コミックナタリー Power Push - ニコ×ナタ(コミック)

「金田一少年」天樹征丸インタビュー&巨大フェス「ニコニコ超会議」特集!

コミックナタリー読者に向けて、ニコニコ動画からセレクトした作品を紹介する「ニコ×ナタ(コミック版)」。今月はニコニコ静画で最新章を無料配信中の、天樹征丸原作によるさとうふみや「金田一少年の事件簿」にスポットを当てる。連載20周年の今年は、目下連載中の「人喰い研究所殺人事件」のみで終わらず、以降も新エピソードを発表し続けることが決定している同作。そこで「ニコ×ナタ」では天樹を直撃し、作品の歩みを振り返ってもらうとともに今後の展望を聞いた。

そのほか4月28日・29日に開催される巨大フェス「ニコニコ超会議」の見どころ紹介や、「まおゆう4コマ『向いてませんよ、魔王様』」で知られる七積ろんちのインタビューもお見逃しなく。

天樹征丸インタビュー

「金田一少年」史上最高のものが作れそう

──「金田一少年の事件簿」20周年おめでとうございます。これだけ長い間、「金田一少年」が愛されてきた理由をご自身ではどう分析されていますか。

インタビュー風景

なんとか最低限のクオリティをキープしてこられたから、でしょうか。昔読んでいた子供たちは今大人になってる分、見る目が厳しくなってますから、彼らに納得してもらうのはすごく難しいことなんですけど。

──長く続けていくと、ミステリーの新鮮なネタも少なくなっていきますよね。おひとりでトリックとストーリーを考えるという、産みの苦しみも大きそうです。

アイデア出しや資料集めは編集部のみんなに手伝ってもらってますけど、トリックやストーリーまで作ってくれるわけではないですからね(笑)。日々「考えなきゃ」という緊張感の中で過ごしてます。でも一定の時間をかけると、思いつく瞬間は必ず来るんです。不思議なことに。

──思いつかなかったらどうしよう、という不安は?

まったくないです。できるのは間違いないって思ってますから。だからやれてきたと思うんです。僕はいま原作者として5本のマンガを連載しているんですけど、作品ごとに脳の使う部分が違うんですね。「金田一脳」みたいな部分があるんです。しかもいつものように年に1~2事件を連載するだけだとそれが目覚めた頃に終わってしまうんですが、今回は通年連載なので「金田一脳」の回路がどんどん開いてきています。

──では章が進むごとに、どんどん内容がよくなると。

トリックは確実によくなりますよ。今連載している「人喰い研究所殺人事件」が終わって、これから作る2本目、3本目とどんどんノってくるはずですので。せっかく1年やらせてもらうからには、自分で「金田一少年」史上最高の出来と思えるものを発表して、昔から読んでくれている読者を唸らせたいですね。

ネットで読めても謎解きは検索するな!

──また20周年企画の一環として、ニコニコ静画では「人喰い研究所殺人事件」が毎週1話ずつ、無料で配信されています。これはとても太っ腹な試みだと思いました。

要するに、昔は本屋でできていた立ち読みですよね。僕らの子供の頃は、本屋に行けば雑誌も単行本も読めたものですけど、今は雑誌もダメだったりするじゃないですか。でも最近はネットでマンガを読むというスタイルも浸透してきてるので、「ちょっと立ち読みしてみてよ、読んだら面白いでしょ?」って気持ちです。これが作品を知るきっかけになってくれればいいなと思うんですよ。

──20年前には存在しなかったサービスですよね。「金田一少年」が連載されてきたこの20年で、電子化などマンガを取り巻く環境も大きく変化しました。

正直なところ、僕は紙のほうが面白く読めると思っていますけどね。なんでかって言うとページを戻すのが簡単だから。「ちょっと前のページに伏線らしきものがあったな」って時に本ならパラパラっとすぐ探せるものが、iPadとかになると手をいろいろ動かすのが面倒くさいから、わざわざ遡ったりしない。人間意外とそんなものじゃないですか(笑)。

──自分にも思い当たる節があります(笑)。こうした電子化の普及がマンガに与える影響として、どのようなものが予測されるでしょう。

インタビュー風景

流れのひとつとして、カラーの作品が増えるんじゃないですかね。印刷物と違って、カラーにすることにコストはさほどかからないから。カラーには訴求力がありますし、やっぱり読者は喜ぶと思うんですよ。でも僕はそこに、あまり必要性を感じていません。だって面白いマンガは、モノクロで描かれていてもカラーに見えてくるから。新しいことをやろうと思えばいろいろできますが、そういったメディアの進化とマンガの面白さは、そんなにリンクしてないなあとも思うんですよね。

──では「金田一少年」をネットで読む人にはどんなことを伝えたいですか?

謎解きで行き詰まっても、簡単にネットでヒントを検索しないこと!(笑) 今ネットを見れば一発で解答案が出てますし、さらにそれをコピー&ペーストすると、なんとなく自分が解いたような気にもなっちゃいます。でも実際に自分ひとりで解こうとしたら、そんな簡単じゃないようには作っているつもりです。クイズってヒントは無いほうが面白いですから、まず自分で考えてみてほしいですね。どうしてもわからなかったらネットを使うのもいいと思いますが。

──最後に、ニコニコ静画やこの特集で初めて「金田一」に触れる若いユーザー層に、興味を持ってもらうためのひと言をお願いします!

ひと言……、うーんじゃあ20年経ってるわけだから、「君のお父さんやお母さんは、このマンガでミステリーの面白さを知った」ってどうですか。せっかく無料で公開されているので、この作品が本格ミステリーを知る入り口になれば嬉しいです。