ドラフト2巡目、またまた選択が被ったのはアニメも放送中のあの作品
──続きまして、第2巡選択希望作品はこのようになりました。
はるのおと くそー、被ったかあ。クジ引きなしで最後まで行けると思ってたんだけどなー。
小林 俺、またクジ引きだ(笑)。
はるのおと 「気絶勇者」、めっちゃいいですよね。言うなればこれって“幕の内弁当の卵焼き”みたいな作品だと思うんですよ。雑誌に1つは絶対にあってほしいっていうか、それくらい安定感がすごい。冒険ファンタジー、ラブコメ、ギャグのバランスが絶妙で、キャラクターたちの成長もしっかり描かれる。彼らの愉快な道中を最後まで見届けたいな、と思わされる作品ですね。
小林 もともとコメディが好きなので、こういう作品は非常に心地いいです。言ってみれば俺TUEEE系でありハーレムものであり、という典型的なフォーマットではあるんですけど、いやらしさがないっていうか。むしろ嘘から始まった関係性の中で、みんなが隠しごとを抱えながら少しずつチームになっていく様子は、どこか学園ものを読んでいるかのような爽やかさすら感じます。その“嘘”が最終的にどう収束していくのか、すごく気になりますね。
はるのおと あと、「お前そればっかだな」と言われそうですけど、ヒロイン3人がみんなかわいいですよね。
小林 いやでも、結局そこなんですよ(笑)。
はるのおと めちゃくちゃチョロくないですか? この子ら(ヒロイン)。
太田 そうそうそうそう(笑)。
はるのおと でもちゃんと1人ひとりにドラマがあって、主人公のキャラ設定も含めて作品全体に嫌味がない。絵柄も気取ってないから、すごく読みやすいです。
小林 わかります。あれでもしヒロインたちがもっと色っぽく描かれてたら、それはそれでちょっと違う気がするんですよね。あまりお色気を強調しないことが、かえって彼女たちのかわいらしさを際立たせている感じがします。
──太田さんが「チェリー勇者」を指名した理由は?
太田 あまり男女で語るのもアレですけど、男ってだいたい熱いマンガとエロいマンガが好きじゃないですか(笑)。そのド直球の最新形が来たなと思いました。「女の子の胸から剣を出す」って、たぶん男の子はみんな好きなシチュエーションだと思うんですよ。しかもその発動条件が「女勇者をイかせると聖剣が顕現する」という特殊な設定で、その対象も固定ヒロインだけじゃなくて不特定多数じゃないですか。「この子からはこういう聖剣が出るのか」みたいなバリエーションを楽しめるのも好きなポイントです。あと、その能力名「聖なる閃光の鎮魂歌(セイクリッド・フラッシュ・レクイエム)」を「セフレ」と略すしょうもなさとか(笑)。
小林 読んでいると、どんどんIQが下がっていく感じがいいんですよね(笑)。「おいしいものにおいしいものを掛け合わせたらおいしくなるに決まってるじゃん!」みたいなノリが、バカバカしくて最高です。
太田 その一方で、シリアスな展開もちゃんとあって。勇者団の女の子たちの間には組織内での争いがあり、それぞれの思惑が交錯している。そこに「エッチなことがしたい」というバカ極まりない理由で男勇者がやって来ることによって、物語が一気にかき回されていくところが面白いですね。
小林 このコンプラ時代にあって、「スケベキャラをどう描くか」というのは大きな命題の1つだと思うんですよ。この作品はそこに1個の解答を出していると言える。久しぶりにスケベキャラというものを見たな、という感慨はありましたね。
太田 しかもそれを、少年誌で正面からやってくれていることがうれしいです。
──ありがとうございます。では抽選に参りましょう。
コミックナタリー編集部 ドゥルルルルル……はい、はるのおとさんが当たりです!
小林 また負けた……!(笑)
はるのおと よし!
──ということで、小林さんには外れ2位を指名していただきました。こちらになります。
小林 このまま全部クジ引きに負け続けたら、俺だけ6作品紹介することになってしまう(笑)。「桃源暗鬼」に関してはもう、圧倒的にマンガがうまい! 構図、コマ割り、キャラクター造形……すべてのレベルが高く魅力的です。「桃太郎と鬼が現代で争っている」という、一歩間違えば陳腐にもなりかねない設定を、第1話から読者をグッと引き込んで読ませてしまう力量には圧倒されます。バトルシーンの緩急や意表の突き方も見事で、読んでいて本当に気持ちいい作品ですね。
太田 僕も最初は「桃太郎の話?」と少し斜に構えていたんですが、読み始めたらそんなことどうでもよくなるくらい、バトルマンガとして面白い。どんどん独自の世界にのめり込んでいきました。キャラクターがすごく多いのに1人ひとりの個性がしっかり立っていて、誰かしら“推し”が見つかる作品だと思います。
小林 「清水寺の地下に鬼の組織の本部がある」みたいな、実在の場所を舞台にしているのもワクワクしますよね。これだけ面白いと、もう次の話が気になって止められない。「結末まで読みたい」というよりは、「途中で止められたら困る」というタイプの作品です。
はるのおと 余談ですけど、「桃源暗鬼」と「気絶勇者」は両方ともこの夏にアニメ化されますよね。それでいうと、2位指名で並んだ「チェリー勇者」もアニメ化してほしいなと思いました。絶対にアニメでハネる作品だと思うんで。
小林 たしかにそうですね。欲を言えば「チェリー勇者」は地上波じゃなくて、ネトフリとかで振り切った表現をしてもらいたい(笑)。
最後はどうなる? ドラフト3巡目
──それではいよいよ、最終3巡目の指名です。
──初めて全員バラけましたね。
小林 よかったです。
太田 (笑)。「入間くん」は本当にずっと好きな作品で、人間界でひどい目に遭ってきた主人公の入間くんが、魔界の学園で自分の居場所を見つけて成長していくハートフルな物語。最初はランク1から始まるんですけど、テンポよく成長しながら仲間を増やしていく、その過程が本当に読んでいて楽しいです。もう単行本43巻まで続いていますし、ここまで来たら絶対に卒業まで見届けたい。今さら引くに引けないです(笑)。
はるのおと クラスメイトが全員魅力的なんですよね。なんだかんだでみんな好きになってしまう。だからこそ、彼らの関係が最後にどうなるのかを見たいというのはわかります。たぶん別れがあったりすると思うので、そんなの絶対に泣けるじゃないですか(笑)。
小林 僕はクララが出てくるだけで満足しちゃうくらい、あのキャラクターが好きですね。物語を引っかき回すトリックスターのようでありながら、すごくいい子っていう。独特の魅力を持つキャラクターだなと思います。
──はるのおとさんはそのスピンオフ作品「if 魔フィア」のほうを指名されました。
はるのおと 週チャンの連載作ではないし(連載誌は別冊少年チャンピオン)、なんで本編を指名しないんだっていう説明がまず必要だと思うんですけど(笑)、ごくごく個人的な資質として、入間くんに対して“いい子”すぎると思うときがあるんですよ。もちろん大好きな作品です。しかし「if 魔フィア」はマフィアの世界が舞台ということで、欲望や野望が渦巻くダークな雰囲気が前提にある。その分、感情移入がしやすく、好みかもしれないと思わされた作品ですね。
太田 スピンオフではあるけど、まったく別の作品として楽しめますよね。
はるのおと そうなんです。「入間くん」のスピンオフという以前に、普通に“マフィアマンガ”として面白い。それに加えて、この作家さんは絵の構図がめちゃめちゃうまいんですよね。見開きページの使い方が秀逸で、ハッとさせられるシーンが多いです。元のキャラクターをどうアレンジしているかという面白さもあるし、スピンオフとして非常に完成度が高い。イケメンとスーツは女性ファンなら絶対好きだと思いますし、本編ファンは必読ですよ。
──では最後に小林さん、「廻刻の勇者」の指名理由をお願いします。
小林 これはタイムリープもので、ある意味今回の「結末まで読みたい」というテーマに一番合っている作品かもしれません。これ、途中でやめられたら本当に寝覚めが悪いですから(笑)。
はるのおと 間違いない(笑)。最終回だけでもいいから読ませてくれ!ってなりますね。
小林 第1話で悲惨なルートがすごく丁寧に描かれているからこそ、「なんとかしてこの未来を変えてくれ!」と強く感情移入してしまう。仲間を救うために何度も時間をさかのぼる主人公を見ていると、「悟空、早く来てくれー!」みたいな気持ちになりますね(笑)。トゥルーエンドを見届けないと、こっちの気が済みません。
太田 ストーリー的にはまだ第1話の時点まで進んでなくて、時系列で言ったらマイナスなんですよね(笑)。これ、仮に原作が小説家になろうとかWeb上に載っていたら読みにいっちゃうレベルで続きが気になる作品ですね。幼なじみの女の子とか、出番はそんなに多くないのにちゃんと感情移入できるのも素晴らしい。
小林 そうなんですよ。本来は“役割キャラクター“の面が大きいはずで、実際に出番も少ないんだけど、にもかかわらず「この子をなんとかしてあげたい」と思わせてしまう。この描写力は本当に見事だし、いい作品だなと思いますね。
総括「いい意味で“よくわからない雑誌”であり続けてほしい」
──これにて選択終了となります。最終的なご自身のラインナップを見て、いかがですか?
太田 僕は「ルパン」「チェリー勇者」「入間くん」。我ながら、ファンタジーという土台の上で、異世界転生、エロコメ、学園コメディと、すごく正しく少年マンガらしいタイプの違う3作品を選べたなと思います。
小林 僕は「SHY」「桃源暗鬼」「廻刻の勇者」。クジ運には恵まれませんでしたが(笑)、結果的に今のチャンピオンのファンタジー作品の層の厚さ、レベルの高さを実感できる王道感の強いラインナップになったかなと。どの作品も面白いから、クジに外れても「じゃあ次はこれ」ってすぐに出せるんですよね。
はるのおと 僕は「乱破」「気絶勇者」「if 魔フィア」。ローファンタジー、ハイファンタジー、そしてスピンオフと、バランスよく選ぶことができて満足です。僕の思う“チャンピオンらしさ”と、今のチャンピオンのバラエティ豊かなファンタジーの魅力、その両方を提示できたかなと思っています。
太田 ところで、週刊ではなく月刊少年チャンピオンの連載作品ではありますけど、「バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ」を誰も指名しませんでしたね。異世界ものではあるし、1人くらい挙げるかなと思っていたんですけど。
はるのおと 「結末が見たい」というテーマじゃなければ、僕は間違いなく指名していましたね。これはもう結末とかを気にせず、原作リスペクトにあふれた「刃牙」ネタを延々ダラダラ垂れ流し続けてほしい(笑)。逆に、結末を迎えてほしくない作品です。
小林 あれ、秋田書店の作品なのに“非公認”スピンオフなのが面白いですよね。なんでだよ!っていう(笑)。
──では最後に、今後の週刊少年チャンピオンに期待することを教えてください。
はるのおと ファンタジー作品で言うと、最近始まったばかりですが、「ランウェイで笑って」の猪ノ谷言葉先生が連載中の「ソナタはいったい誰なんだ」も、謎で引っ張る独自の作風で今後が楽しみですね(参照:猪ノ谷言葉が“すべてを忘れた”英雄描くファンタジー新連載「ソナタはいったい誰なんだ」)。
小林 これだけ面白い作品がそろっていると、「次にどんな球が来るんだろう?」という期待感がありますね。「BEASTARS」のように「これ、どこから出てきたの?」と驚かされる作品、予想もつかない突然変異みたいな作品が生まれる土壌がここにはあると思います。
太田 「入間くん」や「弱虫ペダル」といった長期連載の看板作がある中で、そこと被らないように少しずつズラした結果、「チェリー勇者」みたいな予期せぬ傑作が生まれてきている。この流れが続いていくと、今後が本当に楽しみです。
はるのおと 昔のヤンキー雑誌のイメージから脱却したと言われがちですけど、いやいや、今のチャンピオンにも「乱破」を筆頭にヤンキーものもそれなりにあるんですよ(笑)。そういう“らしさ”も残しつつ、「学マス」や「ルパン」のスピンオフみたいに「なんでお前がそれをやるんだよ」っていう、よくわからない企画を今後もどんどんやってほしい。少年4誌の中で今一番“ごった煮感”があって、それこそがチャンピオンの魅力だと思いますね。
小林 その“ごった煮感”がありながら、どの作品にも不思議と“チャンピオンっぽさ”という共通のカラーが感じられるのもすごいですよね。
太田 そうそう。本当に、これからも何が飛び出すかわからない、いい意味で“よくわからない雑誌”であり続けてほしいですね。
週刊少年チャンピオンのファンタジー作品がおトクに読める! 電子書店フェア開催中
一部の電子書店では、今回のドラフト会議にも登場したファンタジー作品を対象としたフェアを期間限定で実施中! 無料配信や割引での販売など、気になる作品をおトクに読めることができる。
期間
2025年7月1日(火)~31日(木)
※期間は電子書店サービスにより異なる。
実施書店
Kindle、LINEマンガ、ピッコマ、コミックシーモア、ブックライブなど
対象作品
- のりしろちゃん(原作)、雪田幸路(作画)「気絶勇者と暗殺姫」
- 内場悠月「チェリー勇者と“せい”なる剣」
- 漆原侑来「桃源暗鬼」
- 四葉夕卜(原作)、佐藤貴彬(漫画)「廻刻の勇者」
- 実樹ぶきみ「SHY」
- 板垣恵介(原案)、猪原賽(原作)、陸井栄史(漫画)「バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ」
- 西修「魔入りました!入間くん」
- 西修(原案)、hiro者(漫画)「魔入りました!入間くん if Episode of 魔フィア」
- 橋本エイジ「乱破 -ヤンキー忍風帖-」
- モンキー・パンチ/エム・ピー・ワークス(原作)、内々けやき(漫画)、佐伯庸介(脚本)「ルパン三世 異世界の姫君」