コミックナタリー PowerPush - 稚野鳥子「クローバーtrèfle(トレフル)」

読者はベタなハッピーエンドを望んでる! 女子の共感を得る王道少女マンガの描き方

平凡なOL・沙耶と超エリートな上司・柘植さんのオフィスラブを描いた「クローバー」は、累計860万部を売り上げ、ふたりのゴールインでいったん終幕。目下その3年後を舞台にした新シリーズ「クローバーtrèfle」が、Cocohana(集英社)で連載されている。

その「クローバーtrèfle」1巻が1月25日に発売されたことを記念し、コミックナタリーは作者・稚野鳥子にインタビューを敢行。新シリーズを始めた意図から、OL経験をバックグラウンドにした稚野のマンガ作り、さらには少女マンガへの思い入れについて語ってもらった。

取材・文 / 坂本恵 編集・撮影 / 唐木元

「クローバーtrèfle(トレフル)」キャラクター紹介

新章では沙耶と柘植さんがハッピーエンドを迎えた3年後のオフィスを舞台に、新たな主人公・妃女子が奮闘! 鈴木三姉妹をはじめとするさまざまな新キャラクターに加え、里李香たち前シリーズのキャラクターも引き続き登場する。「trèfle」から入る読者はこちらのキャラクター表を参照しよう。

  • 鈴木妃女子(すずきひなこ)29歳 / ブライダル事業部

    仕事はできるが地味な長女。沙耶の同期で「最後の独身」と呼ばれる。彼氏いない歴10年。

  • 鈴木花音(すずきかのん)23歳 / 総務部

    控えめで物静かな次女。最近結婚が決まったばかり。

  • 鈴木柚葉(すずきゆずは)20歳 / ゴルフ事業部

    彼氏が切れないモテ系三女。物怖じしない性格。姉のコネでホテル東洋入社。

  • 細谷武人(ほそやたけと)33歳 / 国際部

    女にだらしないと言われるが、「彼とつきあうとその後必ず玉の輿に乗れる」というジンクスがある。

  • 妹尾翼(せのおつばさ)24歳 / ブライダル事業部

    妃女子がひそかに想いを寄せる新入社員。社長の従兄弟で、通称“プリンス”。柘植さんの元彼女・妹尾莢花の弟。

前シリーズのキャラクターも登場!

  • 柘植沙耶(つげさや)29歳 / (旧姓:鈴木)

    前シリーズの主人公。元秘書課で柘植さんと結婚。「勝ち組の鈴木」と呼ばれる。

  • 柘植暁(つげすすむ)37歳 / (旧姓:鈴木)

    元秘書課、現在はNY支社長。

  • 鈴木里李香(すずきりりか)29歳 / (旧姓:松沢)

    パート勤務。沙耶の双子の兄である央太と結婚し双子をもうけ、3児の母。

  • 滝沢ゆう子(たきざわゆうこ)29歳 / (旧姓:小沢)

    国際部。情報システム部の滝沢さんと結婚。

  • 松方一葉(まつかたかずよ)30歳 / (旧姓:谷上)

    元広報課。歯科医の妻で四国在住。

  • 鈴木あゆこ(すずきあゆこ)23歳

    沙耶の妹。花音の同期。

稚野鳥子インタビュー

新主人公はOLの王道を歩めなかった“人生のサブキャラ”

──柘植さんと沙耶がゴールインして、いよいよ「クローバー」新章がスタートしました。主人公は沙耶から29歳独身の新キャラクター・鈴木妃女子にバトンタッチしましたね。

実は連載が始まる前の予告カットは、柘植さんと沙耶のふたりを描いたんです。

──それはつまり、当初は柘植さんと沙耶の結婚後の話になる予定だったということですか。

そう思ってたんですけど、会社を舞台にそれを描くのは無理かなと思って……。だって柘植さんはいまやニューヨーク支社長で次は副社長にでもなりそうなエリートですから、その妻となった沙耶が会社に残ってOLを続けてるかっていうと、それはやっぱり無いかなと。それに柘植さんは奥さんに働いてほしくないタイプだろうから、なおさら。

妃女子の特徴はほくろとメガネ。

──確かに、沙耶はもう働く必要ないですよね。

そう。それで沙耶が辞めたあとの会社のことを考えてみたんです。結婚した同期がどんどん辞めていく一方で、最後まで残っちゃった子っていうのがいるんだろうな、っていうところからお話を作っていって、もうすぐ30歳の誕生日を迎える独身の妃女子というキャラクターができました。少女マンガでは普通、ほくろとかメガネという特徴はサブキャラに使うんですけど、妃女子は“人生のサブキャラ”ということで、ほくろにメガネなんです。

──“人生のサブキャラ”!

OLとしては王道を歩めなかった象徴、みたいな感じ。でもそういう主人公が幸せになったら、勇気づけられる人もいっぱいいるんじゃないかなと思って。

間違った方向にも一生懸命な妃女子は、細谷に女らしい下着とはどういうものかをレクチャーしてもらおうとする。

──妃女子は幸せになろうと一生懸命ですよね。細谷さんに色々学ぼうとしたり……。

そうですね、方向は間違ってるかもしれないけれど(笑)、妃女子は行動派です。そこが沙耶といちばん違う部分。沙耶は振り回されキャラというか、受動的、受け身の女の子なので。ただ、沙耶がもし独身のまま30歳になってたら、妃女子みたいな行動派になってたかもしれないですね。受け身でいるだけじゃ幸せになれない! って努力し始めたかも。

稚野鳥子「クローバーtrèfle(トレフル)」1巻/ 2013年1月25日発売 / 440円 / 集英社
作品解説

沙耶と柘植さんの結婚から3年後。オフィスでは、沙耶の同期で「最後の独身」と呼ばれる鈴木妃女子が黙々と働いていた。同じ会社で働く妹・花音は結婚が決まり、柚葉は彼氏が切れないモテ女子だが、妃女子はもう10年彼氏がいない。30歳の誕生日を機に人生を変えようと決意した妃女子は、思い切った行動に――!? 大ヒットコミックス「クローバー」の新章スタート!

稚野鳥子(ちやとりこ)

8月25日、東京都生まれ。1988年、ぶ~け(集英社)に掲載された「半透明の扉」でデビュー。以後、ぶ~け、コーラス(集英社)、Kiss(講談社)などの女性マンガ誌で活躍を続け、25年間でヒット作を多数発表。1997年から連載を開始した「クローバー」はシリーズ累計860万部を突破。ほか代表作に「天国の花」「天使に聞いて」「東京アリス」「家族スイッチ」など。