コミックナタリー PowerPush - 稚野鳥子「クローバーtrèfle(トレフル)」

読者はベタなハッピーエンドを望んでる! 女子の共感を得る王道少女マンガの描き方

里李香は3年経って、ちょっと丸くなりました

里李香やゆうちゃんは新章でも引き続き登場。

──「クローバーtrèfle」には、前シリーズに出てきたキャラクターも引き続き登場しますね。結婚後も働いている唯二の同期として、里李香やゆうちゃんが出てきます。

舞台となる会社は変わらないので、会社を辞めてない人は引き続き登場します。里李香は央太と結婚してさらに双子を産んで、今は3児の母。央太は害虫駆除の会社に勤めてるっていう設定なんですけど、稼ぎはどうやらあんまりよろしくないみたいで、里李香もパートで働いてるんです。

──里李香は3年経って、ちょっと太りましたね(笑)。

育ち盛りの子どもと同じものを一緒に食べてるだろうし、それに背が低いから、カロリーを吸収しちゃって丸くなったんです(笑)。でも央太は浮気癖あるし、もし何かあったら奮起して「ダイエットしてやる!」って思うかもしれないな。ゆうちゃんは元スポーツ選手だったので、今でも走ったりヨガやったりして維持してるんじゃないでしょうか。まだ子どももできてないですしね。

沙耶は現在、柘植さんとNY在住。同期会シーンでは前シリーズのキャラクターも多数登場。

──脇役ひとり一人にも、ちゃんとどんな日々を過ごしてきたのか、ストーリーを持ってらっしゃるんですね。キャラクターが稚野さんの中で暮らしているというか。

そうですね。あと沙耶は子供ができないのを気にし始めていて、たぶん不妊治療を受けたりしているんじゃないでしょうか。(「クローバー」のキャラも登場する)「家族スイッチ」には沙耶の子どもらしき女の子が出てくるので、2年後くらいには生まれるかも。

キャラもイベントも、会社員時代の実体験にモデルが

──「クローバー」の連載が始まったころ、沙耶たちは21歳でしたが、9年経ってキャラクターにもいろいろ変化がありますね。舞台となる会社も原宿から池袋に移転しました。

稚野鳥子

ちょうど私が昔勤めてた会社も原宿から池袋に移転したんですよ。通勤ラッシュは多少楽になるんだけど、ちょっと華やかさからは遠ざかるっていう。池袋には悪いんだけど(笑)。そういうところでも、ちょっと若い頃とは違うんだっていう感じを出せればと思ったので。

──稚野さんがかつてお勤めだった会社での経験も作品に活かされてるんでしょうか?

もちろんです。特に私の勤めてた会社は行事が異常なほど多くて、球技大会とか社員旅行とかいろいろありました。学校みたいだよね(笑)。それでまた大勢で旅行とか行って女子社員が浴衣着たりすると、おっさんの上司が修学旅行の中高生みたいにときめいていたり。

──非日常で童心に帰ってしまうんですかね。

そうみたいですよ。そういうのってきっと時代とか関係ないから、描いてもいいのかな、と。あと結構キャラクターにはモデルがいて、一葉みたいな子も同期にいましたね。ロングも実際に秘書課にいた人です。お嬢様で異常に髪が長くて、1度だけパーマをかけてきたっていう……(笑)。ロングは運動会ですごく活躍してて、そのエピソードも描きたかったんですけど、残念ながら入らなかったです。

ひときわ異彩を放ったキャラクター、秘書課のロングこと如月さん。

──そんな会社の中で、稚野さんは「クローバー」で言うとどのキャラのような存在だったんですか?

誰だろう……。私は美大出身なこともあって、会社では正直浮いていたんですよ。当時はコンサバが流行ってたんですけど、私はメイド服みたいな格好をしていて(笑)。みんな写真を撮るときは必ず足を斜めに揃えて、女豹みたいな見上げる目線をして、っていう時代でしたが、私はずいぶんボヤーっとしていたように思います。だから「クローバー」の世界を外から眺めていたような感じかな。でも沙耶は描いてるうちに自分に近づいてきてしまいましたね。

稚野鳥子「クローバーtrèfle(トレフル)」1巻/ 2013年1月25日発売 / 440円 / 集英社
作品解説

沙耶と柘植さんの結婚から3年後。オフィスでは、沙耶の同期で「最後の独身」と呼ばれる鈴木妃女子が黙々と働いていた。同じ会社で働く妹・花音は結婚が決まり、柚葉は彼氏が切れないモテ女子だが、妃女子はもう10年彼氏がいない。30歳の誕生日を機に人生を変えようと決意した妃女子は、思い切った行動に――!? 大ヒットコミックス「クローバー」の新章スタート!

稚野鳥子(ちやとりこ)

8月25日、東京都生まれ。1988年、ぶ~け(集英社)に掲載された「半透明の扉」でデビュー。以後、ぶ~け、コーラス(集英社)、Kiss(講談社)などの女性マンガ誌で活躍を続け、25年間でヒット作を多数発表。1997年から連載を開始した「クローバー」はシリーズ累計860万部を突破。ほか代表作に「天国の花」「天使に聞いて」「東京アリス」「家族スイッチ」など。