き勝手にはできない。テストで言ってみたセリフを監督に「うーん違ったな」「そのアドリブはいいね」って都度確認してもらってたよね。
芳根 うんうん。
気が付いたら窓に座ってた
──マンガの構図がそのまま映像になっているところもたくさんありましたね。みの先輩(美野原)が窓に腰掛けているのを、りかが見上げるシーンとか。
志尊 あれは最初から原作を再現しようとしたわけじゃなくて、僕が無意識にやったことを監督が採用してくれたんですよ。部室の雰囲気に慣れたくて、休憩を早めに切り上げて次の芝居について考えてたんですけど、気が付いたら窓に座ってて。そしたら監督がヒョコって現れて、「志尊くんそれカッコいい、採用!」ってそのまま使われることになって。すごくお尻痛いんですけどね、あれ。
南波 そうですよね(笑)。サッシがありますもんね。
志尊 細いサッシに、うまくお尻をはめて(笑)。
芳根 でも私もその画を見たときに、マンガをポンって思い出しましたね。「あ、重なった」と思って。
志尊 何も考えてなかったんだけどね。自然にあそこに。
──実際に志尊さんの学生時代も、窓が定位置だったんですか?
志尊 いや、座ってないです(笑)。
一同 あははは(笑)。
志尊 美野原はどこにいるんだろう……って芝居場の中で考えたときに、ソファに大胆に座ってる感じでもなさそうだな、と。ほかにもソファに体育座りとか何個か考えたんですけど、その中で窓に座るのが採用されました。
南波 もともと、なんで美野原は窓に座り始めたんだろう。自分でもよくわからないんですけど(笑)、たぶん葵がパイプ椅子に座ってて、その視界に入ろうとしたんじゃないですかね。
──なるほど。最終回ではりかがみの先輩を見下ろすっていう、逆の構図になっているのがまた素敵ですよね。
志尊 そっちは、監督が意図して原作に寄せたんだと思います。
芳根 あそこ、すごく好きです。マンガを読んでても「りかちゃん、よかったね」って言いたくなる。本当に好きですね。
南波 ありがとうございます。
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- DVD「先輩と彼女」 / 2016年2月2日発売 / ポニーキャニオン
- DVD「先輩と彼女」
- 特別版 [DVD2枚組] / 6480円 / PCBG-52567
- 通常版 [DVD] / 4104円 / PCBG-52568
DISC 1
本編103分
DISC 2(特別版付属)
特典映像 約70分
- キャスト座談会
- メイキング映像完全版
- 初日舞台挨拶・完成披露上映会ハイライトほか収録予定
特別版仕様
- パッケージ:三方背ケース 南波あつこ描き下ろしイラスト使用の豪華デジパック仕様
- 36Pブックレット(未公開取り下ろし写真掲載・解説・秘蔵写真集・メイキング写真集)
キャスト / スタッフ
出演:志尊淳、芳根京子、小島梨里杏、戸塚純貴、水谷果穂、渡辺真起子 ほか
原作:南波あつこ『先輩と彼女』(講談社「別冊フレンド」刊)
脚本:和田清人
監督:池田千尋
音楽:茂野雅道
主題歌:「合図」/aiko (ポニーキャニオン)
製作:「先輩と彼女」製作委員会
制作プロダクション:フラミンゴ
制作協力:ブースタープロジェクト
©2015「先輩と彼女」製作委員会 ©南波あつこ / 講談社
- 南波あつこ「先輩と彼女」 / 発売中 / 講談社
- 「先輩と彼女」 1巻 / 463円
- 「先輩と彼女」 2巻 / 463円
あらすじ
都築りか。高校1年生。野望は「甘い恋」。
だけど好きになったのは他の女の人に恋をしている、みの先輩……。先輩が好き──。
たとえ、あたしではない別の人を見つめていても。初めておぼえた嫉妬と絶望。
そして先輩の選択は?
どんなにどんなに想っても届かない、甘くて苦い青春の恋物語。
あらすじ
吟蔵から誘ってくれた、2人だけで行く花火大会。差し出された手も、間近な花火も、うれしくてずっと一緒にいたくって、理緒の想いは、どうしようもなく言葉となってあふれてしまう。そしてそのとき、吟蔵は──!? 青春よりも熱く高まる、「運命の夏恋」ストーリー第5巻!!
南波あつこ(ナンバアツコ)
9月28日生まれ。O型。「バランス」で第16回別冊フレンド新人まんが大賞佳作を受賞してデビュー。2012年に「スプラウト」がドラマ化、2015年に「先輩と彼女」が実写映画化された。そのほか代表作に「隣のあたし」、別冊フレンド(講談社)にて連載中の「青Ao-Natsu夏」など。
志尊淳(シソンジュン)
1995年3月5日生まれ。東京都出身。2014年、「烈車戦隊トッキュウジャー」にて主演のライト/トッキュウ1号役を務める。2015年にはドラマ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「表参道高校合唱部!」「5→9~私に恋したお坊さん~」に出演したほか、映画「先輩と彼女」に主演。
芳根京子(ヨシネキョウコ)
1997年2月28日生まれ、東京都出身。2013年、ドラマ「ラスト♡シンデレラ」にて女優デビュー。その後NHK連続テレビ小説「花子とアン」、映画「幕が上がる」などに出演し、ドラマ初主演作「表参道高校合唱部!」の香川真琴役で注目を集める。