サッカーするシーンを早く描かないと
──特にお気に入りのキャラクターや、思い入れのあるキャラクターはいますか?
槌居 まだキャラ数も少ないですが、華と皐ですかね。本当は全員なんですが、やっぱり主人公なので。
赤坂 私は1話で皐に絡んで、華にボコられた不良のリーダーでしょうか。華は怪我でサッカーから離れてしまいましたが、彼女は実力の差で挫折してしまった子です。私はあまりスポーツに打ち込んだ経験はないのですが、部活や習い事をしていた人たちは、一部を除いて、おそらくどこかで見切りをつけるタイミングがあると思います。これはある種この作品のテーマの1つだと考えておりまして、あの子は華にもあり得たifの姿なんじゃないかと、いろいろ考えさせられますね。またどこかで登場してほしいです。
──1巻の中で、特に印象に残っているシーン、エピソードやシーンはありますか?
槌居 僕は反省の意味もありますが、サッカーをしてないシーンですかね。赤坂さんにも言われたのですが、早くサッカーするシーンを描かなきゃと思ってました。
赤坂 やはりスポーツマンガは試合で活躍するシーンが重要ですからね。本作はまずメンバーを集めるところから……と遠い位置からのスタートですが、どうにか1巻の中で試合の見せ場を入れたいという思いはありました。それもあり、単行本で初めて読まれる方のために詳しくは言いませんが、4話のラスト、練習試合で華にボールが回った後のアクションは私的にとても印象深いシーンです。
──実際に連載を始めてみて、悩んだことや難しいと感じたことはありましたか。
槌居 悩んだことは華の気持ち・心境の変化です。何度もネームでセリフを直したりしました。難しいと感じたのは、思ったよりサッカーシーンの作画がうまくいかないことですね。まだイメージ通りに描けてないので、精進していきます。
──元々詳しいとはいえ、取材や情報収集などされますか。
槌居 まずは男女でルールが違うところがないか確認しました。例えば試合時間や交代人数です。あとは女性の知り合いにサッカーのイメージを聞いたり。何人でサッカーの試合をするのかわからない方もいたのが印象的でしたね。
赤坂 恥ずかしながら私はインドア人間なので、サッカーの知識方面であまり槌居さんに協力できていない点は不甲斐なく思っています。打ち合わせで選手名や用語について槌居さんから出てきた際には一通り調べ、サッカー知識の浅い人間的にはこのくらいまでの情報はマンガの中に欲しい、といった観点でご相談するようにしています。
──作品を描くうえで参考にしたサッカーマンガなどはありますか? もし好きなサッカーマンガがあれば教えてください。
槌居 とりあえず今まで読んだサッカーマンガは全部好きです。すべて参考にしてますが、やはりサッカーシーンをうまく描きたいのでいろいろな作品から勉強中です。
少ない出番でもキャラクターのバックボーンが感じられる
──今までもかわいい女の子がたくさん出てくるマンガを描かれてきたと思いますが、その経験が今作でも活かされているように思います。女の子を描くうえで、特に心がけていることや意識していることはなんでしょうか?
槌居 特にこだわりはないのですが、どれだけキャラ付けしても「女の子は女の子」というのは意識していますね。高身長でもカッコよくても男の子っぽくても悪い顔してても、描いているのは女の子で骨格やかわいさは女の子であることをちゃんと描こうと思ってます。
赤坂 槌居先生の描かれる女の子は、少ない出番でもキャラクターのバックボーンが感じられるところが魅力だと思います。そういう魅力が出てくるのは短いセリフの中にもそのキャラの癖みたいなものの統一感があったり、キャラの組み合わせごとに会話の温度感が違ったりと、マンガとして描かれていない時間においても、多分この子たちはこういう生活をしているんだろうなと想像できるキャラクターメイクに巧みさがあるからだと思いますね。第4話で今までどちらかというと寡黙だった円鹿が、いきなり対戦相手校について早口で語り出すシーンは、たった2ページで急にキャラクターの解像度が上がったなと印象に残っています。
──ちなみに、影響を受けた作家さんや作品などはありますか?
槌居 絵柄は島田フミカネ先生です。そのほかの方にも影響を受けましたが、今の絵柄で一番影響を受けていると思うので。作風はこれというのはないのですが、単純にハッピーエンドが好きなので、そこに向かって作品を描いてます。キャラの笑顔が上手にかける作家になりたいですね。
──これまでのマンガ家として活動してきて、最もうれしかった出来事、逆にとてもつらかった出来事などあれば教えてください。
槌居 うれしいとは違うかもしれませんが、マンガを描いて原稿料を初めていただけたときは感動しました。つらかったことはないですが、次の連載が決まるまで半年間原稿料がなかったときは焦りましたね。
──それは困りますね……。では最後に、おふたりから読者へメッセージをお願いします。
赤坂 今までサッカーマンガをあまり読んだことがない方にも読みやすい作品になるよう心がけています。それでいてサッカーの専門的な部分もしっかり掘り下げていますので、女の子たちががんばっている姿を追いかけていたら、いつの間にかサッカーにも詳しくなれる。そんな作品を目指しているので、ぜひ肩の力を抜いて読んでみてください。
槌居 つたない部分もあると思いますが、しっかりサッカーを描けていけたらと思います。サッカー好きな方、スポーツマンガが好きな方が周りにいたら、よかったら一度薦めていただけるとうれしいです。