川野達朗(監督)×清水勇司(副監督)×山田奈月(キャラクターデザイン)|teamヤマヒツヂの挑戦、そしてこれから

アニメの動きを優先できる環境

──絵作り全体について、立体的ではない非常にフラットな感じを受けたのですが、これはどのような指針ありきだったのですか。

「BURN THE WITCH」の場面カット。

山田 基本的には単純に、チーム内に影や線の多さで立体感を出すのではないフラットな絵作りが好きな人が多いという理由だと思います。

川野 一方で、下手な人が影の少ない絵を描くとチープになるリスクも背負ってしまう。逆に言うとすごく描き込んだキャラクターは、うまい人が描いても下手に見えてしまうジレンマもあるんです。そのバランスを見ながら、僕らは線を少なくし、そこに対する労力を最小限に抑え、アニメの動きを優先できる環境にしたんですね。

──実際に動いているところを拝見すると、キャラの主線(輪郭線)がかすれていますよね。繊細かつ新鮮に見えました。

川野 狙いはディテールアップです。平坦な線ではなく、あえてかすれさせることで、そこに情報量を生むんですね。処理の発想自体は以前からあったのですが、TVシリーズで回すような作品でも使うようになって、それが一般化したという。

清水 コロリドの作品はけっこうこの系統の処理がかかっているんです。今回は撮影テストで、3パターンくらい用意してもらって、その中でどれがいいか川野監督と話し合った記憶があります。

美術へのこだわり

──背景美術にも魅力を感じました。まるで画用紙に描いたかのような絵画的な雰囲気は、本作の品位に大きく貢献しているのではないですか。

「BURN THE WITCH」の場面カット。

川野 美術こそ、今回の作品における挑戦だと思っているんです。teamヤマヒツヂは、大きい作品に参加したとき、何か1つこれまで取り入れていなかった手法やテクニックにチャレンジする方針なんですよ。

──どうして今回は美術をフィーチャーしたのでしょうか。

川野 アニメ美術において「コピペ(コピーアンドペースト)をする文化」が習慣になっているという部分もあり、それをなるべくやめたかった。今回美術監督の稲葉(邦彦)さんとの打ち合わせ時に、例えば過去の作品で「この美術のこの要素を拾ってほしいんだ」と、1つひとつ詰めて、イメージボードを上げていただいたんです。

──街並みや建造物がなるべく被らないように設計していったんですね。

川野 手応えは感じていて、細かく詰めていったおかげで絵画的にも見えたんじゃないかなと思います。それと要請を出した部分も一点あって。当初は街並みや建造物と空が、それぞれどちらもデフォルメされたデザインチックな絵だったんですよ。それだとヌケ感がなくなってしまうので、建造物のディテールはデザインチックにしつつも、空だけは写実に振ったんです。

リバース・ロンドンの街並み。

──2つのスタイルを同居させたんですね。イギリスにもロケハンをされたそうですが、こちらの成果はいかがでしたか。

川野 美術に関して言えば、ロケハンの成果がほとんどだと思います。ロケハンをしなければ、イメージボードもこれほど多くは上げられなかったでしょうし、背景にこだわることもできなかったんじゃないかと。

──街で住民が掃除しようと煙突を登っていくカットは、原作にはありませんよね。あれは背景美術を見せたいという意図だったのですか。

清水 そうですね。今回は(リバース・)ロンドンというロケーションを有効活用することもテーマにしていたんです。

「BURN THE WITCH」の場面カット。

川野 マンガはコマ数やページの制限もあるので、原作だとリバース・ロンドンの街並みは細部まで描写されていないんですよね。

清水 でも、僕らが手がけるのは映像作品ですから、何を生業としている人がいて、どういう住人が住んでいるのかをちゃんと見せることができるんです。ちなみに煙突を登っていくシーン前後は、自分がコンテと演出を担当しています。

──ご自身が体験されたロンドンの風景を活かされたんですね。

清水 いや、実は僕、ロケハンに行けなかったんですよ……。その前に担当していた作品が大詰めで、「行ったらあんた終わらないでしょう!」と周囲に言われて。僕自身はすごく行きたくて、いまだに根に持っているんです(笑)。

ドラゴンに追いかけられる様子を考えながらロケハン

“トップ・オブ・ホーンズ“長官の1人、サリバン・スクワイア。

──今回絵コンテは何人で描かれていたのでしょうか。

清水 僕と監督を含めて4人です。例外もありますが、コンテは各シーンの演出担当の方に描いていただくコンセプトでやっていました。各人やりたいことを目指して、自分の技量を活かしながらやっていただいて。さらに各人の作業に対してちゃんと反省もする。つまり、教育的な意味合いも兼ねていたんです。

──インタビュー冒頭で、教育に力を入れているとのお話もありましたが。

川野 その一環です。ただ、初めてコンテを描かれる方もいらっしゃるので、そういう方の上がりに対しては自分がチェックしていました。そのうえで僕は僕で自分のシーンを持っていて。

──演出面で気をつけられたのはどういった部分なのですか。

ドラゴンに追いかけられるニニーとのえる。

清水 まずは原作の面白さを損なわないようにして、そのカッコよさをちゃんと伝えることですね。まあ、川野監督がアクションをつけていたので、その面で心配はなかったのですが。

──アクションでいうと、第1話で原作にない追いかけっこがありましたよね。あれは印象的でした。

山田 そこは川野さんのプランニングなんですよね。

川野 僕がガッツリ原画修正したシーンです。あのシーンはロケハンの頃からイメージがあって、どうドラゴンに追いかけられるのかを現地で考えていました(笑)。あそこで出てきたドラゴンはそれほど空を飛ぶタイプではなかったので、そのあたりも考慮しながら現地で写真を撮っていました。

ニニーとのえるの上司・チーフ。

清水 演出面で言うと、もう1つ大事だったのが日常シーンです。日常シーンが地味になってしまうと観客の方々がだれてしまいますし、見せ場になるアクション面に違和感なく映像を繋げられるようにと意識していました。

山田 キャラクターが話すシーンで重要視していたのは自然な動きで見せられるようにということです。特にキャラクターが複数いる状態のとき、相手のキャラクターがどう受けて反応するのか、そのリアクションについて自然に見えるように気をつけていました。