「アニメ『鬼滅の刃』スペシャルイベント ~鬼滅の宴~」レポート|キャスト陣が名シーンを生アフレコで熱演、「キメツ学園」特別版も!熱狂の宴の様子を詳細にお届け

2019年4月から9月までTVシリーズが放送された、吾峠呼世晴原作によるアニメ「鬼滅の刃」。放送終了後の熱気冷めやらぬ中、昨年10月20日に東京・片柳アリーナで開催された「『鬼滅の刃』スペシャルイベント~鬼滅の宴~」の模様を収録したBlu-ray / DVDが、8月26日にリリースされることが決定した。

イベントには竈門炭治郎役の花江夏樹、竈門禰豆子役の鬼頭明里、我妻善逸役の下野紘、嘴平伊之助役の松岡禎丞、冨岡義勇役の櫻井孝宏がキャラクターをモチーフとした衣装をまとって登壇し、計2時間近くにわたって書き下ろしの朗読劇を熱演。またオープニングテーマ「紅蓮華」を担当したLiSA、挿入歌「竈門炭治郎のうた」を歌う中川奈美、そして2020年公開の劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のキーキャラクターとなる煉獄杏寿郎役の日野聡がサプライズ登場し、客席を沸かせた。コミックナタリーでは熱気に満ちたこのイベントの様子を、レポートでお届けする。

取材・文 / 岸野恵加

TVシリーズ最終話の前夜を、キャストたちが朗読劇で熱演

2019年10月20日。会場となる片柳アリーナの客席を埋め尽くしたファンの数はおよそ3400人。全国の映画館で行われたライブビューイングでも、約1万5000人がイベントの様子を見守る。

アニメのイベントはゲームなどの企画やフリートークが行われることが多いが、「鬼滅の宴」は約2時間半のイベントのうち、2時間弱にわたるボリュームで朗読劇を展開。ステージ上には蝶屋敷を模したセットが組まれ、その上部に大きなスクリーンが配置されている。キャラクターをそれぞれ紹介する映像が流れると、まず主人公・竈門炭治郎役の花江夏樹が屋根の上に姿を現した。

最初に姿を現したのは、主人公・竈門炭治郎役の花江夏樹。蝶屋敷のセットは隅々まで精巧に作り込まれている。

「特別朗読劇 月夜の回顧録」の舞台となるのは、TVシリーズ最終話となった第26話の前日の夜。機能回復訓練を終えた炭治郎、善逸、伊之助たちが、これまでの戦いを蝶屋敷で振り返っていくという筋書きだ。この日キャスト陣はそれぞれが演じるキャラクターをモチーフとした衣装で登壇。花江もトレードマークであるメガネをはずし、炭治郎の耳飾りと、緑と黒の市松模様の羽織を着用している。

「よし、全集中の呼吸はかなり深くできるようになってきた」と、機能回復訓練の成果を実感する炭治郎。これまでお世話になった人たちへ感謝してもしきれないという心境を、切々と語っていく。炭治郎がひと言禰豆子の名前を口にすると、すかさず下野紘演じる我妻善逸が「禰豆子ちゃぁぁぁぁん!!!」と叫びながら屋敷の廊下を激走して登場。クネクネとした動きなどを交えて善逸を演じる下野を、客席は笑顔と大きな拍手で迎える。

さらに遠くから、「猪突猛進!! 猪突猛進!!」という叫びと足音が聞こえてくる。炭治郎と善逸が障子戸を開けると、毛皮の衣装をまとった松岡禎丞演じる嘴平伊之助が、襖を体当たりで破って登場した。いつも通りの言い争いを繰り広げたあと、善逸と伊之助、そして炭治郎は縁側に腰掛け、これまでそれぞれが辿ってきた道を、順に語っていく。

花江による「鬼滅の宴 特別朗読劇 月夜の回顧録」のタイトルコールを挟むと、まず炭治郎が自分の家族について紹介。過去を炭治郎が回想しているシーンでは、鬼頭明里演じる竈門禰豆子が登場した。思いやりに満ちた2人の会話が展開されたあと、スクリーンに第1話の映像が映し出され、生アフレコが披露されていく。

第1話冒頭の、炭治郎と家族が最後の会話を交わすシーンが再現された後は、深手を負った禰豆子を背負い炭治郎が必死で雪山を降りていくシーンに移り変わり、櫻井孝宏演じる冨岡義勇もステージに加わる。鬼になってしまった禰豆子と彼女を殺そうとする義勇、必死でそれを止めようとする炭治郎の緊迫感ある会話が生で演じられ、櫻井は「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」という一言から始まる義勇の一連の名ゼリフを、熱っぽく放っていた。

舞台はまた蝶屋敷へと戻り、話題は最終選別に。選別のときのことを覚えていないという善逸を炭治郎が「本当に覚えていないのか?」と問い詰めるが、「本当に覚えてないんだよー!」と言いながら、下野はアドリブで善逸のブリッジポーズを披露。客席からは大きな拍手が起こった。

ここへ目を覚ました禰豆子が姿を現す。“汚い高音”を連発して禰豆子にアプローチをかける善逸だが、炭治郎は「俺は匂いでわかるんだが、禰豆子はお前のことをそういうふうには思っていない。禰豆子は善逸のことを……珍妙なタンポポだと感じている」と、公式ファンブック「鬼殺隊見聞録」の記載を引用して一掃。客席の笑いを誘った。その後も鼓の屋敷での伊之助の激闘や、「頑張れ炭治郎頑張れ!!」と己を鼓舞して響凱を討つ炭治郎など、名シーンの数々が次々に生アフレコで再現されていく。

眠くなってしまった禰豆子を連れて炭治郎、善逸が退場すると、蝶屋敷を義勇が訪ねてくる。那田蜘蛛山以来の再会に伊之助は「今度こそ俺と戦え!」と詰め寄るが、那田蜘蛛山のときと同じく義勇に縛り上げられ、あっさりとやり込められてしまう。

その後「気分転換しよう」と善逸が見つけた本を広げると、「中高一貫!キメツ学園物語」のコーナーへ突入。「キメツ学園」は原作の単行本のおまけページで、「もしも『鬼滅の刃』が学園ものだったら」という設定のもと展開されている。TVシリーズ第14、17話の次回予告でもアニメ化されていた。今回のイベントのために、ufotableが新規のショートアニメを制作。3編の新エピソードが、キャストの生アフレコでコミカルに描き出された。

作品愛に満ちたフリートーク

開演から1時間、ノンストップで朗読に挑んだキャストたち。ここからはトークが展開され、まずは花江、鬼頭、櫻井の3人が集まり、朗読劇の感想を口にしていく。花江は「ガッツリ全部朗読をやりますと言われて正直うれしかったです」と作品愛たっぷりに語り、鬼頭も「普段アフレコは1回きりだけど、また演じる機会を与えていただいたのはありがたい」と笑顔を見せた。櫻井は3人が中心となってストーリーを紡いだアニメ1話を振り返り、「1話は悲しくて悲しくて、忘れられないです。本当に2人がすごかった。涙がちょちょぎれたよ」と、花江と鬼頭の演技を賞賛。花江はこれを喜びつつ、「(放送が)終わってしまって寂しいですね……」と、“鬼滅ロス”である現状を明かした。

続いては鬼頭、下野、松岡の組み合わせでトーク。朗読劇の前半について、松岡は「汗がほんと止まらなくて(笑)。生アフレコのときも左目に汗が入って『痛ってぇ!』てなりながらやってたんですけど」と振り返り、下野も「どんどん汗が台本に落ちていくからカッピカピ(笑)。普通にやろうと思ってたんだけど、リハーサルで、松岡が伊之助みたいな動きをちょいちょい入れてたから、『やべえ、俺善逸なのに普通にやってていいわけ?』って思って、台本に動きや表情をめっちゃ書き込んだ」と裏話を明かした。また松岡はアフレコの日々を「全部が全部、全力で。本当に楽しい現場だった」と改めて感慨深げに振り返る。

中川奈美・LiSA・煉獄杏寿郎がサプライズ登場し、場内は熱狂の渦に

トークが終わると、朗読劇の後半へ。那田蜘蛛山での戦いの様子をそれぞれに語り、善逸が深手を負いながらも蜘蛛の鬼(兄)と戦闘する第17話、そして放送時に反響を呼んだ、炭治郎がヒノカミ神楽を放ち、それを禰豆子が「血鬼術・爆血」で後押しする第19話が、本編映像の生アフレコで披露されていく。花江はほぼ台本に目を向けずに熱の入った芝居を見せ、客席を圧倒。第19話のパートのラストでは、中川奈美が登場し、放送時の演出をなぞるかのように「竈門炭治郎のうた」を歌唱。観客は放送時を思い浮かべながらこれに聴き入り、涙を浮かべる姿もあった。

第26話のラストシーン、無限列車へ炭治郎、善逸、伊之助が乗り込む演出が再現された後には、LiSAがサプライズで姿を現し、客席から絶叫が起こる。LiSAはオープニングテーマ「紅蓮華」を堂々とパフォーマンスして喝采を浴びた。

そして劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の、この日が初出しとなる特報第2弾が上映され、最後に劇場版が2020年公開であることが明らかに。今後の展開を渇望していたファンたちは喜びに湧いた。

さらに日野聡演じる「無限列車編」のキーキャラクター・煉獄杏寿郎がサプライズ登場すると、場内はこの日一番の興奮に包まれる。熱狂が冷めやらぬ中、出演者は全員横並びになって手を取り合い一礼。翌年公開の劇場版への期待を最高潮まで煽り、イベントは幕を閉じた。