書店員の目利きでおすすめのマンガを一般読者に伝えることを目的に、2006年より実施されているマンガ賞「全国書店員が選んだおすすめコミック」。現在はスピンオフ企画「出版社コミック担当が選んだおすすめコミック」が実施されているのに加え、auスマートパスプレミアムと連動し、多くのauスマートパスプレミアムユーザーに読まれた作品を称える特別賞「au スマートパスプレミアム賞」も今年新設されている。「全国書店員が選んだおすすめコミック2022」「出版社コミック担当が選んだおすすめコミック 2022」ではどちらも龍幸伸「ダンダダン」が1位を獲得し、「au スマートパスプレミアム賞」はセモトちか「サレタガワのブルー」が受賞した(参照:書店員が選んだおすすめコミック2022、第1位は龍幸伸「ダンダダン」)。
コミックナタリーは「ダンダダン」のW受賞を記念し、龍にインタビューを実施。“オカルティック怪奇バトル”と銘打ち、オカルトバトル、ラブコメ、アクション、青春とさまざまな要素を盛り込んだ作品の成り立ちから、作品を執筆するうえで大切にしているというキャラクターの“マジ感”、影響を受けているというデザイナー・成田亨の魅力や、アシスタントを務めていた藤本タツキ、賀来ゆうじとのエピソードなどについて聞いた。
取材・文 / 小林聖
全国の書店員から「たくさんの人にすすめたいマンガ」「皆に読んでほしいマンガ」をアンケートで募集し、ランキング形式で発表する「全国書店員が選んだおすすめコミック」。今年度は2021年10月7日から11月8日までのアンケート回答時点で単行本巻数が5巻以下だった作品が対象に。アンケートには約1000名の書店員が参加し、書店員1人につき3作品に投票した。
「ダンダダン」(集英社)
読者に興味を持続してもらうために……
──「全国書店員が選んだおすすめコミック2022」とスピンオフ企画「出版社コミック担当が選んだおすすめコミック2022」ダブルでの第1位おめでとうございます。
龍幸伸 ありがとうございます。
──「ダンダダン」はオカルトバトルをひとつの軸にしながら、ラブコメ、アクション、青春といろんな要素がてんこ盛りになった作品ですよね。
龍 はい。いわゆるジャンルミックスといわれるような形の作品ですね。映画のような映像メディアだと、2時間なら2時間と上映時間が決まっていてその中で話をまとめないといけないから、ジャンルミックスって難しいと思うんです。でも連載準備をしているときから「マンガはジャンルミックスができる媒体だ」と思っていて。連載という形で続いていくものなので、都度都度味が変わっても劇的に変えてしまわなければ飲み込んでくれるんじゃないかと。
──例えば、このエピソードではラブコメの側面、別のエピソードではアクションの側面が前に出る、というような形でいろんな面を見せていけるわけですね。
龍 読み進んでもらうためにもいいんです。映像メディアはある程度受動的に観てもらえますが、マンガは能動的にページをめくってもらわないといけない。だから、常に何かしら読者の興味を持続するものを作る必要があると思うんです。ただ、それが1つのパターンしかないとどうしても興味を持続してもらうのが難しいんですよね。基本は振りのターンと振りを回収してカタルシスを感じてもらうターンという形になると思うんですが、振りが長いとか、振りのための振りみたいな話になると、読者は離れていってしまうんじゃないかな、と。だから、いろんな要素を入れることで常に何かしら楽しんでもらえるように作っていったらいいんじゃないかと思ったんです。
──読んでいてもいろんな展開や要素の応酬でスピード感を感じます。そういう印象に反して、意外と細かくコマを割っているページもありますよね。
龍 気持ちよさを感じてもらいたい場面の前なんかは意識的に小さなコマを入れていって、ギュッと凝縮した感じにしたりもします。「ダンダダン」は少年ジャンプ+で連載している作品ですが、マンガってスマホとかに媒体が変わってもやっぱり見開きが大事だと思っているんです。なので、見開きにどうやって持っていくか、どう演出していくかをけっこう考えていますね。
──第1話のターボババアが登場するページなんかも、「めくり」の気持ちよさがありますよね。比較的セリフが多いところから一気に……。
龍 ありがとうございます。あのシーンは見開きの構成もそうですが、セリフもいろいろ考えた部分ですね。
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初代ウルトラマンは「正義のヒーロー」というより「宇宙人」
2022年3月1日更新