M・A・Oインタビュー
心に響くセリフに耳を傾けてください
──WOWOWの開局30周年を記念した「永遠の831」。第一印象はいかがでしたか?
青春の爽やかな雰囲気がありつつも、観終わったあとに、いろいろと考えさせられる作品だと感じました。まだ大人になりきれていない青年が、社会の仕組みやルールに直面し、そこにどう向き合っていくのかが描かれていくなかで、自分自身の問題としても改めて捉えてみようと思いました。
──M・A・Oさんが演じるなずなは、主人公のスズシロウと同じく時を止める力を持った少女です。彼女をどのようなキャラクターだと捉えていましたか?
なずなちゃんは、とても不思議な女の子だなという印象でした。事前に神山監督とお話をさせていただいたときにも、「不思議」というキーワードがあったので、いい意味でも悪い意味でもあまり主体性を待っていないキャラクターとして、理解を深めることができました。
──神山監督からはほかにどんなお話がありましたか?
時を止める能力を得るきっかけとなった事件からは時間も経ち、その心の傷を乗り越えた先にいて、現在は悲愴感が漂っていないという話もしていただきました。なずなちゃんがどこか儚く映るのも、受け入れることに慣れてしまった結果でもあるのかもしれません。
──そんななずなにとって、主人公のスズシロウはどういうキャラクターでしたか?
唯一同じ秘密を共有できて、歳もそれほど変わらないということで、親近感を抱いていたと思います。出会って間もないのに、自分のことを気にかけてくれたところも、2人の心の距離が近くなる要因になったと感じました。
──M・A・Oさんとしては、スズシロウにどういうイメージを持ちましたか?
正義感が強く、行動力がある人物というイメージです。なずなちゃんに対しても、今はとにかく逃げよう、でも逃げてどうする? どうやって逃げる? 逃げた先でどうする? まだわからないけど!というように、衝動的なところもある分、清白さと隣合わせの危うさも感じました。
──最後にアニメを観るうえで注目してほしいところを教えてください。
時間が止まっているシーンがどのように描かれているか、映像や音の演出に注目していただきたいです。そして、心に響くセリフが随所にあるので、ぜひ耳を傾けてください。幅広くいろいろな世代の方に観ていただいて、それぞれの感想を話し合ったりすることで、より深く作品を楽しんでいただけるのではないかと思います!
プロフィール
M・A・O(マオ)
2月1日生まれ、大阪府出身。イエローキャブNEXT所属。主な出演作に「プリンセスコネクト!Re:Dive」シリーズ(ペコリーヌ役)、「異世界美少女受肉おじさんと」(橘日向<女>役)、「怪人開発部の黒井津さん」(アカシック役)、「舞妓さんちのまかないさん」(すみれ役)、「プラチナエンド」(花籠咲役)など。
興津和幸インタビュー
本当に時間って前に進んでる?
──まずはこの作品についての感想を教えてください。
神山監督の思いがとてもとても強く込もった作品だなあと感じました。オリジナル作品ということもあって、作品に対するテーマであるとか、そういうところを強く出すことができているのではないだろうかなと思いました。この物語の中で、時間を止める能力が出てくるんですが、その“時間が止まる”という現象がなぜ起こるのかというところが、もちろんファンタジーではあるんだけど、本当に時間って前に進んでる? 日々をただただ過ごしているだけじゃない?って問いかけられているような気がしましたね。
──興津さんが演じる芹は半グレ集団・831戦線のリーダーというキャラクターです。はじめはどんな印象を持たれましたか?
はじめは悪そうで、カッコいいし人気が出るんじゃないかなって思いました(笑)。アニメによくいそうな雰囲気の悪いイケメンというか、悪い組織のボスというような印象でしたね。でも、亜川芹というキャラクターがなぜそうなるに至ったのかっていうところが、やはりこの物語のキーになっていて。ただの半グレ集団のボスではやっぱりないんですよ。その過程を考えていった末に、僕が選ばれたのかなと思いました。
──神山監督とは演技について話し合われたりしましたか?
演じる前に、設定や台本を読んで、この男、本当は何考えてるんだろう?ってハテナが浮かんだんです。なので監督には、なんで831戦線というものを作ったのか? その831戦線が何を目的に活動をしているんだ?っていうところを改めてお話させていだきました。亜川芹は、いろんな受け取られ方をするような行動をしているんだけれども、やはり彼の中の信念というものがあるので、その信念を確認して演じました。その中で、彼の内に秘めた葛藤をどこまで表に出すかというところはすごく気にしましたね。
──なるほど、そこがキャラクターの核であり、一番出していきたいところなんですね。
はい。ただ、感情の表現というのは、おそらく声だけでは伝わらないものなので、僕は芹として、言葉を発するっていうことに留めました。監督がこういう絵にしたい、こういう音をつけたい、こういう間でいきたいっていうのを考えていらっしゃると思うので、本当に作品が完成したらどうなるんだろうっていう思いがとても強く、楽しみです。
──興津さんから見たスズシロウはどういうキャラクターでしたか?
正義感がありますよね。「悪いことしてるじゃない」ってまっすぐ言えるって当たり前だと思いきや、本当に勇気のいることですよね。それをなんの迷いもなく言えるスズシロウって、やっぱりすごいなとは思います。芹としても、スズシロウはまっすぐであるが故に生きづらい思いをしているので、その部分に、何か感じるものもあったと思います。
──芹からすると犯罪に利用する形になっている妹のなずなについてはいかがですか?
なずなのことは大切に思ってるはずですよ。僕も妹を大切に思っている兄だと思って演じました。やっぱり、なずなはかわいいですよね。M・A・Oさんの儚いヒロインのお芝居も初めて聞いた気がして、新鮮でした。失礼な話かもしれないですけど(笑)。共演すると元気な女の子のキャラクターが多かったので、儚げなヒロインもいいですねって思いましたね。
──最後になりますが、視聴者の方にメッセージをいただけますか。
“831”の意味、永遠の意味、時が止まるの意味、時が進むの意味を、ちょっと立ち止まって考えてみてもらえる作品になっていればいいなって思います。ぼーっと観ていたら気付かないと思います。それくらい毎日考えながら生きたほうがいいんじゃないかなって、監督は思っているかもしれないですね。僕もちょっと足を止めて考えてみようと思っています。
プロフィール
興津和幸(オキツカズユキ)
3月8日生まれ、兵庫県出身。ケッケコーポレーション所属。主な出演作に「ジョジョの奇妙な冒険」(ジョナサン・ジョースター役)、「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」(千早群像役)、「ID-0」(イド役)、「アイドリッシュセブン」シリーズ(大神万理役)、「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」(吉田役)など。