コミックナタリー Power Push - 「人外さんの嫁」
ふわもふ人外×男子高校生のあまい夫婦生活4コマ
ちょっぴりセクシャルな部分を感じつつ性別にとらわれない
──言葉も通じないし、人間と人外だし、でもお互いに好きでしょうがない関係なのがこの作品のほのぼのポイントだと思います。この世界でいう“嫁”って何なのでしょうか。「俺の嫁」「尊い」、昔なら「萌え!」に代表されるような感情の発露なのでしょうか?
相川 感情としてはそうですね。
──人外が人間を指定して嫁にするのは、イチャイチャのための仕掛けなのでしょうか。
相川 大まかにいえばそうなんですけど、私の想像の中ではいわゆる人身御供というか、捧げられた供物のような側面もあります。子供が神様に捧げられることとどこかつながっていて。だから人外が人間を選んでるんですよ。
──そう聞くとちょっぴりホラーっぽさもありますね。
相川 そうですね。
──カネノギさんが廃材を食べる設定もですが、相川さんは、悲しい出来事や怖いことを楽しいお話に変換して発想しているんですね。
相川 日常や学園を扱っている作品なので、普段の生活や身近なもの、ずっと昔から知っていたことに影響されているのかもしれません。人間関係も、季節感も。
──八坂さんはこの“嫁”をどう受け止めましたか?
八坂 ともに暮らす伴侶で、性別にとらわれず、でも夫婦なのでちょっぴりセクシャルな部分を感じつつもやっぱり性別にとらわれていない。その辺のラインが曖昧ですが、こういう感じもいいなって思ってます。
──性別にとらわれないからこそ描けるものはあるのでしょうか。
相川 カネノギさんがオスかメスかって明らかになるとちょっと生々しい。それよりは、ひたすらモコモコした存在でいてくれたほうが楽しいです。性別がクリアになると「どうやって子供をつくるのか」みたいな話になるし。
──確かに。先ほどおっしゃっていた「美女と野獣」展開になったり、何かしらの結末を求めてしまったりしそうですね。
相川 性別がはっきりしてしまうと終着点を探しちゃうのはありますよね。何が幸せなのか、現実世界に照らし合わせたアンサーを求めてしまう。
──それぞれの夫婦の萌えポイントについても知りたいです。
八坂 カネノギ夫婦は本当に糖度が高くて高くて。大きい生物の包容力って半端ない。フワ井夫婦は噛み合ってない時もあるけれど、本当は互いに思い合っていて、サイズも全然違うからがんばって歩幅を合わせてるのがかわいいですよね。ツキツカ夫婦は、イケメンの押しかけ女房である木齋橋くんが鬼嫁ポジションなんですけど、盛大に振り回されてるのがいい。水小路さんとラウヒェンさんはどことなく怠惰なところがエロチック。土清世生徒会長と六・七は年の差カップルというか。幼女とお兄さんってすごく萌えます。
相川 土清世と六・七、私も好きなんですよ。グッとくる。
八坂 しゃがんで目線を合わせて「なんだい?」って話を聞いてあげてるとすごくいいですよね。
──相川さんはどうですか?
相川 八坂さんとほぼ同じ意見です。カネノギさんは、そのモコモコに触りたいという私の欲望が出ている感じ。フワ井さんはけっこう難しい性格なんですけど一生懸命でかわいい。ツキツカさんと木齋橋くんは両思いなのにすれ違いなところも楽しいです。水小路さんとラウヒェンエッカーは年の差カップル、おじさんと少女みたいな感覚もありますね。ラウヒェンは登場したての頃、「紳士」と言われてるコマもあるので。生徒会長夫婦は夫のわがままを嫁が聞いてあげてる感じですね。
──お話を伺っていると、おふたりは好きなものがすごく似てますよね。
相川 そうですね。お互いに「この萌え、わかる」って部分が共通しているかも。
──人外に対する感覚が近い感じがします。
相川 「異種恋愛物語集」でお互い別々に作品を描いたときも言葉を話さない人外を描いてたので、それはあると思います。「人外さんの嫁」でも、ギャグを共同制作するのはお互いズレがあるものだと予想してたんですよ。でも実際やってみたらあまりにピタッとハマるのでスムーズすぎて怖い!(笑)
八坂 出すネタが全然修正なしですぐにOKになるから「相川先生の懐の深さ半端ねえ」と思ってました。
相川 だいたい「萌える」「好き」しか言わないですからね。
八坂 時々、相川さんのネームを読んですごくテンションの高いメールを返しちゃうことがあるんですよ。土清世くんが「自分の夫を誰かにまかせるのは嫌だろう」と言ったお話は「ここでこの子の性格がすごく出てきたぞ!」って盛り上がりました。あとは13話で日ノ輪くんが風邪をひいたエピソード。カネノギさんが健気すぎて。
──人外と人間の関係にフィーチャーされがちですが、最終的にはやっぱり夫婦マンガですよね。仲良しな姿がいい。
相川 夫婦、伴侶って感じですよね。
──カネノギさんたち人外はしゃべらないけど、言葉がしゃべれる人間も通じ合ってるわけじゃない。
相川 つまりそういうことですよね。「うちの夫がカネノギさんに似てます」と感想をいただいたこともあって、人間でも同じような関係性を持っている場合がある。これが男女逆でもあるだろうし。人外との夫婦にしたことで視点に広がりがあるのかもしれません。
- 相川有 / 八坂アキヲ「人外さんの嫁」2巻 / 2017年1月25日発売 / 一迅社
- コミック / 691円
- Kindle版 / 432円
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相川有(アイカワユウ)
「人外さんの嫁」の原作を担当。月刊コミックZERO-SUM(一迅社)連載の「千年迷宮の七王子」シリーズの原作も担当中。自身もマンガ家として「DARK EDGE」「ミミツキ」(ともに幻冬舎コミックス)などを執筆。
八坂アキヲ(ヤツサカアキヲ)
「人外さんの嫁」の作画を担当。2014年に倉田嘘原作の「百合男子くん」にて作画を務めデビュー。2016年より「人外さんの嫁」を執筆し、同年Webマンガサイト・ゼロサムオンライン(一迅社)にて連載化。イラストレーターとしても活躍中。
©八坂アキヲ・相川有/一迅社 2017