アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」梅原裕一郎がこれまでの役よりひと回り上の悪役に初挑戦

1995年に1作目となる「テイルズ オブ ファンタジア」がリリースされて以降、ゲームを中心にさまざまなメディアミックス展開が行われてきた「テイルズ オブ」シリーズ。そのシリーズ最新作として登場したiOS / Android向けゲームアプリ「テイルズ オブ ルミナリア」のスペシャルアニメが、「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」と題し、各動画配信サービスで配信中だ。アニメでは21人いる主人公のうち、敵対してしまう幼なじみのレオとユーゴにフォーカスを当て、それぞれが抱く“正義”を軸にゲームより少し先の物語が描かれる。

コミックナタリーではアニメの配信を記念し、「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」の特集を全3回にわたって展開。第2回では敵国の宰相であるアウグスト・ヴァレンシュタイン役の梅原裕一郎にインタビューを行い、これまでの役よりひと回り上の年齢を初めて演じるという梅原に、キャラクターの魅力や役作りで苦労した点、アニメの見どころについて語ってもらった。

取材・文 / カニミソ撮影 / 曽我美芽

怒りや悲しみといった、負の感情で動くキャラクターに人間らしさを感じる

──ジルドラ帝国の宰相であるアウグスト・ヴァレンシュタインは、梅原さんがこれまで演じてきたキャラクターの中でもかなりラスボス感があり、年齢的にも上という印象を受けたのですが、今回のお話を聞いたときはどんなふうに思いましたか?

「テイルズ オブ」シリーズをプレイしたことはないのですが、もちろんタイトルは存じ上げていますし、今回キャストという形で関わらせていただくことが決まって、うれしかったです。個人的にアウグストのような立場の悪役に近い人物を演じるのは好きですし、これからも演じたいと思っている役柄だったので。あとはおっしゃる通り、今まで演じてきた年齢よりひと回り上ぐらいの設定だったので、新しい挑戦ともなり、余計に楽しみでした。

アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」より、アウグスト・ヴァレンシュタイン。かつては幸せな家庭を築き、片田舎で林檎農家を営んでいたが、戦時下の非道な作戦により、故郷と最愛の妻子を失ってしまう。そこから仇敵への復讐のため帝国軍に身を投じ、類まれな才能を見出されて宰相にまで上り詰める。

アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」より、アウグスト・ヴァレンシュタイン。かつては幸せな家庭を築き、片田舎で林檎農家を営んでいたが、戦時下の非道な作戦により、故郷と最愛の妻子を失ってしまう。そこから仇敵への復讐のため帝国軍に身を投じ、類まれな才能を見出されて宰相にまで上り詰める。

──キャラクターのビジュアルもだいぶ悪役然としていますが、アウグストのイラストを見たときの第一印象を教えてください。

いただいた資料を見たときに、最初の林檎農家時代の段階と後々とで表情が全然違っていたので、そこはインパクトがありましたね。後々のイラストは本当に「何があったんだろう」と思わずにはいられないくらい、人が変わったような狡猾そうな顔つきになっていたので。

──最初の段階では、アウグストは家族と片田舎で林檎農家を営んでいますからね。個人的に元林檎農家というキャラ設定は、現在の姿とのギャップに思わず二度見してしまいました。

そうですね(笑)。絵だけで見るとものすごく悪い奴なんじゃないか、という印象を受けましたが、台本を読んでみたらちゃんとバックボーンがあって、復讐が生きるための原動力となる理由がきっちり描かれていたので、納得しましたし、もしかしたら彼自身、悪を演じている部分も多少なりともあるのかもしれないと感じました。

梅原裕一郎

梅原裕一郎

梅原裕一郎

梅原裕一郎

──そこからアウグストは妻子を戦争で失い、復讐を遂げるために帝国の宰相にまで上り詰めます。彼の複雑な背景を演技で表現するのは難しかったのではないかと思いますが。

正の感情で動くキャラクターよりも、負の感情で動くキャラクターのほうが、個人的には感情移入しやすくて。怒りであったり、悲しみであったり、そういう感情に突き動かれるほうに人間らしさを感じてしまうんですよね。はじめから悪役として登場しているキャラクターや真っ当な正義感を持っているキャラクターに対して、僕は「なぜこういう思考になるんだろう」「なぜこういう行動を取るんだろう」と疑問を抱いてしまうタイプなんです。でもアウグストの場合は復讐に至る動機があるので、そこは演じやすいなと感じました。まず家族を殺されて普通の状態でいられる人間なんていないじゃないですか。アウグストの状況を自分に置き換えて考えると、生きている意味がなくなって、敵を討つためになんでもできちゃうんじゃないかと思いますね。

人間として大事なものも失ってしまった、アウグストの冷血さを意識

──アウグストについては、特にどんなところを意識して演じましたか。

基本的に奥さんと子供を亡くしてからのアウグストは、おそらく本心からは誰も信じていないと思っていて。一番近い部下たちについても、自分の目的を果たすための手段として信頼してはいると思うんですけど、それって血の通った信頼ではないですよね。人間としての何か大事なものも失ってしまっている。そういったところの冷血さを一番意識しましたね。後々冷血になってしまうからこそ、最初の林檎農家時代は温かみのある人物を意識して、よりギャップを出そうとしました。

──先ほど梅原さん自身、アウグストという役はこれまで演じたキャラクターよりひと回り年齢が上で、新しい挑戦だとおっしゃっていましたが、役作りのうえで特に苦労された点はありますか?

ゲーム収録の際に、アウグストの壮大な半生が書かれた年表を渡されたんですね。ゲームの場合、エピソードの時系列が飛び飛びだったりするので、どの時代のアウグストかがすぐわかるように予め年表が用意されていて、それを参考にしながら演じるんですが、林檎農家時代の24歳のアウグストを演じたと思ったら、次のシーンでは宰相になった33歳のアウグストを演じなきゃいけない。同じ人物とはいえ年齢の振り幅が大きいので、その切り替えがけっこう難しかったですね。最初はやっぱりリテイクも多かったですし、キャラを固めるまではそれなりに時間がかかりました。

アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」より。

アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」より。

──家族団欒の幸せな気持ちから、いきなり10歳近く年齢を上げて復讐モードになるというのも、演じるのがかなり大変そうです。

いやあ、本当に。人の半生を演じる機会って、そんなにはないですからね。僕は俗に言う“闇堕ち”するキャラクターをやらせていただく機会がなぜか多いんですが、例えば人智を超えたものに乗っ取られてしまうとか、復讐に取り憑かれたりするといった設定のキャラクターって、ある意味わかりやすく自由に作れるんですよ。以前とは違う声の出し方に変えてしまっても、人間から遠ざかってしまっても、それはそれで成り立ってしまうというか。そこは役作りをしていて楽しいと感じる部分ですね。ちなみにアウグストを演じていて一番楽しかったのは、奥さんと子供を失ってしまうシーンでした。

──ええ! そうなんですか!?

(笑)。なんていうんですかね。アウグストの人間らしい部分がまだちゃんと残っていましたし、劇的なシーンでもありましたし。それ以降のアウグストは演じている側から見ても、あまり本心がどこにあるかわからないところが多かったので。

梅原裕一郎

梅原裕一郎

梅原裕一郎

梅原裕一郎

──ではアニメ版のアウグストを演じるにあたり、苦労したシーンは?

アニメの後編で、アウグストがものすごく悪い表情を浮かべてセリフを言うシーンがあるんですけど、ゲームのアウグストはそこまで悪役な感じではなかったので、アニメではどこまでラスボス感を持たせるのか、その加減を細かくディレクションしていただきました。アニメのアウグストはゲームよりもどっぷり悪に浸かっているので、むしろ楽しそうにというか、狂気を混ぜてほしいと言われた気がします。

──ほかにアニメのアフレコ時で印象に残っているエピソードはありますか?

ほかのキャストさんとその場で掛け合う機会はなかったんですけど、収録済みの声をヘッドホンで聞いたりしながらアフレコに挑めたので、そこは役に入り込みやすくてよかったですね。