アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」梅原裕一郎がこれまでの役よりひと回り上の悪役に初挑戦 (2/2)

アニメではレオがすごく魅力的に描かれている

──ゲーム「テイルズ オブ ルミナリア」では21人のキャラクターの正義、アニメではレオとユーゴの正義を軸に描かれますが、完成したアニメをご覧になって、どういうところに魅力を感じましたか?

僕はあまり正義然としたキャラに感情移入できないタイプではあるんですが、今回のアニメでレオがすごく魅力的に描かれていて、彼のまっすぐさと、こじれてしまったユーゴとの関係性が、単純にイチ視聴者として面白いなと感じましたね。アウグストとその周りにいる帝国サイドの人たちとは全然違って、連邦の陣営にはこんなに爽やかなキャラクターもいるんだって(笑)。

──(笑)。アニメで印象に残っているシーンやセリフはありますか。

過去回想シーンで、自分たちの行動が正しいのかと迷うユーゴにレオが、人として何が正しくて、何が正義かはわからないけど、今は周りの人たちを助けるのが正義だと返すのですが、そのセリフが特に印象に残りましたね。すごくレオらしいというか、ちゃんと自分の正義を確立しているんだなと。それと同時に、個人的にはすごくレオに対して危うさも感じてしまって。周りの人を助けるために行動していった先に、もしかしたらとんでもないことが待ち受けているかもしれないじゃないですか。個人的には悪い方向に行かないといいな、大丈夫かなと心配になってしまいました。

アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」より。

アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」より。

アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」より。

アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」より。

──正義のために戦っても、全部正しい方向に行くとは限らないという。

それが正義というものの面白さでもあるし、奥深さでもあるんですけど。自分の掲げる正義に迷いがなく正しいと思っている点では、アウグストもレオも一緒なんですよ。正しいと思っているからこその危うさみたいなものを、どうしても、アウグストを演じた身としてはレオにも感じてしまうんです。

──アニメでは8人のキャラクターが登場しますが、梅原さん的にはレオが一番気になったキャラクターですか。

そうですね。ゲームだとまだレオとの関わりがなかったので新鮮でしたし、アニメ版のレオが思った以上にまっすぐなキャラクターだったので、アウグストはもっとこう、狂気じみた演技でもいいのかなと思いました。それはそれで面白いかなと。

梅原裕一郎

梅原裕一郎

どのキャラクターに対しても引っかかる部分がきっとあるはず

──アウグストは、悲しくも戦争によって大きな人生の転機を迎えたかと思うのですが、梅原さんは人生の転機になった出来事ってこれまでありますか?

大学受験に落ちて一浪したんですが、浪人中に時間があったので、これまでほとんど触れてこなかったアニメを観始めたんですね。最初はジブリ作品を観返すなどしていて、そこから深夜アニメの存在を知り、自ずと声優に興味を持って、大学に合格してさらに声優の養成所に通って声優になったという流れがあるので。もし現役で大学に入学していたら、アニメに触れずにいたかもしれないですし、全然違う人生になっていたんじゃないかと。

──一浪していなかったら、声優になっていなかったかもしれないという。

大学受験って、同世代のみんなが一斉に受験と向き合うじゃないですか。僕は周りが受験の雰囲気になっている中で受験勉強をすることにすごく抵抗があって、そこで周りと同じことするのが苦手なタイプなんだなって気付いたんですよね。ということは、いざ大学3、4年になって就職活動をするってなったときも、その波に乗れそうもないことは容易に想像できてしまって。なんとかその未来を回避したいという一心で探してた時期に丁度、声優という職業に興味を持てたので、それはかなりの転機だったなと思いますね。皆さんに元気を与えたいといった正の感情で声優を目指す人もいると思うんですけど、僕の場合は何かから逃げたいという、ある種の負の感情を原動力として声優になったので、そういうところから見ても、負の感情のほうに共感を抱いてしまうのかもしれません。

梅原裕一郎

梅原裕一郎

梅原裕一郎

梅原裕一郎

──アニメのメインキャラであるレオは気高くあること、ユーゴは仲間を守るということを信条としています。特集第1回(参照:「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」新井良平×竹田海渡が語る、敵対する幼なじみ同士が掲げる“譲れない正義”とは)でもレオ役の新井良平さん、ユーゴ役を演じる竹田海渡さんにお聞きしたのですが、プライベートなことでも声優としてでも構いませんので、梅原さんが信条としていることがあれば、ぜひお伺いしたいです。

信条とまではいかないんですが、うまくいかなかったときに人のせいにしないようにしています。僕の今までの経験上、自己責任じゃないですけど、うまくいかないときというのは単に準備不足だったり、自分が原因でこなせなかったりしたときが多いので、うまくいかなかったときは自分のせい、うまくいったときは自分と周りのおかげだと思うようにしていますね。そうすることで対策も練れますし。とはいえ、そこで自分を責めて落ち込むってこともなくて(笑)。根が楽観的すぎるので、自分を戒めるという意味でも他責じゃなくて自責にしているところもあります。

──アニメとゲームの両方に参加されて、改めて感じた作品の魅力を教えてください。

いろんなキャラクターの人生があって、それぞれ正義・信条を持って行動しているところが、やっぱりこの作品の面白さだと思いますし、どのキャラクターに対しても引っかかる部分がきっとあるんじゃないでしょうか。僕個人としてはアウグストを演じたこともあり、幸せな日常が破壊されて復讐に生きている彼の境遇に同情しましたし、応援したくなりました。今回のアニメは3DCGで制作されているので、ゲーム以上に迫力のあるアクションシーンとなっていますし、アニメになったことで1人ひとりのキャラクターがリアルに感じられました。アニメから興味を持った方は、ゲームをプレイしてもらうとキャラクターのバックボーンを知ることができて、より一層理解が深まるかと思います。ユール連邦とジルドラ帝国がどうなっていくのか、そして物語がどう終結して行くのか、僕もまだ知らないので今後の展開が楽しみですね。

梅原裕一郎

梅原裕一郎

プロフィール

梅原裕一郎(ウメハラユウイチロウ)

3月8日生まれ、静岡県出身。アーツビジョン所属。主な出演作は「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」(ウェザー・リポート役)、「フルーツバスケット」(草摩紅野役)、「銀河英雄伝説 Die Neue These」(ジークフリード・キルヒアイス役)、「ゴブリンスレイヤー」(ゴブリンスレイヤー役)、「ヤング ブラック・ジャック」(間黒男役)など。趣味・特技はクラシック鑑賞、ピアノ、ギター、歌。