神谷浩史、草尾毅が表情豊かな芝居で魅了!作品を二重三重に楽しめる、「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」という“副読本”

アニメ「文豪ストレイドッグス」に出演している声優たちが、自らの役のモデルとなった文豪の名著を朗読するオリジナル番組「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」。その第2弾となる「江戸川乱歩篇 / 小栗虫太郎篇」が、2月9日20時よりWOWOWプラスで放送される。TVアニメ「文豪ストレイドッグス」第4シーズンの放送開始を記念した今回の番組には、同作で江戸川乱歩役を演じる神谷浩史、小栗虫太郎役を演じる草尾毅が出演。神谷は江戸川乱歩の短編探偵小説「D坂の殺人事件」、草尾は小栗虫太郎の代表作「黒死館殺人事件」の一節に挑む。

コミックナタリーでは番組の放送を記念し、その見どころを紹介する特集をお届け。リアルな“芝居”と「文豪ストレイドッグス」の世界観とが相互リンクする番組の奥深さに迫っていく。さらに番組収録時のレポートを掲載。本記事を辿ることで、番組放送前の視聴の参考にしてほしい。

文・構成 / カニミソ撮影 / 高木あつ子

作品を二重三重に楽しむことができる、
「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」という“副読本”

文 / 太田祥暉

著への新たな扉を開けた「文豪ストレイドッグス」

今から15年ほど前にヒットしたライトノベルに、野村美月「“文学少女”シリーズ」がある。この作品では小説を「食べるほど」大好きな少女・天野遠子が、文学作品を頼りにして日常で起こる事件を解いていく。各巻では先に触れた「人間失格」のほか、宮沢賢治「銀河鉄道の夜」や坂口安吾「桜の森の満開の下」などがモチーフとして描かれており、熱いファンたちが原典にも触れるきっかけとなった。

この大ヒットの要因として、キャラクターのキャッチーさやストーリーの面白さはもちろん、文学作品という「授業で習ったことのある」近しい存在がモチーフとなっていたことが挙げられるだろう。国語の便覧を開けば、遠子が読んでいた作品について詳しく書いてある。しかも、元ネタを読みたければ学校の図書室には必ずある……といった具合で、手に取りやすいところに元ネタがあるというのは読者にとって大きなフックとなったはずだ。

実際、「“文学少女”シリーズ」は一環として「“文学少女”とグルメな図書ガイド」を刊行し、元ネタとなった文学作品へ若年層の読者たちを触れさせる機会を作っていた。

このように、文学作品に若年層が触れる機会というのは「“文学少女”シリーズ」に限らず数多くあるわけだが、2010年代においてその役割を果たしたのは、確実に「文豪ストレイドッグス」だった。

「文豪ストレイドッグス」1巻

「文豪ストレイドッグス」1巻

2012年にヤングエース(KADOKAWA)で連載を開始した朝霧カフカ(原作)・春河35(マンガ)による「文豪ストレイドッグス」は、実在した文豪たちを「モデル」にしつつ、アクションマンガとして再構成した作品である。中島敦や太宰治、芥川龍之介や江戸川乱歩をはじめとした文豪たちが名前そのままに登場し、作品にちなんだ異能力を駆使して戦うのだ。

本作は発売直後から人気を博し、2022年12月時点で電子版を含めたシリーズ累計部数は1200万部を突破。2016年からは「桜蘭高校ホスト部」「STAR DRIVER 輝きのタクト」の五十嵐卓哉監督・榎戸洋司脚本・ボンズ制作によってアニメ化されており、その巧みな演出と構成でも話題を集めている。

本作の魅力の1つに、先述のように国内外の文豪たちが次々と登場することが挙げられる。国語の授業で学んだことがある作品や、どこかで触れたことがある文豪たちが登場したならば、「知ってる!」と親近感を覚えることだろう。もちろん、知らない文豪モチーフのキャラクターが登場したとしても、熱い異能力バトルものとして純粋に楽しめるのが本作の特徴。読み終えてから、再びキャラクターのモチーフとなっている原典にあたり、認識を深めてからもう一度「文豪ストレイドッグス」に触れると、新たな読後感を得られる。つまり、1作品で2度美味しい。それが「文豪ストレイドッグス」の魅力なのだ。

「文豪ストレイドッグス」の人気はマンガやアニメだけに留まらず、モチーフとなった文豪の作品にも進出。角川文庫から刊行されている文豪作品のカバーイラストに、「文豪ストレイドッグス」のキャラクターたちが登場している。これによって、「文豪ストレイドッグス」に親しんでいるファンたちが文豪の著した、いわば原典に触れる機会が生まれた。それは同時に、「“文学少女”シリーズ」のように作品のモチーフとなった物語に触れる機会の創出でもあり、また二重においしい展開だったのだ。

副読本としての「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」

——というところで、今回の「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」に辿り着く。「声優朗読会」は、「文豪ストレイドッグス」に登場するキャラクターのモチーフとなった文豪の作品を、出演声優が朗読するという試みだ。2020年に放送された「中島敦篇 / 泉鏡花篇」、「福沢諭吉篇 / 森鴎外篇」に引き続き、今回は「江戸川乱歩篇 / 小栗虫太郎篇」がWOWOWプラスにて届けられる。

本番組の魅力は大きく2つ。「文豪ストレイドッグス」ファンとしては、世界観とキャラクターを深掘りできるきっかけとなること。そして、未読・未見の方ならば、ベテラン声優による演技が楽しめることにあるだろう。

まず前者を掘り下げていくが、今回朗読されるのは江戸川乱歩「D坂の殺人事件」と小栗虫太郎「黒死館殺人事件」の2作品である。

江戸川乱歩は「文豪ストレイドッグス」のメインキャラクターであるが、彼を演じる神谷浩史が乱歩の代表作にして名探偵・明智小五郎が初登場した短編の一節を朗読する。また、1月から放送されているTVアニメ第4シーズンで初登場を果たした小栗虫太郎を演じる草尾毅は、虫太郎の代表作であり奇書として数えられる長編小説の一節を読んでいる。

小説の内容と「文豪ストレイドッグス」とは直接リンクしないが、どんな作品を書いていた文豪が「モデル」となっているのか? そしてその文豪が著した作品の要素は、どのように「文豪ストレイドッグス」の世界観に反映されているのか? そんな謎が紐解ける展開になっていることは間違いないだろう。

また、朗読の直後に放送されるインタビューパートも見逃すわけにはいかない要素の1つだ。2人の声優は、自らが演じるキャラクターについてどのように感じているのか。そして、そのキャラクターのモチーフとなった文豪の作品へどのようなアプローチで挑んだのか。そんな秘話が語られる。こちらも「文豪ストレイドッグス」という作品への理解を深める一端となるはずだ。

左から草尾毅、神谷浩史。

左から草尾毅、神谷浩史。

さらに、神谷浩史・草尾毅という名優の芝居によって紡がれる新たな名著の世界も、この「声優朗読会」の魅力である。およそ100年から90年前に執筆された芳醇な作品の世界を、名優たちの解釈によって描く。今回の題材となるのは、神谷・草尾ともに探偵小説であるが、重厚な物語をどのような切り口で読んでいくのか、作品の内容を知っておらずとも注目ポイントとなるだろう。

地の文とセリフ、その差異において声色を変えて表現する2人の芝居。普段、アニメを観ている際には当然存在する画がなく、声のみで作品性を伝えるとき、どのような芝居で2人は魅せるのか? ドラマCDやボイスドラマとも異なり、2人の表情が伺えるテレビ番組という形式だからこそ、「解釈」と「芝居」をより深く楽しむことができるのだ。

左から草尾毅、神谷浩史。

左から草尾毅、神谷浩史。

ここまで「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」の見どころについて述べてきたが、当然のことながら番組を視聴した後は原典である「D坂の殺人事件」「黒死館殺人事件」、そして「文豪ストレイドッグス」に帰結する。

番組で神谷と草尾が魅せた作品の一端を頭の中に収め、改めて「D坂の殺人事件」「黒死館殺人事件」のページを捲ってみよう。すると、脳内では2人の声色で作品世界が再生されるはずだ。触れる前とは異なり、新たな景色で作品を読み解くことができるだろう。

さらに「文豪ストレイドッグス」を読んだり視聴してみたりすると、江戸川乱歩と小栗虫太郎という2人のキャラクター像がより鮮明に映るに違いない。放送中の第4シーズンでカギを握る2人を深掘りし、より「文豪ストレイドッグス」の世界を楽しむために、ぜひこの「声優朗読会」を視聴してみてはいかがだろうか。

そして、この2人の演技を機に「文豪ストレイドッグス」の世界に触れる方は、ぜひTVアニメ第1シーズンからご覧いただきたい。私たちが知っている文豪ではあるものの、まったく知らないキャラクターが織りなす活劇が楽しめる。物語中では、2人が朗読した作品の内容が垣間見える瞬間があるかもしれない。

そんな副読本として、「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」が成立しているのだ。

アニメ「文豪ストレイドッグス」第4シーズンキービジュアル

アニメ「文豪ストレイドッグス」第4シーズンキービジュアル

「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」
朗読作品紹介

江戸川乱歩「D坂の殺人事件」

神谷浩史

江戸川乱歩作品でおなじみの名探偵・明智小五郎が初登場した初期の短編小説。1925年、雑誌「新青年」1月増刊号に掲載された。

あらすじ

ある9月の蒸し暑い晩、主人公の「私」と明智小五郎は、D坂の大通りにある喫茶店・白梅軒(はくばいけん)の向かいの古本屋で、店の細君の絞殺死体を発見する。しかし、犯行時に古本屋から逃亡した者はなく、また犯人を目撃したという学生の証言も曖昧なため、警察の捜査は難航。10日程経って、明智が怪しいと睨んだ「私」は、そう思った理由を直接本人に説明するが、対する明智の口から出た理論は、「私」の想像の上をいくものだった。

小栗虫太郎「黒死館殺人事件」

草尾毅

膨大な知識を作中に盛り込み、文中の多くの言葉にカタカナでルビを振るという特異なスタイルで知られる小栗虫太郎。「黒死館殺人事件」は日本3大奇書の1つと言われる小栗の代表作で、1934年4月号から12月号まで雑誌「新青年」に掲載された。

あらすじ

舞台となるのは、過去に変死事件が続いた“黒死館”と呼ばれる不吉な館。その屋敷では当主が不可解な自殺を遂げたのちも、住人が次々と殺人事件に見舞われていた。その謎を解き明かすべく、神学、呪術、占星術、数学、化学、文学など、博覧強記の知識を駆使して事件をに挑む刑事弁護士・法水麟太郎(のりみずりんたろう)の姿が描かれる。

「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」
潜入レポート

収録が行われたのは、都内某所の趣あるカフェ。朗読パートでは、なるべく止めずに最後まで読み通し、後から躓いたり間違えたりしたところを撮り直していく方法が取られた。まずは神谷による「D坂の殺人事件」の朗読からスタート。朗読のスピードを確認するテストを終え、「本番3秒前、3、2、1!」の声が響き渡ると、神谷はソファに座って台本を開きながら、順調にページを読み進める。「D坂の殺人事件」は主人公の「私」の視点で物語が展開していくが、神谷はときにカフェのウエイトレス、ときに友人の明智小五郎へと巧みに成り代わり、声に抑揚をつけながら最後まで一気に読み終えた。スタッフたちがチェック作業に入る間も、神谷は小声で台本を繰り返し読み、入念なチェックを欠かさない。再度スタッフと打ち合わせを交わして一部のリテイクを行い、ほどなくして神谷の朗読パートは終了した。

神谷浩史

神谷浩史

次に、草尾による「黒死館殺人事件」の朗読が始まった。同作は「前羅馬様式」と書いて「プレ・ロマネスク・スタイル」と読むといった難解な表現や、固有名詞、英語表記が多く登場するが、草尾はごく自然に心地よい低音ボイスを響かせながら、スラスラと小気味よく台本を読み上げていく。また事件を解き明かさんと館を訪れた主人公・法水麟太郎と検事とのやりとりも、まるでその場に居合わせているかのような臨場感を感じさせる。スタッフから修正箇所の指示が入ると、ペンを片手にしっかりと書き留めながら、真剣に聞き入る草尾。草尾のパートは無事終わりを迎えた。草尾が朗読パートの収録を終えると、ずっと背後で見学していた神谷が登場。驚いた草尾は照れた表情を浮かべながら「(神谷が)この場にいたのを知らなくてよかった」と胸をなでおろす。そんな草尾を神谷は笑顔で「お見事でした」と労った。

草尾毅

草尾毅

続けて2人はトークパートの収録へ。トークパートは草尾が進行を担うパートと、神谷が進行を担うパートの2パターンが用意された。長回しでの撮影となったトークパートでは、朗読を終えた直後の神谷、草尾が作品のどんな箇所に苦戦したのか、作品を読んでどんな印象を受けたのか、率直な感想を述べ合う。撮影中に話が弾むのはもちろん、収録の合間もたびたび談笑する2人。そんな様子からは、先輩・後輩として互いにリスペクトし合っている2人の信頼関係が垣間見えた。

トークパート収録時の様子。

トークパート収録時の様子。

トークパート収録時の様子。

トークパート収録時の様子。

「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」は
WOWOWプラスで独占放送!

WOWOWプラスでは「文豪ストレイドッグス 声優朗読会」第2弾のほか、第1弾として上村祐翔、諸星すみれが出演した「中島敦篇 / 泉鏡花篇」と、小山力也、宮本充が出演した「福沢諭吉篇 / 森鴎外篇」が、2月8日19時より放送決定。合わせてアニメ「文豪ストレイドッグス」初の劇場版「文豪ストレイドッグス DEAD APPLE」も、同日21時よりオンエアされる。WOWOWプラスのYouTube公式チャンネルでは、朗読会の一部シーンを先行で公開中だ。

さらに第2弾が放送される2月9日までの期間中、スカパー!でWOWOWプラスを新規契約するとポストカード3枚セットが必ず手に入る、新規加入キャンペーンを開催。WOWOWプラスへの加入方法などは、特設サイトをチェックしよう。

「『文豪ストレイドッグス 声優朗読会』江戸川乱歩篇 / 小栗虫太郎篇」特設サイト