高屋奈月「フルーツバスケットanother」3巻 PR

「フルーツバスケットanother」|「フルバ以上に、弱い人の心に寄り添う物語」横槍メンゴが続編・フルバナに“ありがとうなきもち”

「フルーツバスケット」の突然の全編アニメ化が発表されたのは、2018年11月(参照:「フルーツバスケット」全編アニメ化!石見舞菜香、島崎信長、内田雄馬、中村悠一出演)。SNSなどで大きな話題となり、1998年から2006年まで花とゆめ(白泉社)にて連載された本作の人気が、いまだに高いことが証明された。

4月からのアニメの放送を控える今、高屋奈月が自ら執筆している「フルバ」の続編、「フルーツバスケットanother」3巻が発売となる。3巻では、「フルバナ」のニューヒロインである三苫彩葉(みとまさわ)編が完結。これを記念し、コミックナタリーでは「透くん大好き!」という生粋のフルバファン・横槍メンゴへインタビューを実施した。フルバワールドへの思い、マンガ家という立場から見た作品の魅力をたっぷりと語ってもらった。なお「フルーツバスケット」に関するネタバレがあるため、未読の方はご注意を。

取材・文 / ひらりさ

ゲーマー目線で感じた、「フルバ」のおもしろさ

──マンガ家として活躍している横槍メンゴ先生ですが……今日は「フルバ好き」としてお話を聞きにまいりました。ぜひたっぷり「フルーツバスケット」「フルーツバスケットanother」の話をしてください。

ほかにも好きな作家さんはたくさんいらっしゃると思うので、「私でいいの!?」と畏れ多いくらいです。でも、人生で何度も読み返している作品ですし、4月からの「フルーツバスケット」(以下、フルバ)のアニメも楽しみすぎて、このインタビューのお話が来る前からフルーツポンチとおにぎりを用意して、上映会をやることを決めてたんですよ。

──気合が入ったファン! 「フルバ」は連載当時に読んでいたんですか?

「フルーツバスケット」より、由希、透、夾。

はい! 雑誌ではなくて単行本派でしたが、新刊をいつも楽しみにしていました。周りもみんな読んでて。中学生の頃に手に取ったと思うのですが、ちょうど週刊少年ジャンプ(集英社)に掲載されているような少年マンガをそれまで読んできた子が、花とゆめをはじめとした少女マンガにも手を広げるタイミングだったんですよね。いい意味で少女マンガっぽすぎない絵柄というか、ゲームらしい絵柄だなと思っていて、とっつきやすかった。私、ゲームが大好きなので。

──高屋先生も、大のゲーマーですもんね。

単行本の柱コメントでも、ずっとゲームの話をされていて、それも好きでした(笑)。「ファイナルファンタジーVII」やその主人公のクラウドについて語っている柱があったと記憶しているのですが、それがとても印象的で……。私は一番好きなゲームが「FF7」なので、「本当に好きで仕方ない人の文章だ」とうれしくて。 そこからも高屋先生って、弱い人やうまくいっていない人に没入する力が半端ないんだなと感じていました。そういえば、「フルバ」の話運びにもゲームらしさがあると思うんです。キャラクターの性格が、会話をするごとに表れていくというのが、「ゲームを進めている」感覚にすごく似ている。

──確かに。読者は透くんの目線を通じて、草摩家の1人ひとりの心のうちを知っていきますが、シミュレーションゲームで各キャラクターの好感度を上げていくのと、少し似ているかもしれません。

透くんのおかげで、「善き人間でありたい」と思える

──物の怪憑きの13人をはじめ、魅力的なキャラが盛りだくさんの「フルバ」ですが、メンゴ先生はどのキャラが一番好きなんですか?

「フルーツバスケット」より、潑春。

潑春……。

──なぜそんなに言いにくそうな顔を?(笑)

周りの人にも「潑春好きそう」とバレバレなので、言うのが恥ずかしいんですよね(笑)。もちろん全員好きなんだけど、ああいう尖ったビジュアルの男子が本当にツボで。最初に出てきたときから好きなんですが、彼女である依鈴が登場してから、ますますときめくようになりました。子供の頃から「カップル萌え」があって、「推しには自分の理想の女をあてがいたい」と思っているので、そこを直撃されて。「この人はこういう女の子を好きになるんだ……」と思うと、もっと愛しくなっちゃうんです。

──連載当時、「由希派か夾派か」という議論がアツかったと思うのですが、この2人だといかがですか?

「フルーツバスケット」より、由希。

私はその2人でどちら、と聞かれれば由希派でしたね。高屋先生の描く王子キャラのいいところは、とっても中性的な美形でも、中身にはしっかり「オスらしさ」があるところで。由希は、そこのギャップがたまらないですね。そして同じような理由で紅葉がめちゃくちゃ大好きです……。エピソードも一番泣いたのは紅葉関連ですね。

──透くんは結局夾のほうと結ばれましたが……。

「フルーツバスケット」より、うおちゃんと透の母・今日子。

それが透くんが幸せになる形なのであれば……と応援したい気持ちでした。そうそう、少女マンガって恋愛が主体となることが多いと思うんですが、「フルバ」の場合、家族のことも、友達のことも、同じくらいの重さで描かれていると感じます。透くんの親友であるうおちゃんはなちゃんと、透くんのお母さんにまつわるエピソードがすごくいいです。しかし由希派……といえど、後半の恋心を自覚してからのキョンくんのときめきシーンの数々にはもうどっち派とか関係なくときめき死にそうになります。

──「フルバ」を読んでいて、マンガ家として影響を受けたところはありますか?

「フルバ」を読みはじめた時点ではもう「マンガ家になりたい」と思っていたので、その目線で見たときに「こんなに壮大で緻密な物語は私には描けないかもしれないな……」と絶望してました(笑)。異性に抱きつかれると十二支に変身してしまう一族という斬新な設定なだけじゃなくて、それがきちんとストーリーの構成やテーマとうまく絡んでいて、ラストに集約されていくんですよね。あと、さっき話した「ゲームっぽい」という印象ともつながるんですが……高屋先生の作品って、キャラに対してすごく客観性があるんです。自分がマンガを描いていると、描きたいシーンがあるときに、キャラクターの性格のほうを調整しようとしてしまう瞬間があるんですね。

──キャラブレが起こる……つまり登場人物が少し違和感のある言動をするってことですよね。

そうそう。高屋先生のマンガにはそれがまったくなくて、そこもゲームっぽく感じるのかもしれません。つまりゲームの場合は大勢の人の手が入ることでキャラがブレないように工夫されているケースもあると思うんですが、高屋先生はそれを1人でしっかりやれる作家さんなんですよね。作画のテンションも常にブレがない。線の強弱をものすごくつけて感情や盛り上がりを表す手法が独自の持ち味という作家さんもいますが、高屋先生はそうじゃない。キャラの描き方は変えずに感情の上下を見せるので、また違ったすごさがあると思っています。それに「フルバ」当時から、ダイナミックで流れるような構図やコマ運びがいっぱいあって。「フルバナ」では、そこに肉筆っぽさというか、タッチの生っぽさが追加されてて、違う味わいがあってどちらも大好きです。そして個人的に高屋先生のマンガの中で一番好きなところは「ネームと作画の両方が端々まで丁寧なこと」。プロとして本当に本当に尊敬しています……!

──なるほど。では、人間として影響を受けた部分はありますか?

めちゃくちゃあります。透くんが周囲の人たちと関わっていく姿を見て、自分も善き人間であろうと思うようになりました。芯のある善良な人が1人いると、周りがこんなにも変わっていくんだな……と痛感したんです。なので、人生の折々で読み返しては、「今、透くんと自分の距離ってどれくらいだろう」と考えるようにしています。

──透くんって、究極にピュアで優しい人だと思うのですが、目指すにはちょっと遠いかも……と挫折しそうなときはありませんでしたか?

「フルーツバスケット」より、「世界で一番バカな旅人」のエピソード。

私個人の人生観として、人はいいほうに向かおうと努力してないと、どんどん流されてしまう生き物だと思っているんですね。だから、「無理かも」くらいの目標を持っているとちょうどいいのかなと考えています。ちなみに完全に大人といえる年齢になった今、透くんとの距離は開いている気がしなくもなく「自分が恥ずかしい……」と深く反省しています……。

──いえいえそんな! 透くんは目標にしがいがある人ですから。メンゴ先生は、透くんのどんなエピソードが思い出深いですか?

私の中で象徴的なのが、「梅ぼし」(第8話)と「世界で一番バカな旅人」(第17話)のシーンです。前者は透くんから出てきた言葉で、こんなふうに他人を励ませたらどんなにいいか……と当時もめちゃくちゃ感銘を受けました。後者は、紅葉の“透観”でもあり、同時に周囲の人々から見た透くん像がわかりやすく現れていて大好きなんです。損得勘定なしに他人を思いやること、それ自体を愛しいと思う気持ちが、周囲にも波及していく。「フルバ」の中でも象徴的なエピソードだと思います。

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濃いキャラの草摩家の人々と交流していくうちに三苫彩葉の心境にも、徐々に変化が訪れる。彼女の物語の結末は……? 「フルーツバスケット」の数十年後を舞台に描かれる、懐かしくも新しい物語。

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関連情報

アニメ「フルーツバスケット」

2019年4月5日(金)より、テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知にて順次放送開始

横槍メンゴ(ヨコヤリメンゴ)
横槍メンゴ
1988年2月、三重県生まれ。2009年、マガジン・ウォー(サン出版)にて成人向けマンガでデビュー。2010年にCOMICすもも(双葉社)にて、エロマンガ家と双子美少女の三角関係を描いたコメディ「はるわか」の連載を開始する。2012年に週刊ヤングジャンプ(集英社)にて掲載された、岡本倫原作「君は淫らな僕の女王」は、ヒロインが自制心を失うという設定と、かわいらしい絵柄とエロのギャップが人気を呼んだ。同年、月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)にて、高校生の純粋かつ歪んだ恋愛を描く「クズの本懐」の連載を開始。TVアニメ化、実写ドラマ化も果たした。2018年に「クズの本懐」の最終9巻となる「クズの本懐 décor」が発売。インターネット上ではヨリのハンドルネームで活動し、ニコニコ動画などボーカロイドを使用した楽曲のイラストも手がける。イラストレーターとしても活躍中。
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高屋奈月(タカヤナツキ)
高屋奈月
7月7日東京都生まれ。1992年花とゆめプラネット増刊(白泉社)にて「Born Free」でデビュー。SFやファンタジー作品を発表後、1998年に花とゆめ本誌にて「フルーツバスケット」の連載をスタート。異性に触れると動物に変身してしまう一族と女子高生の交流を描き人気を集めた。同作で2001年に第25回講談社漫画賞少女部門を受賞。TVアニメ化も果たし、売上3000万部を突破する大ヒットに。そのほかの代表作に「翼を持つ者」「星は歌う」「リーゼロッテと魔女の森」などがある。2019年4月より、高屋自身が総監修を務めるTVアニメ「フルーツバスケット」が放送開始。