コミックナタリー PowerPush - 「先生のおとりよせ」

中村明日美子×榎田ユウリ 旧知の2人がマンガと小説でコラボ

マンガ家・中村明日美子と小説家・榎田ユウリ。旧知の間柄である2人がタッグを組んだ「先生のおとりよせ」の単行本が、6月10日にリブレ出版より発売された。

美少女マンガ家と官能小説家の男子2名がネットで買えるさまざまな「おとりよせ」食品を紹介するこの作品は、楽しいコメディでもあり、両作家のクリエイターならではのエピソードも散りばめられている。マンガと小説をリレー形式で書き繋いでいく個性的な作品を、一体どうやって作っているのか? 2人のおとりよせテクニックも含めて教えてもらった。なお 特集後半では、作中に登場するおとりよせグルメ全ラインナップも紹介する。

取材・文/さやわか

 
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「先生のおとりよせ」とは

出版社からコラボ話を持ちかけられた美少女マンガ家・中田みるくと官能小説家・榎村遥華。まったく反りが合わない2人だが、実は「おとりよせ好き」という共通点があった。

実在する「おとりよせグルメ」を軸に、中村明日美子がマンガを、榎田ユウリが小説を交互にリレー形式で執筆したこの作品。単行本にはpixivコミック内「クロフネZERO」での連載分に加え、2話分の書き下ろしも収録された。

中村明日美子×榎田ユウリ対談

長い付き合いの2人が「おとりよせ」でコラボ

──おふたりが「先生のおとりよせ」で共作することになったのはどういう経緯だったのでしょうか?

榎田 最初は2人でレストランに一緒に行くようなグルメエッセイをやろうかっていう話だったんですよ。この2人でやることになったのも、一緒にご飯を食べに行ったりするなら、仲がいい人のほうがいいよね、みたいな理由だった。でも、そういう食べ歩きの作品だと取材の許可を取るのも大変だし、もうちょっと自由にやれるほうがいいということになって、「おとりよせ」になったんです。

中村 それに2人とも体調が悪いと本当に食べられなくて倒れたりするんで、おとりよせならリラックスしながら好きな量が食べられるし。

榎田 食いしん坊だけど、決して大食漢ではないんですよね。

榎村遥華(右)と中田みるく(左)。

中村 うん。でも最初は2人の体験ものにしようという話だった。ところが私がもっと面白くしたいと言い出して(笑)、男性キャラクターを2人立てて、その距離がだんだん近くなるようなストーリーを考えた。でも最終的にはBL作品にはしなかったんだよね。せっかくこういうグルメ系の作品なんだから、いろんな人に読んでもらいたいっていうのもあって。

榎田 おいしい食べ物をメインテーマにしたいので、ゲイにこだわらなくてもいいのかなって。

中村 あとメインキャラの名前を、作者2人の苗字の漢字を入れ替えたもの(中田みるく・榎村遥華)にしているので、この2人が恋人になると気持ち悪いよねっていうのもあった(笑)。

榎村は巨乳好きという設定。

──作中だと、お互いに気にくわないと思っている2人がコラボすることになるのは、巨乳の編集長・九堂今日子がいたからという話になっていますよね。

榎田 もともと巨乳好きという設定はやりたかったんだけど、そこに明日美子さんがあんなに乗っかってくるとは思わなかった(笑)。

中村 いやあ、それは榎田さんが「巨乳好きの方向でいきたい」とか言うから「……はい」って感じですよ、私は。

榎田 当初は本当に小ネタとして思っていたんだけどね。

挿絵:本郷地下

中村 だいぶメインに来ちゃいましたね。最初はてっきりこのヒゲおっさんの方がボケで、メガネがツッコミになる話だと思ってたんだけど、なんか巨乳の編集長がどんどん登場するようになってびっくりしました(笑)。話の展開もだんだん巨乳で引っ張ってもらって。

榎田 明日美子さんが思った以上に面白い感じにしてくれたので、さらにそこに乗っかっちゃった。最初、キャラクターは概要しか決めてなかったんですよね。「小説家で、だいたいこんな人」とか「マンガ家で、実はこんなキャラ」という程度。最初のキャラ設定だけ一緒に考えたよね。話してるそばから明日美子さんが絵を描いていくので「いいねいいね」って感じで非常にスムーズに決まっていった。それでお互いがリレー方式で話を書きながら、出たとこ勝負で内容が変わっていく作品にして。毎回、相手の書いた内容を見て「わ、こんな球が来た。どうやって打とうか」っていう感じだった。

中村 一応、一話完結でオチはつけてるから、そこまでひどい球はないですけどね。最初は「おや? 誰か来たようだ」みたいなシーンで次回に続くのをやろうかなってちょっと思ったこともあったけど(笑)。

榎田 でも、明日美子さんはその辺のさじ加減がうまいので、逸脱しない程度に、意外性のあるものを投げてくれました。あんまりめちゃくちゃな展開にすると、その次の次でまた自分が書くので、自分の首を締めることになるし。

中村 個人的には、コラボの理想的な形を追求しようみたいな思いがあったんですよ。せっかく小説家さんと一緒にお仕事をするなら、単純に私が小説の挿絵を描くんじゃなくて、どういうコラボにしたら面白くなるかなあ、と。まあ、リレー形式でやるって決めたのは、榎田さんとなら10年以上前から付き合いがあるし、どんな作品を書くか知っているから、きっと大丈夫だろうと。

榎田 あまりにも球筋が読めない相手だと、やっぱりキャッチボールができないもんね。「まとまらなかったらどうしよう」って怖くもあるし。

漫画・挿絵:中村明日美子 / 小説:榎田ユウリ「先生のおとりよせ」 / 2014年6月10日発売 / 853円 / リブレ出版
「先生のおとりよせ」

出版社からコラボ話を持ちかけられた美少女マンガ家・中田みるくと官能小説家・榎村遥華。一見、全くそりが合わない2人だが、実は共通点があった! そう、「おとりよせ」である。実在する「おとりよせグルメ」を軸に、マンガと小説のリレー形式で進む、グルメマンガ業界に革命を起こす新感覚グルメ作品。

中村明日美子(ナカムラアスミコ)
中村明日美子

1月5日神奈川県生まれ。2000年、マンガF(太田出版)にて「コーヒー砂糖いり恋する窓辺」でデビュー。以降、官能的なストーリーから青春もの、ボーイズラブまで多彩な作品を送り出している。代表作に「Jの総て」「同級生」「卒業生」「ウツボラ」「鉄道少女漫画」など。現在、BE・BOY GOLD(リブレ出版)にて「薫りの継承」を不定期連載中。

榎田ユウリ(エダユウリ)
榎田ユウリ

7月16日東京都生まれ。2000年、榎田尤利名義にてクリスタル文庫「夏の塩」(光風社出版)でデビュー。榎田ユウリ名義の一般小説・ライトノベルと榎田尤利名義のBL小説とで、数多くの人気シリーズを持つ。角川文庫より「妖奇庵夜話」シリーズと「カブキブ!」シリーズを刊行中。

※奇の正式表記はおうへんに奇