写実的な演技路線の中で1人「おーっほっほ」
──まず担当キャラクターの紹介と、演じるにあたって意識していることを教えてください。
悠木碧 曽志崎は周囲から実力を認められている秀才的な選手で、頭もいいし技術もあるけど口がちょっとよくない子です(笑)。演じているときは、音響監督さんから「デフォルメしすぎないように」とよく言われています。確かに曽志崎は少し小さいしキャンキャンしているけど、チームの中で1人だけそうだと小学生みたいに見えるので、うまい具合に快活な女子高生になれるよう演じています。
黒沢ともよ 周防は曽志崎が認めてくれるほどサッカーの才能があるんですけど、チームメイトのことを考えて行動することができず周りから浮いてしまうという子です。見た目はボーイッシュですが、割と「〜だわ」とか「〜なのよ」という語尾でわかるようにフェミニンな雰囲気もあるんです。だから演じるときは「もしかしたらかわいいパジャマを着て寝てるかも」と想像してもらえるくらいの女性らしさを保ちながら、ストレートにものを言う子と捉えて演じています。
古城門志帆 白鳥は目立ちたがり屋のお嬢様で、ほかの皆さんとは少し違って、唯一「好きに演じていいよ」と言われています(笑)。この前のアフレコでも黒沢ちゃんに「白鳥って全然会話してないよね」と言われて「確かに!」と思ったくらい、パッと出てきて自分がしゃべりたいことをしゃべったらみんなにツッコまれて去る……というポジションのキャラクターです。緊迫感のある試合のシーンでも、その雰囲気を変えるような和ませキャラですね。
──勘違いだったら申し訳ないですが、取材前に隣の部屋から「おーほっほっほ」という高笑いが聞こえたんですが……。
古城門 間違いなく私ですね。Twitterの公式アカウント用に動画を撮るということで、少し白鳥節でやらせていただいて。
悠木・黒沢 楽しみ(笑)。
──「おーほっほっほ」ってマンガなどではよく見るセリフですが、なかなか普段は言わないですよね。先ほどは見事な「おーほっほっほ」でしたが、何かコツはありますか?
古城門 背筋をちゃんと意識することでしょうか。腹筋だけでやるとヘロヘロって息だけが漏れてしまうし、尻すぼみにならないよう背中で体を支えながら発声するんです。
悠木 なるほど……勉強になります!
──(笑)。原作を読んでいると白鳥と同じくらい曽志崎も演技がデフォルメされそうな感じがあったのですが、先ほどの悠木さんの話だとそうではないんですね。
悠木 はい。今のところがっつりアニメっぽくデフォルメされているのは白鳥だけです。
黒沢 今回、収録の前に「写実的な面を大切にして作りたい」という話がありました。だから例えば周防は愛想がなく口数も少ないというキャラクターだけど、全然しゃべらずに生きているわけではなく普通に生活できる程度にはコミュニケーション能力があるんですよ。あくまでアニメではそのあまりしゃべらない部分が切り取られているだけで。そういう1人の人間だという意識を持って演じていますね。
コロナ禍だからこそ大変なスポーツアニメの収録、でもポジティブ
──「クラマー」は試合シーンが多い作品ですが、そうした作品特有の大変さはありますか?
悠木 一番大変なのは試合中にとても多い「○○だから××に行って!」みたいな指示ですね。声は張ってるし、焦ってるし、アドレナリンがめっちゃ出ている状態なので、きれいに聞こえる声を出すのがとても難しい(笑)。
黒沢 本当にそうですね。
悠木 それなのに今収録しているくらいの段階では、まだワラビーズがバラバラだからあまりみんな聞いてないし(笑)。白鳥とか、明らかに試合中の温度感が違いますもん。
古城門 確かにちょっと違う(笑)。
悠木 あと人数を制限した分割収録ならではの難しさも感じます。スポーツアニメの収録って特にチームワークが重要なんです。これまではみんな揃って収録できて自然とそれができあがっていたけど、こういう状況だからチームワークを作りづらくなっていて。だからこそ「これまで以上のもの出そう」とか「より相手を思いやった芝居をしよう」という意識も生まれているので、それが吉と出ていたらいいんですけどね。
古城門 こういう状況だけど、何とかいい方向に持っていくぞという演者やスタッフの気合いは感じますよね。
──例えば野球みたいな基本的には1対1の競技ならまだしも、サッカーという22人が入り乱れる競技だとより一層大変そうですね。
悠木 サッカーアニメに出演するのは初めてではないけど、やっぱり人は多くなりますよね。合わせて22人で収録って、コロナじゃなくても密で大変ですし。
黒沢・古城門 そうだよね(笑)。
悠木 例えば一緒に収録できたら、対戦している相手の優秀さとかを直に肌で感じられるけど、今の状況では想像しながら演じるしかなくて。
黒沢 プレイ中にニュアンスとしてアドリブで呼吸音だけ入れることがあるんですけど、ワラビーズと強豪の浦和邦成ではまた違った息にしなきゃいけないんですよね。
悠木 ワラビーズだとすぐ息があがっちゃうけど、浦和邦成はずっと息をあげずに走れるし、声の通りも少しいいんだよね。
──そんな細かいところまで意識して収録されているんですね。
悠木 こんな状況での収録ですが、できるだけいいものにしようとみんながんばっているのでポジティブではありますよ。
飛び交う罵声もチームワークの表れ
──ちなみに皆さんはスポーツの経験はあるのでしょうか? サッカーに限らず。
黒沢 小学校の頃は体を動かすのが好きでお昼休みとかにサッカーやドッジボールをしていましたけど、その後は運動部に入ったりしたわけではないので本格的にスポーツはしていません。
古城門 私はどちらかと言うとスポーツ少女で、小学校のときに満遍なくいろいろやっていました。サッカー、ドッジボール、バスケットボール、あと卓球も好きだったかな……あ、でも白鳥っぽいエピソードを思い出した。彼女はオフサイドという反則がわからず、目立ちたいからって勝手に前のほうに行っちゃうんですよ。それでファールを取られてみんなに「おい白鳥!」って怒られる。私もバスケットボールでダブルドリブルがわからないままプレイしていたんですよ(笑)。それでみんなにずっと言われてましたね。
黒沢 ハマリ役だったんだ……。
悠木 ダブドリよくする人、小さい頃にいましたよ(笑)。
──悠木さんはいかがでしょう?
悠木 私はスポーツに全然なじみがないです。だから「クラマー」を読んで体を動かすことが純粋に楽しいという人たちを見て、これまでになかった視点を得られました。最近はニュースでスポーツ選手がコロナのせいで活動できなくなって悩んでいるのを見て「こういう人にスポーツさせてあげたいな」なんて思ったりして。
──ちなみに運動は“しない”と“できない”、どちらでしょう?
悠木 体がなかなか動かないんです。こんな私でも小さい頃にミニバスケットをやっていたんですけど、コートにはあまり立たずに「こういう配置にしよう」とか作戦ばかり言うタイプで(笑)。
古城門 頭脳派だったんだね。
黒沢 曽志崎にぴったりだ。彼女は周りがすごく見えているキャラクターなので、将来的には監督とかになってもおかしくないような選手な気がします。
──悠木さんもハマリ役だったと。
悠木 でも私も、台本を初めて読んだときは曽志崎たちのスポーツ部特有の忌憚ない言葉に「怖い……」って怯みましたよ。でも「いやいや、これから私は曽志崎をやるんだ」と思い直して演じていたら、やがて「おーいブサイク!」とか言うことになっちゃいましたが(笑)。
──「クラマー」は女子高生が集まってるけど、賑やかというより罵声飛び交うという感じが独特ですよね。あれが女子高生のリアルなんでしょうか。
黒沢 私は高校は料理部とフォークソング部の兼部で、周りの運動部の子もあまりアグレッシブな人はいなかったので学校はほっこりした雰囲気でしたけど……。
古城門 リアル寄りだけど、ワラビーズは特に闘争心が旺盛な子だけが選りすぐられているというか(笑)。
悠木 しかもアドレナリンが超出てるからこその言葉というか。
黒沢 確かに協力プレイが求められる舞台の練習とかで、重要なところで誰かが間違えたりしたときは思わず「おい!」とか出そうになるから気持ちもわかるかも。
古城門 でもワラビーズはアマゾネス集団みたいな勢いだから(笑)。白鳥的には「おい白鳥!」って言われるとうれしいところもあるんですけど。あれはみんなの愛情ですから。
悠木 そうそう、白鳥がやらかしても放っておくこともできると思うんですよ。でもみんなで全力でツッコんでるのはチームワークの表れですね。
──チームワークあるワラビーズの活躍に注目ということで。では最後にこの作品をどんな人に観てほしいか、司令塔役の悠木さん教えてください。
悠木 みんなに観てほしいですけど、特に大人になってしまった人に観てほしいです。泥臭さを厭わない女の子たちがめちゃくちゃカッコいいので。
古城門 刺さると思う!
悠木 絶対に刺さるよね! ちょっと大人になって肩の荷が重くなってきたなという人にぜひ観てほしいです。あと最近はみんなでスポーツして体を動かすのも難しいですけど、「クラマー」を観て少しでも発散してほしいです。
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2021年6月15日更新