先行や独占配信作品が充実し、BLファンから厚い支持を受けるコミックシーモア。その中でも、特に多くの人に読まれたBLの作者たちが、実際に自分で読んでいるBLはなんだろうか。
そんなささやかな興味から、2024年のコミックシーモアBLランキングで作品が上位に入ったマンガ家たちにアンケートを実施。豊田悠、夏野寛子、藤咲もえ、三上志乃、みっしぇる、美山薫子、屋敷シマ、山本小鉄子の8人が、自身以外の作家によるイチオシのBL作品を教えてくれた。
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期間
2025年6月18日(水)~7月1日(火)
豊田悠
ほかの作家のイチオシBL作品は?
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「25時、赤坂で」(祥伝社)
夏野寛子新人俳優・白崎由岐は、同じ大学の先輩で超人気俳優の羽山麻水と、同性愛をテーマにしたドラマで共演することに。ゲイ役の芝居感が掴めず悩んだ白崎は、「男に抱かれてみよう」とゲイバーへ向かう。すると、なぜかそこに羽山が現れ、「俺じゃダメかな」と相手役を申し出る。役作りの一環として始まった関係だったが、白崎は次第に羽山への恋心を自覚。しかし、ドラマの撮影終了は刻一刻と迫ってきて……。
華やかで繊細な絵柄と仕事の描写も丁寧でお芝居の中で恋愛感情が揺れ動く様がとてもリアルでイチオシです。
白崎くんが本当に一生懸命で真面目で素直でかわいくて、羽山くんたまんないだろうな~ってなります。
「ここだけは見て!」という注目シーン
3巻128P あまりに美しいうなじキスは必見です!
自分のBL作品で読んでほしいのはこれ!
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「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(スクウェア・エニックス)
豊田悠会社員の安達は、30歳まで童貞だったことで魔法を使えるようになった。その魔法とは「触れた人の心が読める」という少し地味なスキル。特に役立つわけでもなく日々をやり過ごしていたが、ある日、仕事のできるイケメン同期・黒沢の心が自分への恋心でいっぱいなことを知ってしまう。恋愛経験ゼロの安達は大きく戸惑うが、まっすぐな黒沢の思いに触れるうち、次第に彼のことが気になり始める。
30歳まで童貞だったので心が読める魔法が使えるようになってしまった平凡なサラリーマンが、ある日イケメンの同僚に触れると、心の中は自分への恋心でいっぱいで……?
という少し不思議なラブコメBLです。よろしくお願いします。
プロフィール
豊田悠(トヨタユウ)
BLデビュー作「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」は、2018年よりWeb雑誌・ガンガンpixiv(スクウェア・エニックス)で連載中。BL以外では「パパと親父のウチご飯」などで知られ、2024年からはガンガンpixivで「奈落の星」を連載している。
夏野寛子
ほかの作家のイチオシBL作品は?
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「スイートハート・トリガー」(シュークリーム)
ニャンニャ根暗なゲイの大学生・コールは、寮の隣に住むアレックスに片思い中。女子にモテまくる彼を遠くから見つめるだけの毎日を送っていた。ところがある夜、酔ったアレックスがコールの部屋に間違って入ってきたことで、2人の距離は一気に縮まる。気持ちが高まったコールは勢いのままアレックスに告白をするが、モテ慣れている彼には軽く受け流されてしまう。傷ついたコールは、アレックスに愛情と裏腹の怒りを抱き始め……。
カースト上位のアレックスと自己評価が低いコール。性格のコントラストが極端でまぶしく、だましだまし一緒にいてみたり、耐えられなくなって大喧嘩したり、それでも離れられずに歩み寄るちぐはぐな2人が愛おしいです。
海外ドラマのようなあけすけな内心や、ひりっとする展開が気持ちいいのですが、くだらないものはくだらないまま、複雑なことは複雑なまま、どれもチャーミングに描かれているのが軽やかで好きです。
何よりフェティッシュなラブシーンが最高にごきげんになれます。骨や筋肉が本当に……ニャンニャ先生の描く人たちは、中身もですが、かたちも本当~に大好きです。
「ここだけは見て!」という注目シーン
3巻第6話の再会のシーンです。クライマックスなので、ここだけ見るのは難しいかもしれないのですが……。
2人が衝突したり、歩み寄ろうとするシーンは、現実的な心情が面白いのに対して、強引な魅力にバーンと引っ張られてセックスして仲直りしてしまう感じがすごくよくて……。
中でも3巻は、1巻の頃より大人っぽくなった2人のやり取りに胸がぎゅっとなります。ほだされまいと気丈なセリフを口にしながら、ぽろぽろ涙をこぼすコール、愚かかわいい。
ぜひ3巻まで読んで、このシーンにたどり着いてほしいです。
あとは当て馬のブラッドが大好きなのでブラッドのシーンも見てほしいです。
自分のBL作品で読んでほしいのはこれ!
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「アバウト ア ラブソング」(シュークリーム)
夏野寛子28歳のバンドマン・星名みづき。そろそろ音楽で芽を出したいと思いつつ、最近はバイト先の大学生・瀬戸に癒されている。ある日、雨に濡れて沈んでいる瀬戸を見かけ、家へ連れ帰ることに。手を出さないつもりだったが、つい理性が崩れ、一夜をともにする。しかし翌朝、瀬戸が思っていたより年若いことが判明し……。後悔に揺れ、瀬戸と距離を置こうとする星名。一方で、ダメな大人なりに誠実であろうとする星名に、瀬戸はますます恋心を募らせていく。
「スイートハート・トリガー」ほどではありませんが、年齢差ゆえに主張が対立する2人のお話です。
ぼんやりしたバンドマンがうっかり若者に手を出して、ぐいぐい来られて、大反省するところを描きました。
元気な人たちの言い合いを楽しく描いたので、よかったら読んでください。
プロフィール
夏野寛子(ナツノヒロコ)
2016年に「冬知らずの恋」でBLマンガ家デビュー。2017年よりonBLUE(祥伝社)で「25時、赤坂で」、2020年よりfromRED(シュークリーム)「アバウト ア ラブソング」を連載中。「25時、赤坂で」は2024年にテレビ東京でドラマ化もされた。
藤咲もえ
ほかの作家のイチオシBL作品は?
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「こっち向いてグレア」(英和出版社) 晴屋うまこ
支配したい欲求を持つDom(ドム)と、支配されたい欲求を持つSub(サブ)が存在する世界。少しおバカな青年・西名善は、バイト帰りにいつもと違う道を選んでみたところ、獣人だらけの異世界に迷い込む。絡まれていたところを助けてくれたのは、瞳を隠した銀髪の獣人・アリヴィアン。彼についていき、この世界のことを聞いていると、なぜか善の身体は熱くなってきて……。
異世界・Dom/Sub・人外と私の好きなモノの三拍子が揃っているのに加え、キャラデザがいいです。特に攻めのキャラがカッコいい!!
Dom性が強いことが原因で仮面をつけているというのもまたミステリアスな男の雰囲気が出ていて最高! なのに実は臆病でとても内面がかわいく、愛を求めている男というギャップ!
あとは暗くなりがちな題材なのにとてもほんわかして、2人を応援したくなるような内容がいいです。
「ここだけは見て!」という注目シーン
エピソード10の主人公がサブドロップしてしまった後に、2人の心が一番急接近するお話です。
主人公のSubが相手のDomに「Look」こっちを向いてと、呼ぶんです。
自らを欠陥品と蔑み、相手と上手くプレイできないと怯えるDomに「大丈夫だから、俺だけのDomになって」と言うシーンは心がぎゅってなりました。
タイトルの「こっち向いてグレア」のまさに回収シーンで、異世界に来てコマンドも分からない主人公が、まさかDomにコマンドの言葉をかけるとは……! 知らない世界から来た主人公ならではの口説きシーンだと思います。
自分のBL作品で読んでほしいのはこれ!
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「腐男子召喚~異世界で神獣にハメられました~」(双葉社)
藤咲もえ筋金入りの腐男子・合津原琴音はトラックと衝突し、気がつくと異世界にいた。すると、目の前に現れた異形のイケメン・凪から「神獣の御子」と呼ばれ、「お前と初夜を迎えられるのをずっと待っていた」と言い放たれる。自分が主人公的なポジションにいるなんておこがましいと考え、なんとかその展開を回避しようとする琴音だったが、身体のほうは素直に反応してしまい……。
異世界モノブームに便乗して好き勝手に描かせていただいている、現在連載中の作品です。
異世界・神獣・中華系・腐男子・893・アイドル・陰陽師・風習・伝説などなど……
主人公を腐男子にしたので、とにかく彼に今までのBL知識を披露してほしく、ありとあらゆるBLあるあるとシチュエーションを全部ぶちこんだごった煮作品です。
どれかお好きなものがあればその部分の話だけでも読んで楽しんでいただければうれしいです。
プロフィール
藤咲もえ(フジサキモエ)
2017年に「ネコ科のレンタル彼氏にマーキングされちゃいました」でBLマンガ家デビュー。2019年よりWeb雑誌・comic marginal(双葉社)で「腐男子召喚~異世界で神獣にハメられました~」、2024年よりGUSH(海王社)で「サキュレント」シリーズを連載中。そのほかのBL作品に「アサリと俺」「トンでもない俺のα」などがある。
三上志乃
ほかの作家のイチオシBL作品は?
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「また明日会えるよ」(ホーム社)
奏島ゆこ珍しく1人で飲みに出かけ、泥酔して倒れていた木村。目を覚ますと、見知らぬ男・国島が暮らす平屋の一軒家にいた。ここ最近、とある事情でまともに眠れていなかった木村だが、国島の家では久しぶりに心が安らぐ時間を過ごす。後日、改めてお礼を伝えようとしていた矢先、国島がまさかの同じ会社の人間だと判明。同じプロジェクトを担当することになり、2人は困惑しつつも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで実直な研究員の国島さん(攻)と誠実さの中にどこか儚げな雰囲気がある営業の木村さん(受)の、静かで優しい空気感の中に、気持ちの動きが細かに描かれているお話です。木村さんに寄り添おうとする国島さんの距離感が、国島さん本人は無意識だと思うんですが絶妙な寄り添い方になっていて胸がぎゅっとなります。終わってしまった恋愛の傷を無理に忘れさせるのではなく、確かにあった過去の気持ちをなかったことにしないという、夏祭りの後のシーンの言葉選びがすごくリアルでかつ温かくて、心に残っています。
読み終えた後にタイトルをもう一度見返して、その度に本当に幸せな気持ちになれています。とてもおすすめの作品です。
「ここだけは見て!」という注目シーン
第5話の、国島さんの家での夜のシーンです。自分の気持ちはもうなんとなくわかっていて、でも線引きをしなくちゃいけない葛藤もあって、雨で戸が揺れる描写やコマ割りが2人のぐらぐらした感じを醸し出していて……。
木村さんも国島さんもそれぞれ違った形の色気があって、こちらのシーンはいつも悶えながら読んでいます。
奏島先生の描かれる赤面顔がとてもかわいくて色っぽくて、余裕がない感じが大好きです……!
自分のBL作品で読んでほしいのはこれ!
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「ピットスポルム」(ジーオーティー)
三上志乃全寮制の高校に通う矢野久哉は、同室の小田島苑に悩まされていた。勉強は努力せずともトップだが、素行が悪く、男子寮に女子生徒を連れ込むなど問題行動が絶えない小田島。ある日、矢野は寮内で小田島が女子と性行為をしている場面に遭遇し、目が離せなくなる。その視線に気づいていた小田島は、部屋に戻るなり、矢野の自己処理を手伝おうとしてきて……。やがて、小田島が抱える誰にも言えない恋愛感情とトラウマが明らかになっていく。
comic picn様にて連載中の「ピットスポルム」です。
男子寮で、学校一の問題児で成績は学年1位の小田島(攻)と、家族命の真面目苦学生で学年2位の矢野(受)という正反対の高校2年生が同室になります。嫌々ながら少しずつ距離が縮まっていってしまい自分の気持ちに戸惑う矢野、そして小田島には誰にも言えない過去と秘密があって……というお話です。少しでもご興味を持っていただけたらうれしいです……! このたびは貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
プロフィール
三上志乃(ミカミシノ)
2020年に「0パーセントの花束」でBLマンガ家デビュー。2021年よりWeb雑誌・comic picnで「ピットスポルム」を連載している。