「傷物語 -こよみヴァンプ-」乃木坂46・池田瑛紗が美大生の視点で紐解く“異質な演出”、現実に侵食してくるシャフトの映像の魅力とは (2/2)

ヒロインに乃木坂46のメンバーを当てはめるなら?

──池田さんは暦になりたいということだったんですが、「ヒロインに乃木坂46のメンバーを当てはめるなら?」という質問も用意してまして。思いつく方はいますか?

真宵ちゃんは、乃木坂の最年少メンバーで、私と同じ5期生の小川彩ちゃんかな。大きなリュックを背負ってツインテールにしたら絶対かわいいと思うんです! 真宵ちゃんの生意気なところも、彩ちゃんだったら許せる(笑)。

池田瑛紗

池田瑛紗

──池田さんの推しの戦場ヶ原はどうでしょう?

ひたぎちゃんは、井上和ちゃん。若干ツンデレで、若干女王様っぽいところが似ています(笑)。

──憧れていた羽川は?

委員長気質はいるかな? 一瞬、真面目でお手本みたいな人ってところで梅澤美波さんが思い浮かんだんですけど、梅澤さんは最盛期のキスショットのほうが合いそう。

──キスショットですか。

私の中で、キスショットは“美の化身”というイメージなんです。それが梅澤さんに合うなって。実際にキスショットのあの髪型や衣装も着こなすだろうなって想像できます。

──なるほど。

「傷物語 -こよみヴァンプ-」より、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。

「傷物語 -こよみヴァンプ-」より、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。

あ、翼ちゃんいました! 久保史緒里さんですね。翼ちゃんの髪型とか絶対に似合うだろうし、本人のパーソナリティも似ている感じがします。(千石)撫子ちゃんは、女の子らしい子だと思っているので、そういう意味では川﨑桜ちゃんですね。「恋愛サーキュレーション」を歌ったら絶対似合う!

──最後に神原駿河もお聞きしたいです。

乃木坂にいるかな……? でも、駿河ちゃんは言動に難があるから、例えられないかもしれない(笑)。

──確かにそうでした……(笑)。ちなみに、神原のことはどんなキャラクターだと思っていますか?

本当は真面目で純情なのを軽口で隠しているところがあるじゃないですか。そういうギャップには惹かれます。それに、運動神経がいいけど、それは怪異の力で得たものではなくて、怪異から周りの人を守るために努力して自分で力を得たっていうエピソードも好きですね。

──では、「努力」「ギャップ」という面で似ているメンバーはいますか?

それだけをピックアップするなら、岡本姫奈ちゃんかもしれないです。底抜けに明るくて、ちょっとおバカな一面もあるんですけど、クラシックバレエとか自分で決めたものにすごく真摯な姿勢で挑んでいるんです。本人は意識してないと思うけど、根の真面目さがふとしたときに出ていて、そういう部分はすごく似ているなって思います。

異質な演出で現実に物語が侵食してくる

──「〈物語〉シリーズ」を観たり、読んだりする中で、どのタイミングで「傷物語」に触れましたか?

最初ではなかったです。先にほかのシリーズに触れていて、その中に「傷物語」のエピソードの匂わせがいくつかあったので、初めて観たときも、初見の感覚はなかったですね。あの話で出ていたのはここのことか、みたいな感覚が強かった記憶があります。

池田瑛紗

池田瑛紗

──では、ある程度予想できていた感じでしょうか?

想像していたよりも温かい物語だなと思いました。私は、暦くんが自己犠牲とものすごい優しさで成り立っているキャラクターだと思っているんです。それで「傷物語」を観たら、キスショットも暦くんに負けないくらい、自己犠牲の精神を持ったキャラクターだってことがわかったんです。

「傷物語 -こよみヴァンプ-」より、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと阿良々木暦。

「傷物語 -こよみヴァンプ-」より、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと阿良々木暦。

──自己犠牲は、物語の最後の展開にもつながってきますよね。

物語後半、最後の戦いで、キスショットが抱いていた真意がすごく印象的で。断片的にしか物語を知らなかったときは、もっと冷酷なタイプだと思っていたので、彼女の優しさが本当に切なくて……。もっと2人に互いが幸せになる道を探してほしいなって思いながら観ていました。

──今回の新作「傷物語 -こよみヴァンプ-」で改めて「傷物語」に触れていかがでした?

私の中で「〈物語〉シリーズ」が、構図とか絵で魅せるタイプのアニメだというイメージが強いのもあって、まず「こんなに動くアニメだったっけ?」という驚きがありました。頭にガツンとくるキャラクターの動きの速さとか、そこが痛快な感じですごく好きでした。

──3部作をモノローグやコミカルな会話劇を抑えて再構成したことにより、余計に動きのあるシーンが印象に残ったのかもしれないですね。

シャフトさんの作品って、「まどか☆マギカ」で言う劇団イヌカレーさんみたいに、1つの作品の中でいろいろな映像表現を組み合わせていますよね。今回の「こよみヴァンプ」でも、実写のようなシーンが多く使われている気がして。それがアニメーションのキャラクターと組み合わされていたので、現実に物語が侵食してくるような感覚もありました。

──TVシリーズからのあの独特の演出が「傷物語」ではさらに色濃くなっている印象です。

もともと日常の中の異質な部分を切り取った作品が「〈物語〉シリーズ」で、演出の異質さも日常の中の異質な部分、つまり怪異そのものを表現していると思うんです。「こよみヴァンプ」は、怪異の異質の部分をさらに広げていて。だから日常シーンもほとんどなくなって、演出も色濃くなっているのかもしれないですね。

頭の中が新しい感想に塗りつぶされちゃいそう

──「傷物語 -こよみヴァンプ-」をメンバーにオススメするとしたら、どういうふうにプレゼンしますか?

私はシリアスなシーンが多ければ多いほど、差し込まれるギャグの部分が光るなと思っているので、ギャグのシーンが楽しいことを伝えつつ、「ギャグアニメじゃないじゃん!」って後から怒られたいと思います(笑)。

池田瑛紗

池田瑛紗

──作品をオススメしたいメンバーはいますか?

和のテイストとか映画が好きなアルノちゃんに観てほしいです。アニメっていうよりも映画が好きな子で、「こよみヴァンプ」はそういう人にも刺さると思うので。

──ギャグ以外で見どころを挙げるならどうでしょう?

圧倒的情報量になると思います。小説は「密」でアニメは「疎」の魅力があるとさっきお話したんですけど、「こよみヴァンプ」に関しては「密」の魅力も詰まっていると感じました。映像で頭の中にガンガン情報を入れてくるのが、原作を読んだときに似た気持ちよさがあって、アニメも原作も両方楽しんでほしいです。

──池田さんみたいに画面構成や建築に注目してもいいかもしれませんね。旧国立競技場や山梨文化会館、パレスサイドビルなど実在の建物も数多く登場しますし。

暦くんとキスショットが最後に戦う旧国立競技場は、「ここで使うんだ!」って当時も驚きました。

──そこは尾石達也監督のセンスによるところが大きいそうです。「傷物語」は、東京オリンピックもあった1960年代の日本も随所にイメージとしていたとか。

私、「こよみヴァンプ」のキービジュアルもすごく好きなんです。エスカレーターが並んでいる上に白く光が広がっていて。天使の光輪みたいに設計されているのかなとか、想像が膨らみます。ポスターの金文字とか、本当にロマンが詰まっているなあ。

「傷物語 -こよみヴァンプ-」キービジュアル

「傷物語 -こよみヴァンプ-」キービジュアル

──画面外にも情報が詰まっていますね。

これから「こよみヴァンプ」を観る人は、過去の3部作を見返して、当時の自分がどんな思いで観ていたのか思い返してもいいかもしれないですね。作品の力が強くて、思い出しておかないと、頭の中が新しい感想に塗りつぶされちゃいそう。

プロフィール

池田瑛紗(イケダテレサ)

2002年5月12日生まれ、東京都出身。2022年に5期生として乃木坂46に加入する。2023年4月に東京藝術大学へ入学し、大学へ通いながら活動を続けている。乃木坂46初のトレーディングカードゲーム「ビルディバイド -ブライト-」ではアニメ好きとして応援大使の活動もしている。