コミックナタリー PowerPush - 月刊!スピリッツ
西村ツチカと真造圭伍の新鋭対談 時代を切り開く旬の月刊誌に注目
カナアミがあるから、ツチカさんの絵だって一発でわかる
真造 そんなことないですよ。自分、本当にしょっちゅう「誰々っぽい」って言われるんですよ。
ツチカ ほんとうですか? いやー真造くんは真造くんぽいと思いますけど。
真造 高野文子さんだとか、松本大洋さんっぽいだとか、すぎむらしんいちさんだとか、望月峯太郎さんっぽいとか……。それがなんか好きな作家さんの受け売りでしかない感じがして、コンプレックスで。ツチカさんはほら、なんか独特なあの……ガガガッっていうのがあるじゃないですか。
ツチカ ガガガッ(笑)。
──説明しますと、カケアミのようでそうでない、独特な背景の陰影の付け方ですね。これまで一部では「ツチカタッチ」なんて呼ばれてきましたけど。
ツチカ 「ツチカタッチ」はちょっと恥ずかしいのでやめてほしいんですが(笑)。あれ金網みたいに見えるって言われたから、これからは「カナアミ」って言おうと思ってるところです。
真造 カナアミ……。
──カケアミと語感も似ていて。いま新しい手法が名付けられた、って感じですね。
ツチカ カナアミ、よろしくお願いします。
真造 カナアミがあるから、ツチカさんの絵だって一発でわかるじゃないですか。ああいうの僕も欲しい感じですね。
──この絵、真造圭伍だね、ってわかるアイコン的なものが。
真造 ないんです。それが。
ツチカ さっき登場人物みんな真造くんに似てるって言ったじゃないですか。顔出ししたらどうですか?
真造 したらどうなるんですか?
──主人公が写真の真造さんと似てるんだな、ってみんながわかる。
ツチカ わかる。そしたら愛着が湧きますよ。
真造 ちょっとそれは……考えさせてください……。
最初の3ページだけは小学館でやるのが良いみたい
──なんかこの機会に、お互い訊いておきたいこととかありますか。普段友達でも面と向かって訊きにくいこととか。
ツチカ それで言うと、僕からは連載の心がけを教えてください。
──真造さんは月スピのあと、週刊スピリッツで「ぼくらのフンカ祭」を完結まで16話、見事に描き切りましたからね。
真造 連載の心がけ……難しい……。ネームはもう、編集部で3ページだけ、最初の3ページだけ小学館でやるっていうのが良いみたいで……。それやるようにしてからは早くなりました。取っ掛かりに時間かかりますからね、そこを強制的に始めちゃうみたいな。
──すごい、具体的じゃないですか。最初の3ページは小学館に来て描く。
真造 なんか家に帰るとやらないんですよ。違うことをしてしまって……ほんとボーッとテレビ観ちゃったりとか。ネットちゃっちゃかやっちゃったりとか。
ツチカ わかります(笑)。
真造 あの、僕からは質問というか、資料になるかと思って今日ネーム持ってきたんです。なのでよかったらツチカさんのネームも見せてもらえないかと……。人のネームってすごい気になってて。
ツチカ いいですよ。見せっこしましょう(とバッグからノートを3冊取り出す)。
──大学ノートに書いてるんですね。あ、けっこう日記とかアイデアメモも混ざってる。
真造 下書きまでにネーム何回描き直してるんですか? けっこう同じ部分を何度も描いてますけど。
ツチカ 4回……多いと6回くらいですかね。けっこう描いてるうちに変わっていくんで。さらに下書きでも変わっちゃうんですけど。
真造 すごい。すっごい時間かかりますよね、そのやり方。
ツチカ そうですね。ただ今回連載ですから、ちょっと作戦は考えていて。毎回同じことが起きるみたいな構造にしようかと。マンネリ作戦というか。
真造 マンネリ作戦(笑)。オチは決めてあるんですか? 最終話の。
ツチカ もうオチ決めてますよ。そこはめっちゃ考えてます。それだけしか考えてないくらいです。
真造 それは重要です。最終話を考えてあるなら、途中は大丈夫だと思う。
ツチカ 最終話は考えてます。どれくらい続けられるんでしょうね? これは。
真造 それはツチカさん次第ですよ。僕、来年の早いあたりで(週刊)スピリッツの連載が始まると思うので、それが単行本になったら2人フェアみたいのやってもらいましょうよ。
ツチカ わかりました。なんとか、それまでに終わってしまわないようにがんばりますので!
月刊!スピリッツ12月号ラインナップ
- 西村ツチカ「さよーならみなさん」
- さぬいゆう原作・伊丹澄一作画「共学高校のゲンジツ」
- 松田奈緒子「重版出来!」
- 小原愼司「地球戦争」
- 伊藤悠「シュトヘル」
- モリタイシ「今日のあすかショー」
- 手原和憲「ミル」
- 野田宏「拝啓、旧人類様。」
- 中山豪「0482」
- 高嶋あがさ「トド彼」
- 石神しし「ほんとにほんとにほんとにほんとにライオン田!」
- 大瑛ユキオ「ケンガイ」
- 大ハシ正ヤ「月刊 大ハシ正ヤ」
- ムロ・ゾノフスキー「Rolly▼婚」
- 南門前クマヲ「ゾンビ営業 高橋」
- 荒井ママレ「おもいでだま」
- 高田サンコ「たべるダケ」
- タナカカナタ原作・ハナツカシオリ作画「ギリギリ魔法少女?法子」
- 高橋聖一「パスタでわかる世界消滅!」
- 中川いさみ「世界美女話ビジョバナ」
- 吉田聡「七月の骨」
- 原克玄「かばやし」
- ルノアール兄弟「さよなら、もっさん。」
- 荻野真「孔雀王ライジング」
- 竹本友二「8 はち」
- イラストギャラリー「非日常な彼女」039 トミイマサコ
- 坂口恭平「新経済概論[鼻糞と接吻] 」
- 付録:花沢健吾×浅野いにお 「アイアムアヒーロー」10巻別バージョンカバー
※▼はハート、吉田聡の吉の字は正式表記では俗字になります
西村ツチカ(にしむらつちか)
1984年神戸生まれ。2008年に「君の動き」が月刊COMICリュウ(徳間書店)の龍神賞にて銅龍賞を受賞、翌年「黒岩さん」が同誌に掲載されデビュー。2010年に刊行した短編集「西村ツチカ作品集 なかよし団の冒険」が第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の新人賞を受賞した。2011年には第2作品集「かわいそうな真弓さん」を発表。月刊!スピリッツ2012年12月号にて初の本格連載「さよーならみなさん」を開始。
真造圭伍(しんぞうけいご)
1987年1月23日、石川県生まれ。週刊ビッグコミックスピリッツの「スピリッツ賞」に投稿ののち、大学3年時に「なんきん」でデビューした。その後月刊!スピリッツに「森山中教習所」を、週刊ビッグコミックスピリッツに「僕らのフンカ祭」を連載。短編をまとめた単行本「台風の日」も2012年に刊行。現在、新作鋭意準備中。