インタビュー
カメラの先でこちらを見返してくれている目が楽しんでくれているといいな
──石井さんは今年の2月にプリキュアシンガーとしてデビューされましたが、大学を卒業されたのは今年の春なんですよね。
石井あみ はい。デビューした頃は大学生活を送りながら歌っていたこともあり、まだプリキュアシンガーになったことを実感しきれていなかったように思います。私は子供の頃から何よりも「プリキュア」が大好きだったので、大人になってその主題歌を歌わせていただけることが本当に夢のようでした。最初は「プリキュアみたいにカッコよく、そして自分らしく歌いたい」という憧れのような気持ちが強かったのですが、ライブを重ねるうちに「プリキュアのカッコよさや広がる世界を歌で皆さんに伝えたい」という決意も湧いてきました。それはライブに来てくださるお客さんがいてくれたからこそ生まれた気持ちなので、今は感謝の気持ちを歌に込めて、パワー全開で歌いたいと思っています。
──子供の頃からプリキュアが好きだったんですね。
石井 「ふたりはプリキュア」から大好きでしたね。キュアブラックとキュアホワイトの2人がかわいくて、カッコよくて、ずっと観ていました。次の「ふたりはプリキュア Max Heart」ではシャイニールミナスという推しができて、幼稚園でハロウィンのイベントがあったときにみんながドレスを着ている中、私は買ってもらったシャイニールミナスのコスチュームを着ていました。髪の毛をウェーブにするために、お母さんに三つ編みをしてもらってふわふわのツインテールにしていましたね(笑)。
北川理恵 その頃の子供が「プリキュア」の20周年イヤーにオープニング主題歌を歌っているって、すごいことですよね。
──「プリキュア」の歴史あってこそのつながりを感じますね。そんな石井さんのことを、北川さんはどうご覧になっていますか?
北川 最初に会ったとき、あみちゃんはとても緊張していました。でも、お仕事やプライベートでコミュニケーションを重ねるうちに、どんどん彼女のよさや天然っぷりが見えてきて……ひと言で言うと、すごく面白い子なんです(笑)。普段はふわふわしているのに「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」を歌うときの背中や、澄み切った伸びやかな声で歌う姿がカッコよくて、そのギャップがあみちゃんのよさだと思います。
──石井さんから見た北川さんはいかがですか?
石井 私は理恵さんがライブで見せるパフォーマンスが本当に大好きです。抜群の歌唱力に加えて目で訴える力がすごいんです。振りや1つひとつの動きも大きくて華やかで「全身で表現するってこういうことなんだ」と感じますね。歌も振りも表情もすごく参考にさせていただいているので、私の憧れであり理想のプリキュアシンガーは理恵さんなんです!
北川 恥ずかしいよ(笑)。私はもともとずっとミュージカルをやっていて「客席の奥まで伝われ!」という気持ちで歌ってきたので、染みついているものがあるのかもしれません。あとは、自分自身が楽しむことも大切にしていますね。それは子供たちから学んだことなのですが、私が緊張していると、その緊張が子供にも伝わってしまうんです。子供たちは私が楽しめば楽しむほどワクワクしてくれるということがわかったときから、まずは楽しむことを意識しています。
──先ほど石井さんが言っていた目力や表情といったパフォーマンスは、配信でカメラを通したときにより伝わるものがあるのかもしれません。
北川 そうですね、常に「一方通行になりたくない」と思っています。画面越しであっても、その向こうで見てくれている人の姿を想像して、私が見ているカメラの先でこちらを見返してくれている目が楽しんでくれているといいなと考えながら歌っています。「ヒーリングっど♥プリキュアLIVE2020 キュアTouch!ヒーリングっど♥MUSIC!」はコロナ禍の影響で中止になってしまい、その後配信イベントを実施しました。そのときにコメントを読んで双方向のコミュニケーション取りながら、みんなの気持ちを想像したり「見えているよ」「会いたいよね」という気持ちを伝えたりする力も大事なんだなと感じました。
──近年では配信でライブを楽しむ人も増えていそうですよね。石井さんは配信ライブを観ることがありますか?
石井 よく観ていますし、お家で観るのが大好きなんです! 私の大学生活のほとんどはコロナが流行している時期と重なっていたので、勉強をオンラインでやったこともあり、スマートフォンなどで映像を観る習慣がついたのかもしれません。ライブ映像を観るときはスマートフォンをテレビにつなげて、映画感覚で大画面・大音量で流しながら好きなところを何回も見返しています。グッズも並べて写真を撮りながら観るのもすごくオススメです。「プリキュア」は全国の方に広く楽しまれていると思いますし、会場まで来るのが難しい遠方の方も配信だとお家で一緒に楽しめるのがいいですね。
プリキュアがつないできた20年間のバトンはお客さんにもつながっている
──北川さんは、これまで出演された「プリキュア」ライブの中で印象に残っているものはありますか?
北川 「プリキュア15周年Anniversaryライブ ~15☆Dreams Come True~」は豪華なキャストや歌手の皆さんを引き連れて私が真ん中で歌う場面があり、とても緊張したというのもあって印象に残っていますね。出演者の皆さんが「大丈夫だよ」「楽しみにしているね」と分け隔てなく声をかけてくれて本当にうれしかったです。「プリキュア」に関わっている人たちは「作品を一緒に作り上げている仲間」という意識が強く、みんなの熱量が渦になってぐっと上に持ち上がっていくのを感じました。お客さんの「プリキュアが好き」という気持ちもダイレクトに伝わってきて、1つの作品でこんなにも人がつながり合えるんだと衝撃を受けましたね。
──石井さんも今年からライブに出演されて、お客さんの熱量を肌で感じているのではないでしょうか。
石井 お客さんの応援で盛り上がりを感じます。「ヒロガリズム」はダンスレッスン動画もあり、踊れる方もいるんですよ。「ミラクルは タカラモノ!」のところで私と千颯ちゃんが手でハートを作る振りをぜひ皆さんにもやってほしいですね。「プリキュア」が好きな人はみんなお友達なので、1人で来ている人も周りの人とやってもらえたらうれしいです。あと「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」は合いの手がすごいんですよ! Aメロはお客さんが手拍子をしてくださるのですが、そこですごくアガりますね。「ソラ ノ ケハイ」の合いの手も好きなので、それがまた聞けることをすごく楽しみにしています。
──「ひろがるスカイ!プリキュア ~Hero Girls~」は2番の歌詞もすごくいいですよね。
石井 そうですね。ライブでは曲が進むにつれてお客さんとの思いが1つになる喜びを感じます。1番はまっすぐ突き進むような強い歌詞だと思うのですが、2番は受け入れて抱きしめてくれる温かさもあり、そこにグっときます。間奏のギターソロもお客さんの熱い声1つひとつがうれしくて、「『ありがとう』と笑う やさしさをつなぐバトン」という歌詞はそれに返すように感謝の気持ちを込めて歌っています。間奏明けの歌詞はプリキュアがつないできた20年間のバトンという意味もあると思いますし、そのバトンはお客さんにもつながっていると思うので、みんなのバトンという気持ちで歌うと胸がいっぱいになりますね。
──2つの意味を込めて歌われていたんですね。北川さんはMachicoさんとコーラスで参加されていますが、レコーディングを振り返っていかがですか?
北川 この歌はすごく難しいんです。コーラスに参加するMachicoちゃんと私は、プリキュアシンガーの先輩としてあみちゃんを支えるつもりでレコーディングに参加したのですが、高らかに歌い上げるあみちゃんの声を聞いて逆に「ついていこう」という気持ちで挑んだことを覚えています。
石井 私も理恵さんとMachicoさんのコーラスのレコーディングを見学していたのですが、私が何度か録り直した「Fly high」の高音を一発で出していて「プリキュアシンガーってすごい!」と驚きましたね。理恵さんの温かい声や、Machicoさんの力強い声が聞こえると、2人が少し前で手を伸ばしてくれているような気持ちになるので、ライブでも安心して歌うことができますよ。
──北川さんは「『ひろがるスカイ!プリキュア』ボーカルアルバム ~FLY TOGETHER!!!!!~」収録曲「Daybreak song」にも参加されています。
北川 はい。この曲は歌詞を読んでも曲を聞いても歴代1位というくらいハードなナンバーなので、どんなふうに歌うかすごく悩みました。でも「ひろがるスカイ!プリキュア」を繰り返し観ていたら、誰かを守るときや本当のピンチが訪れたときに「プリキュアのみんなはこんな顔をして、これぐらいの思いを持って歌っているんだろう」と想像できるような曲だなと思ったんです。いろんな不条理や、自分に負けてしまうかもしれない状況にみんなで立ち向かっていく姿を感じられる曲だと思うので、それを皆さんに伝えたいと思いながら熱く熱く歌っています。
──多数の「プリキュア」の楽曲を歌った北川さんと、子供の頃から「プリキュア」が大好きな石井さんですが、お気に入りの曲や思い入れのある曲はありますか?
北川 「あこがれ Go My Way!!」には特別な思い出がありますね。「トロピカル~ジュ!プリキュア 感謝祭」のとき、私はサプライズで出演して千颯ちゃんとのデュエットソング「あこがれ Go My Way!!」を歌う予定だったのですが、コロナの濃厚接触者になってしまい出演ができなかったんです。千颯ちゃんは私のパートも含めて1人で歌うこともできるのに、そのライブのときは私のパートに「理恵さんの声を入れてください」と言ってくれて。私のパートは録音したものを流して、私が隣にいるような立ち位置で、目線を送りながら歌ってくれました。ご迷惑をおかけしているのに、出演者の皆さんもスタッフの皆さんも「仲間だから」と言ってすごく大切に扱ってくださったんです。出演できなかったことはとても悔しかったのですが、これだけ思ってもらえたことが幸せでしたね。
石井 「あこがれ Go My Way!!」は私も本当に大好きです。広島の「プリキュアシンガーズ Premium LIVE HOUSE Circuit!」で千颯ちゃんと理恵さんが歌われていて「2人で歌えたね!」と言っているのを裏から見て私も一緒に感動していました。あとはプリキュアシンガーの皆さんが歌い継がれている「シェアして!プリキュア」も大好きですね。いろんな方の音源をつないだバージョンを作って個人的に楽しむくらいです(笑)。どの楽曲も選べないくらい思い入れがあるので、迷ってしまいます。
「また明日からがんばろう」と思ってもらえるような日を目指して
──「ひろプリ」についてもお伺いできればと思います。放送が開始されてからもう7カ月ですね(インタビューは9月上旬に行われた)。ここまでご覧になって作品の印象はいかがですか?
北川 「自分はこうありたい」と思うような要素が詰まっていて、毎回刺さるところがあり泣いてしまうことが多いです。登場人物たちの世界が、人との関わり合いや、友達の好きなものをきっかけに広がり続けているんです。そういったエピソードで「ひろがるスカイ!プリキュア」の“ひろがる”という言葉が表現されているように感じます。あと、最近キュアマジェスティが登場しましたよね。とうとう来た!物語が動くぞ!運命の子……どうなっちゃうんだ……!と今後の展開がすごく気になっています! あっ、なんか取り乱しちゃってすみません……(笑)。
──とても楽しまれていることが伝わります。石井さんはいかがですか?
石井 私も毎回感動しています。ソラちゃんがソラシド市に落ちてきたあの頃は、みんな別々のところで暮らしていたのに、みんなが出会ってプリキュアになって、それぞれの夢ややりたいこと、守りたいものが1人のものからみんなのものになって……。そういうところが沁みて涙が止まらなくなってしまいますね。キュアマジェスティが登場したときは本当に涙が溢れました!
──仲間も5人になりましたね。男の子や新成人のプリキュアも登場しました。
北川 これまでにもさまざまな個性を持ったプリキュアが現れているので、「プリキュア」はいろんな価値観を受け入れていて、みんなに「選択肢はこんなに広いんだ」ということを提示してくれる作品だと感じます。18歳のキュアバタフライの登場は、大人も子供も関係なくプリキュアのような心や思いを持つことができると示してくれたように思いました。大人も子供も男の子も女の子も、ほかの個性も、それに思いを馳せることができるのは素晴らしいことですよね。
石井 私は男の子、新成人ということはあまり意識していないですね。これまでもプリキュアになる子たちは、みんなそれを特別に感じさせないくらいの個性を持っていると思いますし、それがプリキュアのよさでもあります。今回キュアウィングやキュアバタフライが登場したときも、これまで新しいプリキュアが登場したときのように「かわいい」「カッコいい」と喜んでいました。
──個性が広がったという見方はすごくしっくりきました。
北川 「ふたりはプリキュア」は「女の子だって暴れたい」をコンセプトに始まりましたが、あみちゃんの話を聞いていると考え方がアップデートされているんだなと思いますね。それが当たり前になっているのはすごいことです。
──シリーズ20作目の「ひろプリ」が放送中の「プリキュア」は今年20周年イヤーとして展開しています。そんな歴史を持つ作品に関わる気持ちや意気込みを改めてお聞かせください。
石井 本当に毎回夢なのかと思っています。私はこれまでつらいときは「プリキュア」に支えられてきて、主題歌を歌わせていただくことが決まってからも、何度も「プリキュア」に助けられてきました。前向きなプリキュアの姿を見るたびに「私もがんばって前を向かなきゃ」と思えるんです。「プリキュア」に対する「ありがとう」という気持ちを、お歌で返していけたらいいなと思って歌っています。
北川 「プリキュア」に携わることは幸せでもあり、責任も感じます。たくさんのスタッフさんとお会いするたびに「私たちの歌はこの人たちが作ったアニメを全部背負っているんだ」と思っています。私が歌わせていただいている歌は「プリキュア」というアニメがあってこその歌ですから、スタッフの皆さんの熱量が歌で伝わるように意識していますね。あとは「プリキュア」の楽曲は歌いたいと願っている人も多いはずなので、楽曲を担当することが決まるとうれしさだけでなくそういった人の気持ちにも思いを馳せています。任せていただくからにはいいものを届けたいので、何年携わっても1曲入魂という気持ちを忘れないようにしています。
──おふたりの熱い思いが伝わってきました。最後に「ひろがるスカイ!プリキュアLIVE2023 Hero Girls Live ~Max!Splash!GoGo!~」への意気込みや、来場される方、配信でご覧になる方に向けてメッセージをお願いします。
北川 私は「プリキュアライブ」への出演が久々ということもあり、心待ちにしています。声優キャストの皆さん、プリキュアシンガー、さらにキュア・カルテットの先輩方が集まることに私はとても感動しています。そして声出しもOKです! 「プリキュア」の音楽が鳴り響く大きな会場での声出しは、私にとって久しぶりなのでいったいどうなってしまうんだろう!?とワクワクします。元気なお子様の姿も見たいですね。初めてライブに来るお子さんもいると思うので、そういう子たちに「好きなものに触れている人はこんなにキラキラするんだよ」「仲間とはこんなふうに笑顔で話したり、一緒に歌えたりできるんだよ」ということも伝えたいです。あと公式グッズのペンライトは13色に光るんですよね! 客席がどんなふうに見えるのかも楽しみです。歌も声出しも応援も、皆さんと一緒に楽しめたらいいなと思っております。
石井 私が去年「デリシャスパーティ♡プリキュア LIVE2022」を観させていただいたときは、自分がこんなに大きなステージで歌えるのか想像ができませんでした。でもデビューしてからライブやイベントに出演させていただき「みんなに届けたいんだ」という気持ちになってきました。「プリキュアライブ」は私がずっと憧れていたステージなので、今回その舞台に立たせていただけてとても幸せです。「プリキュアライブ」に来るお子さんには自分を表現している出演者の皆さんを見てもらって、その子たちの夢につながってもらえたらいいなと思っています。大人の方々にも「また明日からがんばろう」と思ってもらえるような日になることを目指して、絶対に最高のパフォーマンスをします!
プロフィール
石井あみ(イシイアミ)
9月14日生まれ。音楽大学の声楽科にて本格的に声楽を学び、歌もの・CM・映画など幅広いコンテンツの歌唱やコーラスを行う。2023年に「ひろがるスカイ!プリキュア」の主題歌アーティストとしてデビュー。オープニング主題歌と前期エンディング主題歌を担当した。
石井あみ&staff (@ishiiami154cm) | X
石井あみ IshiiAmi (@ishiiami154cm) | Instagram
北川理恵(キタガワリエ)
1990年11月25日生まれ。明治大学文学部文学科で演劇学を学ぶ。10代の頃よりミュージカルを中心に数々の舞台に出演している。2015年には「Go!プリンセスプリキュア」のエンディング主題歌を担当し、以降「プリキュア」シリーズの楽曲を多数歌唱。11月5日から29日に上演されるミュージカル「天使にラブ・ソングを~シスター・アクト」にも出演を予定している。
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吉武千颯、MachicoへのQ&A