声優界のマンガソムリエ・小西克幸が選ぶ、イチオシのLINEマンガオリジナル作品は?マンガ文化への愛も炸裂

ここでしか読めないオリジナル作品や先行配信作品を1100タイトル以上取り揃えているLINEマンガ。しかしその膨大な数の中からどの作品を読めばいいのか、お悩みのユーザーも少なくないだろう。そこでコミックナタリーでは、毎月300冊以上の単行本を買うほどマンガ好きな小西克幸にインタビューを実施。これまで小西が読んだことのあるLINEマンガオリジナル作品の中からLINEマンガ編集部がピックアップしたイチオシのタイトルについて、その見どころやお気に入りシーンを語ってもらった。特集の最後で語られる、小西が抱えるマンガ愛についてもお見逃しなく。

取材・文 / 大湊京香撮影 / ヨシダヤスシヘアメイク / fringe

僕が知らないマンガって、この世の中に山ほどある

──今着ているトップス、もしかしてブラック・ジャックですか?

はい。マンガの取材だしトップスどうしようかなと思って、ブラック・ジャックにしました。

──粋な計らいありがとうございます。ではさっそくインタビューに入っていければと思うのですが、小西さんは声優さんの中でもかなりマンガ好きで知られていますよね。月にどれくらいの作品をお読みになるのですか?

月に300冊ぐらい買っています。

──それはすごい!

最近はなかなか時間がないので、買ったはいいけど読めていないマンガがめちゃくちゃ溜まっているんですけど……。これ全部積みマンガです(自身のスマートフォンに収められている未読マンガ一覧を見せる)。

──積みマンガ一覧、いくらスクロールしても止まらないですね……。

だいぶピンチです(笑)。しかも新刊が出たときは、既刊分を読み返してちょっとずつ思い出し直すっていう作業をするので、10巻出ているやつは10巻分まるまる読み直すんですよ。そうするとまた新刊を読むまでにまた2、3日かかったりして。全然進まないです(笑)。

──月300冊も買うほどマンガが好きになったきっかけを教えてください。

こんなにたくさん読むようになったのはコロナ禍で時間ができてからですかね。せっかく時間があるならと、今まで読みたかったけど読んでいないマンガとか、新しいマンガを探してみようと思って。もともとマンガやアニメ、ゲームは小さい頃から好きでした。子供の財力ではそんなにたくさんのマンガを買うことができないので、昔は単行本より雑誌で読むことのほうが多くて。姉もマンガをよく読んでいたので、姉が買ってきた少女マンガ系の雑誌も勝手に読んだりしていました。

小西克幸

小西克幸

──幼い頃からマンガに触れていたんですね。小西さんのTwitterを拝見すると、続刊だけではなく1巻ものについてもかなりお読みになられてる印象です。

昔はどんなに面白いって言われてるタイトルでも、単行本が3巻以上出てないと買わなかったんですよ。続きが気になっちゃうから(笑)。でもそれをやってたらもう読めるマンガがなくなってきちゃって。電子書籍だと、購入内容に沿ってオススメ商品を提示してくれると思うんですけど、そこには僕が知らないマンガが山ほどある。だから巻数が少なくても自分が面白そうだと思ったら買っちゃえばいいやと思って、今は1冊しか出ていない作品も買うようにしています。

1話の引きが強かったので、どんどんその先を見たくなります

──今回は膨大な数のマンガをお読みになる小西さんに、お気に入りのLINEマンガオリジナル作品とLINEマンガ編集部イチオシの作品について語っていただければと思います。ラインナップの中にはwebtoonと言われるタテ読みマンガもあると思うのですが、これまでタテ読み形式に触れたことはありますか?

あります! webtoonだとスクロールするときのストレスがないので読みやすいですよね。電子書籍はどうしても読み込む時間が出てきてしまうので、ヨコ読みだとページをめくるときに飛ばしちゃうこともあって。ただwebtoonはシームレスな分、中身を深く理解する前に軽く見れてしまうのは危ないかも。

──「危ない」とはどういうことでしょう?

マンガって予想だにしてないところにヒントが描かれてることもあるので、そこを飛ばしちゃうと下に続くマンガの意味が変わってくると思うんです。特に風景描写みたいな文字を書いてないページには物語に必要な要素が隠れていたりするので、ぜひじっくりと読んでみてほしいです。

小西克幸

小西克幸

──マンガ好きならではのアドバイスですね。ではまず編集部イチオシ作品「強化レベル99 木の棒」についてお伺いしていきます。この作品は、VRゲームで雑魚だと言われ続けていた“俺”が、偶然手に入れた初心者用の武器・木の棒を最強レベルまで強化成功してしまうところから始まります。

ちょうど気になっていたんです! LINEマンガを開いたときに一番上のオススメに出てきて、「めっちゃタイトル面白そうじゃん!」と思って。自慢の武器を強化したら全部失敗して、仕方なく木の棒を強化したらうまくいって、そっから物語が始まって……という流れが面白いですよね。そもそも強化成功なんて普通はしないし、できたとしても+6ぐらいからはもう強化されなくなりますから(笑)。僕自身もゲームで何回武器を壊したことか!

「強化レベル99 木の棒」第1話より。©紅実・jipely/LINE Digital Frontier

「強化レベル99 木の棒」第1話より。©紅実・jipely/LINE Digital Frontier

──+99が奇跡的な数字であることがわかりました(笑)。もう1つのLINEマンガ編集部オススメ作品、「ナノ魔神(ナノマシン)」はいかがでしたか?

これからどうなるんだろうなと思っています。ナノマシンを埋め込まれたことにより、特殊な能力をいっぱい授かると思うので、何も文明がない世界ではめちゃくちゃ最強の存在になると思うんですよね。ナノマシンが一体どういう力を与えてくれるんだろうというのが気になります。「強化レベル99 木の棒」もそうですけど、どっちも1話の引きが強かったので、どんどんその先を見たくなりますね。

「強化レベル99 木の棒」ビジュアル

「強化レベル99 木の棒」ビジュアル

「強化レベル99 木の棒」
作画:jipely 原作:紅実

初心者装備がゆえにVRゲーム「クロノライフ」で雑魚扱いされ続けてきた“俺”。装備の強化にも失敗しついに身ひとつとなった“俺”だったが、偶然手に入れた初心者用の武器・木の棒の強化に大成功。最強レベルまで強化された木の棒は驚異的な威力を誇り……。

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「ナノ魔神」ビジュアル

「ナノ魔神」ビジュアル

「ナノ魔神」
画:GGBG 原作:HANJUNG WOLYA 脚色・Great H

魔教の私生児として生まれた天黎雲は、後継者争いに巻き込まれ命を狙われる。敵の圧倒的な強さにもはやこれまでと思ったそのとき、黎雲の子孫だと名乗る青年が現れ“ナノマシン”と呼ばれる未来の力を注入されてしまった。とてつもない力を手に入れた黎雲は、最強の武人を目指していく。

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異世界転生した人は100%何かの事件に巻き込まれるんですよ(笑)

──続いて小西さんがもともとお読みになっていた、お気に入り作品についてお伺いしていければと思います。今回は「転生して田舎でスローライフをおくりたい」「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」「宇宙検閲官」「パンプキンナイト」の4作品をピックアップしていただきました。まずは「転生して田舎でスローライフをおくりたい」について。社畜だった主人公が、田舎貴族の次男・アルフリートに転生するところからスタートする物語です。

主人公がスローライフを送っている様子をひたすら描いているだけなのに面白いんですよね。主人公は27歳の男性が異世界転生しているので“見た目は子供、頭脳は大人”なんですよ。1巻の最初のほうだと3歳ぐらいなんですけど、そんな年齢なのに口も悪いし、大人が言うようなことを平気で言うわで、お父さんとお母さんに怒られたりしていて(笑)。そのギャップとほのぼの感がめちゃくちゃ面白い。出てくるキャラクターたちもただの村の人なんですけど、“スローライフを送る”という作品を構成するためには全員必要で。それぞれにちゃんとした役割があって、1人でも欠けちゃうとちょっと面白くなくなっちゃったりするぐらい。

小西克幸

小西克幸

──たしかに、村人しかりアルフリートの家族しかり、個性豊かなキャラクターたちが多く登場します。

お姉ちゃんの存在もいいですよね。弟である主人公としては、彼女に一生懸命構われると嫌なんだけど、僕たち読者から見ると彼女がすごく気を遣っているのがわかるので、そういった絶妙な描写も上手だと思います。あとは前世の知識と自分が授かった魔法の力を駆使して現代にあったものを発明するところ。ただただのんびりと快適な生活をしたいだけなのに、スパゲティとかリバーシを作っちゃうことで周りから引っ張りだこになり、落ち着いて過ごせなくなって(笑)。殺伐としたものが苦手な方は好きなんじゃないかなと思います。

「転生して田舎でスローライフをおくりたい」1巻第3話より。©Renkino・Mayu Kosugi・Chaco Abeno/LINE Digital Frontier ©宝島社
「転生して田舎でスローライフをおくりたい」1巻第3話より。©Renkino・Mayu Kosugi・Chaco Abeno/LINE Digital Frontier ©宝島社

「転生して田舎でスローライフをおくりたい」1巻第3話より。©Renkino・Mayu Kosugi・Chaco Abeno/LINE Digital Frontier ©宝島社

──アルフリートは転生するときに、1つだけ自分が希望する魔法能力を授かります。例えば小西さんが前世の記憶を持った状態で転生するとして、どんな魔法をお願いしたいですか?

それはもう、なんでも創造できる魔法です!と言いつつ、何が正解なのかはわからないですね。異世界転生ものの主人公たちは役に立たないスキルをもらっても、なんだかんだそれを活用して最強になっていくじゃないですか(笑)。例えば畑を耕すだけの能力だとしても、すごく耕せることで大きな敵を倒せたりとか。そういう感じで考えちゃうから、1つに決めるのは難しいです。

──なんでも創造できる能力を授かったとして、異世界でやりたいことはありますか?

平和に何不自由なく生きたい! ゲームをしていると合戦とか軍同士の戦いを見てみたいとも思うんですけど、いざ本当にその場に立ったら「なんでここにいるんだろう、嫌だな……」と思う気がします。ただ、異世界転生した人は100%何かの事件に巻き込まれるんですよ。引きこもっていてもスローライフを送ってても、住んでる村の近くにとてつもない魔獣が出てきて、無事退治できても「これは何かの予兆かもしれない」って展開していって……。ちょっと僕、マンガの読みすぎですね(笑)。

「転生して田舎でスローライフをおくりたい」ビジュアル

「転生して田舎でスローライフをおくりたい」ビジュアル

「転生して田舎でスローライフをおくりたい」
漫画:小杉繭 原作:錬金王 キャラクター原案:阿倍野ちゃこ

トラックに轢かれ命を落としてしまった社畜の主人公。来世では働かずにゆっくりと過ごしたいという願いが通じたのか、彼は異世界の片田舎に転生することになる。魔法が存在する世界で、貴族の次男・アルフリートに生まれ変わった主人公が、ひたすらにスローライフを送る様が描かれていく。

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──続いて「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」について。

これ、めっちゃ面白くて一気に読んじゃいました! まず設定がいいですよね。人間を滅ぼさんとする魔獣王と呼ばれる異形の存在が、国を滅ぼしていく中でひょんなことから人間の赤ん坊を育ててくれと頼まれる。なんの気まぐれからか彼はその子を育てることにするんだけど1人じゃ育てられないから、彼を打ち倒そうとした女勇者を死から蘇らせて旅をともにして……。

──さすが、あらすじも完璧ですね。特に面白いと思った設定はありますか?

魔獣王って旅をするときには人間の身体になっているから、殴られたりするとすぐ気絶するんですよ。本当はめちゃくちゃ強いのに。そういうちょっとした設定や描写が面白いですね。そして女勇者自体が魔獣王に蘇らせてもらってるから、絶対に魔獣王の言うことを聞かなきゃいけないじゃないですか。心は嫌だと思ってても、体は従わざるをえないみたいな部分を、無理やりではなくストーリーやキャラクターに沿って描いている。そういったバランスのいいギャップがギャグになっていると思います。

「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」第5話より。©Yuji Iwahara/LINE Digital Frontier

「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」第5話より。©Yuji Iwahara/LINE Digital Frontier

──魔獣王と屍の女勇者の関係性も独特です。魅力的だと思うキャラクターはいますか?

難しいですね……。旅をする中で出てくる人たちは、いい人、悪い人に限らずみんな魅力的なんです。いろんな能力を持ってたり、一筋縄では行かない部分もあったりして、みんなそれぞれ違っているので面白いんですよね。ちょうど5巻くらいで物語が一山越えるんですけど、まだキャラクター全員は揃っていないんじゃないかと。まだまだこれから魅力的な奴がいっぱい出てくるんだろうなと思っています。

──続きが気になる作品ですね。例えばどんな人にこの作品をオススメしたいですか?

世界観がすごくしっかりしてるので、ファンタジーが好きな人はハマるんじゃないかな。ただもしファンタジーが得意じゃないと思っている人でも、読む前から選り好みしないでとりあえず読んでみてほしいです。読んでみて、絵や話の展開がちょっと合わないっていう人は本を閉じればいいと思うので、入り口は大きくある感じだとうれしいです。

「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」ビジュアル

「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」ビジュアル

「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」
岩原裕二

人属(人間)を滅ぼさんとする魔獣王・クレバテスは、敵対する国を蹂躙していく中でひょんなことから人属に赤ん坊を助けてくれと懇願される。その子の成長を見届けることを決めたクレバテスは、ゾンビ化させた女勇者を引き連れ赤ん坊を育てるための旅に出る。

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