コミックナタリー Power Push -「坂本ですが?」
ツッコミが存在しない「変」なマンガをアニメ化することへの挑戦 監督・高松信司、声優・緑川光、原作者・佐野菜見鼎談
手押し相撲さえ「ドラゴンボール」級バトルに
──佐野さんは、アフレコ現場を見に行ったりはしてるんですか?
佐野 はい。
高松 ほぼ9割ぐらいいらっしゃって(笑)。
──要望を出したりとかはしてるんでしょうか。
佐野 そうですね、ちょいちょい。
高松 私からも「ここではこのキャラはどういう気持ち?」とか佐野さんに聞いて、反映させましたね。
佐野 監督は私の意図を本当に汲んでくれてるので、そこにプラスしての、些細なことだけですね。例えば「ここは劇団四季みたいな感じで」とか。
──“劇団四季みたいな感じ”?
佐野 文化祭の準備の回で、女子生徒何人かで坂本を取り合うみたいなシーンがあるんですけど、女の子が口々に「私よ」「私よ」って言ったあと、最後にひとりが「イッツミー!!」って言うんですよ。
高松 その「イッツミー!!」を劇団四季みたいに歌い上げてくれって言われて、何バージョンも録りました。
佐野 でもあれ、浮いてましたよね?(笑)
高松 それはそれで浮いてたのが面白かったので、そのままオンエアしますけど(笑)。
──楽しみにしてます。最初の話とも繋がりますけど、そういう「どこまでやったら浮くか」っていうさじ加減が本当に難しそうな作品ですよね。
高松 難しいですね。例えば「銀魂」とかはひと言ボケたら10個ツッコむみたいなやつなんで、テンポでどんどんいっちゃえばいいんですけど、「坂本」は間合いが難しい。だから編集とかも探り探りな感じで。
──アニメならではのいい部分、観てほしい部分というとどこでしょう。
高松 「スタイリッシュにするにはどうしたらいいかな」と考えて、「音楽でスタイリッシュを作ろう」ってことで、今回はそこを意識してやってますね。
──1話だけ観させていただいたんですけど、確かに要所要所で優雅な音楽が流れていました。
高松 あとは画面をキラキラさせたりする演出もマンガではできないかな。最初は画面いっぱいにキラキラしてたんで、「ちょっとキラキラさせすぎたかな」って思ったんですけど、スタッフに「このぐらいやらないとダメですよ」とか言われて、「じゃあこれでいくか」とか。そのあたりは探り探りですね。
──佐野さんはアニメを観て「これはマンガじゃできないな」と思ったことは。
佐野 アクションシーンですね。例えば8823(はやぶさ)先輩との手押し相撲。あそこのアクションがまあ秀逸で、ちょっと悔しかったです。「これが描きたかったんだよ!」って(笑)。
高松 あそこは演出さんとか作画さんとかにも、「ただ手押し相撲やってるだけなんだけど『ドラゴンボール』のバトルシーンみたいにやろう」って言って、ものすごいハードな手押し相撲をやってるんですよ。
佐野 超カッコいいんです。
──「ドラゴンボール」みたいな手押し相撲、あんまりイメージができないんですけど(笑)。
佐野 そこはお楽しみに(笑)。
高松 お楽しみにですよ(笑)。
鈴木達央や前野智昭が名もなきキャラを演じるクラス
──緑川さん的には、このアニメの見どころはどんなところですか?
緑川 最近だともうほぼ不可能に近いような、豪華なキャスト陣でお贈りしてるので、それが楽しいですよね。
高松 ただのクラスメイトに堀江由衣さんとか田村ゆかりさんがいるっていう(笑)。あとは石田(彰)さんとか杉田(智和)さんとか檜山(修之)さんとか(参照:「坂本ですが?」追加キャストに石田彰、堀江由衣ら豪華20名!PVも解禁)。なんて言うのかな、普段は名もない高校生とかをやらない人たち。
──いろいろ個性的な役が出てる作品でこの豪華声優陣ならまだわかるんです。だけど「坂本ですが?」は、坂本以外のキャラはほぼ名前すら出てこないような作品ですよね。そんなクラスメイトたちを豪華声優陣が担当してるのが、すごいなと。
高松 それはですね、緑川さんを高校生として主役に据えるっていうことは、周りが本当に若手だと差がついちゃうから、レベルを一段上げたんですよ。だから鈴木(達央)さんと前野(智昭)さんが本当に、原作では名前がないクラスメイトをやってるっていうね。終盤で「すっとこどっこいズ」って呼ばれてるだけのキャラ(笑)。今回、アニメのために先生に名前を付けてもらったキャラ、多いんですよ。シナリオを書き始めたときに、「不良A」「不良B」「不良C」で誰が誰だかわからないから(笑)。
一同 あははは(笑)。
──キャラ表の「安田(CV:鈴木達央)」「森田(CV:前野智昭)」とか書いてあるのを見ても、「安田? 森田? これ誰だっけ?」と、顔が浮かばないですからね(笑)。
緑川 だけど普段こういう役が回ってこないような感じの人が、「回ってきたからちょっとがんばっちゃおうかな」みたいなのも垣間見れるし、すごく新鮮でしたね。信頼できる人たちがいい芝居をしてくれました。男性・女性通してここまですごいメンツっていうのはそうそうないですね。
高松 そうですね、女性陣だって田村ゆかりさんとか堀江由衣さんとか、全員が主役級ですから。
佐野 こんな方々に出演してもらえて、めちゃくちゃラッキーですよ。
緑川 恐ろしいクラスですよね(笑)。
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- アニメ「坂本ですが? 」
TBS:2016年4月7日(木)26:28~
MBS:2016年4月8日(金)27:10~
CBC:2016年4月7日(木)27:24~(※初回の4月7日は27:10~)
BS-TBS:2016年4月9日(土)25:30~
CS-TBSチャンネル1:2016年4月17日(日)25:30~
あらすじ
この物語は、とあるクール、いや、クーレストな高校生・坂本の学園生活を綴ったものである──。
キャスト
- 坂本:緑川光
- あっちゃん:杉田智和
- ケンケン:檜山修之
- 黒沼あいな:堀江由衣
- カナちゃん:田村ゆかり
- 八木さん:生天目仁美
- エリカ:高橋美佳子
- 安田:鈴木達央
- 角田先生:中田譲治
- 丸山先輩:稲田徹
- 深瀬さん:岩田光央
- 久保田吉伸:石田彰
- まりお:武内健
- 瀬良裕也:森久保祥太郎
- 藤田恵:中原麻衣
- みーちゃん:植田佳奈
- 田中さん:藤田咲
- 森田:前野智昭
- 小林茂:矢部雅史
- 久保田茂美:くじら
- 8823先輩:遊佐浩二
- 佐野菜見「坂本ですが?」1巻~4巻 / 発売中 / 670円 / KADOKAWA
- 「坂本ですが?」1巻
- 「坂本ですが?」2巻
- 「坂本ですが?」3巻
- 「坂本ですが?」4巻
佐野菜見(サノナミ)
1987年4月17日生まれ。兵庫県出身。2010年4月、Fellows! Vol.10A(エンターブレイン)に掲載された「ノンシュガーコーヒー」でデビュー。2011年1月、同誌の読者プレゼント用小冊子「Costume Fellows! 2011」に、6ページの短編「肩幅ひろし」が収録される。2011年8月、Fellows! Vol.18に読切として執筆した「坂本ですが?」が人気を博し連載化。その後、Fellows!の後継誌ハルタ(エンターブレイン)にて連載、2015年12月に完結した。
緑川光(ミドリカワヒカル)
5月2日生まれ。栃木県出身。1988年にテレビアニメ「キテレツ大百科」で声優デビュー。1991年「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」の新条直輝役で初めて名前付きの役を担当する。その後もアニメ「SLAM DUNK」の流川楓や「新機動戦記ガンダムW」のヒイロ・ユイ、「烈火の炎」の水鏡凍季也など二枚目かつクールな役を演じるほか、アニメ、ゲーム、特撮など数多くの番組に出演している。
高松信司(タカマツシンジ)
1961年12月3日生まれ。栃木県出身。1983年にサンライズ入社後、1985年に「機動戦士Zガンダム」で演出デビュー、1990年のOVA「機動戦士SDガンダム SDガンダム猛レース」で監督デビュー。「勇者特急マイトガイン」などの勇者シリーズ、「機動新世紀ガンダムX」などのガンダムシリーズに携わったあと、1998年より「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、2006年より「銀魂」を担当。その他の代表作に「スクールランブル」「美男高校地球防衛部LOVE!」など多数。
2016年5月2日更新