ひとつのエピソードが完結したとき、初めて面白さがわかるような作品
──原作だけではなく、アニメ「ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom」も放映当時に熱心にご覧になられていたそうですが、こちらにはどんなご感想を持たれていました?
「暗いなあ」と(笑)。
──それはストーリーの印象ですか? それとも画面が……?
どっちもですね(笑)。「重たい雰囲気のアニメだなー」と思いましたけど、僕は好きで、とても楽しく見ていました。
──ほぼ同時期に放送されたアニメ「serial experiments lain」とかに近い雰囲気でしたよね。
ああ、確かに。サスペンス的な雰囲気のある作品の多い時期だったから、そんな傾向になったのかな。
──……しかし、それにしても、ちょっと画面は暗過ぎたような。
ですねえ。それを思うと今回のアニメの画面は随分明るいですよね(笑)。
──ではその、今放映中のTVアニメ「ブギーポップは笑わない」のご感想を伺いたいです。
こちらも、僕はすごくよかったです。今回、3話まで見せていただいたんですが、初めはちょっと心配していたんです。話は決して明るい内容ではないし、どうなるのかな?と。
──わかりやすく、イケメンやかわいい女の子が楽しくキャッキャウフフするような作品ではないですよね。
そう。しかもひとつのエピソードが完結したとき、初めて面白さがわかるような作品だから、魅力が伝わるまでは時間がかかりそうだな、と。でもそれを3話分に巧みにまとめていて、すごい脚本だなと思いました。同じ出来事を、1話ごとに視点を変えて三度描くんですよね。
──先ほど話していただいた、原作の構造を活かした構成ですよね。
そこをちゃんと拾っているのが、すごいな、うまいな、と。
何度でも言いたい。「まず3話まで見て!」
──キャラクターデザインはいかがでしたか?
ポップな印象になりましたよね。デザインだけじゃなく、実際に動いても魅力的で、作画もキレイです。みんな高校生らしい、年相応のかわいさがあるなと。中でもピンときたのは末真和子です。メガネキャラが好きなので(笑)。原作だとそこまでメガネキャラな印象がなかったんですが、アニメで見直して認識が変わりました。あとは……原作を読んでいるとき、ブギーポップの声は男の声で再生されていたんですよ。なぜか。そういえば肉体的には女の子なんだなということを、改めて思いました。ほかにも声でいうと、早乙女正美役の榎木淳弥さんがよかったです。高校生らしさの中に、感覚が逸脱しているような雰囲気がちゃんとあった。
──映像面でほかに気になった点は?
3話でとあるキャラを倒すところをサラッと描いていたところですね。ブギーポップって、いつも敵をサラッと倒すんです。アニメでも簡単に倒してしまうような描き方になっていたところが、「らしい」と思いました。あのスピード感は、本当によかったです。
──今後も放映は進んでいきますが、岩井さんの考える視聴時のポイントは?
原作を読んだことのある人は、1話を見るだけで「なるほど!」と思うでしょう。こういう感じなんだと。だからそこは心配してないんですよ。3話まで見ると、あの情報量の多い原作をよくこんなキレイに3話分に収めたなと感心するはず。でも読んでいない方だと、とにかく初めは不思議だと思うんですね。2話、3話まで触れると、やっとわかる。だから、さっきの話と重複しますけど、「まず3話まで見て!」ということは、何度強調してもいいかなと思います。
──そこで作品のスタイルを知れば、次のエピソードでも作品のリズムがわかりますよね。今後の放映で楽しみにされているところは?
これまで原作から映像化されたのは、実写も含めて「笑わない」だけなんですよね。その意味で、このあと「VSイマジネーター」(「ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター」)が初めて映像になる。その事実にとにかくワクワクしています。飛鳥井仁とか、どんな感じで描かれるんだろう? 能力描写もですし、キャラクターとしてもどうなるのか。いや、楽しみですね。活字でしか描かれてこなかったものに、ひとつの正解が示されるというのは、気になりますよね。
──ありがとうございます。ところで、これは悠木碧さん、大西沙織さんにもお聞きした質問なのですが(参照:アニメ「ブギーポップは笑わない」特集 悠木碧(ブギーポップ/宮下藤花役)&大西沙織(霧間凪役)インタビュー )、岩井さんにとっての“世界の敵”ってなんですか?
急なフリですねえ(笑)。そうだな……「ブギーポップ」みたいに昔からずっと続いている作品だと、アニメを見て新しく「『ブギーポップ』って面白いね」と言い始めた人を、「原作も読んでないニワカが何を言ってるんだ」とか言ってしまいがちですよね。
──過激な原作ファンの中には、そういう人もいるかもしれません。
僕はそういう人が一番いらないと思うんです。極論を言えば、原作者さんや、アニメの制作者さんたち以外はみんなニワカなんですから。ニワカという言葉がいちばんいらない。そのコンテンツの幅を狭める原因だと思ってます。その考え方が、僕にとっての“世界の敵”ですね。
- アニメ「ブギーポップは笑わない」
- 放送情報
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AT-X:毎週金曜21:00~21:30
TOKYO MX:毎週金曜22:30~23:00
テレビ愛知:毎週金曜27:05~27:35
KBS京都:毎週金曜24:30~25:00
サンテレビ:毎週金曜24:30~25:00
BS11:毎週金曜23:00~23:30
- 配信情報
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AbemaTV:毎週金曜22:00~22:30
ほか各配信サイトにて配信中 - スタッフ
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原作:上遠野浩平(電撃文庫刊)
原作イラスト:緒方剛志
監督:夏目真悟
シリーズ構成・脚本:鈴木智尋
キャラクターデザイン:澤田英彦
音楽:牛尾憲輔
アニメーション制作:マッドハウス
製作:ブギーポップは笑わない製作委員会
- キャスト
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ブギーポップ/宮下藤花:悠木碧
霧間凪:大西沙織
末真和子:近藤玲奈
竹田啓司:小林千晃
新刻敬:下地紫野
紙木城直子:諏訪彩花
早乙女正美:榎木淳弥
田中志郎:市川蒼
百合原美奈子:竹達彩奈
エコーズ:宮田幸季
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谷口正樹:八代拓
織機綺:市ノ瀬加那
飛鳥井仁:細谷佳正
安能慎二郎:長谷川芳明
衣川琴絵:阿澄佳奈
スプーキーE:上田燿司
水乃星透子:花澤香菜
©上遠野浩平/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会
- 岩井勇気(イワイユウキ)
- ワタナベエンターテインメント所属。埼玉県出身、1986年7月31日生まれ。幼稚園からの幼なじみ・澤部佑とお笑いコンビ・ハライチを結成。アニラジ「ハライチ岩井勇気のアニニャン!」(TBSラジオ)パーソナリティーほか、「ハライチ岩井勇気のアニ番」(ニコ生)などのレギュラーを抱える。小説新潮(新潮社)、TV Bros.(東京ニュース通信社)でコラムを連載中。
- 岩井勇気 ハライチ (@iwaiyu_ki) | Twitter
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- TBSラジオ「ハライチ岩井勇気のアニニャン!」
- 放送日時:毎週火曜日21:00~21:30
- ニコ生「ハライチ岩井勇気のアニ番」
- 放送日時:隔週金曜日20:00~生配信