「日本三國」をVTuberの加賀美ハヤトが太鼓判! あとから追うのはもったいない、今すぐ読んでほしい“ごっつ面白い”マンガ

令和末期、事実上の滅亡に陥った日本は「大和」「武鳳」「聖夷」の3つの国に分かれ、それぞれが覇権を争う三国時代に突入していた。──そんな文明崩壊後の近未来を舞台とした「日本三國」では、とある出来事をきっかけに日本を再統一すべく立ち上がった青年・三角みすみ青輝あおてるの戦いの日々が描かれている。

マンガ読みから注目を集めている本作を、いち早く「好きなマンガ」として挙げていたVTuberの加賀美ハヤト。コミックナタリーではそんな加賀美に作品の魅力を語ってもらうべくインタビューを申し出た。すると加賀美から溢れ出たのは「とにかく“傑物”を描くのが圧倒的にうまい」「人の愚かな失敗も緻密に描かれているところが素晴らしい」「これをあとから追うのはもったいない」と作品を絶賛する言葉の数々。加賀美はいかにしてこのマンガに惹きつけられたのか。自身の解釈を交えながらたっぷりと語ってもらった。

取材 / 佐藤希文 / 熊瀬哲子

とにかく“傑物”を描くのが圧倒的にうまい

──本日はよろしくお願いします。

にじさんじ所属バーチャルライバー兼加賀美インダストリアル代表取締役、加賀美ハヤトと申します。普段から好き勝手マンガの話をしていたところ、このようなありがたい機会をいただきまして、本当にありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。

加賀美ハヤト

加賀美ハヤト

──こちらこそありがとうございます。今回は加賀美さんが以前より「日本三國」の読者ということで、加賀美さんが感じる作品の魅力を語っていただければと思います。そもそも「日本三國」はマンガアプリのマンガワンで今から約1年前(2021年11月)に連載が始まった作品ですが、加賀美さんは2021年12月の時点でご自身のTwitterで「日本三國」をオススメされていて。「アンテナ感度が高すぎるな」と思ったのですが、どういうきっかけで「日本三國」と出会われたのでしょうか。

私はもともとマンガワンをすごく利用していて、基本的に新連載はだいたいチェックしているんです。その中でもひと際“来てる”と感じたのが「日本三國」でした。第2話、第3話あたりから「あ、これは……」と思って。自分もめちゃくちゃ面白いと思っていたし、(マンガワンの)読者コメント欄でも“ごっつ面白い”の流れが来ていたので、一番いい形でこの作品の連載が続いてくれたらいいなという願いもあって、少しでも力になればとツイートをさせてもらいました。

──「日本三國」を読んで、どのあたりで「来てる」と思われたんですか?

第2話、第3話あたりが特になんですけど、とにかく“傑物”を描くのが圧倒的にうまいなと。もともと「キングダム」とか、「三國無双」の三国志の武将とかがすごく好きで。そういう歴史上の人物が実際に行ったことの伝説をそのまま描写するっていうのももちろんすごいことなんですけど、架空の人物──いちから作り出したキャラクターが行った、いかにも“傑物”のエピソードを描くってめちゃくちゃ難しいと思うんですね。それを違和感なく、こともなげに描いている。それこそ主人公の三角青輝であったり、ツネちゃんさん(阿佐馬あさま芳経よしつね)だったり、もちろん龍門りゅうもん光秀みつひで)将軍とかも。普通は1人描くのも難しいぐらいの傑物がバンバン出てくるのがすごいなと。そこがまず気に入った部分ですね。

──お話にもあった通り、歴史を土台にしているマンガって、例えば戦国武将だったらその人たちが実際に何をやってきたのか、そのエピソードが下支えになってその人物のすごさをアピールできると思うんですけど、「日本三國」の場合はフィクションなのに出てくる人物の“すごさ”を感じさせますよね。

そうなんですよね。龍門将軍の部下を採用する試験となる登竜門では将軍に膝をつかせた者が合格、というエピソードもいかにもという。そういうところが本当にすごいなと。月並みにはなりますがそう感じました。

「日本三國」1巻第3話より。©松木いっか/小学館

「日本三國」1巻第3話より。©松木いっか/小学館

──主人公の青輝は「弁が立つ超屁理屈男」と悪口のような褒め方をされていて、ガタイのいい男たちが次々と出てきて武力がものを言う時代になっている中、頭脳と弁が立つことを武器に生き抜く人物です。加賀美さんは彼にどういう印象を抱きましたか?

本人は認めていらっしゃらない感じでしたけど、やっぱり作中で一番勇気があると個人的に思っていて。周りにガタイのいいキャラクターがいる中で、自分の体の強さに裏打ちがないにもかかわらず、強気な発言や行動ができるっていうのは本当にすごい。そういう意味では誰よりも“空手”なわけですよね(笑)。誰よりも武装してない、誰よりも空手。そして誰よりも意志が強い。意志は皆さん強いんですけど、その中でも自分のわがままを貫き通そうとしている……と言えばいいんでしょうか。青輝って、けっこう命がけな言動が多いと思うんです。象徴的なところで言うと、序盤で妻の小紀さきが処刑された後のシーンとか。でも自身の言動に対するためらいが一切ない。どこかで自分の命を天秤に乗せながらもしゃべっている感じがしていて、それって誰よりも命がけで、勇気のあることなのかなと思いました。

農業経験者の加賀美ハヤトが思う青輝のすごさ

──青輝は地元の愛媛郡にいた頃から司農官として農業に深い理解を持っていて、世では戦が行われている一方、「農作業をしている俺たちは情けない」と嘆く青年たちに「情けなくなんかない」「侍たちを強くするためには食べ物が必要だ」と喝を入れる場面があります。そこから登竜門で龍門将軍と対峙した際には、彼に農政改革の案を提出するなど、「農業」が1つのキーポイントとしてあるキャラクターだと思うのですが、加賀美さんも今年は農業に挑戦していらっしゃいましたよね。

あ、実は……はい(笑)。

──そういうところで彼に尊敬するところもあったりするのかな、と思いまして。

農業改革の改正案を龍門将軍に渡したときに、第1話の段階で伏線じゃないですけど、下地として自身で地形とか町作りに向き合っているエピソードがありましたよね。その段階で地質まで見ているのがすごいなあと思いましたね。やっぱり作物が育つかどうか、その土で作物が育ちやすいかどうかっていうのは、それこそ戦争の理由になるレベルの出来事じゃないですか。そこに恐らく自分の知識がちゃんとつながってるということと、その下調べをすべてしたうえで、それが実現不可能ではないというのを将軍に提示できるというのが本当にすごいなと感じました。

「日本三國」1巻第3話より。龍門将軍に農業改革の改正案を提示する青輝。©松木いっか/小学館

「日本三國」1巻第3話より。龍門将軍に農業改革の改正案を提示する青輝。©松木いっか/小学館

──第1話から通して読むと、提案書の内容が農業に関するものだったっていうところはちょっとした伏線回収のようで少し気持ちよさを感じました。加賀美さんもいちから畑を起こすということをやっているので、気持ちがわかる部分はあるのでしょうか。

土から整えるっていうのはやっぱりすごく難しいことなんですよね(笑)。青輝が提案したのは、土を整えるために5万の兵士を3群に分けてローテーションしていくっていうやり方で。確かに土のコンディションは誰かがずっと整えないといけない。それと同時に常備兵の存在は必要だから、農作業と政治をちゃんと結びつけて考えているっていうのは本当に隙がないなと感じました。