コミックナタリー Power Push - 「恋するアプリ」
本当の“好き”が、アプリで測れたら? 「ラブアラーム」で翻弄される青春ラブストーリーを作者が語る
“半径10m”がキャラクターを動かす
──「恋するアプリ」は韓国で大人気だと伺っています。日本でも「続きが気になる!」や「読んでみたらハマった」という声をSNSでよく見かけますが、反響は先生のもとに届いていらっしゃいますか?
はい、もちろん。1996年にデビューして今年で20周年になりますが、長くマンガ家をやってきて海外でこんなにいい反響があるのは初めてで。とても不思議な気持ちですが、すごくうれしいです。
──そもそも恋心が見える「ラブアラーム」というアプリの発想は、どこから生まれたんでしょうか。
最初はある人のメールを見たら笑顔になったとか、その人からの電話はどんなときでも必ず出るとか、そういう身体的な信号をスマートフォンが感知して、相手のことを好きかどうか判別するアプリのお話を作りたくて。この構想を考えたのは4年前なんですが、当時の技術でも実現できそうなお話のつもりだったんです。
──「ラブアラーム」は半径10m以内に自分のことを好きな人が現れると、アラームで知らせてくれるという仕組みですね。少し現実離れしたアプリですが、それに至ったのはなぜでしょう?
初めのアイデアだと、登場人物たちがずっとスマートフォンを見ていなくちゃいけないということに気付いたんです。そこで、現実世界の半径10m以内に入ると鳴るという仕組みを入れることで、登場人物たちがいろんな場所で出会ったり、ぶつかって事件が起きたりと、躍動感のある場面展開ができるようになりました。
女性に応援してもらえるヒロインに
──キャラクターについてもお伺いしたいのですが、主人公のジョジョは暗い過去を背負っているにも関わらず、驚くほどにまっすぐで健気です。どういう意図で作り上げた人物像なんでしょうか。
ジョジョは、たくさんの女性読者に応援してもらえる存在になればいいなあと思って作ったキャラクターです。第8話で「私は曲がらない」というジョジョのセリフがありますが、皆さんもその言葉で力をもらってくれたらなと。
──ジョジョがヒカルに自分の家庭環境を打ち明け、理想の生き方について語るシーンですよね。確かにあのセリフはジーンときました。
心が折れるとか自信をなくすとか、誰しもつらい経験をするじゃないですか。これからジョジョが幸せになっていく姿を見て、読者の皆さんも一緒に幸せを感じてほしいですね。
──ジョジョは読者に希望を与える存在であると。一方ヒカルはカッコよくてお金持ち、そして学校一の人気者という恵まれたキャラクターですよね。
ヒカルは少女マンガに出てくる典型的なイケメンキャラというイメージです。だから彼を描くときは、髪型と身だしなみに一番気を使っていて。でも心の底では誰かを強く真剣に愛したいという感情を持っているキャラクターなので、これから大人になっていくにつれて、より成長していく姿を描いていきたいですね。
前作から絵柄が変わった理由
──先ほどヒカルの描き方についてお話がありましたが、「恋するアプリ」は先生の過去作と比べるとかなり絵柄が変わった印象があります。
この作品は3Dで人物や背景のモデルを制作してからマンガの主線を作り出しているんですが、実はわざと荒い感じでやっているんです。もともと表現が荒いのか、それとも修正をちゃんと施してないのかわからないようにするのを目標にしていて。
──それはどうしてですか?
前は滑らかで繊細な線にしていたんですが、そうすると手間も時間もかかってしまって……。それでいろいろ効率化して辿り着いた結果がこのタッチなんです。初めはこの主線が気になるかもしれませんが、ずっと見ていれば慣れてもらえるかな、と。
──3DCGを用いる手法は「恋するアプリ」以前から行われていたんでしょうか。
初めて使ったのは2000年頃ですね。もともと手描きでデビューしたんですが、いつか必ず3Dに変えようとずっと思っていて。最初は背景から始めたんですが、人物まですべて3Dにしたのは2006年です。当時は「3ds Max」というソフトを使っていたんですがどうしても技術的な限界があって、そのときに出した作品は今より人物のタッチが固いんですよね。
──3Dと手描きで作品を仕上げるのは、どこが違うと思いますか?
3Dは手で描くのとは比較できないくらい作業が速くなるので、全然違いますね。でも3Dは手で描いたものと比べると、どうしても複雑に見えるときがあるんです。だからできるだけ平面的に見える構図を見つけるために、いろんな角度を試してます。
※この動画は、KYE YOUNG CHONが制作した映像に一部編集を加えたもの。
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KYE YOUNG CHON(チョン・ゲヨン)
韓国を代表するマンガ家の1人。1996年、韓国の少女マンガ誌ウィンクの新人漫画公募展にて「탤런트(タレント)」で大賞を受賞しデビュー。1997年に発表した音楽マンガ「오디션(オーディション)」は爆発的な人気を得て、韓国の少女マンガの販売部数1位を記録した。1998年に初連載作「언플러그드 보이(アンプラグドボーイ)」をスタートさせ、人気を博す。2009年にWebマンガとして発表した「예쁜 남자(キレイな男)」は、2013年にチャン・グンソク主演でドラマ化。現在は韓国のDaum Webtoonにて「恋するアプリ」を発表しており、日本のピッコマでも連載中。