群像劇は会話の空気感が大切(山村)
──実際にキャラクターを演じてみた感想はいかがでしたか?
山村 エイアは自分の地声に近いところで演じているので、声はすごく出しやすかったです。ただ、彼女の中で渦巻いている部分を表現しなくちゃと気負いすぎたのか、第1話のアフレコでは芝居が少し重たくなってしまって。監督や音響監督さんから「クールさと柔らかさのバランスが難しいけどがんばって」とディレクションしていただいたことを覚えています。
鈴木 僕も本番までに原作を読みながら準備をして、ユウガの自信満々な性格を高めな声で表現しようと考えてました。でも「もっと低い声でじわっと」という逆のディレクションをいただいて、少しずつシフトチェンジしていった感じです。
──性格は対照的とも言えるエイアとユウガですが、作中ではペアで行動するシーンが多いですよね。
山村 やっぱりずっと一緒にいる2人なので、息が合ってこそ!っていう感じはありますね。会話をするときの空気感はいつも大事にしなきゃいけないと思っていて、技術的な都合でどうしても別録りになるところ以外では、できるだけユウガの言葉を聞いて自分の言葉を発したいと常に心掛けてました。
鈴木 うわー、今初めて真相を知りました(笑)。本当にすみません! だから自分がリテイクを出したときはいつも付き合ってくださってたんですね。
山村 いやいや、それはお互いさまだよー。お芝居って投げられたセリフに対して返す作業だから、やっぱり掛け合いが大切なんですよ。特に「奴隷区」はいろいろなキャラクターと会話する群像劇なので、そういった部分を強く感じますね。
──確かに、エイアとユウガって、たまたま出会ったのに不思議な信頼関係がありますよね。
鈴木 5巻でユウガがあるキャラクターに捕まったときも、ちゃんとエイアが助けに来てくれましたからね。ユウガは完全にエイアを信用してる感じがします。
山村 正直に言うとあのシーン、初めて読んだときは不思議だったんだよね。その直前のエピソードでユウガにひどい目に遭わされたから、「なんで助けたの? エイアの気持ちがわからない!」って。
鈴木 いや、おっしゃる通りですよ。僕もユウガの自業自得だと思いました(笑)。
山村 ただ、作品を読み込むうちに考え方が変わってきて、これがエイアの優しさなんだろうなと思ったら、もっと彼女が好きになりました。彼女にとってユウガは、本当の気持ちを押し殺していた自分を新しい世界に連れ出してくれた大事な人なんだよね。
宮田幸季さんの高貴なお芝居に注目です(鈴木)
──原作の中でお気に入りのエピソードはありますか?
鈴木 今話題に上った5巻のエピソードは、僕も演じていて楽しかったです。「どうして僕のやることに逆らうんだ?」と奴隷たちにひどいことをさせるんだけど、悪役になったような新鮮な気分を味わえました。あと、千本木(彩花)さんが演じる葛飾ジュリアが、主人の命令に従いピアスの穴を空けたりするシーンがすごく強烈でしたね。まさにSCMの恐ろしさを体現している「奴隷区」らしいシーンだなって思いました。
山村 やっぱりこの作品はショッキングなシーンが多いんですけど、その中で第1話で描かれた、エイアとユウガが東京タワーの夜景をバックに手を繋いで「ありがとう」と言うシーンが一番好きです。ビジュアル的にも美しくて、アニメを観る方にとっても物語に惹き込まれる直前のシーンなのかなって思いますね。
──アニメでどう描かれるのか楽しみです。本作では総勢20人以上のキャラクターが登場しますが、ご自身の演じるキャラクター以外に、好きなキャラクターはいますか?
鈴木 僕はそもそもゴリゴリの男性キャラクターが好きなんです。だからスキンヘッドで強面の文京ゼンイチがツボなんですけど、稲田(徹)さんの演技が最高すぎて! 収録ブースの中がビリビリするぐらい威圧感がすごいんですよ。
山村 しかもストーリーが進むと情けなさも出てきて、ギャップがすごいよね。エイア的にはやっぱり愛犬のズシオウマル。見た目はすっごくかわいいのに、セリフ(モノローグ)はなぜかカッコよくて麗しい感じなんですよ。
鈴木 ズシ役の宮田(幸季)さんがまたアフレコで高貴な感じを演じているんですよね。コウキだけに。
山村 おおん? なんだって?
鈴木 やっちゃいました(笑)。すみません。
──(笑)。山村さんは犬を飼ったことはありますか?
山村 はい、昔飼っていたので通じ合う感覚はわかります。さすがにあそこまでの意思の疎通は無理ですけど……(笑)。ズシとエイアは「ウォンウォン」「うん、そうだね」って完全に会話が成立してますから。
大御所の皆さんが場を和ませてくれます(山村)
──今回、共演するキャストさんにはベテランの方も多いですよね。アフレコ現場での印象的なエピソードがあれば教えてください。
山村 練馬ムオン役の(堀内)賢雄さんやお姫さまカフェの執事役の井上(和彦)さんみたいな、脇を固めてくださっている大御所の方々がいらっしゃるときに面白エピソードが生まれたりしてますね。
鈴木 前に山村さんがカップケーキを差し入れに持ってきてくださったとき、その容器がSCMに似てるから「これ食べたら奴隷になっちゃうんじゃない?」って盛り上がったことがありましたよね。
山村 あったあった。「みんなでディレクターさんの奴隷になったらダメ出しされなくていいかも」って話してたよね。次の収録にパイナップル型のクッキーを持って行ったら、見た目がまたSCMっぽくて中野タイジュ役の村瀬(歩)君に「またですか」って言われたんだよ。
──すごくアットホームな雰囲気の現場ですね。鈴木さんは大先輩に囲まれてあまり緊張しないんですか?
鈴木 それが意外と大丈夫でした。いざ収録が始まると自分の役割を全うしようと気合いが入るみたいで、あんまり緊張しないんです。逆に新人っぽくないって言われるんですけど……。
山村 言われたことをきちんとこなせているから、ホントすごいなあって思うよ。私なんてリテイクが1カ所あったら、その前のタイミングから流れでやらないとうまく声が出せないけど、崚汰君はきっちりピンポイントで出してる。そういう器用なところもユウガっぽいと思う。
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SCMの「ス」が鬼門です(鈴木)
- テレビアニメ「奴隷区 The Animation」
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- 放送情報
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- TOKYO MX:2018年4月12日(木)より毎週木曜25:05~
- BS11:2018年4月12日(木)より毎週木曜25:00~
- AT-X:2018年4月13日(金)より毎週金曜24:30~
- スタッフ
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- 原作:『奴隷区 僕と23人の奴隷』(双葉社アクションコミックス)オオイシヒロト 岡田伸一
- 監督・シリーズ構成:倉谷涼一
- キャラクターデザイン・総作画監督:ごとうじゅんじ
- プロップデザイン:枝松聖
- 美術監督:倉田憲一
- 色彩設計:津守裕子
- 撮影監督:藤田智史
- 3Dモデリング:伴善徳
- モニターワークス:長谷川朋史
- 2Dデザイン:越阪部ワタル
- 編集:櫻井崇
- 音響監督:阿部信行
- 音楽:長田直之
- 音楽プロデューサー:安田spacey尊行
- 音楽制作:SPACEY MUSIC ENTERTAINMENT
- 制作:ゼロジー×ティー・エヌ・ケー
- キャスト
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- 荒川エイア:山村響
- 大田ユウガ:鈴木崚汰
- 葛飾ジュリア:千本木彩花
- 新宿セイヤ:緑川光
- 豊島アヤカ:木下鈴奈
- 中央アタル:小西克幸
- 世田谷ツバキ:興津和幸
- 立川シンノスケ:森久保祥太郎
- 港タキオ:白井悠介
- 足立シヲリ:八島さらら
- 中野タイジュ:村瀬歩
- 文京ゼンイチ:稲田徹
- 墨田ズシオウマル:宮田幸季
- 目黒マサカズ:川津泰彦
- 杉並ルシエ:西田望見
- 千代田マリア:早川沙希
- 板橋ゲッコウ:河西健吾
- 品川ゼロ:國立幸
- 練馬ムオン:堀内賢雄
- 北ミナミ:上村彩子
- 渋谷サチ:結城光
©オオイシヒロト 岡田伸一/双葉社・エブリスタ
©「奴隷区 The Animation」製作委員会
- オオイシヒロト・岡田伸一
「奴隷区 僕と23人の奴隷①」 - 発売中 / 双葉社
- 山村響(ヤマムラヒビク)
- 2月10日生まれ、福岡県出身。2008年に「熱走! 亀1グランプリ」のキャサリン役としてデビュー。主な出演作に「Go! プリンセスプリキュア」の天ノ川きらら(キュアトゥインクル)役、「フレームアームズ・ガール」のアーキテクト役、「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」のハルナ役など。hibikuの名義で歌手としても活動している。
- 鈴木崚汰(スズキリョウタ)
- 12月22日生まれ、愛知県出身。2016年、日本テレビのバラエティ番組「アイキャラ2」内の企画「桐原アイ ショートアニメ」にて、憧れの先輩役でデビュー。主な出演作に「ネト充のススメ」の林役、「王様ゲーム」永田輝晃役など。「フリクリ オルタナ」には相田弁役として出演する。