サイコミが編集者を募集!編集長×チーフデスク編集部座談会「オレはこんなに売れるマンガを作れるんだ!っていう人が欲しい」

サイコミ編集部が、現在マンガ編集者を募集している。2016年の創刊から5年が経過し、「TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには(以下、TSUYOSHI)」「明日、私は誰かのカノジョ(以下、明日カノ)」といったオリジナル作品を生み出してきた同編集部。コミックナタリーでは、サイコミ編集長(以下、編集長)と「異世界美少女受肉おじさんと(以下、ファ美肉)」の担当編集でもあるチーフデスク(以下、チーフ)へ、今回の編集者募集についての取材を実施。現在のサイコミが求める人材や編集部の実情、この5年間でサイコミが得たものなど、作家とともにマンガを作る編集者の立場から語ってもらった。

取材・文 / 増田桃子撮影 / 佐藤類

好きなものをしっかり語れる人かどうか

──サイコミとはこれまでも何度か特集を組ませていただきましたが、今回は編集者の採用募集についてお話を伺う特集を展開することになりました。マンガ・アニメのニュースサイトで採用募集の告知をするということは、そういった情報を追ってる人材を求めているということでしょうか?

編集長 情報もそうですが、単純に「エンターテインメントに日々触れる」ということは非常に大事にしています。いろんなものをインプットしよう、知ろう見よう遊ぼうという姿勢を持ってる方は重要視してますね。ただ、今回特集を組んでいただくにあたっては、僕の話よりも、実際にサイコミに中途入社して編集者としてのキャリアプランをなぞっているチーフに話をしてほしくて、彼を呼んだんです。これからサイコミを目指す人にとって目標になりえるし、血の通った言葉になるんじゃないかと。どう?

チーフ あ、そういう意図だったんですね(笑)。今、編集長も申し上げたとおり、私も常に何かに触れようと興味関心を向けるのは大事だと思っています。マンガを編集するにあたって「こういうことをやったら面白そう」とか、「ここを変えたらもっとよくなるのに」みたいな、自分なりの意見を出す必要がありますから。そういった意味では、ナタリーさんを日常的に読んでいるような人は、感度が高そうという期待はあります。

左から編集長、チーフデスク。

左から編集長、チーフデスク。

──なるほど。特にこんな人が欲しいという具体的なイメージはあるんでしょうか。

チーフ 僕は真面目な方に来てほしい……(笑)。

編集長 (笑)。

チーフ 真面目というか、自分の好きなものばかりではなく、ほかの意見を真面目に受け止める方というか。人から「もっとこうしたらいいんじゃない?」って言われたときに、「いや、自分は自分のやり方でいきます」って人よりは、「なるほど、そういう考え方もあるね」と、柔軟に真面目に取り組める方とは一緒に働きやすいと思うので。

編集長 僕は粘り強い人ですかね。「石の上にも三年」って言葉もある通り、数年単位で腰を据えて取り組まないと、なかなか編集者としての成果は出ませんよね。例えば、連載立ち上げるまでに半年以上はかかれば、立ち上げてから売れるまでが仕事であって、そうすると2、3年は普通にかかる。それぐらい続けて初めて編集として「何かを成し遂げた」と言えると思うんです。そしてその成功や失敗を積み重ねて一人前になっていくわけで……。だから粘り強く人の言うこと素直に聞く、まずはやってみる、納得できなければきちんと意見を交わす、並行してインプット・アウトプットを真面目に3年しっかりやる。それが大事だと思いますね。

チーフ すぐ辞めてしまうのはもったいないですしね。

編集長 うん。続けないと、編集者としても、会社員としても、見えないことってたくさんありますからね。

編集長

編集長

──とはいえ、履歴書だけではその人が粘り強いかどうかはわからないじゃないですか。どんなところを見て判断するのでしょうか。

チーフ 僕は好きなものをしっかり語れる人かどうかが大きいと思います。編集者は発信する側にもなるので、自分はこの作品・キャラクターのこんなところが好きです、とプレゼンできる人であれば、少なくとも自分の趣味の範囲内では粘り強く行動できるんじゃないかなと。好きなものを聞いてもふわっとしている人は、全体的にふわふわしてないかな、大丈夫かなって。

編集長 実際に面接でも好きなマンガを聞くんですけど、嬉々として語る人のほうがいいですね。そういう人のほうが一緒に働きたいと思う。別にマンガじゃなくてもいいんですよ、何かを深く愛して語れるっていうのは判断材料の1つかもしれないですね。

人間って朝起きて夜寝るのが一番いいですから(笑)

──特にサイコミ編集部ならではの能力というか、こういうことができる人が向いてるといったものはありますか?

チーフ これは他社の編集部とは一線を画してると思うんですけど、しっかり社会人としての生活が営めている方ですね。他社の編集部さんだと午後出社が当たり前だったり、作家さんに合わせて夜中に対応したりってことがあると思うんですが、うちでは10時19時の就業時間内に仕事ができる方のほうが向いてると思います。

チーフデスク

チーフデスク

──個人プレーよりもチームワークを重視してるということでしょうか。

チーフ 編集の仕事自体は、基本的に個人プレーによるところが多いです。ただサイコミというアプリを運営していくうえでは、部員同士協力していかなきゃいけない場面もありますから。

編集長 弊社は社内で関わる人が多いんですよ。マンガ雑誌の編集部って、入稿して校了して終わりなんですけど、マンガアプリは校了した作品をリリースするチームがあります。サイコミはアプリの運用開発も社内で全部やっているので。そういう人たちと一緒に仕事するのに、編集だけ夜型で深夜3時に原稿データ登録してくださいとか通じるわけがないんです。同じ時間に働いていたほうがやり取りしやすいですし、コミュケーションロスも生まれにくい。そう考えると、自然と深夜や休日の連絡にも気を使うようになりますし。媒体を社内で作ってるからこそ、10時19時で働くのが一番効率がいいですね。

チーフ そうですね、作家さんも昼型の方が多いですし。

編集長 結局、人間って朝起きて夜寝るのが一番いいですから(笑)。やってみるとわかりますけど、劇的に体調とか改善されますし。

──編集者というと深夜まで働いて休みの日は作家さんのところに行って、みたいなイメージがありますよね。

編集長 もちろん状況によっては、夜や休日も働きますよ。そこは作家さんによってケースバイケースですし、最終的には読者に作品を届けるのが大事ですから、そのために一番いい方法を考えます。ただ、だらだらと働くのは弊社ではしないですね。編集者の労働時間が長い理由ってそういう面もあったと思う(笑)。

チーフ (笑)。否定はしません。

編集長 例えば12時に出社して終電まで働くと12時間ぐらいありますけど、フルで12時間集中なんてできないですよね。結局は10時から19時で働いてるのとさほど変わらない。だったら勤務時間内は仕事に集中してもらって、19時以降は自由に過ごしてもらうほうが健全ですよね。って、なんか時間ばっかりアピールしてるけど(笑)。

チーフ でも時間がうちの一番の特色かなって思いますよ。

──なるほど。最近はリモートも増えてきてると思うんですけど、サイコミ編集部も変化がありましたか?

チーフ 会社としては感染症対策として在宅を推奨していますが、明確に何かが遅れたとか意思疎通がうまく行かなくなったということはないですね。編集者はマンガを載せるまでを全部やる仕事なので、連載が継続できる形をそれぞれの編集者が作家さんと模索しながらやっています。在宅になったから残業が増えたなんてこともなく、だいたい定時で終わりますね。それぞれが自分のライフスタイルにあった仕事の仕方をするようになったのが大きいのかなと。

左から編集長、チーフデスク。

左から編集長、チーフデスク。

編集長 あと弊社は、パソコンなどリモートで必要なものを全部揃えて自宅に送るということをすぐやってくれたので、非常に助かりました。

チーフ 確かに、在宅にあたってマシンスペックが落ちないっていうのはかなり大きかったと思います。

編集長 母体がCygamesであるというのは、そういう面で強みなのかもしれないです。こういうのって入ってみないとわからないですよね。