ロボ好き必見の異世界ファンタジー「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」|「デレマスAfter20」の半二合が“本領発揮”で臨むメカへのこだわり (2/2)

主人公のワットを早く大暴れさせたい

──特にお気に入りのキャラクターがいれば、教えてください。

メディエお嬢です。

──フロントエッジシティの領主で、ワットの上司でもあるオットー・ソコムの娘ですね。幼い頃、鉄獣機の操縦を教えてくれたワットのことを「師匠」と慕っています。

メディエお嬢は、表情豊かでシリアスもギャグも両方やってくれるので、いてくれると画面が華やかになりますし、その場の雰囲気をいい感じに調整できるすごくありがたい存在です。あと、座学をサボっていて勉強は苦手という設定があるので、メディエお嬢に説明するという形で自然と読者に作品内の設定なんかを説明できるのもありがたいです。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、ギルド長も務めるメディエ。
「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、ギルド長も務めるメディエ。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、ギルド長も務めるメディエ。

──その他のメインキャラクターについても伺っていきたいのですが、まずは、主人公のワット・シアーズについては、どのようなキャラクターとして捉えていて、マンガではどんなところを見せていきたいですか?

1巻ではまだ描かれないことですが、心に傷を負っているというか強いけれど過去を捨てて生きている人物なので、その男が再起する展開がすごく待ち遠しい。早く大暴れさせたいです。それに、最初にもお話ししましたが、中年の主人公というのが私の好みでもあるんですよ。しかも、元の地位をひけらかさない性格とかもとても好きです。

──心に傷を負うような過去があっても、屈折してないですよね。

それに関しては、娘のアンナもそうなんですよね。つらい目に合っているのに、よくこんなにも真っ直ぐ育ってくれたと思うくらい真っ直ぐな子。描いていてもすごく愛おしくなるし、世間知らずな面も含めて、真っ直ぐなところを見せていきたいですね。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、主人公のワット。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、主人公のワット。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、ワットの娘のアンナ。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、ワットの娘のアンナ。

──もう1人のヒロイン、ワットが働くソコム商会の受付嬢タキスについても教えてください。

タキスもドタバタ要員としてすごくいいし、描いていてとても楽しいキャラクターの1人。だから、マンガでは原作よりもちょっと出番を増やしています。ただ、「After20」と違って、コメディ色をあまり押し出しすぎると緊張感を削いじゃうので。シリアスさとのバランスは気をつけながら描いているつもりです。

──1巻の中で特にお気に入りのシーンなどがあれば、教えてください。

1つは、1話の回想で(アンナの母の)カリナジェミア・タリスさんが、民を守る覚悟を持って戦場に赴いているのがわかるシーン。ここは、先ほどお話しした、天酒先生とやりとりして変えたところなんです。最初は、もう少し軽い感じだったのですが、すごくいいシーンになりました。まだ詳しくは言えないのですが、後々のことを考えても、ここでこういったシーンを描けたのはよかったなと思っています。もう1つは、暴れる(敵の鉄獣機の)タイラントライノに、アジャイルガゼルで蹴りをくらわせたメディエお嬢が、「僕たちの街に何をしているッ!」と叫ぶシーン。原作からあるセリフなのですが、どれだけ街を愛しているのかが伝わってきて好きなんですよね。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、カリナジェミア・タリスの覚悟が垣間見える回想シーン。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、カリナジェミア・タリスの覚悟が垣間見える回想シーン。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、メディエの街への愛着が伝わるシーン。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、メディエの街への愛着が伝わるシーン。

──自分の愛する街を、自分が守るという気概がこもっていますね。

その通りです。しかも、あまり大上段から言うのではなく、さらりとそういうことを言うのもいい。すごくいい子だなって感じます。最後にもう1つ挙げると、2話の最後にワットが駆けつけるところも好きです。おっさんになったワットが、主人公らしいムーブを見せるのは、このシーンが初だったので。見せたかったものをようやく描けた感じがあって。前作も含めて、こういうヒロイックな展開は初めて描いたので、すごく力が入りました。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より。敵の鉄獣機に捕まったアンナを助けに颯爽と現れるワット。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より。敵の鉄獣機に捕まったアンナを助けに颯爽と現れるワット。

好きな題材でのコミカライズを続けて担当できている

──鉄獣機でも、特にお気に入りの機体があれば、教えてください。

やっぱりロードグリフォンですね。模型を作ったことで、研究開発者の1人みたいな愛着があって(笑)。すごく思い入れのある機体になりました。3色の色遣いもすごくきれいですよね。

──主人公機らしいカラーリングです。

ただ、脚が逆関節みたいになっていることとか、よく見ると少し人間離れした異形でもあるんですよ。それなのに、すごくきれいにまとまっているので、みこと先生は本当にすごいなと思います。あと、タイラントライノの巨漢でパワーキャラなのに、デブじゃなく逆三角形のマッチョ系みたいなデザインがすごく好き。私の推し鉄獣機です。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、ロードグリフォン。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、ロードグリフォン。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、タイラントライノ。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、タイラントライノ。

(担当編集・森) 半二合さん、マイルドブルも好きですよね。

──作業用のかわいい鉄獣機ですね。

ああいうずんぐりむっくりしたメカも好きです。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、マイルドブル。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より、マイルドブル。

──鉄獣機の描き方で意識していることはありますか?

軽く固い玩具みたいには見えないようにということは意識しています。そういうロボットの描き方もありますが、鉄獣機に関しては、より躍動感なども出るように、生き物に近いイメージで描いています。

──鉄獣機の描写に関しても、お気に入りのカットなどがあれば教えてください。

1話の回想シーンで、ロードグリフォンがカットインしてきて竜にぶち当たるところは、スピード感を出せたかなと。その後の横顔のアップもイケメンに描けたと思っています。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より。
「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より。

──原作の挿絵に描かれてはいなくて、半二合さんが0からデザインした鉄獣機もいるのですか?

回想で竜に踏み潰されている騎士団の鉄獣機は、私のデザインですね。騎士団ということで、馬をモチーフにしました。あとは、盾を持ったディフェンドバイソンもそうですね。弓を撃つストライクフォークは、原作のカバーにそれらしい鉄獣機が小さく描かれていたので、それをヒントにデザインしました。だから、100%私のデザインというわけではないです。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より。

(担当編集・森) メカもそうなんですけど、原作には出てこないキャラクターもたくさんいるんです。1巻の後半にはクロンロッド隊長と部下のマオロというキャラクターが出てくるんですけど、原作の隊長には名前が無いし、マオロは原作にいません。あと、前半に出てくる百人長も、原作のキャラにすごくいい味付けをして膨らませていて。こういう奴いるよなーというキャラクターになっています。半二合さんは、そういった絶妙な盛り具合が本当にお上手なんです。

ありがとうございます。やっぱりマンガに向いているキャラクターや展開と、小説に向いているキャラクターや展開はあると思うので。コミカライズするにあたっては、こういう濃い味付けのキャラの方が映えるのかなと思って描きました。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より。嫌味な言葉を並べるマオロとそれを聞くクロンロッド。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」より。嫌味な言葉を並べるマオロとそれを聞くクロンロッド。

──ついにコミックス1巻も発売されますが、今後の意気込みや楽しみなことを改めて教えてください。

これから新しい敵も出てきますし、ワットもアンナも大きな選択を迫られるシーンがあります。そういうシーンは、描いていてもすごく力が入る。早くそういった佳境のシーン、原作の挿絵になっているようなシーンを描けるといいなって思います。あとは、バトルシーンも増えて、ロードグリフォンがますます暴れていきますし、アンナの運命もどんどん過酷になっていきます。ぜひその展開を見逃さずに見ていただけるとありがたいと思います。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」1巻。

「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」1巻。

──最後に、このインタビューを読んでいる皆さんに、メッセージをお願いします。

現在、前作とはまったく違うジャンルのコミカライズに挑戦して、楽しく奮闘しています。自分が好きな題材でのコミカライズを2作も続けて担当できているということは、本当に幸せなことだと思っています。ロボアクションが好きな皆さん、天酒之瓢先生やみことあけみ先生のファンの皆さん、そして、半二合を前作から応援してくださっている皆さんにも楽しんでいただけるようにがんばっておりますので、DREコミックスの連載も、発売になる単行本もよろしくお願いいたします。

プロフィール

半二合(ハンニゴウ)

2017年にサイコミで連載が開始された「アイドルマスター シンデレラガールズ After20」でデビュー。同作は2023年まで約6年にわたって連載された。現在はDREコミックスにて天酒之瓢の小説が原作の「隠居暮らしのおっさん、女王陛下の剣となる」を連載している。