橘オレコがマンガアプリ・マンガワン(小学館)にて連載中の「プロミス・シンデレラ」1巻が発売された。同作は旦那に不倫され、路上生活を余儀なくされたアラサー女子・早梅(はやめ)に金持ちの男子高生・壱成(いっせい)がとあるゲームを持ちかけるところから始まる物語。作者が自身のTwitterで発表している関連イラストやマンガもたびたび大きく拡散され話題を呼んでいる。
コミックナタリーでは単行本1巻の発売を記念し、橘にインタビューを実施。インタビューを受けるのは初めてだという橘に、「プロミス・シンデレラ」が生まれた経緯や作品へのこだわりはもちろん、「絵を描きたい」という熱い思いについても語ってもらった。またインタビューの最後にはコミックナタリーのために描き下ろされたマンガも掲載しているので、そちらもあわせて楽しんでほしい。
取材・文 / 熊瀬哲子
橘オレコが自身のTwitterアカウントで公開している男女のさまざまなシチュエーションを描いたイラストやマンガは、多いもので10万超RT、約50万いいねを記録するほど注目を集めている(参照:橘オレコ (@oreco730) | Twitter)。
その中でもシリーズ化して投稿されているのは、「#プロミスシンデレラ」「#バツイチアラサー女子と男子高校生」というハッシュタグの付いた作品。あっさりとした性格のアラサー女子と、素直になれないながらも彼女に好意を寄せる男子高校生の姿が描かれ、もどかしくもいじらしい2人の関係に胸をときめかせる声が多く上がっている。
アラサー女子と男子高校生の出会いを描いたマンガは、「プロミス・シンデレラ」というタイトルでマンガアプリ・マンガワン(小学館)にて連載中。専業主婦のアラサー女子・早梅が旦那に不倫され、離婚を突きつけられたうえ、貯金の入ったバッグを盗まれてしまうという散々な展開から物語はスタートする。路上生活を余儀なくされた早梅の前に現れたのは、金持ちの男子高校生・壱成。自身の屋敷に早梅を招いた壱成は「しばらくひと部屋お前に貸してやる」と彼女に手を差し伸べながら、その条件として“リアル人生ゲーム”を持ちかけるのだった。
ちょっと粋がってる男子が好き
──「#プロミスシンデレラ」「#バツイチアラサー女子と男子高校生」というハッシュタグとともにTwitterに投稿されている「プロミス・シンデレラ」のイラストやマンガは、毎回大きく拡散されるなど話題です。ここまでの反響は橘さん自身予想されていましたか?
エイプリルフールサービス#バツイチアラサー女子と男子高校生 pic.twitter.com/e4ZXyiW3LZ
— 橘オレコ@1巻6/12発売 (@oreco730) 2018年4月1日
いえいえ、とにかくびっくりです。ただマンガを描きたくて好きに載っけていただけなので、徐々に反響が大きくなっていくことに驚きました。Twitterの投稿をきっかけに本編を読んでくださる方もたくさんいらっしゃいましたし、連載が更新されるたびに「楽しみにしてます」と感想をいただけるようになって、それがマンガを描くエネルギー源になっています。
──「プロミス・シンデレラ」のイラストを初めてTwitterで公開されたのは、2018年1月の連載開始よりも前の11月のことでしたよね(参照:橘オレコ (@oreco730) | Twitter)。その後も11月だけで10本以上イラストやマンガを投稿されています。
私、やりたくなったら我慢できないタイプなんですよ。その頃はまだ連載の企画中だったと思うんですけど、描きたいものだけ描いて、そのままTwitterにも「あげちゃえ」と(笑)。
──結果的にそれが本編を読まれるきっかけにもなっていったわけですしね。Twitterに投稿されているマンガでは、壱成が素直になれないながらも早梅のことを思う姿が描かれていて、そんな様子を楽しんでいる読者は多いと思うのですが、意外にも本編ではシリアスなシーンが多いです。
なのでTwitterに載せているような2人の姿が早く見たいという声も結構いただいてますね。Twitterに載せているマンガは本編から半年後という設定で描いているんですが、本編の2人もいつかはああいった雰囲気になりますので、本編は本編で、今しか見られない関係を楽しんでいただけたらと思います。pixivコミックでも「プロミス・シンデレラ」のスピンオフ連載「#バツイチアラサー女子と男子高校生」が始まることになったんですが(参照:アラサー女を落とすべく高校生が奮闘するラブコメ!マンガワン連載のスピンオフ)、こちらはTwitterで描いているものと同じく、本編から半年経った時間軸の、壱成視点の物語になります。“壱成が早梅をどうやって落とすか”をコンセプトに描いていて、基本的に壱成がアホです(笑)。本編を見てつらくなったときは、あわせて読んでもらえたらうれしいです。
──そちらの連載も楽しみです。本編の壱成はTwitterのマンガに比べると、まだ早梅に心を開いていないのもあるせいか、だいぶひねくれた奴に見えました。
たぶん私が好きなんだと思います。ひねくれた男の子というか、ちょっと粋がってるような子が。私自身、子供を産んでから母性本能が一段と芽生えたのもあり、「まったく、しょうがない奴だな」みたいな気持ちで描いてます(笑)。早梅も壱成とは10歳年が離れているので、それに近い感覚で接している部分はあるかもしれません。もう少し年が近かったらただただ嫌な奴で終わっていたかもしれないですが、年が離れている分、許せるところもあるのかなと。
──壱成は本編の早くから早梅のことを意識しているシーンが見受けられますが、一方の早梅はまったくそんな素振りを見せないですよね。
そこをどうやって描いていくかは難しいところだなと思ってます。10歳差っていうのを想像すると、女性側はどんな距離感で接するものなのかなと。早梅は年のこととかはあんまり気にしないタイプですけど、出会いが出会いですし、壱成のほうが早梅に対してツンツンした態度を取っているので、恋愛対象として意識することはまだないだろうなと思います。
──まさか壱成に好意を寄せられているとは思ってもなさそうです。
そこに気付いたときどうなるかが楽しみですよね。「いつ気付かせようかな?」って、そこは一番楽しいところなのでじっくりと考えているところです(笑)。
障害を乗り越えた男女の関係を想像するのが好き
──そもそも「プロミス・シンデレラ」の物語はどのように思いついたんですか?
きっかけは私の旦那なんですが、旦那は昔からお金に苦労する人生を過ごしてきて。私の家も決して裕福なわけではないんですけど、割と正反対な生き方をしてきたんです。旦那の話を聞くたびに、お互いいろんなものに対しての考え方の違いが面白いなと思って、それが早梅のキャラ設定につながったのかなと思います。私はハッキリとものごとを言えるタイプではないんですけど、旦那はなんでも思ったことをバーっと言うタイプで、内心それを羨ましいと思っていて。私は早梅を描くことで、早梅のように言いたいことを言えるような人になった気でいるみたいな。そうやって楽しんでるところもあるかもしれません。
──早梅は基本的には相手や状況も関係なしに、思ったことをハッキリと口にできる人ですし、その気の強さは行動にも現れていますよね。
第4話で早梅が壱成に連れられて高級クラブを訪れたとき、早梅がケーキに壱成の顔面を押し付けるシーンがありますけど、あのシーンはお気に入りで。描いてて気持ちよかったです(笑)。
──さらにその直後にメグミの顔にもケーキをお見舞いしてますしね(笑)。「プロミス・シンデレラ」は男女の年の差を描いている作品というのも見どころの1つだと思います。
もともと年の差の恋愛を描けたら面白そうだなとは思っていたんです。私は別に年下が好きとかではなくて、どちらかというとおじさんとかのほうが好きなんですけど。
──そうなんですか。
実は初期案だと早梅と壱成のほかに、もう1人キャラクターがいたんです。早梅を中心に10歳上と10歳下の関係を描いていこうかと考えていたんですけど、最初のうちからやることが多すぎるからとその設定は一旦なしになって。ただ、その設定も完全にゼロになったわけではないので、もしかしたら後々何かの形で出てくるかもしれません。
──それは今後が気になります! 年の差とひとくくりに言っても、早梅と壱成の10歳という年齢差は結構大きなものに感じます。
男性のほうが10歳年上っていうよりも、ハードルが高いような気がしますよね。その障害を乗り越えられるよう、男の子のほうにがんばってもらおうかなと思っています。個人的には早々にくっつけてイチャイチャさせるのはそんなに萌えないというか、順調にうまくいく恋愛よりは“ケンカップル”のような仲だったり、何か1つ障害があるほうが好きなんです。それを乗り越えたときに2人がどうなるのかを妄想するのが好きで。「プロミス・シンデレラ」でも壱成から早梅に一方的に矢印が出てるのは完全に私の好みです(笑)。自分でも楽しみながらネームを考えてます。
──1巻では早梅と壱成の出会い、そして早梅と夫である正弘の離婚問題についてを中心に描かれていますが、今後はキャラクターも増えていくのでしょうか。
そうですね。もう早く出したくって!(笑) 今後はキャラクターも増えて、それぞれの関係性もいろいろと変わっていく予定です。
──まだまだ物語は序盤だと思いますが、橘さんは「プロミス・シンデレラ」を描かれるうえでのテーマはなんだと考えていますか?
難しいですね……。正直、そういったことはあまり考えてなくて。私は少年マンガを読んで育ってきたので、男女を描くにしてもベタベタするような関係というよりは、もっとその人たちの人生を描いた人間ドラマみたいなものが描けたらいいなと考えているというか……。でも、結局はその場その場で読んでいて楽しければいいかなと。その話が面白くなればいいかなっていう感覚で、自分自身が楽しみながら描いてますね。だから特にこだわりとかはないんです。逆にそういうテーマみたいなものをハッキリと考えていないからこその楽しみもあって。どうやってこの2人の距離を縮めていこうかなとか、いろいろ想像しながら描いていくのが楽しいんです。
──なるほど。
ただ1つ挙げるとするなら、タイトルにも入っている「シンデレラ」はテーマになっているかもしれません。不遇な環境からどうやって幸せになっていくのか。幸せになるために環境や育ちは関係ない。そういったことを描いていけたらいいなと思っています。
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朝の3時に起きて絵を描いてます
- 橘オレコ「プロミス・シンデレラ①」
- 2018年6月12日発売 / 小学館
-
コミックス 596円
-
Kindle版(単話配信)
各108円
つつましく、平穏な暮らしを送る専業主婦の早梅。
しかし、突如旦那に不倫され離婚、スリにあい路上生活を余儀なくされる。
受難の続く彼女の前に現れたのは、性格の悪そうな金持ちの男子高生・壱成。
この男との出会いが早梅の人生を一変させる……。
“人生”に必要なのは愛か、金か、それとも運か──!?
銭が紡ぐ、アラサー女子と男子高校性の“リアル人生ゲーム”が始まる!!
- 「#バツイチアラサー女子と男子高校生」
pixivコミックでスピンオフ連載「#バツイチアラサー女子と男子高校生」が連載中! 本編から半年後の物語が壱成視点で描かれる。
- 橘オレコ(タチバナオレコ)
- 2017年、小学館のマンガワンに掲載された読み切り「主任様と新人くん」で商業デビュー。2018年1月1日よりマンガワンと裏サンデーにて「プロミス・シンデレラ」を連載中。6月からはpixivコミックにて同作のスピンオフとなる「#バツイチアラサー女子と男子高校生」の連載をスタートさせた。