「キャプテン」50年の歩みを振り返り!50周年記念展示の紹介やコージィ城倉・ちばあきお長男の千葉一郎からのメッセージも

ちばあきお「キャプテン」が、2022年で連載開始から50年を迎えた。2017年にはスピンオフ作品である「プレイボール」の続編「プレイボール2」、2019年には「キャプテン」の続編「キャプテン2」がコージィ城倉の手によって連載化されるなど、現在も「キャプテン」の世界は広がり続けている。

コミックナタリーは「キャプテン」の50周年に合わせて特集を展開。「キャプテン」のこれまでの歩みや、現在集英社の神保町3丁目ビル1階集英社ギャラリーで展開されている「キャプテン」50周年展示を紹介する。さらにコージィ城倉と、ちばあきおの長男で「ちばあきおを憶えていますか 昭和と漫画と千葉家の物語」を上梓した千葉一郎から、「キャプテン」50周年に寄せてのメッセージも寄稿してもらった。

取材・文 / 宮津友徳

「キャプテン」50年の歩みを振り返り!

スポーツマンガの新しいスタイルを確立した「キャプテン」

「キャプテン」の連載が別冊少年ジャンプ(※)(集英社)でスタートしたのは1972年。1960年代後半に「巨人の星」、1970年代前半に「アストロ球団」「侍ジャイアンツ」といった、魔球のような必殺技が登場する野球マンガが発表され隆盛を極める中で、「キャプテン」ではただただ実直に努力を続ける中学生たちの姿を描き、スポーツマンガの新しいスタイルを確立した。ちばあきおもジャンプコミックス版「キャプテン」1巻の作者コメント欄で「どんなことにもくじけずに、一生懸命に努力して克服していく人間的魅力で、チームを引っ張っていくキャプテン谷口くんを、みなさんも応援してください」と語っており、作品内で努力による成長を重要視していたことがうかがえる。

※ 1974年に月刊少年ジャンプへと誌名変更された。

「キャプテン」より。初代主人公の谷口タカオ。 ©ちばあきお/集英社

「キャプテン」より。初代主人公の谷口タカオ。 ©ちばあきお/集英社

そして「キャプテン」のもう1つの特徴は、墨谷第二中学校の野球部キャプテンが代替わりする中で主人公も交代していくこと。劇中では谷口にはじまり、丸井、イガラシ、近藤と4人がキャプテンを務める時代が描かれた。

「キャプテン」より。1年生ながら投手を務めているのちの墨谷二中キャプテン・近藤と、彼の後ろを守る現キャプテンの丸井。 ©ちばあきお/集英社

「キャプテン」より。1年生ながら投手を務めているのちの墨谷二中キャプテン・近藤と、彼の後ろを守る現キャプテンの丸井。 ©ちばあきお/集英社

墨谷二中の歴代キャプテンたち

「キャプテン」文庫版1巻「敵情視察の巻」より。日々部員たちのコーチ役に追われ自分の練習ができずにいた谷口は、学校での練習終了後に人知れずハードなトレーニングを行っていた。 ©ちばあきお/集英社
谷口タカオ

野球の名門校・青葉学院から弱小校の墨谷二中へと転校してくる。転校前は補欠だった谷口だが、ひょんなことから青葉でレギュラーを務めていたと勘違いされてしまう。真実をなかなか打ち明けられずにいた谷口は父親とともに特訓を開始。先代のキャプテン卒業時には新キャプテンに任命されるほどの実力を身に付ける。

「キャプテン」文庫版5巻「サヨナラホーマーの巻」より。全国中学野球地区予選での青葉学院との決勝戦でチーム全員が満身創痍の中、丸井はキャプテンとしての意地を見せようと奮起する。 ©ちばあきお/集英社
丸井

谷口引退後のキャプテン。谷口のことを非常に尊敬している。短気な性格でキャプテン解任騒動を起こされてしまったことも。36校と練習試合を組み、全勝を目指すハードな合宿を行うなどしてチームを牽引した。引退後も試合や練習に顔を出しては先輩風を吹かせている。

「キャプテン」文庫版12巻「どろの中の攻防の巻」より。全国中学野球、和合中との全国大会決勝戦で円陣を組みチームを鼓舞するイガラシ。 ©ちばあきお/集英社
イガラシ

丸井引退後のキャプテン。1年時からレギュラーとして活躍するなど、野球の実力は折り紙付き。スパルタすぎる練習や相次ぐ選手の怪我によって、春の選抜大会を辞退するなどの事件を起こしてしまう。その後練習時間に制限が加えられた中でも猛特訓を続け、悲願の全国制覇を達成する。

「キャプテン」文庫版3巻「新入部員実力テストの巻」より。1年生の近藤は入部早々レギュラーに指名されるが、「守備はおもろうないねん!」と守備練習をしたくない旨を丸井に述べ、彼を激怒させてしまう。 ©ちばあきお/集英社
近藤茂一

イガラシ引退後のキャプテン。関西弁でしゃべる大柄な少年で、入部当初は自分の嫌いな守備練習などはどうにか回避しようとしていた。調子に乗りやすい部分もあるが、キャプテン就任後は精神的にも成長し、墨谷二中の弱点であった選手層の薄さの解決に乗り出していく。

「この続きを描いてみたい」と語る中での連載終了

「キャプテン」がヒットを飛ばす中、1973年には週刊少年ジャンプ(集英社)でスピンオフ作品「プレイボール」の連載がスタートする。「プレイボール」で描かれるのは墨谷高校に進学した谷口のエピソード。怪我によって野球をプレーできなくなってしまった谷口が、紆余曲折を経て野球部へと入部し甲子園を目指していくことになる。

「プレイボール」のカラーカット。 ©ちばあきお/集英社

「プレイボール」のカラーカット。 ©ちばあきお/集英社

後輩の丸井やイガラシも墨谷高校野球部に加わる中で、谷口3年時の夏の甲子園予選を前に、「プレイボール」の連載は1978年に終了する。最終巻のあとがきによれば、ちばの体調を鑑みてのドクターストップが理由だったという。6年にわたる長期連載となった同作についてちばは「描いている内に、谷口クンの大学生活、はたまたプロになった谷口クンまで描いてみたいな、などと最初の意図とは異り、構想は大幅にふくらみ、自分でも驚きあきれてしまいました」「心身ともに回復したら、また『続プレイボール』を描きたいなどと思っています」とコメントしている。

「プレイボール」のカラーカット。 ©ちばあきお/集英社

「プレイボール」のカラーカット。 ©ちばあきお/集英社

1979年には、近藤率いる墨谷二中野球部が春の選抜大会を終えたところで「キャプテン」も完結。ちばは同作についても「近藤も十分には描ききっていませんし、また、キャプテンとして描いてみたいキャラクターが頭の中で十分に発酵した時には、この続きを描いてみたいと思っています」と語っていた。なお「キャプテン」は連載完結後、1980年代にTVアニメ、劇場アニメ化を果たしている。

「キャプテン」文庫版の電子版最終15巻。表紙は近藤が飾っている。 ©ちばあきお/集英社

「キャプテン」文庫版の電子版最終15巻。表紙は近藤が飾っている。 ©ちばあきお/集英社

38年ぶりの続編はちばあきおの“再現”

1984年にちばが41歳の若さでこの世を去った後も、2005年から2006年にかけて「プレイボール」がTVアニメ化、2007年には「キャプテン」が実写映画化と、断続的に展開が続いていた「キャプテン」と「プレイボール」。2017年には「キャプテン」「プレイボール」のその後を、「おれはキャプテン」や「グラゼニ」(森高夕次名義で原作を担当)などで知られる野球マンガの名手・コージィ城倉が描くという触れ込みで、「プレイボール2」の連載がグランドジャンプ(集英社)でスタートした。

「プレイボール2」のカラーカット。 ©ちばあきお・コージィ城倉/集英社

「プレイボール2」のカラーカット。 ©ちばあきお・コージィ城倉/集英社

「プレイボール2」で描かれるのは、最後の夏に甲子園出場を目指す谷口の姿。コージィは「新機軸は打ち出しません。コンセプトは『何も足さない。何も引かない』。ちばあきお先生が生きていたらおそらくこんなカンジで描いたのではないだろうか…というテイストを“再現”してみたい」とコメントしており、その宣言通りちばのタッチを巧みに再現し、「プレイボール2」を全12巻で描きあげた。谷口最後の夏の結末は「プレイボール2」の単行本で確認しよう。

2017年2月にグランドジャンプ(集英社)に掲載された「キャプテン」「プレイボール」復活の告知。 ©ちばあきお・コージィ城倉/集英社

2017年2月にグランドジャンプ(集英社)に掲載された「キャプテン」「プレイボール」復活の告知。 ©ちばあきお・コージィ城倉/集英社

谷口が監督に? ついに揃った4人のキャプテン

ちばが「キャプテン」と「プレイボール」を並行して連載していたように、コージィが「プレイボール2」と並行し、「キャプテン2」の連載をスタートさせるというニュースが飛び込んできたのは2019年。同作はグランドジャンプむちゃからグランドジャンプへと掲載誌を移り、現在も連載されている。序盤では近藤の中学時代最後の大会を描いており、その後近藤も先輩たちと同じように墨谷高校へと入学。丸井、イガラシ、近藤の3人が墨谷高校野球部に揃ったのに加え、高校を卒業した谷口も監督として野球部に参加することに。これまで同時期にチームに揃うことのなかった4人の“キャプテン”による甲子園への挑戦が目下描写されている。

「キャプテン2」のカラーカット。歴代のキャプテン4人が勢揃いしている。 ©ちばあきお・コージィ城倉/集英社

「キャプテン2」のカラーカット。歴代のキャプテン4人が勢揃いしている。 ©ちばあきお・コージィ城倉/集英社

プロフィール

ちばあきお

兄・ちばてつやのアシスタントを務める中で、1967年にマンガ家デビュー。代表作は「キャプテン」「プレイボール」。魔球などを駆使していた当時の野球マンガとは一線を画し、等身大のキャラクターが仲間とともに努力しながら成長する過程を描き、スポーツマンガの新しいスタイルを確立し人気を得た。1984年、41歳の若さで惜しまれつつこの世を去る。現在「キャプテン」を原案にコージィ城倉が「キャプテン2」をグランドジャンプ(集英社)で連載している。

集英社1階のギャラリーで
「キャプテン」50周年展示を実施中!

東京・神保町の集英社神保町3丁目ビル1階集英社ギャラリーでは4月30日まで、「キャプテン」の特別展示を実施中。展示は谷口、丸井、イガラシ、近藤の歴代墨谷二中キャプテンのパネルを軸に構成。4人が野球をプレーする様子が、それぞれの印象的なセリフとともに展示されている。また4人の後ろには全力でプレーする墨二ナインの様子も切り取られており、グランドを彷彿とさせる床には使い込まれたボールやバット、グローブも置かれている。なお新型コロナウイルス感染症拡大防止のため集英社ギャラリーの入場口は閉鎖されており、展示は屋外からガラスを通して見学する形となるためご注意を。

ちばあきおの長男が
在りし日の父、そして日本のマンガ史をも描く
ノンフィクション刊行!

ちばあきおの長男で、ちばあきおプロダクションの代表を務める千葉一郎の著書「ちばあきおを憶えていますか 昭和と漫画と千葉家の物語」が、「キャプテン」の50周年に合わせて刊行された。同書では千葉が武論尊、里中満智子、江口寿史、高橋広、コージィ城倉、担当編集者、そしてちばてつやをはじめとする千葉家の人々など、関係者へのインタビューを通して、在りし日の父や日本のマンガ史についてをまとめていく。

「ちばあきおを憶えていますか 昭和と漫画と千葉家の物語」(帯付き) ©ちばあきお/集英社

「ちばあきおを憶えていますか 昭和と漫画と千葉家の物語」(帯付き) ©ちばあきお/集英社

  • はじめに
  • 第1章1943~58年「満州時代・終戦から引き揚げまで・漫画との出会い」
  • 第2章1958~72年「結婚・デビュー・『キャプテン』連載開始」
  • 第3章1972~79年「『プレイボール』連載開始・締め切りとの闘い」
  • 第4章1979~82年「休筆期間」
  • 第5章1982~84年「カムバック・最後の日々」
  • 第6章1984年「ちばあきおの死」
  • 第7章2017年~「ちばあきお再び」
  • 第8章2022年2月「ちばてつやが語る、ちばあきお」
  • あとがき
  • 年表

「キャプテン」50周年によせて、
コージィ城倉&千葉一郎からコメント到着!

コージィ城倉コメント

最初その存在を知ったのは床屋に置いてあった週刊ジャンプの中の別冊ジャンプの広告! ものすごく小さなカットが気になった! 当時すでに水島野球漫画を最高峰と崇めていた僕は、そのあまりの線のシンプルさに驚いた! 今時このライン? 時代を逆行させてないか? 逆に興味が湧いた! 別冊ジャンプを手に取る! やはり(その当時でさえ)前時代的な匂いがした! 子供心にも嘘臭いと思った! 野球部なのに草野球っぽかったから! でも、この嘘臭いと思っていた「キャプテン」を気がついたら真っ先に読んでいる……別冊ジャンプをわざわざ買って来て!(因みに僕は週刊はジャンプ派ではない!サンデー派なのだ) 「キャプテン」を好きな理由は本当は今も言語化できないでいる! ただひとつ言えるのは、僕は雑誌で読む「キャプテン」が大好きだった! あの時から50年近く経っちゃったんですか……

プロフィール

コージィ城倉(コージィジョウクラ)

1963年長野県生まれ。1989年に週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「男と女のおかしなストーリー」でデビュー。デビュー時から野球を題材にすることが多く、同年ミスターマガジン(講談社)にて「かんとく」、1995年に週刊少年サンデー(小学館)にて「砂漠の野球部」、2003年には週刊少年マガジン(講談社)にて「おれはキャプテン」など数々のヒット作を生み出している。一方で人間の暗い心理を浮き彫りにするような作品も手がけ、2002年にビッグコミックスピリッツで連載した「ティーンズブルース」では、ホストクラブにはまって転落していく女子高生を描き読者を驚かせた。また森高夕次(もりたかゆうじ)名義で原作も担当し、「グラゼニ」をはじめ、「おさなづま」「ショー☆バン」「ストライプブルー」「トンネル抜けたら三宅坂」などバラエティ豊かな作品を発表している。現在の連載作に「キャプテン2」「グラゼニ ~大リーグ編~」など。

千葉一郎コメント

父が描いた「キャプテン」は、人間らしさが凝縮された作品だと思っております。不器用なキャラクターが沢山登場しますが、彼らはいつも一生懸命です。頑張って諦めなければ、きっと、誰かが見ていてくれる──そんなメッセージが込められている気がします。
半世紀という時が経過してもなお、作品に触れる機会をいただけるということは感謝以外の何物でもございません。父も心から喜んでくれていると思います。

プロフィール

千葉一郎(チバイチロウ)

1975年東京都生まれ。ちばあきおの長男。現在はちばあきお作品の企画・管理をするちばあきおプロダクションの代表を母より引き継ぎ、父の作品の商品化プロデュースに携わる。