LaLa45周年特集第5回 マンガ研究者、オタク女性ライター、マンガ家マネジメント会社広報が語るLaLaの“ホープ作品”|主人公たちは新時代を感じる“強くておもしれー女”、でもLaLaの上品さも受け継ぐ5作品

LaLa(白泉社)が創刊45周年を迎えた。コミックナタリーではこれを記念した特集を連載形式で展開中。5回目となる今回はマンガ好き3人をゲストに迎え、LaLa編集部が自信を持って贈る、ここ数年以内に連載が始まった“ホープ作品”について語り合ってもらった。ゲストはマンガ研究者のヤマダトモコ氏、オタク女性ライターのひらりさ氏、マンガ家マネジメント会社・スピカワークスで広報を務める田中香織氏。マンガが大好きという縁で座談会に集まってくれた世代の違う3人は、LaLaの“ホープ作品”をどう読んだのか。座談会からは、LaLa作品の持つ上品さ、そして“強くておもしれー女”というキーワードが浮かび上がってきた。

取材・文 / 横井周子

座談会の参加者紹介

ヤマダトモコ
1967年生まれ。マンガ研究者。明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフ。LaLa創刊号が発売されたときのことを覚えている。
田中香織
1978年生まれ。女性マンガ家マネジメント会社・スピカワークスで広報を担当。元ジュンク堂書店の書店員で、マンガ大賞の実行委員でもある。リアルタイムで読んでいた、印象深いLaLa作品は「彼方から」。
ひらりさ
1989年生まれ。ライター・編集者。オタク女性サークル・劇団雌猫にも所属。中学1年生のときに始まった「桜蘭高校ホスト部」第1話を読み、「このマンガは絶対に来る!」と確信。

「桜蘭高校ホスト部」「OZ」「摩利と新吾」……
それぞれのLaLa遍歴

──まずはそれぞれ心に残るLaLaの思い出を教えていただけますか?

ひらりさ 私は1989年生まれなんですけど、子供の頃からずっと少女マンガが好きで、小学校高学年で花とゆめやLaLaを読み始めました。当時連載中だったのが「彼氏彼女の事情」とか「お迎えです。」とか。渡辺祥智さんの「銀の勇者」「funfun工房」も大好きでした。LaLaってファンタジーでも魔法でガンガン敵を倒したりするんじゃなくて、しっとりしているというか。その頃はちょっと大人っぽいマンガのイメージで読んでましたね。すごく覚えてるのが「桜蘭高校ホスト部」の第1話。めちゃくちゃ面白くて「このマンガは絶対に来る!」って周りの子に言ってまわりましたね。

田中香織 ちょっと大人って感覚、わかります。私は1978年生まれで、最初に記憶にあるのは樹なつみさんの「OZ」。LaLaのマンガは物語がしっかりしているイメージがあります。

ヤマダトモコ うんうん。

田中 思い出深いのはやっぱり「夏目友人帳」ですね。その前に描かれていた「蛍火の杜へ」がすごく好きで、緑川ゆきさんっていいなあって思っていたんです。「夏目友人帳」の連載が始まったときに面白いよって周りにも勧めまくって、当時勤務していた書店でも、「このマンガがすごい!」でも連続で推したのに、最初はなかなかニャンコ先生のよさを理解してもらえなくて(笑)。アニメ化で一気に人気に火がつきましたね。

LaLa創刊号

ヤマダ 私は1967年生まれなのでLaLa創刊号もよく覚えてます。「ビューティフルなまんが雑誌」というあおりがついていて、表紙が山岸凉子さんの描いた「花の精たち」だったんですよ。当時注目のマンガ家がみんないる感じで。その人たちがほかの雑誌では描けない作品をLaLaで描くようになって、徐々に代表作を生み出す場所になったんですよね。例えば木原敏江さんの「摩利と新吾」とか、大島弓子さんの「綿の国星」とか。一方でLaLaから育った成田美名子さんのような方もいらっしゃって。とにかく新しいことをしている雑誌という印象でしたよね。あと、これは白泉社の少女マンガ全体の話かもしれないんですが、「女子は恋愛のみに生きるにあらず」みたいな雰囲気がとってもよかった。もっと昔、1950〜60年代に遡ると少女マンガって恋愛を描くことがタブーとされていたんですけど、その後少女マンガの世界が恋愛一辺倒みたいになっていた頃に、それとは違うタイプの作品がたくさん載っていたので。

ひらりさ 歴史を聞いている! 当時の表紙、見てみたいです。

田中 いろいろ読み返したくなってきました(笑)。LaLaは美麗な絵も多いですよね。2016年に行われたLaLa40周年記念原画展のとき、カラーが本当にきれいでびっくりしました。

ヤマダ 成田美名子さんと清水玲子さんの登場はすごいインパクトでしたね。絵がうますぎて衝撃を受けました。

マリーって“おもしれー女”だなあ……「機械じかけのマリー」

──そんな歴史を踏まえつつ、ここからは新しい作品について皆さんの感想を聞かせてください。今回はLaLa編集部オススメの、2021年現在連載中の5作品を読んでいただきました。まずはあきもと明希さんの「機械じかけのマリー」から。まだ既刊2巻ですが、連載開始以来読者アンケートでずっと上位なんだそうです。

「機械じかけのマリー」1巻
あきもと明希「機械じかけのマリー」あらすじ
元天才格闘家のマリーの新しい仕事は、大財閥の跡継ぎ・アーサーの専属メイド。ただしアーサーは冷酷&人間嫌いのため、マリーはロボットだと偽って働くことに。人間だとバレたら即処刑のはずが、アーサーは無機物には優しく、まさかの溺愛ルート!? 機械じかけの(フリをして働く)マリーの毎日は、予想外の出来事の連続で……。LaLa2020年5月号に読切で登場し、好評を博して連載化された。

ひらりさ ちょうど自分で買って読んで、「おもしろ!」と思っていた作品です。ロボットのふりをして、人間嫌いの御曹司の専属メイドになるっていう話なんですけど、まず設定がすごく面白いですよね。「桜蘭高校ホスト部」にもちょっと近いというか……。御曹司のアーサーはマリーを溺愛してるけど、それは恋愛としてではなくて。お互い最初から恋愛で好かれようと思って何かをしてるわけじゃないけど、結果的に恋愛になっていく、みたいな。

田中 ああ、確かに!

マリーのキックが炸裂したシーン。

ひらりさ 鈍感な2人がどんどん近づいていくのを見ているの、楽しいですよね。それにマリーが元天才格闘家で、すごく強いのもよくて。マリーって“おもしれー女”だなあって思うんです。おもしれー女って、もともとはなびかない女としてイケメンから面白がられたときの言葉だそうなんです。でも、マリーの場合は恋をして相手からも見染められて……という流れではないんですね。ちょっと型から外れていて“私は私”という部分を持ったまま物語が展開していくのがいい。

田中 マリー、強くてカッコいいですよね。バーンとした見開きも好きです。2巻の最後あたりはもう畳みかけるように大ゴマがあって。躍動感があって、読んでいて気持ちがいい。

ヤマダ いっぱい出てくるマリーの豪快な蹴りのシーンもいいですよね。見せ方が上手。

ひらりさ アーサーを狙う暗殺者のノアが私の推しです。ちょっと闇があるキャラがすごくよくて(笑)。ノアはマリーをもとの意味でおもしれー女だと思っていて、マリー的には近寄りたくない敵なんだけど逆効果でどんどん近づいてくるところも個人的には萌えです。

ヤマダ アーサーも面白い。冷酷非情なはずが、マリーの原動力が単三電池って聞いたときの「そーなんだあ‼」ってやり取りとか笑いました。そんなわけねーだろっていう(笑)。

田中 シリアスとコメディの要素が両方あって、ちょっとほろっとした後にも笑わせてくれる。男性にも人気が出そうな作品ですね。

男女逆転⁉ ヒロインが“攻め”の「末永くよろしくお願いします」

ひらりさ 今回5作品読んだところ、私が読んでいた時代と比較して、全体的にヒロインが強いなって思いました。「末永くよろしくお願いします」は、ある意味ラブコメにおける男女の役割が逆転していますよね。イケメン御曹司が普通の女の子に迫るんじゃなくて、相手を決めて落としにかかるのはむしろヒロインの輝(ひかる)のほう。

「末永くよろしくお願いします」1巻
池ジュン子「末永くよろしくお願いします」あらすじ
唯一の肉親だった父を亡くした鷹司輝(たかつかさひかる)。無気力・無表情な輝を保護者として迎えてくれたのは、父の生家である鷹司本家に拾われた書道家・葛霧清水(くずきりきよみず)だった。同居生活の中で、一見冷たい清水が実は自分を気にかけてくれることに気付き、輝は「清水のお嫁さん」を目標に生きることに。年上ツンデレ×残念美少女のカオスな同棲ストーリー。LaLa2020年5月号で連載開始した。

田中 壁ドンしているのも輝のほうだったり。

ひらりさ しかも輝は好きな男の人だけじゃなくて女の子相手にも魅力を発揮していくんですよ。どんどんいろんな人を落としていく。そのときの表情がすごくカッコいい。

田中 私はやまもり三香さんの「椿町ロンリープラネット」が好きで、年齢差がある2人がいろいろあって同じ家で暮らすことになるという設定に惹かれて「末永くよろしくお願いします」を読み始めたんです。でも「椿町」とはまた全然違う面白さがありましたね。まさかこんなに輝が強いとは。

第1話からぐいぐいいく輝。

ヤマダ 白泉社だと70年代に始まった酒井美羽さんの「ミミと州青のラブコメディ」シリーズっていう年の差カップルの名作もありますよね。州青さんは、金髪碧眼なんだけど着物で生活をしている日本画家。「末永く」の書道家・清水(きよみず)さんと通じるところがあって、私はそんな作品も思い出しながら読みました。年の差カップルってドラマとしていい素材なんでしょうね。でもやっぱり女の子の強さに時代の違いを感じます。

田中 輝は守られるお嬢様ではないんですよね。あと「本当に恋愛感情なのか?」と父親の影を求めてるんじゃないかって視点が入るところもいいなって。

ひらりさ 3巻のラストシーンですね! 続きがめっちゃ気になりました。

田中 輝に友達ができたりしてキャラがどんどん増えるのも群像劇として楽しい。恋愛だけを描く物語だと主人公たちがくっついたらおしまいになっちゃうけど、この作品は恋愛以外の部分をたくさん描いてくれてますよね。脇のキャラクターのエピソードが丁寧に描かれて、しかも誰も悪人じゃないところがすごく好きです。優秀な美術商だった、亡くなった輝のお父さんの話もきっとそのうち描かれると思うので楽しみにしています。

ヤマダ 個人的には、柴犬のモモがたまらない。まあ本当にかわいくって。

ひらりさ 清水が大事にしているぬいぐるみの泥クマもかわいいですよね。そういえば、書道家の話なだけに、文字にも味わいがある。タイトルの手書き文字や作中で清水が書く字のことが特に気になってました。誰が書いてるんだろう?

──タイトルは単行本の装幀をしている川谷デザインさん、清水の書はなんと池ジュン子さんのお母様が書かれているんだそうです。

ひらりさ わー、そうなんですね。面白い。作中でけっこうしっかり書道してますからね。輝の字のやばさには、いつもウケてます(笑)。